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あなたとの約束を忘れた  作者: もちもちもも
二章 海の町セイーレ
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牢屋で三泊

「あんた、もう大丈夫なの?」


「ええ、一晩経って冷静になりました。大丈夫です。カルアさんはどうですか? 気分は良くなりました?」


 ふたりとも心地が良いとは言えない気分で、一夜を過ごしました。彼女はともかく、わたしの気分も悪くなったことをへんに思うかもしれません。不確定で形の見えない、不愉快な気持ちにさせる記憶が脳裏にこびりついているのです。本来は不可侵であるはずの魂に、大量の得体の知れない存在の手が触れているかのような感覚で、精神的に疲労しないわけがありません。


「一応は、ね。日記から旅の途中で、だいぶ衝撃的な光景を見せられると思ってた。まさか、短期間に二回も、とびっきりのものを見せられるとは思ってもいなかったわ」


「すみません。昨日は、すこしだけ気を病んでいました。アザを認識すると自分を傷つけなければならない、その考えに取り憑かれてしまったのです。今後は精神的に良くない姿を見せないように頑張ります。二回ですか。火のアレを思い出しましたか?」


「最悪なことにね。それ本当よね? ご先祖さまの日記に書いてあったけど、あんたは大嘘つきものだって」


 セカティアの日記には、どのようなことが書かれているのでしょうか。ここ数日間で、日記のイメージが日々を綴ったものではなく、わたしのダメな点などを事細かくつけたダメ出し本に、変わりつつあります。実際の日記の中身はどうなっているのでしょうか。


 村から一週間ほどで町へと到着しました。普通に歩けば数日で着く距離でしたが、われわれは出稼ぎではありません。われわれは旅を目的としています。

 釣りなどで寄り道をしていました。釣竿の本体にはふとい枝を整えた棒をつかい、釣り針には動物の骨を夜な夜な削ったもの、糸はこれまた夜な夜な植物の蔓を編んだもの。餌には、地面から掘り出したウネウネと動くミミズをしようしました。

 むかしも同様に骨や角をけずって、釣竿などを作っていました。なかなかの重労働でした。骨がなかなか削れず、休みを挟みながら形を整えたものです。なので、作業時間は恐ろしく長くなりますし、とにかく疲れるのです。この釣り針で魚を釣るには技術も必要で……この話は終わりにしましょう。

 カルアさんの体に砂をかけて、むかし教わった砂風呂のようなものを体験してもらいました。悪戯心がうずいてしまい、砂でガッチリと体を固定して、動けなくなり慌てている彼女の顔に、パラパラと少量の砂をかけて反応を楽しませてもらいました。とても怒られました。

 丘からの海の絶景に、彼女は言葉を失っていました。地平線の太陽、真っ赤な世界。見せた甲斐があります。

 途中で素潜りをしたいと言われましたが、町までの楽しみに取っておいてもらいました。弓は振り絞りを解放したときに一番の力を発揮します。それとおなじです。我慢が楽しさを高めてくれます。


 この町に入るためには、門楼を通らなければならないようです。入場者の話を盗み聞くと、漁業のほかに貿易でも栄えているらしく、ウグルが町に出没しないように細心の注意を払っているそうです。

 船にウグルが紛れ込んだ事案が過去にあったらしく、抵抗手段を持たない者どもが、不死の怪物に勝てるはずもありません。乗船していた数百名が食われ、別の大陸でも猛威を振るったそうです。

 ウグルか、ひとかの診断が待っているはずです。どのようなものが待っているのか、もしかしたら神官様と会えるのではないかと、ワクワクとした気持ちになってしまいます。ぜひとも不死殺しについてお聞きしたいところてす。


 予測どおり、診断がありました。内容は、人差し指に傷を入れ、牢で三日過ごすことです。人差し指に傷を入れるのは、怪我の治りの確認です。そう大したことではありません。

 重要なのは牢で三泊することです。その間はあまり美味しいとは感じないそうですが、食事も出ます。荷物は目に見える範囲で置かれます。盗難の心配は薄いでしょう。

 驚くべきことに協力的なら報酬が支給されます。その額は子供の小遣いていどではなく、五人ほどの家族が一週間も食うに困らないほどの金額です。破格の額です。泊まりに来たくなってしまいます。しかし、一度通れば書類に記録が残るため、検査は必要なくなるそうです。

 城壁の地下に作られた部屋であるため、薄暗く、あまり快適とはいえません。


「どこを見てもレンガの壁で狭いし、やることがなくて暇だしで、本当に息が詰まる。ねぇひとつ話を聞かせてよ。このままだと退屈で死んじゃうかも。でも、ひとつ条件というか話す内容に制限をかけさせて。そう、せっかくだし、いまにちなんだ話でお願い」


「わかりました。話上手なおばあちゃんが語ってくれた昔話をしてあげましょう。過激な点もありますが、大丈夫ですか?」


「ここ最近でなれたわよ。旅の途中で動物の解体とかをして。首のあたりとか。ほかにも燃やして毛皮を剥きやすくしたとき……やっぱり微妙にしかなれてない」


 彼女が弱音を吐きます。気にすることなくお話をしましょう。観客は二人しかいませんが張り切ります。

 観客のひとりは当然、カルアさん。もうひとりは見張りの兵士さんです。簡素な鎧をまとい、槍を持った兵士さんが牢に異常がないか、定期的に見回りをしているそうですが、この場所に囚われているのはわれわれだけで、見張るべき場所は一箇所も同然です。ゆえに、じっと壁に座りこんでいます。それでは語りましょう。

昨日はたくさん読んでいただきありがとうございました。今後も少しでも良いものを書ける様に頑張ります。

そしてストックが消えていく恐怖はなかなかのものです。刺激的で楽しいです。

うう、また今回も段落下げを忘れていました。不甲斐ないばかりで申し訳ありません。


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