4話 探しに行きます
歓楽街ってだけあって、臭いがなかなかに強烈だ。まあ強烈と言うか、ここにも媚薬が混ざってると言うか。もうホント、どれだけ町が水商売で儲けようとしてるんだって感じだ。まあそのおかげと言って良いのかあれだけど、歓楽街としては成功してる。
成功してるとは言え、この町に馴染めない、おれたちのような一般人には、この町は刺激が強すぎる。いや、この場合での刺激は意味合いが異なって聞こえるか。この町は、この町に慣れ親しんだ者じゃあないと、適応できない。
「団長。ただいま戻りやした」
「これまたテンション高めだな」
「聞いてくださいよ、団長。美人な姉ちゃんが一人もいないのに、やけにぼったくってる店を見つけたんですよ」
あー。だからか。だから手土産みたいな感じで片手に金が入った袋を持ってたのか。
「その話は後だ。それとバレてないだろうな?」
「その質問は野暮ですぜ、団長。俺たちがそんな馬鹿なミスをするとでも?」
「お前達だから信用が無いんだよ」
実際、手際の良さだけは認めざるを得ないんだけどさ。でもこいつら、天然と言うか、馬鹿なところはとことん馬鹿だから、どっかで絶対にドジってると思ってる。
「なーに。問題ないですよ。どーせ金勘定するのは、店を閉めてから。そんなのもう朝日が昇ってくるような時間だ。その頃までには、俺達はこの町を出発してるんです。バレやしないですよ」
「でもお前、そんな美人のいない店でぼったくろうとする店なら、客もそれだけ少ないんじゃないか?てか誰一人いないって事もありえただろ」
「「……」」
「はぁ。なんで後先考えずに盗みを働くんだよ」
やっぱりドジってた。けどまあ、言ってしまえば、この程度のドジなら、いつもやらかしてくれてるから、もう諦めもついてるけど。
そしてまあ、人気劇団って事もあって、怪しまれても、結局怪しまれて終わるから、今のところはなんとかなっている。まあいつ、こいつらが捕まるのか、秒読みだと思うけど。いい加減馬鹿さ加減が暴発してしまって、現行犯逮捕されそう。
「まあ、あの村の事を考えての行動だろうし、なんとも言えないけど」
「あ、当たり前ですよ」
「あ、あんな窮屈な村で生活してるんですから、せ、生活基準ぐらいは高めてやりたいじゃないっすか」
「ああ、趣味で盗んだとか言ったら、ブチのめしてたところだ」
「「……」」
こいつら、本当に欲望に忠実だな。
「ま、良いや。さっさとそれを金庫に仕舞って、劇の準備をしてこい。もうじき始めるぞ」
「りょーかい」
◇
劇は高評価を得た。劇は好評な高評価を得た、ふブッ。
「じゃあ、出発するぞ」
「あい、団長」
この町は空気がクソまずだから、さっさと出航したい。誰だよこんな場所に目的地を決めたの。おれはずっとこの町が嫌いだって言ってただろうが。え?団長とかいう奴が独断で決めたってか?マジでふざけんなよな、団長とかいう奴。
◇
「なあウィ。この辺りで間違いないんだな?」
「ああ、間違いないね。直近で訪れた町は、ここだよ」
うーんこの、平凡な町に訪れてたのか。いやまあ、別にこの町に訪れるのは何もおかしくはないと思うんだけど。
彼女の目的を考えるとねぇ。ここはあまりのも平凡すぎるんだよねぇ。まあこのぐらいの方が熟練の魔法使いとかは居るのかもしれないけど。
「じゃ、聞き込みと行きますかね」
「地道な活動が一番の近道って言われてるからね」
折角目的の彼女が近くにいる可能性があるんだし、労力を惜しまないよ。
「すみませーん。黒髪の、んーと、眼鏡を掛けた、一人で旅してる人を探してるんですけど。そういう人、先日この辺りに来ませんでしたかね」
「ん?ああ、確かに居たような気がするよ」
良かった、良さそうな人と会話出来て。時々、たまにではあるんだけど、話しかけるだけで怒鳴られる事とかあるからね。ちゃんと会話ができるって、最高だよ。
「確か、ここから東の方へ行ったんじゃないのかな。あまり好意的に会話をするような少女じゃなかったから、どこへ行くのかは聞いていないけど」
「たまにいますよね、そういう無愛想な人って」
「ああ、そうみたいだ」
まあおれたちは、その無愛想な人を探しているんだけどね。その人の知恵と言うか、知識と言うか、記憶を貸してもらいたいから。まあちゃんと交渉材料は持ち合わせてるから。多分手伝ってもらえるよ。超楽観的思考。
「そういえば、ひと昔前に勇者一行が召喚されたらしいじゃない」
「まあ有名な話ですね」
「それで一人、王様の命令を聞かなかった無礼者居たじゃない」
「ま、そうですね」
「その人も、黒髪で眼鏡を掛けて、って話だったような。あの子と特徴がそっくりなような」
「気のせいじゃないです?黒髪も眼鏡もなかなか珍しい属性ですけど、無い訳じゃあないでしょ?別人ですよ」
ま、別人じゃあないんだけど。余計なトラブルを招きたくないんで、適当にはぐらかすけど。じゃないと、世間の風潮的に、あの子が被害者になってしまうし。まあ既に被害は出てきてるんだけど。受け入れられない町だと、とことん受け入れられないから。
まあそういうのもあって、劇団に勧誘しようって思ったんだけど。
「それじゃあ、ありがとうございました」
「そういえば兄さん、どこかで見た事あるような」
「ははっ。別人じゃあないですか?」
ちょっと今日はここで演劇をする予定は無いから、お忍び俳優気分。まあ変装はしないけどね。ありのままの自分で居たいじゃん。
「ウィ、なにか話は聞いたか?」
「東の方、ってのは聞いたな」
「おれも一緒だな。じゃあ東の方を探せば見つかるかな」
「まあ、次の町に行く道を探せば見つかるだろうなあ」
ここから次の町って、歩いてだと三日とかは余裕で掛かるんだけど。探す範囲がとてつもなく広いじゃあないか。
いくら労力を惜しまないとは言え、これは面倒くさいぞ。とてつもなく捜索範囲が広いじゃあないか。いやだよ、面倒だよ、やりたくないよ。
「交渉はお前に任せるぞ。俺は探すところまで、って言う条件で手伝ってるんだし」
まあ、手伝う範囲は結構広かったけどね。交渉より、どう考えても探す方が大変なんだけどね。それでもまあ、ウィにとっては、探すのはちょっちょいのちょいだから、手伝ってもらえたんだけど。まあ彼の探すは、おれたちの探すとはちょっと違うんだけどね。
「ちなみにで言えば、今どのあたりに居るのかわからないの?」
「辺り一帯木が生えてる、って言ったら場所がわかるかい?」
「わかるはずないよね」
まあ、視界を共有する事ができたり、まあそういう事ができる、特殊能力を持ってる。本当に色々と出来るけど、場所を完璧に特定するのはできないらしい。まあそこまで出来たら、便利すぎるし、しょうがないとは思うけど。
まあでも、ただ視界を共有するだけじゃあなくて、その人がいる辺り一体を見る事ができる、らしい。まあおれが見えてる訳じゃあないから、どうとも言えないんだけど。
「ほれ、お前が先行けよ。俺は後ろから道を教えてやるよ」
「普通は道を知ってる人が先行するんじゃあないんですかねえ」
「俺は戦えないんでね。お前が先に行って貰わないと」
「嘘つけ、おれの次に戦えるくせに」
「それでも、お前の次の強さだからな。お前に頼るのもおかしくはないと思うけどな」
ちなみに、劇団員の中で一番戦えるのはおれだ。並の魔獣なら引けを取る事は無い、はずだけど。実際、魔獣はイレギュラーの塊みたいなものだから、自分の強さを過信はできない。
「じゃ、探しに行くぞ」
「はいよ」
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