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#2 主人公は危険人物!?

 放課後、陸と誠司は帰路に着いていた。楓はラクロス部に所属しているので一緒ではない。


「なぁ陸。いつになったら道場に戻って来るんだ?」


「またその話か?俺はモテモテステキライフを送りたいからパス。それに辞めて1年経つしな…何か今更感がな」



 誠司の親父さんは剣術道場を開いている。俺も高校に入るまでは通ってた。日々上達してる実感があったから充実してたし、楽しかったと言えば嘘じゃないんだが…。


「まだあの事引きずってるのか?いい加減忘れてしまえよ」


誠司は苦笑して言った。


「うるせぇよ。大体誠司や親父さんが防具ちゃんと洗ってないからじゃねぇか」




 俺は道場に関して苦い思い出があるのだ。中3の時だ。今でもはっきり覚えてる…。



「汗臭い人は嫌い…か。そんなに気にする事か?」


「普通気にするだろ…。忘れてかけてた心の傷が…」


 そう、俺は中3の時、誠司の親父さんの道場(の洗ってない防具)のせいでフラレているのだ。確かに道場に通い始めた頃は俺も似たような事を思った。しかし慣れとは恐ろしいもので、何時しか俺はその異臭に慣れてしまっていた。故に起こった致命的ミス。その頃は割りとモテていたから、更にショックだった。



「つ〜か、今でも汗臭い誠司がモテてる現実が有り得ない」



「何!?臭いのか??気をつけてる筈なんだが…」


自分の体をクンクンと嗅いで、若干落ち込む誠司。汗臭いなんて嘘だ。案外気にしてるのか、微かに制汗剤の香りがする。


「はぁ…何でこんなんがモテるのか…世界は間違ってる」


 認めたくは無いが、誠司はかなりモテるのだ。容姿端麗、しかも誠司の親父さんがスパルタなお陰か頭も良い。どこか抜けてる性格も母性本能をくすぐるらしく好評みたいだ。


「…。陸はアレがあるからなぁ…」



苦笑する誠司。


 俺ははっきり言ってモテない部類だ。しかし自分で言うのもなんだが、俺自身顏は悪くない。頭は学年トップ10にギリギリ届かない位だし、運動も道場に通っていたお陰か、かなりのものだ。




 だが、俺には致命的な悪癖がある。本来これを『癖』と呼ぶべきかは不明だが、もう癖みたいなものになってしまっている。



 駅に続く分かれ道で、誠司と別れた。誠司の家は高校の割りと近くにある。



 一人で駅前を歩いていると、スーツ姿の小太りのおじさんがあからさまに不良に見える三人に絡まれていた。


「オイ何ぶつかって来てんだオッサン!!」


「い、いやすまないね君たち」


「すまないで許されるとでも思ってんのかデブ!!おぃ、このオッサン裏に連れてこうぜ」



「そうだな、ボコった後に裸にして写メ撮ってさ、色んなサイトに貼り付けまくらね?」


「ぎゃはは!!いいなソレ。オラ、早く歩けやデブ!」


 無理矢理歩かされるおじさん。通行人は見てみぬ振りをしている。はぁ、せめて警察呼ぶとかしろよ…。


 ゆっくりとソイツらの後を着けて歩く。


駅の近く、人通りのほぼ皆無な裏路地。なんてベタなんだ。


「や、やめたまえ君たち!!」


脂汗をかいたおじさんは毅然と言った。



「…オッサン、自分の立場分かってるぅ〜? 」


へらへらと笑いながら路地の角へとおじさんを追いやる不良達。おじさんの顏がみるみる青くなっていく。


「今なら許してあげてもいぃよ〜?オッサンの有り金全部とキャッシュカード置いてってくれればさぁ?あ、ケータイもね」



「なっ…そんな事出来る訳無いだろう!!」




「ふ〜ん…。んじゃバイバイ」




 不良達がおじさんに殴りかかるその瞬間、陸は駆け出した。










 足音に気が付いた不良その1が振り返る。その鼻っ柱に右拳を叩き込む。


 鼻血を噴いて悶絶している隙に脇腹に回し蹴りを放つ。4〜5m吹っ飛んで呻き声をあげている。



「んだテメェ!!」


 そうどなりながら殴り掛かる不良その2。その拳をしゃがんでかわし、顎に鋭いアッパーを繰り出す。不良その2の身体が10cm程浮いて無防備になる。ニヤリと笑って、陸はがら空きの鳩尾に肘をハンマーの様に振り降ろす。



 不良その2は

「ぐぇ」

と間抜けな声を出して気絶した。






 瞬く間に仲間をやられて暫し呆然としていた不良その3。



ハッと我に帰り、懐からナイフを取り出した。



「お前だだ誰だよ!!邪魔しやがって…ぶっ殺すぞ!!」


 声は震え、ナイフを持つ手も小刻みに震えている不良その3。




「ふ〜ん…殺す?…そのオモチャでか?」



 陸の顏に自然と笑みが浮かぶ。馬鹿馬鹿しいからでは無く、純粋に相手を叩き潰す行為を楽しんでいるかの様に見えた。


「おおオモチャじゃねぇ!!うぉおおぉぉ!!!!」



 ナイフを闇雲に振り回す不良その3。陸は1年前までは剣道をしていたのだ。腕の振り方、目線、筋肉の動き等で軌道を読む事など容易い。


「クソっ!!!なんで当たらねぇ!?」



 刹那、陸は振り上げた腕を掴んで引き寄せ、反動を利用して鳩尾に膝を突き立てた。


「ぐっ、ふ…」


苦痛に悶える不良その3に容赦無く拳を振るう。



「クッ…はは…アハハハハハ!!!!!」







 それから一方的な暴力が暫く続いた。







「…またやっちまった。馬鹿だな、俺」


 冷静さを取り戻した陸は辺りを見回して呟いた。


助けたはずのおじさんはいつの間にか何処かへ行ってしまっている。警察を呼ばれなかっただけ幸いか。



「…ん?」


そういえば不良が一人足りない。最初に殴った不良その1だ。意識を刈り取ったと思っていたのだが…。まぁいいか。




 そう、これこそが陸の『悪癖』。揉め事を暴力を持って解決する。しかも独善的で一方的だからタチが悪い。


何故そんな行動に走るのかは陸自身理解している。この『悪癖』は道場を辞めてから始まった。単に体力を持て余しているだけなのだ。



 だが既に日常的になってしまった『悪癖』。止めようとしても今更やめられる筈も無い。



 そんな事を考えながら表通りへ歩いていると、先程の不良その1が立ちはだかった。その後ろには更に3人不良が控えている。



「あ、あいつですよ福間さん!!いきなり殴り掛ってきて…」


下っぱかよ…不良その1、2、3よ。そして親玉登場か?つーか福間ってどっかで聞いた気が…?


 陸はぼんやりとそんな事を考えながら下っぱ共の親玉を見据えた。



「よぉ、誰かは知らねえがうちの新入りを虐めてくれたらしいじゃねえか…。どうなるかわかっ……!!!!!」




 不良その1改め下っぱその1を押し退けて出てきた親玉は、俺の顏を見て言葉を失った様だ。





「よぉ、福間?だっけ。どっかで聞いた名前だと思ってたけどアンタかよ」


福間と呼ばれる親玉はダラダラと冷や汗を流し、みるみる内に顏が真っ青になっていく。




「後何本前歯叩き折られたら気が済むんだ?ん?」


「エヘヘ…すいませんね、うちの新入りがとんだご迷惑をお掛けしたみたいで…」


ニコニコと笑いながら話す陸に、冷や汗をかく福間は愛想笑いを浮かべた。



「とりあえず疲れてるから、通してくれないか?勿論通す通さないはアンタの自由だ」


表情を崩さない陸。


「へぃ、もちろんお通し致しますよ。道路は公共物ですしね」



引き吊った笑みを浮かべ、妙に丁寧な言葉遣いで道を開ける福間。


陸は首をゴキゴキと鳴らしながら、去ってしまった。




「福間さん、何で通したんですか!!!福間さん達なら…」


 緊張の糸がほぐれたのか、大きな溜め息をついて壁に持たれ掛った福間に下っぱその1は抗議した。



「お前らはまだ入ったばっかだから知らないだろうが…アイツだけには関わるな。アイツが近くにいる時は大人しくしてろ。じゃないと命がいくつあっても足りない位だ」



「…アイツ何者なんですか?」







「アイツは五所瓦陸。巷じゃ『(あか)の死神』って呼ばれてるかなりヤバい奴だ。アイツはケンカになると見境が無くなるらしい…。そいつより酷い目にあった奴を何人も見てきた」



 陸に一方的にやられ続け、見るも無惨な姿となった下っぱその3を指差して福間は身震いした。



それを聞いた下っぱその1は言葉を失ったのだった。

自分の頭の中にあるものを文章にするってメチャ大変。小説家の皆様の凄さに改めて気付かされました。

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