8話 女子会は中止です
「ありゃ?女子会は良かったのかな?」
「団長がどれぐらい戦えるのか気になったので」
「ふーん。こんなのを見るより、女性陣とお喋りをしている方が楽しいと思うけど。それにおれが戦えるのかどうかなんて、いずれ来るであろう闘技場出場時で十分わかると思うけど」
うちの劇団に序列とかは無いんだけど、唯一マウントを取る事ができるのは、この闘技場出場時の順位だ。女性は観戦してるけど、男性側はなんか、全員出場が当たり前、ってな感じで全員出場する。
だから自然と、戦える奴戦えない奴ってのがわかってしまう。まあ基本はおれが一位のウィが二位、本来の優勝候補が三位、ってな感じになる。ほかの奴等も善戦はするけど、せいぜいベスト8だとかだ。
「それはそうと、スミレは戦えるの?必要ならばお守りいたしますが?」
「これでも勇者がどうのこうので、こっちの世界に呼ばれているの。問題ないですよ」
「ふーん。女性陣で戦える人は初かぁ」
まあ、嬉しいかと聞かれたら、どちらでもないと答えるけど。だってうちは劇団ですよ?戦闘が出来る必要性は一切ないのよ。傭兵を派遣している訳でも無いし、別に戦える必要はないのよ。
けどまあ、戦えれば、長所にはなるよね、舞台俳優としては。まあ彼女は演じない人だけど。
「女性陣って、人魚にエルフ、あとはまあ」
「ロインはれっきとした人間だぞ?そんな言葉を詰まらせる場面じゃあないだろ」
「あ、はい、そうですね。じゃなくて、エルフはどうか知らないですけど、人魚だなんて、戦わない種族じゃないんですか?」
「だからそもそも、うちは劇団なの。戦える必要性は一切ないの。だから君にも別に戦闘能力は一切求めていなかったの。ただ知識だとかを別けて欲しかっただけなの」
「別に妬ける場面では無いですけど、その私が必要と言うより、知識が必要と言われるのは、少々傷つきますが?」
「最初からそういって勧誘したろ?それに君が持ってる知識が必要って事は、君が必要ってのと同義じゃあないの?」
その辺り、よくわからん。こればっかりは、他人の心を読む事でもしない限り、絶対にわからん。
「お喋りはこの辺りにして、しっかりと警戒するんだね。この辺りは霧の影響か、強い魔獣はとことん強くなるから」
「あなたから話しかけて来たんじゃないですか」
「ほれ、集中しな」
結界があるから町の中には魔獣は一匹も入ってこないけど。結界があるせいで、周辺に魔獣は結構いるから。
◇
結界の点検は、問題なしと言う事で終わった。まあこの結界は、ウィ曰く壊れる事の無い物、と言われてはいるけど。だからまあ、結界の点検は、どっちかと言えば壊れてるかどうかじゃなくて、ちゃんとそこに設置されてるかどうかの確認。
「あの、まだ森に入ってるんですか?」
「そりゃ、今晩は祭り騒ぎになるからな。今晩の飯分ぐらいは魔獣を狩らないと」
村の男たちが、小さい魔獣なら倒せるようになった、って事もあったのか、結界の近くに魔獣はいなかった。
だから結界から少し離れた、森の深いところぐらいまで行く。
「丁度良い、大きい蜘蛛だとかいないかな。そのほうが持って帰るのが楽なんだが」
「それって、普通なら逃げる相手なんじゃ…」
「逃げる?なに勿体ない事言ってんだよ。あいつらは大きいから、食えるところがいっぱいあるんだぞ?」
「急に頭の悪い事をどうもありがとうございます」
いや、どう考えても大きい奴は狩り得だろ。そんな強くないし、食うところはめちゃんこあるし。
「あー。ぶちトラかぁ。小さいなぁ」
「これでもだいぶ大きい方ですけど!?」
サイズ感は、なんというか、人が四足歩行をしようとしたら、こんぐらいだよね、って感じのサイズ感。いや、それより若干大きいかな?
まあでも、これじゃあ小さいよな。おれたち劇団員だけで食いきれちゃうぐらい、だよなぁ。ぱーっとバカ騒ぎするには、全く持って足りない。
「うーん。ぶちトラかぁ。こりゃ最悪だな。無駄に強いし、そのくせ食える部分がちょっとだし」
皮だとか内臓だとか、色々と食べれない部分が多いせいで、食える部分が三分の二だとか、そんぐらいのはずだし。
「そもそもぶちトラってなんです?」
「見ての通りだよ。ぶち模様のトラさん。魔獣のトラ種の一種。なかでも凶暴性が高い、厄介な野郎」
「え、それってもう、ただ大きいぶち猫なんじゃ。凶暴なぶち猫なんじゃ」
「じゃ、狩るぞ。血しぶきに気を付けろ。っと、気が早いな、あの猫ちゃん」
「猫って言ってるじゃないですか」
やっぱり凶暴って言われるだけあるなぁ。まあ攻撃してるのはおれたちが居る場所とは全くの別方向なんだけど。
「え?どういう事ですか?」
「ん?おれの魔法見るの初めて?」
「まあそうですけど。そもそもどういう魔法なんです?」
「簡単に言えば、幻術魔法だ。いや幻覚魔法?まあそういう奴」
「とてもあやふやですね」
「いちいち魔法の名前なんて拘らないだろ。だから名前は知らん。効果は見ての通り、相手を幻術に嵌める事ができる」
説明は難しいんだけど。自分で自分の魔法にかかるなんて馬鹿な真似はした事ないから、どんな感じなのかもわからないし。
「まああいつが変な場所に攻撃したのが、おれの魔法の効果だ」
「とてもあやふやですね」
「まあ弱い魔法だよ」
「弱いは嘘ですね」
だって、殺傷能力のない魔法だぜ?弱いだろ。
「え、ちゃんと幻が見えているんですよね?」
「そりゃあそうだ。おれの魔法に抵抗する魔獣には、今のところであった事ないし」
「でも私には見えてません」
「当たり前だろ。誰がそんな、むやみやたらに幻を見せつけるんだよ。あんなの非効率だ。勿体ないおばけが出てくる」
そもそも、そんな事をするのは二流三流のする事だ。だって、味方にも幻が見えてるって事は、単純に言ったら、味方にも魔法を掛けてるって事だ。つまりは水の魔法だったら、敵に攻撃する魔法を、同じく味方にも撃ってるようなもんだ。非効率とか以前に、そんな事するなんて論外だ。
「まあ、私に見えない理由はわかりましたけど。じゃあなんで、ぶちトラはこっちに向かってきてるんですか!?」
「ダイジョブダイジョブ。わざとだから」
倒しやすくするために、あえて腹が見えるように攻撃させる。その方が攻撃しやすいじゃん。心臓を一刺しよ。
「うーん。次を狩らないとなぁ。こいつじゃあ小さいしなぁ。うーん」
「色々とツッコミどころが多いのだけど。どこからツッコめば良いのやら」
「ん?どったの」
「まずは、返り血は気にしないのですか?」
「ん?気にしてたら狩りなんてできないだろ」
「それはまあ、そうですけど。……じゃああの、どうして武器はその腰に携えた剣じゃなくて、木の枝を?」
「あ、こいつを使うと思ってたのか。そりゃないない。こいつはこんな奴に使って良い武器じゃないんでね」
「じゃあどうしてそれを持ってるんですか」
なんか呆れられたんだけど。え、どこで呆れる要素があったのよ。どこにもないじゃあない。
「じゃ、こいつを運んでくれ。なにも仕事が無いよりはいいだろ」
「確かにそうですけど、ええ」
これまた何故か、呆れられた。おれ呆れられるような事しましたかね。
「ま、ブチ猫相手だったらあと三匹ぐらい必要かな」
「もうこいつは猫で良いのね」
さ、狩りを続行しましょう。
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