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11話 お話する

「あーっと、そう身構えないで欲しい。おれが聞きたいのは、こう、自分の親の事だとか、探し人が何処にいるのだとか、そういうのを聞きたいだけさ。つまりまあ、時間を潰すだけの話題って考えてくれたらいいんだよ」

「そうでしたか。そういう事なら」


 おれが持ってる話のタネて、それはもう、とてもとてもオモシロイ物しかないから、話せないんだよね。だから相手から話を引き出さないといけない。相手の話題の引き出しから、良い感じの話題を引き出さないといけない。

 これって結構難しいのよ。だって相手もそれと言って話題が無い可能性だってあるし。あっても話そうとしてくれない時も全然あるし。まあここは、おれの類稀なる話術で引き出す。ま、おれにそんな人に自慢できるような話術は無いんだけども、この、引き出すのだけは得意と言っても問題ない、はずだ。


「母の姉が居ると言うのは、名前も無いような小さな集落に居る、と言うのです」

「随分とざっくりとした情報しかないな」

「仕方ないですよ。そもそもその姉が城を出てから、連絡をくれたのが数回しかなかったのですから」

「よくもまあ、そんなんで頼ろうと思ったね。おれならおとなしくお城で楽した生活を謳歌してるね」

「それが出来なくなったから、城を出て、こんな船に乗り込んだのですよ!」

「そこでキレられても困るよ。きみが勝手に乗り込んできたってのに」


 まあ実際、この船に乗ってる常識人なんて、おれ含め三人しかいないからな。あいや、つい最近入ってきたスミレとかいう人も、常識人枠に入るかな。じゃあ四人か。

 ま、何人かはどうでも良いとしてだ。10人近く乗ってる船の船員の大半が常識人じゃあないってなると、この船に乗り込んだのは間違いだった、と思っても仕方ないとは思う。うん。実際、野郎どもは礼儀とかその辺りは一切ないし。女子もなにか一つの事に夢中になれば、他人をドン引かせるレベルにのめり込むからな。

 慣れないと、それはもうびっくり仰天、腰抜かすレベルで変人の集まりだから。まあ慣れればいい奴等だってわかるんだけど。


「とにかく、じっとしていられない原因があったのですよ」

「ま、その辺りの事は聞いてもわからないし、一切聞くつもりは無いけど。その姉ってのはどんな人なんだ?まあわからないなら、君のお母さんってのは、どんな人だったのか聞かせてくれよ。一般とは違う親の話とか、聞いたこともないしな」


 まあ、ごく普通な一般家庭の事も、聞く事なんて無いんだけど。でも、姫様の家庭事情って、ちょっと気にならない?どういう風に育てられたのか、みたいな。物語みたいな、お世話係に育てられて、親が親をしてない、とかは、聞きたくはないんだけど。


「なんて事ありませんよ。私のママは、私に普通の生活を、と言う事で、ママの作った料理を食べて、いたずらをしたら叱られて、そんなママが大好きでした」

「一応、答えたくないのならそれは良いんだけど、王様の方はどうだった訳?」

「お父様は、立派な王だとは思います」

「ふーん。立派な行動じゃあないと判断したから、君はこんな大胆な行動に出た訳じゃあないの?」

「確かにそうですが、昔は立派な王だったと、思います。小さい頃のお父様は、私には何をしていたのかさっぱりですが」


 よくわからん。よくわからんし、これを聞いて行ったら、どんどん王宮のドロドロを聞かされそうで、心臓に良くない。おれはそんな、王宮だとかとは無縁の生活を謳歌したいんだわ。

 いやまあ、ただでさえ、姫様を匿って、なんかそれと言った重要な事を成そうとしてる姫様を連れて行こうとしている時点で、もう王宮とは無縁の生活を送るのは厳しいのかもしれないけど。まあその時はその時だ。この大陸から逃げ出すのもアリだしな。うん、なんとかなるさ。


「じゃ、話を変えよう。君、どこを探せば良いのかわかってるの?」

「一応は。南の端の、小さな集落だと聞いています」

「それでも範囲は半端なく広いけどねぇ。ま、それだけわかれば、一年もしないうちに見つけれるかもしれないな。おれたちが全面協力すればだけど」

「え、してくださらないのですか?」

「当たり前じゃん。おれたちがそっち方面で演劇をしている間に、自分で情報収集をしてね。それ以上はまあ、おれが個人的に手伝う、ってな形にはなるかなぁ。まあ自分の探し物は自分でしてね」

「そんなぁ」


 まあ、おれたちだって、この劇団を遊びでやってる訳じゃあないからね。ずっと手伝うなんて事はできっこないんだよ。

 まあ流石に、引き受けた側としては、手伝わないのもどうかと思うので、おれは一応手伝うつもりでは居るんだけどさ。それでも手伝える時間ってのがあるじゃん?仕事の合間に、ちょこっとしか多分できないし。


「ま、そこは良いじゃん。それで、名前とかは分かってないの?」

「確か、ナノ」

「水を持ってきた、あれ?話の最中でした?」

「ん、問題ないない。いやぁ、姫様をおれが独占しちゃってて悪かったねぇ。はい、お返しするよ」

「あの、私は誰のものでもないのですけど」

「うんうん、姫様は元気があって大変よろしいようで。じゃ、スミレ。早く寝るんだよ。もう夜も遅いし」

「子供じゃないんで、それぐらいわかってます」

「いやぁ、もう19、いや18ですかな。その歳だと、いい加減子供を授かる歳なんだけどねぇ」

「は、ちょ、え?本当ですか?」

「本当ですよ。まあ、私が言えた義理じゃないですけど」

「だから子ども扱いしてもおかしくない」

「いや、さっきの話と今の話のどこで、子ども扱いして良い要素がありました!?」


 まあ、おれからすれば、このぐらいの歳は、子供扱いをするのが普通みたいな歳をしてしまいましてねぇ。いやぁ、歳をとるのは早いものでぇ、ええ。最近は腰も痛くなって、困ってるんだぁ。まあ嘘ですが。


「ま、女子会もほどほどにしておきなさいよ。明日は明日で仕事あるから」

「わかりましたよ」

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