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2話 まさかの誘拐事件

 この飛空艇は特別製だ。なにせ希少な飛空石が、500gほど使われてる。普通は5gとかでも、150000ゴールドで取引されるような、超希少な鉱石だ。150000ゴールドもあれば、人生穏やかに暮せば、もう安泰って感じの金額だ。


 飛空石がそもそもどんな物なのか。簡単に言えば、それと周囲にある物を浮かす事ができる石。小石程度の大きさの飛空石で、人一人浮かす事も、可能だったり可能じゃなかったり。まあ試す事ができるほど、飛空石が出回ってないんだけど。

 まあそれを大量に使って、艇を空に浮かしてるのが、この飛空艇。劇も大体は甲板でやったりするから、かなり大きいと、勝手に思ってる。そもそも比べられるような飛空艇が無ければ、そもそもそんな大がかりな船も存在してないから、比べれないけど。


 まあそんなおれたちの飛空艇は、空を余裕で駆ける事ができる。空を駆けるは、意味合い的にあってるのかはさておき。特に飛空艇が揺れる事も無く、船酔いとかも起こさない程度には揺れも無く、それでいてどのぐらいの速度が出てるのかは知らないけれども、とにかく物凄いスピードを出せる。

 まあそんなにスピードを出す事なんて無いけれど。空の旅を、ゆっくりと楽しんでいる。まあ舵を取るのは基本的におれだから、空旅を楽しむ余裕は少ないけれども。まあ慣れもあって、今では景色を楽しみながら舵を取る事ができるようにはなった。無駄に高度な技術を得た。まあ元々この飛空艇を操縦するのに、大したテクニックが必要ないってのは、大いに関係してくるが。


「団長。結局姫様の件は失敗ですかね?」

「ああ、そうだ。想定してなかった、姫様を見つけ出せないって事態になっちまったんだからなぁ。想定外のイレギュラーで、俺もディアも成す術が無かったんだよ」

「そ、そうですぜ。いくら俺でも、そんなイレギュラーには対応できねえ」

「お前はそうそうに飛空艇に戻ってたろ」


 まあ、想定通りだから、責めないけど。

 案の定、ディアは先に飛空艇に戻ってたらしい。道理で探し回ってる時にディアとすれ違ったりしない訳だよな。結局おれ一人であのだだっ広い王城を探し回ってた訳だ。これなら最初から一人用の作戦を考えておくべきだったな。まあ今更だし、更に言えば、その作戦も多分失敗だったんだろうけど。姫様を見つけられなかったんだし。


「でも、どうします?姫様がいなけりゃ、王族の宝物庫も開けれないんでしょ?」

「ま、浮遊島を見つけるのは簡単じゃないからな。それは良く知ってるはずだろ?」

「そうっすけど。もし先に浮遊島を見つけても大丈夫なように、姫様を攫っておくって話だったじゃないっすか」

「姫様を攫う機会なんて、いくらでもあるさ。それに人生、まだまだ長いんだ。楽しく行こうじゃないか」


 おれたちの目標は姫様を攫うのがゴールじゃなくて、その先の、昔の王様、初代勇者の秘宝が詰まってるって話の王族の宝物庫の中身を頂く事。で、理屈はよくわからないけど、それを開けるには王族の血筋の者が必要らしい。だから姫様を攫う必要があった。

 まあでも、こんないつ訪れるかもわからない先の話は、今は良いだろ。


「ちょっと厠に行きたいんで、誰かここ変わってくれ」

「りょーかい」


 トイレは、色々と便利な魔道具が仕込まれてるおかげで、そこに尿なりクソなりをすれば、すべて消えて、外に流すとかもしなくていい。しかも臭いとかも消してくれて、いつでも清潔感溢れるトイレでクソをする事ができる。

 だが残念すぎる事に、この飛空艇、トイレは一つしかない。朝のゴールデンタイムは、行列ができる事もよくある。

 勿論トイレは一つしかないから、男女で別けて使えたりもできない。いくら汚い物は魔道具によって消されるにしても、やっぱり野郎がクソした後に女性陣がトイレを使うのは躊躇いがある、らしい。おれにはよくわからないけど。

 そんな訳でトイレはもう一つか二つぐらいは増設したいんだけど。ここにあるすべての道具だったり設備が、現代の技術を大きく上回ってるせいで、追加する事ができない。



「あれ?ここにこんな荷物置いてたっけか?……、これは、確か」


 結構前に干し肉を買った時の箱、だったはず。まあ箱なんて区別できるほど、箱を熟知はしてないけど。まあ肉か魚か野菜かは、流石に食材ごとの違いみたいなのは覚えてる。伊達に飛空艇で旅してない。


「おーい。誰か王都で買い出しした奴いるか~!」

「あっ!」

「忘れてたっすよ!」

「あとで謝っとけよ!」

「団長も忘れてた以上、同罪っす!」

「ま、まだ食料も残ってるはずだし、ダイジョブだろ」


 まあ、その通りだけど。おれに団長をさせて、飛空艇の舵を任せて、更に劇団員約10名分の働きもして、更に仕事を増やすのが狂ってるだろ。買い出しはおれの担当じゃなくて、小道具班の担当だ。毎回おれが忠告してるからこそ、毎度忘れずに食事を頂けるけど。どうやらおれが忘れたら、本格的に食事が消えていきそうだ。


「ま、怪しい、怪しい~箱は、あとで確かめるとしてだ」


 使い道のない箱の置き場所は決めてる為、置き場以外に箱が置いてあるのは、とても、それはとてもおかしいのだ。まあ誰かが忘れてここに置いたって言う線も捨てきれないけど、誰も買い出しをしてない以上、誰かが忘れておいたってのも、まあ可能性は低いかな。


「っと、早く便所」


 漏れる、ってほど切羽詰まってないけど。漏れるってまで我慢して、誰かが先にトイレを使ってるなんて事になれば大惨事だから、ゆとりある状態でトイレは利用するよう、徹底している。おれは、だけど。







「ささ。出てきたらどうなんだ?」

「……バレてたのですか?」

「うをぉっと、ホントに出てきやがったよ」


 悲しい独り言をしてた気分で言ったのに。まさかまさか、本当に人が出て来た。まあ簡単に言えば、密航者。でもこの飛空艇、お客様を乗せるなんて事は、金を取ってもしてないんだけどな。だから密航者を取り締まるルールも、これと言って無い。

 そしてまあ、なにより。


「なんで姫様がここにいるんですかねぇ」

「ま、まさか、引き返すおつもりですか!?」

「普通なら、そうするだろうな。姫様を連れ去った、誘拐犯にはなりたくないからな」


 おれたちの目標であった、姫様が搭乗していた。これは、願っても無い、とても素晴らしい展開だ。まさか姫様の方から、この飛空艇に乗ってくれてるんだから。なんのために危険を冒したんだか。これもう訳わっかんねぇ。


「普通なら?どういう事ですか?」

「ま、おれたちはおれたちで目的があるからね。姫様が乗ってくれてるのは、願っても無い状況な訳だよ」


 さっきの通り、浮遊島の宝を頂くには、王族の血筋の者が必要だから。だから姫様を連れて行く必要がある。

 王族なら別に王様でもいいんじゃないか、って思うんだけど。うちの超優秀マルチクリエイター兼天才枠のお人が、王様じゃ血が薄すぎる、との事だった。血が薄いってなんだって感じしたんだけど、まあ言う通りにした。だって王様を連れて行って、宝物庫に入れないとかなったら、最悪だもん。


「うーっす。俺も乗せてってくれよ」

「なーんでコーヨーが乗ってるんですかね」

「だってフットラビットを届けたら、是非乗って行ってくれ、って」

「給仕班め。顔だけじゃなくて、食材にも負けたのか」


 こいつは、ユウキ コウヨウ。半年前ぐらいに魔王を封印した、異世界の者。いわゆる、転移してきた勇者サマだ。


「それにほら、勇者特権?ってやつ?」

「それだけでおれたちの飛空艇に勝手に乗るのは、ただの犯罪者だろうが」

「それに、お姫様が乗ってるってなると、私達が乗らない訳にはいかないでしょ?」

「サクラも今回はそっち側に回るのね」


 この黒髪美女、いや美少女かな?は、オウカ サクラ。コーヨーと同じく、異世界の民。魔王封印に同行した、いわゆる勇者のお仲間だ。


「じゃあなに?君達、姫様の護衛とでも言いたいの?お忍びでやってきた姫様の気持ち考えてあげて?バレないようにこうやって忍び込んできたのに、バレバレなんて、メッチャ恥ずかしいよ?」

「言葉にしないでください!」


 おっと。失言だったかな。まああえて言ったから、訂正する事はないけど。


「まあ俺達、行きたい場所があるから、そこまで送ってくれればいいよ」

「おっとぉ?お二人でデートですかな?これはお邪魔できないですなぁ、なあお姫様?」

「え、ええ、そうですね。お二人で楽しんでください」

「え、えへへ」

「ははっ。面白い冗談だな。けどデートじゃないんだ」

「……」


 うん。そんなハッキリと言わないであげて欲しいよね。サクラ、うっきうきだったじゃんか。可哀想じゃあないか、そんなにはっきりとデートじゃないって言いきったら。

 まあけど、デートだデートじゃないだ言っても、普段からこの二人で移動してるから、ほぼデートだ。二人旅とか、それこそ結婚した新郎新婦とかじゃないとやらないんじゃあないだろうか。


「まあなんでも良いんだよ。この船はおれたちのだぞ?おれたちの行きたい場所に行く船だぞ?」

「そこをなんとか」

「目的地から近い場所には降ろしてやる。けど次密航してみろ。空から突き落としてやる」

「あーい」


 とは言いつつも、結構な頻度でこいつらはこの船に乗っている。まあ、乗せてやるぐらいの間柄なのだ、この勇者御一行とは。


「姫様は、どういう扱いをすればいいんだろうかね」

「姫様姫様と、私の名前は姫様ではありません」

「じゃあなんていうの」


 言ってしまえば、おれはそこまで王族に詳しくない。だって王様とか興味ないもん。姫様は美人だって話で有名だけど、その辺りの感性が、おれは人とは随分と違うせいで、あまり興味ないし。

 一応姫様を見て思ったのは、まあ、美人なんじゃないの?って感想だった。これでも珍しいんだぞ?おれが他人に美人とかいう評価を使うのは。お世辞とかじゃない、美人って言葉を使うのは。


「プリーラです。知らない人が居るなんて思ってもみませんでした」

「ま、おれは他人に興味が無いからな。うちのメンバー以外だと、まともに名前を憶えてるのはあの二人ぐらいだし」

「えっと、知人とかは」

「いるよ?ある町の住人全員、かな?でもまあ、おれは憶えれていないな。だって他人じゃん」


 ってか、名前ってのは、あくまでも呼ぶ時に便利ってだけだろ?別に名前なんて憶えてなくても、会話は成立するじゃん。じゃあ別に、名前なんて憶えなくても良いだろ。


「ま、一応憶えておくよ、姫様」

「憶える気なんて無いですよね?」


 まあ、会話が成立するんだし、別に良いじゃあないか。


「それで。この飛空艇に、まあ内緒で乗り込んだ理由を聞いても良いかね?」

「あなた方の目的も聞いてよろしいのでしたら」

「おっふ。交渉するつもり?警戒心が高い事はご立派だけど、この場合は不合格ってな。確かに怪しい誘拐犯相手かもしれないけど、既にこの飛空艇は、王都とはかけ離れた空だぜ?どんな不審者がこの船に乗ってても、どうする事もできないだろう?」


 まあ、警戒したいのもわかるけどね。姫様が乗ってるのが都合が良いとかいう人が居るんだよ?怖いよね。わかるわかる。

 まあそれ言ったのおれなんだけど。


「それは」

「ま、奇怪な人物を演じる必要はないな。別に良いよ、教えても。姫様には協力してもらえた方が楽に話が進むってもんだし」

「へ?」

「ん?おかしな事言ったかな。これでも一通りの常識は身に着けたはずだぞ、おれ。うーん。今のセリフにおかしなところは無かった気がするけど」


 わからんぞ。おかしなところなんてないはず。ってか、話がスムーズに進んで、良い事しかないはずだけど。

 うーん。言葉の選択を間違えたかな?


「ま、とにかく、姫様のご要望通り、おれたちの目的を教えるって。だから姫様がこの飛空艇に乗り込んだ理由を教えてくれ。じゃないと助けになれないし」

「は、はい」


 おっ。素直なのは良い事だよね。ここでもう一回疑ったりされたら、ちょっと面倒だと思ってたところだよ。


「私は、母の姉を探しています」

「ほうほう」

「えっと、私の母な既に亡くなられていて、その頃辺りから、父がおかしくなられて。父は私の言葉には耳も傾けてくれず、どんどん父はおかしくなっていって。ですから、母から聞いた、母の姉を頼ろうと思いまして。ですから、母の姉を探したいんです。ですが衛兵たちは頭が固く、私が外に出て行こうと言うのに反対されて。ですからこのように、誰にもバレないように、この船へと忍びこんだんです」

「ま、探すなら最適の場所だろうな、ここは。なにせ世界各地を回ってるんだしな」


 既にこの広い大陸を一周、いや二週はしたかもしれない。とにかくこのとても広い国の、いろんな町に訪れた。

 王様が見てる中で演技するのが初めてだっただけで、別に王都で演劇をしに行くのは初めてじゃなかった。ま、王都の辺境の地と、王様が住んでるような高級住宅地とじゃあ、天と地との差があったけど。


「ここの話は、コウヨウ様やサクラ様から伺っていました。助けていたら協力してくれるような人達の集まりだと。そして都合が良い事に、王都で演劇をして、更にはお城と飛空艇への入り口を繋ぐと言う話がありました。ですからチャンスと思い、乗らさせてもらいました」

「あー。ここまで考えが一致しちゃうんだな」


 まあ目的は全く違うけど、考える事は結構近いんだな。


「じゃ、おれたちの目的の話だな。王族の宝物庫を開ける為には、王族の血筋の者が必要なんだ。だから姫様を攫う必要があった」

「えっと、それだけですか?」

「それだけって、宝物庫の中身を知らないからそんな事言えるんだ。魔道具は、市場に出回ってる物なんて比べるだけおこがましいと思うほどレアな物がゴロゴロと転がっていて、中には伝説級のアイテムすらあるって話だ。それを売れば、問屋が悲鳴を上げるような額になるっつう話だし。狙わない手はないだろ」

「悪い、盗賊の方なのですか?」

「悪いってのは語弊があるぞ。盗賊で良い奴なんて一人もいないんだ。ま、おれたちの場合は、目的はただ宝を盗み出すって訳でも無いんだけど」


 ちょっとばかし、厄介な装備品がある。それをその宝物庫にぶち込んで、誰にも盗まれないようにしたい。


「ま、そういう訳で、お互い、お互いの目的の為に協力しようじゃあないか、お姫様?」

「プリーラです」

「よろしくな、プリーラ」


 見事に利害関係が一致して、協力する事になった。にしても、こういう事って、相談なしに決めて良いのかな。いや、団長の決断だから、別に問題ないんだよ。団長に歯向かうなんて、団員のして良い事じゃあないんだよ。つまり何も問題ない。

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