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#13 招待・その1

誤字脱字がありましたらご指摘お願いします。    感想も随時お待ちしてますので良かったら…。

 陸が非日常を垣間見てから4日が経った。以外な事に、あの事件について新聞やニュースで報道される事は無かった。やはりアイツらが隠蔽したのだろうか。



 陸は携帯を開き着信がないか確認し、溜め息をついて閉じた。


「どうした陸。ここ何日か携帯開いては溜め息ついてばかりだが」


誠司は陸の後ろから陸の携帯を覗き込んで言った。


「ん?あぁ、まァな。大した事じゃないンだ。気にするな」

「そうなのか?何だか辛そうに見えるんだが…」



(そりゃそうだ。今の俺は蛇の生殺し状態。まさかとは思うが…)



「なになに?誠司君、陸どうしたの?」



「それがさ…………」



ひそひそと声を抑えて話し合う誠司と楓。楓の顏が段々ニヤニヤし始めたのが妙に気に食わない。




「ンだよ楓。ニヤニヤしやがって気持ちワリィな」




楓は新しいオモチャを手にしたような顏をしている。


「陸さ……………彼女出来た?」




「………………………………………………………………はぁ?」


「だって携帯の着信来てないか見て溜め息とか!!!乙女だねぇ〜陸(笑)」



「なっ……ばっ…そんなンじゃねェよ!!!」



「スミに置けないな〜陸も♪」



 陸の肩を小突いて茶化す楓。だが一瞬、彼女の顏に影が射した気がするのは何故だろうか。



「だから違うってンだ…」

無機質な着信音が響く。




唐突に陸の携帯が着信を告げた。


 急いで陸は携帯を開いた。どうやらメールみたいだ。タイトルは無し、捨てアドレスだから誰が送って来たのかも分からない。


が、陸は迷わずメールを開いた。



そこには簡素な一文が。


「ん?どれどれ…“校門前に来い。今すぐに”…?なあ陸…」



誠司が言い終わる前に、陸は鞄を引っ掴んで教室から出ようとしていた。



「…陸?」



「悪い誠司。俺帰るわ。適当に誤魔化しといてくれ」


それだけ言って駆け出す陸に、誠司と楓はポカンとしていた。


そして窓の外、校門を見る。




よほど急いでいるのだろうか、数十秒で陸が校舎から駆け出すのが見えた。




そして校門に到着。教室からでも肩で息をしているのが分かる。



そんな陸の隣に立っているのは…










長い黒髪をポニーテールにしている、陸より少し身長の低い、女性だった。



「嘘…」


「マジか…」




誠司と楓はその光景を見て固まってしまった。










========================







(来た。来た!!!おっせぇンだよ!!!)



階段を駆け降りながら、自然と顏が綻ぶ。


当日は、恐怖と興奮で一睡も出来なかった。だが今は恐怖は無く、喜びが感情の大半を占めていた。




下駄箱で靴を履く。ちゃんと履くのももどかしく、踵を踏んだままで駆け出す。




 息を切らしながら校門へと向かう。







その途中、もし迎えがマリンなるムキムキ男だったらどうしようかと、陸は別の意味で不安になった。




 校門前に出た。陸は立ち止まり、膝に手を当て中腰になり頭を垂れ、肩で息をする。



「ぜっ……はっ…はっ…」




校門に寄り掛っていたのだろうか、陸の肩を誰かが叩いた。




顏を上げると、そこには陸の通う高校指定の制服に身を包んだ圓谷がいた。












「…は?何でコスプレしてんの?てか何処でウチの制服手に入れたワケ?」



圓谷のこめかみにの青筋が浮く。




「…私もこの高校の生徒ですが…何か問題がありますか?」







「………校舎内で見たこと無いんだが」




「…はぁ。キミの注意力が足らないのもあるのでしょうけど…。私は3年だから校舎が違います。それ故に認識出来なかったのでしょう」


 陸の通う高校は1、2年が同じ校舎で、3年のみ少し離れた場所に校舎がある。受験生である3年生への学校側の配慮らしい。



「アンタ3年だったのか…。ん?そういや3年に美人だけど体型が残念な先輩がいるってウワサがあったな…」


陸は圓谷をジッと眺める。


 確かに圓谷は綺麗と言えよう。ポニーテールにされたツヤのある黒髪、整った眉。少し吊り上がった目、筋の通った鼻に薄紅色の唇。無駄な肉の着いていないスレンダーな身体。




無論、スレンダーでなくて良い部分もスッキリしている。




「…アンタの事だったのか」



陸は唇の端を僅かに吊り上げてニヤリとした。





うつ向いて拳を固く握り締め、プルプルと小刻みに震える圓谷。






 羞恥に顏を真っ赤に染めた圓谷は顏を上げ、陸の溝尾に躊躇無く拳を叩き込んだ。


ズンっ………と、鈍い音が体内に響く。


「おフっ………」



身体が5cmは浮き上がった。



陸は苦痛に悶絶する。圓谷はそんな陸の胸ぐらを掴み、前後にガクガクと揺らす。




「こんな恥辱を受けたのは初めてです!!!誰がそんなウワサを流したのですか!!!吐きなさい!!!」


「ゲホっ…ゲホっ……おえっ……。知るかよ…」




「ぐうぅぅぅ…」



低い唸り声をあげて校舎を睨む圓谷。



「つーかよ、こんな話する為に俺を呼んだワケ?」



「話を振ったのは貴方でしょう!!!」




「まぁどうでもいいか」



「どうでも良いのですか!?」



抗議する圓谷に陸は面倒くさそうな顏をして言った。



「“美人だけど…”って言われてんだ。評価は悪く無いってコトだろ?それでいいじゃねェか」



「た、確かに…」



 今度は怒りではなく恥ずかしさで赤くなる圓谷。




「おら、モタモタすんな。行くぞ」



スタスタと歩き始める陸。



「あ、あれ?何だか立場が入れ替わってる気がするのですが??」


「…気のせいだろ」













 とりあえず駅まで来た。


「で、何処なんだ?」



「何処なんだ?って…何も知らずにここまで来たのですか!?」


陸はコクリと頷く。



「何当たり前のコト聞いてンだよ。つい4日前まで剛魔も闇螢も知らなかった俺が知ってる筈無いだろ」


「じゃあ何で先々歩いて行くのですか!!!もう2ヶ所通り過ぎましたよ!!!」


「いやだってアンタが顏を赤らめて身悶えしてガモっ…」



「その話は…忘れませんか?」



笑顔ではあるがこめかみに青筋を浮かべる圓谷の、万力の様な手で首を絞められる。



もしこれが楓なら、

「止めてよ〜」とか言ってポカポカと痛くない拳を振るうだけだが…どうやら目の前の彼女はからかってはいけない部類の人間らしい。


プライドが高いのだろうか、それとも単に恥ずかしいだけなのかは不明だが、陸の持ちうる選択肢は



(1)自主的に忘れようと努める


(2)彼女の手によって強制的に…


しか残ってない。よほど自分の恥ずかしい姿を忘れて欲しいみたいだ。


 涙目の陸はコクコクと必死に頷く。


圓谷はじぃっと陸の目を見て、溜め息と共に手を離した。



「はぁ…分かってくれればいいのです。それより…キミの自宅は何処ですか?とりあえずそこに一番近い入口を教えておきますから」









電車に乗り込んだ。制服のままだから補導されるかと思っていたが、別段何が起こるわけでも無かった。


「つーか、俺の情報は調べたんだろ?なのに何で俺が何処に住んでるか知らないワケ?」



「キミの情報を完璧に把握してるのは隊長と情報管理部だけです。私達一般の隊員は必要最低限の情報しか知らされて無いのですよ。一応個人情報の保護らしいです」



「そうだったのか…」



「以外ですか?」



「まァな。非公開組織なら、そういうのとも無縁だと思ってたからな」



「最近はそういった個人情報に関しては取締りが厳しいですからね…。外部の目が入った時の対抗策に過ぎないのでしょうけど」


「案外大変なンだな」



「えぇ、本当に。ただでさえ人員が少ないというのに…わざわざキミの為に私が派遣されるとは…」


内心カチンと来た陸だが、今は堪える。入団するまでは下手な行動は取るべきではない。入団出来なくなる可能性もあると予想したからだ。




 電車を降りて駅から駐輪場に行き、自転車を押して陸の住むマンションへと

向かう。



「そういやこの前の化物との戦いの時、アンタだけ能力使って無かったな。アンタはどんな力を持ってる?」



「まだ正式に入団していないキミに手の内を晒すのは少しばかり気が引けますが…。まぁいいでしょう。私の能力は風を操る能力です」



「風を…?」



「えぇ、体内の氣を風力に変換することが出来るのです。それなりにポピュラーな能力ではありますけどね」


そう言って苦笑する圓谷。


「氣?この前も氣がどうとか言ってたな…氣ってどんなモノなンだ?」





「氣とは…万物に宿るエネルギー…いえ、物体そのものの構成要素と言った方が正しいですかね。原子や陽子、中性子の様な物と同列で考えてください。

 それを私達は普通と違う法則をもって操る事で、能力を行使する事が可能になるのです」


「普通と違う法則で…?」


「そうです。例えば私は、自分を構成する氣を大気に散在する氣と同調させる事で風を操る事が出来ます」


「その氣は増えたり減ったりしないのか?」


「勿論使えば減りますよ?逆に己を鍛えて存在を濃くすれば氣の量も増加します」


「…氣が多い=存在が濃い?」


「そうです。話を戻しますが、氣とは私達人間で言うと精神エネルギーと身体エネルギーの中間の様な存在なんです。なので、能力を使えば使う程に疲労が蓄積しますし、思考能力も低下します」



「氣が空になったらどうなる?」


「基本的には氣は空になりませんよ。本能的に危険域に達すると氣を自らの意思で行使出来なくなるのが普通です。ただし、己のリミッターを外せる程に氣の行使に卓越している人間には空になるまで使用可能でしょう。

 先程も言ったように氣は私達が存在するための要素です。空になるまで使えば…恐らく絶命するでしょうね」



「…今聞いた限りじゃ、能力者は命を削って力を行使してる風に取れるンだが」


「ある意味ではその通りですよ。無理をして立て続けに能力を行使し続ければ、寿命が縮む事が確認されていますから」


 能力者であるということは、剛魔に殺される危険性と、自らの力に殺される危険性を孕んでいるという事か。


「氣はどうやって操る事が出来るようになる?」



「能力の鱗片を見出した程度で氣の操りかたを聞いてくるとは…。キミは少々気が早い性格をしている気がするのですが?

 まず氣の使い方は2つあるという事を理解して貰わないと話になりませんね」


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