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62.“処分”

長らくお待たせしましたが、今回で「ナグスキ」の第一部は完結となります。


 ウェルズリー公爵ライドによるイリス暗殺は、リートの活躍によって未遂に終わった。

 ライド自身は死亡したが、王族への反逆という大罪を犯した以上、彼の死だけではその罰は償えない。


「王命である」


 近衛騎士団長から宣告を聞くのは、縄につながれているカイトだ。

 彼はウェルズリー家の跡継ぎとして、死んだ父に代わってそこに立っていた。


 リートはその様子を近衛騎士の一人として見守る。


「ライド・ウェルズリーが生前得たウェルズリー公爵の地位及び全ての財産をはく奪する。その領地は国王の直轄領に組み入れるものとする」


 カイトは将来引き継ぐはずであった貴族の地位を失うこととなったのだ。

 しかし、それだけでは話は済まなかった。


「ライドの後継者であるカイト・ウェルズリーは騎士団から追放処分とする」


 カイトは一夜にして地位も名誉も失ってしまったのだった。

 厳しい罰ではあったが、これが一昔前であればカイト自身も流罪や強制労働の刑になってもおかしくなかったこと。それを考えると、まだ寛大な処分だったかもしれない。


 ――もっとも、当の本人はそんなことを思えるはずもなかったが。


 騎士団本部で正式に追放処分を受けたカイトは、追い立てられるように部屋を退出させられる。

 だが、その直前。

 

「……リートぉ!!」


 カイトは踏ん張って立ち止まり、リートを睨みつける。

 騎士団から追放されることが決まって、もう失うものがなくなった彼は、怒りを爆発させる。


「ぜってぇ許さねぇからな!!! 覚えてろよ!!」


 そう吐き捨てたところで、脇にいた二人の衛兵によってそのまま外に連れ出される。

 その背中を黙って見送るリート。


 そして重たい扉がバタリと閉まった。 


 父ライドとの因縁はこれで断ち切れた。

 けれど、その息子であるカイトも処分されたことについて、リートは複雑な感情を抱いていた。


 リートがもし適性の儀で爵位を得ていたら、騎士団から追放されていたのはカイトではなく彼だったかもしれない。


 自分も父の犯した罪の責任を負わなければいけないのではないか――

 そんな思いが心の奥でつっかえていたのだ。


 ――と、その時だ。

 そんなリートにまっすぐな視線を送るものがいた。


「リート・ウェルズリー」


 騎士団長の後ろに控えていたイリスがハッキリとした口調で呼びかける。


 リートは王女イリスの方をまっすぐ見て姿勢を正す。


「今回、あなたはライド・ウェルズリーの凶行を食い止め、私を救ってくれました。その点については深く感謝します」


「いえ、とんでもございません」


「しかし、実家を追放されたとはいえ、あなたと血がつながった人間が王室への反逆を企てたのもまた事実です。その点について、あなたにも罪がないとはいえません」


 そう言われ、リートはやはりかと思った。

 不思議と怒りや焦りは感じない。

 むしろ心が軽くなったと思うくらいだ。


「殿下。この私も罰を受ける覚悟はできております」


「よろしい。では私から処分を言い渡します」


 そう言うと、イリスは近衛騎士団長に目くばせをする。

 騎士団長は脇から羊皮紙の巻物を取り出して、イリスに渡した。


「リート・ウェルズリー。あなたに――第六位の地位を授け、近衛騎士団 第二護衛中隊 第一護衛隊の小隊長に任じます」


 想定していたのとはまったく真逆の言葉に、一瞬リートは言葉を失う。


「まさか……殿下。いくらなんでもそれは受け入れられません」


 ウェルズリー家の一員として罰を受けこそすれ、まさか昇進するなどリートの良心が許さなかった。

 しかしイリスはわざとらしく眉をひそめて言う。


「あなたは、先ほど覚悟があると言いましたね。たった10秒でそれを忘れたのですか?」


「いえ、そういうわけでは……」


 リートが言葉に詰まっていると、イリスは有無は言わせないとばかりに、辞令の書かれた羊皮紙をリートに押し付けた。そしてさらに言葉を続ける。


「ああ、そうそう。あなたは前に父上から小隊長への提案を断っていましたよね。これはあくまでその時の分です」


 そう言うと、イリスはさらに近衛騎士団長に目くばせをする。

 するともう一枚羊皮紙が出てくる。


「リートウェルズリー。さらに、命じます。あなたに第五位の地位を授け、近衛騎士団第一護衛隊の隊長・・に任じます」


 その言葉を聞いて、それを聞いていた騎士の面々もにわかに騒ぎ出した。

 小隊長に昇進したと思ったら、その数分後に隊長に昇進。

 一日で二階級特進は前代未聞であった。


 リートも何が起きたのかわからず呆然とする。

 だがイリスは満足げな笑みを浮かべ、辞令の書かれた羊皮紙をリートに差し出した。


「これからも私のそばで騎士として仕えて、その覚悟を証明してください」


 その言葉を受けて、リートも流石に覚悟を決めた。膝をついて辞令を受け取る。


「……このリート・ウェルズリー、命を懸けてご命令に従います」


「楽しみにしていますよ、ウェルズリー隊長」




「ナグスキ」の第一部はこれにて完結となります。

ここまで長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。


しばらくは新作『異世界スキルハック』に注力しますので、こちらも楽しんでいただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コミカライズから拝見しました。 2部があるようなので楽しみにしております!
[一言] 第1部完結お疲れ様です! 漫画版も楽しませていただきます!
[気になる点] ラーグ……… ラーグは昇進しなかったのだろうか?(´;ω;`)
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