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そこには狐もおりまして-⑦


「そいつらは基本的に所轄を持たず、中央に詰めているんですよ。そのほうが有事の際に動きやすいからとか言ってますけど、色んなところに口が出せるから動きたくないだけだと俺は思ってます。だから、その人らが横から教育に口でも出してるんじゃないですか? 門外漢のくせに、図々しいったらないですね」


 孤舟が吐き捨てるように言った。

 まさか陰陽師本人が自らの所属する組織を悪し様に言うだなんて。驚いている間も、孤舟は、


「国家陰陽師の家というのは、大概が世襲ですから。古い家であればあるほど狭く、閉じている。筆頭っていうのは大体が古い家だし。只人にはどうせ説明しても分からん、と、たかを括ってる奴も多い、と……これは言っちゃいけなかったかな」


 ははは、と空笑いをした。

 実際に見て仰天した桃子は、確かにこんなこと説明されてもピンと来なかっただろうなあ、と神妙に聞いていたが、孤舟は至極残念とばかりに首を振って続ける。


「まったく、馬鹿馬鹿しいことこの上ないですよね。只人の中にだって、意欲があって才のある陰陽師は生まれる。もっと広く門戸を開いて取り立てれば良いものを。特権階級を手放したくないからかなんだか知らないが、狭い世界だ」

「才のある、って……只人の中にも、陰陽師の才がある方などおられるのですか?」

「ん? ……ああ、そうか。身近にそういう人がいないと、知らないかもな。もちろん、只人から国家陰陽師になる方はおられますよ。たまにいるんです。そういう方は本人か保護者からの申請があれば、基本的には国家陰陽師の家が受け入れ、弟子として育てる形になります。なにぶん遺伝の要素が強いのは事実なので、さほど多くはないし、どれほど才があって家から独り立ちしても、一代限りの国家陰陽師としてしか認められないから、子に身分や仕事を受け継がせられませんし、上の地位にもつけませんけどね。馬鹿馬鹿しい決まりだ」


 初耳だった。


「でもまあ、なるもんじゃありませんよ。こんなもの」


 再び吐き捨てるように続けるので驚く。


「孤舟様は、陰陽師になりたくなかったのですか?」


 黙り込まれ、また余計なことを聞いてしまった、と気づき、謝罪する前に


「……どうかな。考えたこともない」


 と孤舟が答えた。


 静かで、どこか途方もない響きのする声音だった。


 何か言いたいのに、何を言うべきか、そもそも何か言っていいのか分からなくて沈黙していると、「すみません、話が逸れましたね」と切り上げられる。


「俺は土の陰陽師なので、土を操ることができます。ただ、泥人形を作って意のままに操ることはできても、中身……意思を持たせることはできない。人格とか、性格とか、そういうものはね」

「はあ……でも、左近くんはわりと、自由な心があるように思えますが……」

「うん。あれは俺が作ったものじゃない。あれに入っているのは、……狐です」

「きつね」


 思わず繰り返すと、孤舟が薄く笑った気配がした。


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