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#4 日常の終焉(中編)

(ん…朝か。いつの間にか寝ちまってたか)




 神社での不思議な出来事の後、陸はマンションに帰ってから夕飯を食べて風呂に入り、ベッドで勉強している内に寝てしまっていた。


(さて、今は…6時半か…。そろそろ始めねぇと)



 一人暮らしの朝は忙しい。まず朝飯を作り即完食。皿を洗ったら制服に着替え寝巻きは洗濯機へ。陸は毎日洗濯する派である。洗濯が終わるまでに歯磨きトイレ等身だしなみを整える。洗濯が終わり次第干してしまう。今日はいつもよりも30分程遅く起きたから、弁当は作れない。


(ん〜…。昼飯は学食で済ますか)




「さて、ぼちぼち行くかね」




 マンションを出て駐輪場へ、自転車にまたがり駅へと向かう。


自転車を有料駐輪場に停め、駅に入った。


 陸は電車に乗りながら昨日の夜の不思議な感覚について考えていた。



 (なんだったんだ、一体。最近ケンカよくするしな…。疲れてんのか?)



 3駅目で降りて、改札を抜けると誠司がいた。


「よぅ、陸」


「よぉ。今日も朝稽古したのか?よく体力持つな」


 首にタオルを巻いた誠司は頷いた。



「慣れだよ慣れ。やらないと逆に疲れてしまうんだ」


「ふ〜ん…そんなモンか」


「おい、去年までは陸も朝稽古やってたじゃないか」


 誠司は苦笑して言った。


「一年も経っちまうとそういう感覚忘れちまうんだな」

「なら今一度ウチの道場の門を…」


「それはパス」


 陸は誠司の話を途中で遮った。いつもの事だから誠司も気にしてないみたいだ。


 緩やかな坂を登り、学校に着いた。下駄箱からはグラウンドが見え、ラクロス部や野球部が朝練してるのが見えた。


「陸、あの中に駒沢さんはいるのか?」



「ん。誠司見えないのか?メガネはどうした?」



「あれ?俺今年からコンタクトに変えたって言わなかったっけ?今日朝稽古が長引いたから、着けるの忘れて来たんだよね…」


「そか。え〜…。お、いたいた。アイツも朝から元気だな」


「そうか…駒沢さんの有志が見れなくて残念だ」


「毎日見てんのに何言ってんだ」


「いやさ、駒沢さんの頑張ってる姿見てると『俺も負けられないな』って思うんだよ」


「ふ〜ん…。そんなモンか」


下駄箱で靴を履き替えて教室へ。


「おはよ〜!!!!」


誠司は他の友達やクラスの女子達に挨拶を交していく。


俺は全員をシカトして自分の席へ。



「陸よ〜。挨拶くらいしてもバチは当たらんぞ?」



「俺には当たらんが、周囲の奴には当たるかもな」


俺は誠司に皮肉を言う。


「そんなんじゃいつまで経っても彼女出来ないよ?陸」


不意に背後から声が聞こえた。


 振り返ると楓がいた。



「おぉ、おはよう。駒沢さん」


「…よぉ、楓」


誠司はにこやかに、陸は睨みながら言った。


「楓、良く考えて見ろ。『俺』が挨拶なんかしてみろ。教室の空気が3℃は下がるぜ?」


「う〜ん…確かにそうかも。でも彼女欲しいんでしょ?なら頑張らなきゃ、ね?」


 俺が超好戦的で、『(あか)の死神』と呼ばれてるのもこの辺で知らない奴はほとんどいない位有名だ。

何故『朱の死神』なんて大層な呼ばれ方をするようになったか。それは俺がケンカをすると必ず流血沙汰になるからだ。



そんな俺が挨拶なんかしたら、気弱な奴や女子ならまず逃げ出すだろう。


 既にそういった図は想像出来る。(と言うより、実際そうだった)


 なら何故誠司と楓は別なのか?


誠司は幼稚園の頃からの親友だからで、楓は幼なじみだからだ。ん?聞いて無いって?そりゃそうだ。面倒だから説明しなかったしな。文句なら作者に言ってくれ。


「あっ、そうそう陸。お母さんが夕食一緒に食べないかって言ってたよ?どうする?」


「マジ!?昨日タイムサービス間に合わなくて結構ピンチなんだよな。是非ご一緒させて下さいって伝えといて」


「ん、わかった」



 陸の住むマンションの管理人はなんと楓のお袋さんだ。故に陸の両親が海外に行ってしまってからはちょくちょく夕飯に呼ばれたりもする。




 陸はふと思った事を言ってみた。



「なぁ楓。オマエ俺と話してたらまずくないか?」


「なんで?」


「お前も世間体とかあるだろ?女子とかは特にそういうの細かそうだし」



「大丈夫だよ。私はそういうの気にして無いから!それに私と陸が幼なじみだって知ってる人も結構いるから、下手に私に何かしたら…って思われてるみたい。それに私が孤立したとしても、陸と誠司君がいるもん」


「お、駒沢。良いこといってくれるねぇ」



 …天然共め。楓は誠司とも仲が良いから女子からはそれなりに疎まれてるだろうし、俺とも仲良いから在らぬ誤解も受けやすい環境が整ってる事に気付きもしやがらない。


誠司は誠司で自分がモテてるって自覚が大して無いからな。


どうやら気をもんでるのは陸だけらしい。


「はぁ…疲れる」


陸は一人ぼやいたのだった。

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