13話 愚痴は聞きたくない
色々とあって、この町を出発する時になった。
結局、一週間たっぷりと、この町に滞在していた。まあ仕事の依頼を確認するのと返信するのとで結構時間が掛かり、一週間たっぷりと、おれは仕事の事をしていたけど。まあ普段とは違って、仕事以外の事をするってなっても、船の操縦って言う面倒な事が無くなったおかげで、休憩はしっかりと取れた。まあ半分以上は子供の相手をするのに費やされたんだけどね。
「次はいつくるんですか?」
「さあ、どうだろうかね。しばらくはあの姫様のお手伝いだったりおれたちの探しものだったりで、ここに戻ってこれない可能性があるしなぁ。まあ遅くても半年以内には帰ってきたいものだね。ここだと仕事に囚われず楽できるし」
今回はずっと言ってる通り、通りかかったから来ただけで、休暇って訳じゃあなかった。だから仕事の事を色々としてたけど、普段は違う。
そりゃあここに来たからって仕事の事を一切しない訳では無いけど、半分以上はしっかりと休暇として、のんびりと休んでいる。休暇、最高。
「ま、そういう訳だ。おれたちもなんだかんだで忙しいからねぇ」
「そうですか。寂しくなりますね」
「ま、会えなくなる訳じゃあないしな。そう心配すんな。じゃまた」
飛空艇の出発の準備は、既に整ってる。ってか、三日目ぐらいから既に出発はいつでもできるようになっていた。おれも仕事の事があったから人の事を言えないのだけど、うちの団員さんたちがあれやこれやと出発するのを躊躇ったせいで、ここまでこの町に滞在していた。
「じゃ、出航だ」
「おっす、団長」
「お元気で」
いやぁ。ここの出発は、皆が見送ってくれて、なんだか嬉しい気分になるね。
◇
再び空。
「腹減った~」
「お前ら五月蠅い」
現在、どこのだれかさんが買い出しを忘れたおかげで、絶賛ダイエット中。もとい罰としておれたちだけ飯抜きにされている。なんでおれまで飯抜きにされるのか理解できないのだが、まあ別に我慢できるんだから良いだろ、ってな感じで飯抜きにされている。おれは悪くないのに、だ。ま、実際耐えれるし良いけど。それより食料が無くなって、何も食べれなくなる方が大変だ。
「でも隊長、」
「誰が隊長だ。ここは軍隊じゃあねえんだ」
「団長、もう三日、晩飯にパン一切れしか食ってねえんだ。腹が減っておかしくなってもしょうがねえってもんですよ」
「お前らは恵まれすぎてるんだよ。もっと飯のありがたさを知れ。そして毎日飯を食えているだけありがたいと思え」
本当に大変な人達なんて、二、三日にパン一欠けら食えるかどうか、みたいな極貧困生活を過ごしてるんだ。毎日食べれてるだけありがたいだろ。
「ってか団長のパン、それ腐りかけなんじゃないっすか?」
「ん、そうか?ただ水分の無い、硬いパンってだけだろ」
「それって腐りかけなんじゃ」
「まあ食えるし問題ないさ。それよりお前ら、なんでここに居るの?舵を取るの手伝ってくれるの?違うよね。ただ愚痴りに来ただけだよね。あとおれを利用してもっと飯を食わさせろとか言う交渉しようとおれを説得しに来たんだよね。邪魔だからさっさと部屋に帰ってろ」
別に操縦するのに、そこまで集中する訳じゃあないんだけどさ。それでも人の愚痴を聞きながら操縦するのは嫌なんだよ。それに別に面白い話でもないし。
ここでずっと愚痴を垂れ流すぐらいなら、部屋に帰ってもらいたい。うるさくて鬱陶しい。
「団長はもっと飯を食いたいと思わないんっすか!」
「君達が買い出しを忘れたからでしょうが、今食えてないの。自業自得って奴だよ、これ。それにいうだろ、働かざるもの食うべからずって。君達買い出しすらしなかったんだから、食えなくて当然でしょうが」
「でもそれを言ったら、団長も働いてないでしょ」
「君達、今誰のおかげでスムーズに目的地に向かってると思ってるの?おれだよ?おれがこうして操縦してるから目的地に向かってるんだよ?少なくともお前らより働いてるわ」
なんでおれが、こんな空の上だと殆どなにもしない奴等と同じで、何もしてないと思われてるんだ?ちゃんと仕事してるのに、おれは悲しいよ。
「ほら、さっさと部屋へ帰れ。もうじき目的地に着くんだ。部屋でじっとしてるのが嫌なら、着陸した後の準備でもしてろ」
「へーい」
ようやく、愚痴の垂れ流しを聞かなくて済む。
「さ。残りもちょっとだし、もうちょっと高度を下げますかね」
こんな巨大なものが上空を駆けてるってなれば、変な噂が流れる可能性がある。だから雲のあるような高さで飛んでる。いやまあ、そこまで高くないか。けど空を見上げても小さいものが飛んでると思う程度には結構空高く飛んでるはず。
「あの。今はどちらに向かわてれいるのですか?」
「姫様のご要望通り、南の町に向かっております。やー、あそこは闘技場があるからねぇ、おれたちも結構好きな町なのよ。だからよく行くんだよね。とは言っても、年に二回行くかどうかだけど」
「それは、よく、なのですか?」
「そりゃまあ、活動開始してから大体10年。それで一回しか行った事無い地域もあるって考えりゃ、よく言ってるってなるだろ。普通は一年に一回、その町に行くかどうかってなもんだし」
「確かに他の町に比べれば頻繁に訪れているようですが、それでよく訪れている、と言うのもどうかと」
「じゃあ言い換えるよ。姫さんよりずっと多くあの町には訪れてるね」
「自分で言いたくありませんが、私は城からほとんど出ていなかったのですが」
「だからこそ、あえて言ったんだけど、わからなかった?」
さっきの通り、今は姫様の探し人を探す為に、とりあえず南の町で一番大きい場所へ向かっている。いくら名前すらないような集落で暮らしていると言っても、小さい村だとか集落だとかだと、食料だとか衣服だとかが買える訳じゃあないだろうし、大きい町にも来てるはずだから、とりあえず大きい町から聞き出しを開始する。
「ま、そんな話は何でも良いけど。おれたちはまー、あの町で劇をして闘技大会に出場するから、大体一週間、いや買い出しで大量の食糧の用意で時間が掛かる可能性もあるし、最高で二週間ちょっとかな?まあそんぐらい時間があるんだ。それだけありゃ、人探しはたっぷりと出来るだろ」
「ありがとうございます」
「なに、これぐらいはやるさ。ま、見つかっても暫くはこの船に乗っといてもらうけどね。少なくとも一年近くは。先に君の用事を終わらせるのも結構だけど、ちゃんとおれたちの用事にも付き合ってもらうからな」
「……盗人の手助けはしたくないのですが」
「なーに、大丈夫。ここに王族がいるんだ。つまり王族の宝物庫から物を持ち出しても、盗んだことにはならねえよ」
「私が持っていかない限り、それは盗んでいるのと一緒です」
「ま、細かい事は気にすんな」
まあ、その王族の宝物庫のありかがわかっていない以上、時間は掛かるし、最悪見つけらんない可能性もあるけど。唯一の手掛かりである、空にある、って情報だけど、今まで空の旅をしてきたけど見てないし。
いや、最初の方になんか影は見た事あるけど。ま、その時は宝物庫を狙ってた訳じゃあないし、それどころか子供たちを攫ったりとかもしてなかったから、一切眼中になかったんだけどさ。やっぱり探しものをしようとしている時ほど、探しものって見つからないよね。あるあるだよ。
「さっきもあいつらに言ったけど、もうじき到着予定だ。準備なりなんなりしておきな」
「わかりました」