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#6 夢幻(ゆめまぼろし)か?それとも…

 目が覚めたら放課後だった。保健室の先生が言うには、急に倒れた俺は誠司に保健室に運ばれたらしく、寝ている間も酷くうなされていたみたいだ。



 保健室を出て教室に戻る。倒れた時に散乱したであろう荷物は綺麗に片付けられ、机の上に置いてあった。多分誠司か楓だろう。




 鞄を引っ掴んで教室を出て、下駄箱へと向かう。黄昏の空が目に眩しくて思わず目を細めた。


 その時昼のあの光景がフラッシュバックした。あれは果たして現実だろうか?

 有り得ないと思う。昼飯を食べた直後の授業、そして春の暖かい日の光がダイレクトで当たる窓際。俺は眠かった。白昼夢を見たっておかしくはない状況が揃っている。


だが心の何処かで夢じゃ無いと叫ぶ俺がいる。あの悪寒や威圧感すら夢だと言えるのか、と。


「矛盾だな…」



 考えど答えは見つかりそうにない。だらだらと歩きながら駅へと向かう。途中で不良がたむろしていたが、今日はそういう気分じゃ無い。無視して歩き続けた。









 駅への近道の裏路地を歩いていて、つけられている事に気付いた。



 立ち止まり、前を向いたまま陸は言った。


「コソコソ隠れてないで出てこい」


建物の影から出てきたのは昨日の下っぱ1と2だ。各々が金属バットや鉄パイプを持っている。


「…何の用だ?今日はそういう気分じゃねぇ。今なら無傷で返してあげても良いぜ?」


「う、うるせぇ!!昨日の借りは返して貰う!!」


路地の細い道からぞろぞろと不良達が。15〜20人位か?しかし不覚。この人数を察知出来なかったなんて。やはり道場を辞めてから危機感知能力が衰えているのだろうか?


「懲りないねぇ…」


そう言い放って陸は駆け出す。


下っぱはやや上擦った声で叫んだ。


「やっちまえ!!!」








 目が覚めた陸は、痛む体に顏をしかめた。13人を戦闘不能にした所までは覚えているのだが…。



(ドコだ…ここ)



辺りは薄暗く、割と近くから船の汽笛が聞こえ、若干潮の香りがする。おそらく海沿いの格納庫なのだろう。


 痛む体に思考が麻痺しているのか、陸はぼんやりと考えていた。


とりあえず外に出ようかと思って身体を動かそうかと思ったがうまく動かせない。ジャラジャラと金属のぶつかる音が無情にも響いた。


(鎖、か…。まぁ何とベタな…)


陸がぼ〜っとそんな事を考えていると、突如周りが一気に明るくなった。



 暗闇に目が慣れていた分余計眩しく、陸は目を瞑った。暫くして、バイクの排気とエンジン音に混じって聞き慣れた声が聞こえてきた。


「よぉ、五所瓦。いや、『朱の死神』さんよぉ」


卑下た笑いを浮かべながらその人物はゆっくり歩いて陸に近づいて来た。


「テメェかよ、福間」


何十ものバイクのライトに照らされていてうまく目が開けられない陸は、目を薄く開いて福間の顏を見た。


「流石の『朱の死神』も所詮人間。人海戦術には為す術無し、か。なんでもっと早く気付かなかったのかねぇ…。なぁ『朱の死神』よぉ」



「…はっ。そんなモン分かり切ってるだろ?オマエラの頭がポンコツだからじゃねぇ……ぐっ……」


喋り終える前にに鳩尾に蹴りが入る。


「誰もお前に意見求めちゃいねぇんだよ、タ〜コ」


むせる陸を見て満足そうな顏をした福間は下っぱを呼び寄せた。


「おい、アレ貸せ、アレ」

下っぱがバイクから持って来たのはスタンガンだった。


福間はスタンガンを受け取り、スイッチを入れた。バチバチと火花が爆ぜ、福間はニヤニヤと不快感を催す気持ちの悪い笑みを浮かべた。


「なぁ『朱の死神』よ。今までの非礼を詫びて、俺の靴を舐めたら許してやってもイイんだぜ?場合によっちゃ、俺のチームに入れてやってもいい」


「お前ウゼェ。てか口くっせぇんだけど。近寄んないでくれない?」


陸は虚勢を張って福間をせせら笑った。


 ブチッと、何かが切れる音を聞いた気がした。


「っ……!!!ぐっ…がああぁああぁぁぁ!!!!!!」


福間は陸の胸の真ん中にスタンガンを押し当てた。


陸は激痛に身悶えし、軽く意識がトンだ。




ビクビクと痙攣する陸を見て多少気が晴れたのか、福間はスタンガンを陸から放した。


「ぎゃはっ、スタンガン結構面白いなぁ…。『朱の死神』よぉ、お前の世話になった奴が俺の仲間にも結構いんだがよぉ…どう落とし前着けてくれんのかなぁ!!!」


 心臓にスタンガンを押し付けられ、会話や呼吸、ましてや意識さえハッキリしていない陸の脇腹を蹴り上げる。


「ねぇ福間さん…このままやったんじゃコイツ死ぬんじゃないスか?」



「…あ゛?何言ってんのお前。殺すんだよ!!!コイツにどれだけの恨みがあるか…知らねぇ訳じゃねぇよな…?」


「え…えぇ、そうッスよね!!!バレなきゃいい訳ですし…」


 福間は口の端を吊り上げてニヤリと笑って陸に背を向けた。


「おい!!コイツに恨みが有る奴はその辺の鉄パイプ拾って前に出ろ」


 バイクに跨っていた不良数人が、そこら中に転がっている錆びた鉄パイプを拾って前に出た。その中には腕や足にギブスをしている奴や、松葉杖をついている奴もいた。


そして福間も鉄パイプを拾い、崩れ落ちていた陸の目の前でしゃがんだ。


「無様だなぁ、『朱の死神』さんよぉ…。まぁ俺も鬼じゃねぇ…。時世の句くらいは言わせてやるぜ?ぎゃははははは!!!!!!」


意識が朦朧としている陸には反応するのが精一杯で、声が出せない。



「ん?なんも言わねぇの?あぁそうか。それじゃ、自分の不運でも呪っとくんだな!!!!」




福間は鉄パイプを振り上げた。

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