6話 帰りましょう、馴染みましょう
しっかりと交渉、勧誘?も、成功したところで、我らが飛空艇に戻る。
「ところで、一緒に居た男性はどちらに?」
「ん~?おれが聞きたいぐらいだねぇ」
ウィは煙を出して姿を消してから、音沙汰無しだ。もう飛空艇に戻っている可能性が一番高い。だってあいつは、前もってスミレを見つけるまで手伝う、って言ってたし。だから見つけた瞬間、もう契約外って事で、飛空艇に戻っていてもおかしくはない。
まあ最悪、あいつなら飛空艇が出発したあとでも、飛空艇には戻ってこれる。実際、一回か二回か数十回か忘れたけど、ウィが飛空艇に乗り込んでいないにも関わらず出発したのに、それなのに煙を出して出現する、なんて事は多々あった。それこそ数十数回。
「それで、団長?名前はなんて言うんです?」
「ん?団長で良いよ。その方が呼びやすいでしょ」
「でも、流石に名前を知らないのは、失礼にあたると思うのですが」
「まあ、気にしたら負けだよ」
実際、うちの団員は、上下関係なんて一切気にしないし。団長でありウィを除けば最年長になるおれに敬語も無ければ、敬う姿勢も無いし、それどころか自分より下みたいな扱いを受ける時だってある。
今更そんなの気にしたら、もう面倒で面倒で。気にしてたら、ストレスで禿げる。それぐらいには上下関係だったりが無い。まあその方がこう、自然体で居ていられるし、悪いとは思わないけど。
「そうそう。君、コーヨーの事、どう思ってるの?」
「どうとは?」
「そのままの意味ですよ。恋バナの導入」
「べ、別に」
「いやぁ。あいつは格好良いよね。まあ見た目の話はおれの価値観だと他人とあまりに違いすぎて参考にならないし、内見はそもそも格好いいとは思わないけど」
「それは貶しているのでは?」
だっておれ、あいつに良い思いなんて無いもん。毎度毎度無賃乗車するし。いくら魔獣を狩ってきたとは言っても、結局料理してるのはうちの団員達で、実質ただ飯を食ってるだけだし。
しかもおれの方が年上だってのに、年上に対する接し方ってのがなってないし。別に、敬語なんてどうでも良いんだよ。話し方だけで敬う姿勢を出すのは、一番年上を馬鹿にしてるし。
でもさ?人のミスを見て大笑いするのは、どう考えても違うじゃあないか。別におれは殆どミスなんてしないけど、ちょっとつまずいたとかがあったら、すーぐ馬鹿にしてきやがって。おれはあいつの友人じゃあないっつうの。師匠だよ?もっと敬えってんだ。
「まあでも、ほら。おれ以外の人だと、こう、ちゃんと常識人らしいじゃあないか。だからどうかなーって。因みにサクラの答えはそれはとても面白くて、いつ聞いても楽しめる」
「人の恋愛事情を楽しむって、人としてどうなんです?」
「いやぁ?おれは彼女の手伝いをしている訳だし、それ相応の報酬を貰わないとねぇ?で、どうなの、真面目ま生徒会長さん?」
「それは今、関係ないでしょう!」
「うんうん、照れちゃって。良いねぇ、青春だねぇ。若いうちにできる事をやっておかないとねぇ。ほら、おじさんに話してみ。飛空艇に着くまでに、話してみ」
「初対面で話す内容じゃないでしょ、これ」
「おっとー?そう言うってことは、少なからずコーヨーさんに対して好意的だと?」
良いねぇ、青春だねぇ。おれもそういう感情があったのなら、やってみたかったねぇ。まあ青春時代なんて、いい思い出は一つもないんだけどねぇ。良いねぇ、青春。
「ほらほら、青春の思い出を、おじさんに話してみ?おれはこれでも、聞き上手と言われてるから、心配する事ないって。ほらほら」
「じゃ、じゃあ、学校の頃の話であれば」
うーん。これでしばらくの話のタネは出来上がった。おれは人と話すのは得意な方ではないからな。というか、こういう時に時間を潰せるほどの話のタネが無いんだよね。
だから他人に頼るしか無いんだよ、こういう時間を潰す為の話は。
その時間を潰す為の話を引き出す為に、わざわざ恋愛事情を先に出して、あとで話しやすいような内容を持ち出して、その話を話してもらう。これぞ、おれの巧みな話術。聞き上手と言うより、話させ上手。なに言ってんだ?
◇
おれたちの飛空艇は、とても広い。人が一人増えたところで、狭くなったと感じる事はない。と言うより、まだまだ広すぎると言う感想を抱かざるを得ない広さを誇っている。流石、特注品の飛空艇。この世に無い技術をふんだんに使った飛空艇。まあ魔法でポンッ、っと出て来た飛空艇でもあるんだけど。
「凄い、飛んでる」
「そっちの世界でも、空を飛ぶ乗り物はあったんだろ?」
「あるにはあったけど、体で風を感じながら、空を飛んでいると体で感じれる事なんて無かったから」
「ふーん。気球もあったんだろ?それには」
「一般人には、乗る機会なんてありません」
まあ、この飛空艇も、一般人には乗る機会なんて無いんだけど。まあそれを言えば、コーヨー達の世界の乗り物も、別に一般人がよく利用する乗り物では無かったらしい。旅行をよくする人は、よく利用するらしいけど、国外に出ないのであれば、また別の移動手段を使うらしい。まあ聞いたところで、理解できないから、暇つぶし程度でしか聞いてなかったけど。
「で、どうよ。自慢の飛空艇だけど」
「は、はい、そうですね。とても素晴らしいかと」
「そこまでかしこまる必要は無いんだけどなぁ。それに、ここはこれから君のうちになるんだよ?まあおれが案内するわけにはいかないから、女子組に聞いてくれ」
「確かに、案内を受けなければ、場所を把握できないような広さですけど」
「それとな。くれぐれも、傷つけるような事は言ってやるなよ?うちの女子の団員は、案外言葉の刃には弱いから」
「自分がされて嫌な事は、しませんよ」
「んー。この辺りは経験者の言葉だねぇ。ま、一応困ったらおれを頼ると良いよ。なんたって団長はおれだからね。権力だけはある」
「それは一切信用できない発言ですけど」
そうは言ってもねぇ。事実だし。権力だけはあるの。普段のおれの言う事は大して聞いてくれないってのに、団長権限を使えば、案外言う事を聞いてくれる。まあそんなに権力の乱用をしないからこそ、団長権限の効力が凄いのだろうけども。
「じゃ、楽しんでねぇ」
「ここって、そんなに見るところがあるんですか」
「いや、会話の方」
「あ、そっちですか」
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