4話 親友の提案! ダブルデート!
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
「よう、聡示」
声の主は、中田だった。
「あ、浩平、どうした?」
「白川さんとの仲はどーよ?」
「うーん、挨拶は出来るようになったけど、それ以上の進展はないし、いつも人だかりが出来てて手詰まり感がある」
「確かにな、学校で仲良くなるのは限界あるかも知れんね、だから……ダブルデートを取り付けた」
「へ? ダ、ダフルデート!?」
「ああ、男は俺と聡示。女の子はもちろん白川さんと、その友達の松本さんだ」
「お、おう……」
香川は、突然の事にあわてふためいてしまった。
「なんだ? 嬉しくないのか?」
「い、いや緊張で……」
「そうか、聡示の気持ち分かるけどなかなかチャンスは無いと思うぞ」
「そ、そうだよな」
「だからさ、来いよ」
「お、おう……す、すまんな」
「はは、良いさ、俺もなるべくフォローするから、大船に乗ったつもりで行こうぜ」
「おう!」
ダブルデートは、5月4日に遊園地に遊びに行くことに決まった。
服に無頓着な香川は、中田に付き添ってもらい、ナチュラルでセンスの良い服を購入し、当日はそれを着て行く事にした。
ダブルデート当日、香川は、中田と待ち合わせて遊園地の入り口に向かった。
「も、もう来てるかな?」
香川は、とても落ち着かない様子で心臓が飛び出そうなくらい緊張していた。
香川にとって、人生初デートで、ダブルデートとは言え、好きな人と外で会うのは初めてだった。
「普段の聡示で大丈夫さ、変に気取らず構えずにな」
そんな香川をなだめるように、中田が言った。
「お、おう……」
(普段の俺、気取らず構えず……)
香川は、心の中で何度も言い聞かせた。
「お、いたぞ!」
中田が、声を上げると、白川と松本が入り口付近に立っていた。
「こんにちは」
白川と松本が微笑んで挨拶をした。
(うわぁ……美しい……)
(確かに綺麗だ。 聡示が惚れるのも分かる)
白川は、真っ白な丈の長いワンピースに薄いピンク色のカーディガンを羽織っていて、薄く化粧をしており、薄いピンクのルージュが、唇を更に魅力的に引き立ており、学校での姿よりも、一段と美しかった。
松本は、薄いグレーのパーカーに黒い短パンを履いていて、脚が長くて美しく、一際目立っていた。
松本も薄く化粧をしていて、白川とは違う、赤みの強いルージュが、より唇のセクシーさを際立たせていた。
黒髪だが、元々色素が薄めで、陽光が当たって少し茶色味がかったロングヘアーをしている。
松本も白川と並んでも見劣りしない、可愛いさがあった。
「香川くん、中田くん、中に入りましょう?」
「あ、ああ、うん」
4人は、遊園地の中に入った。
この日は、土曜日だったが、遊園地は、人は少な目で、どのアトラクションもすぐに乗れそうだった。
「じゃあ、何に乗りたい?」
「あれ!」
中田が聞くと、松本が嬉々として答えた。
松本が指を指したのは、高さ60メートルのジェットコースターだった。
(あれか……)
香川は、思わず絶句した。
彼は、高所恐怖症なのだ。
香川は、白川の方を見ると、白川は怯えた表情でジェットコースターを見ていた。
「白川さん、大丈夫?」
「え? え、ええ……正直怖いけど、百合香が乗りたいなら……」
「そうだね、高いところは苦手?」
白川は、黙って頷いた。
「実は俺もなんだ」
「えっ? そうなの?」
「うん、だけど頑張って一緒に乗ろうか」
「う、うん……」
ジェットコースターに乗ることに決まり、中田と松本、香川と白川で乗ることになった。
そして、彼らの番になった。
「うわぁ! 楽しみ!!」
松本は、嬉しそうに乗り込んだ。
中田は、平然として乗り込んだ。
「こ、怖い……」
白川は、明らかに怯えていて、その目は潤んでいた。
「だ、大丈夫さ、お、俺がついてる」
香川も、心の中は恐怖心でいっぱいだったが、無理に笑って見せた。
「ほんと?」
白川は、ジッと香川を見つめた。
「あ、ああ」
香川は、グッと恐怖心をこらえ、力強く答えた。
「う、うん……じゃあ……乗る……」
白川は、勇気を振り絞って乗ることを決意した。
香川も意を決し乗り込んだ。
いよいよ、ジェットコースターが動きはじめた。
「すごい! 高い!」
松本は、楽しそうに乗っている。
(さて……聡示たちはどうかな?)
中田は、チラッと後ろの香川たちの様子を見た。
「うぅ……やっぱり怖いよ……」
白川は、恐怖で震えている。
「お、俺も怖いけど、が、頑張ろう」
香川は、そっと手を差しのべたが、白川は気付かなかった。
「う、うん……がんばる……」
白川は、声も震えている。
(白川さん……気づいてくれないのね)
香川は、少しだけショックだった。
ジェットコースターは、頂上に着き、一気に加速して下った!
「キャーッ!!」
松本は、悲鳴を上げているが、表情はにこやかで楽しそうに乗っている。
「キャアーッ! や、やだっ! 止めてっ!! 怖いーっ!!」
白川は、松本とは対照的に、表情は強ばり、歯を食いしばって、潤んだ瞳はいっそう潤み、涙を流して乗っている。
中田は、冷静にいつもとかわりなく乗っている。
「うわーっ!!」
香川は、白川を思いやる余裕が無くなり、叫び声をあげ、ジェットコースターのバーを握りしめて乗っている。
ジェットコースターは、あっという間にゴールし、4人はジェットコースターから降りた。
「た~のしいっ!」
松本は、ルンルン気分で嬉しそうにしている。
中田は、いつも変わらず平然としている。
「こ、怖かった……」
白川は、恐怖で疲れたようだ。
「はぁ……白川さん大丈夫だった?」
香川も疲れていたが、白川に声をかけた。
「うん……なんとか……」
「俺もなんとか大丈夫……」
「でも……香川くん、足震えてるよ」
「えっ! あ、ははっ!」
「ふふっ……」
香川の笑いにつられて、白川もクスクスと笑顔を浮かべた。
「ありがとう」
「な、なにが?」
「乗る前に私を励ましてくれたでしょ?」
「あ、ああ……」
「とっても嬉しかったよ」
「そ、そう、良かった」
「うん」
白川は、香川に微笑んだ。
その後、アトラクションをいくつか回り、夕方に4人は遊園地を後にした。
「今日はすっごく楽しかったよ! ありがとう」
松本がニッコリ微笑んで言った。
「うん、私もとっても楽しかった」
白川も穏やかな笑みを浮かべ言った。
「こっちこそ楽しかったよ、な、聡示」
「うん、ほんとに楽しかったよ!」
いつも、少しオドオドしている香川も声に張りがある。
「それじゃ、またね」
「うん、また」
白川と松本が、微笑んで手を振って去っていく後ろ姿を、香川と中田はぼんやりと見送った。
「さて、俺達も帰るか」
「おう、浩平、今日はほんとにありがとな、お前にはほんといつも助けられてる」
「よせよ、俺達友達だろ? それに俺も楽しかったよ」
香川と中田は、帰り道を歩きながら話している。
「さて、次は2人で会う事だな」
「ああ……」
「ここからは、俺もお膳立ては出来なくなるだろうけど、応援してるよ」
「ありがとう! ほんとに心強いよ」
「ああ、良い報告が聞けると良いな」
香川と中田は別れ、香川は一人帰り道を歩いていた。
(次は2人で会う……か、会ってくれるかな? すごく怖いけど勇気を出して聞いてみよう)
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。