フルーツサンドの美しさはどんな宝石にもまさる。
日曜日の朝、学校の前のパン屋さんに行った。
学校に通い始めて何度もこの前を通ったことがあった。しかし学校の帰りに寄っても、私が食べたい甘いパンはほとんど売り切れ。だから学校がない日曜日の朝に私はわざわざきた。
なにを買おう、チョココロネかな、メロンパンかな
アンパンやクリームパンもいいかも!
そうパン屋さんに対する期待で胸を膨らませながらドアを開けた。
いつもきていた夕方だと、ソールドアウトの札がちらほら並んでいた陳列棚。しかし今日は札の代わりに所狭しとパンが並べられていた。焼きたてのパンの温かな匂いは魅惑の園に私を招き入れる。
園の景色に私はワクワクした。
ほんとなにを買おう。なにを選ぼうとトングとトレーを片手に店の中を巡っていたとき、それらはふと目に入ってきた。
いつもはサンドイッチやバーガーと言った惣菜パンやそれの付け合わせのコールスローサラダが置かれているはずの冷蔵コーナーにそれはあった。
日曜日限定
フルーツサンドセット
そう書かれたポップをお供に冷蔵コーナーに並んでいる。
フルーツサンド?コンビニで買ったことがあるし、別に今はいいかなと思いながらもそのフルーツサンドを見た。
見た瞬間、私の喉がごくっと音を立てる。
そしてそのフルーツサンドはとても美しかった。
フルーツサンドを入れているプラスチックの使い捨ての箱は美術品を守りキレイに見せるガラスのショーケースだ。
このフルーツサンドを食べたい。
一瞬でフルーツサンドの虜になった私はそのフルーツサンドが入ったショーケースをそっと持ち上げ、レジに向かった。
急いで家に帰り自分の部屋でフルーツサンドを食べることにした。
カシャッと軽い音とともにショーケースの蓋が開く。
耳が切り取られ三角の形をした食パンが二枚一組となって形を作っていた。それが四つある。食パンはきめ細かくて柔らかくまるで、晴れの空にポツンと一つだけ浮かんでいる真っ白な雲から直接切り取ってきたよう。
中身は二種類あった。
ひとつはパンの片側に赤色のラズベリージャムが塗られていた。半分に切られた大きなイチゴが生クリームと一緒にパンに挟まれている。
ラズベリーの赤色は大人っぽく
イチゴは赤と白を基調にしたかわいい三角
ケーキでは主役を演じるはずの生クリームがフルーツサンドのために脇役を買って出ている。
もうひとつは紫色のブルーベリージャムが塗られている。白い桃が黄色いカスタードクリームと一緒に挟まっている。
ブルーベリージャムの紫色は夜空のよう
白い桃は星のかけら
カスタードクリームは満月の光を混ぜ込んだみたいだ。
挟まれているフルーツやジャムはどれもツヤツヤと光っていてまるで宝石みたい。フルーツやジャム、そしてパンが喧嘩しないようにクリームが間に入って繋いでいる。
なんと調和がとれた美しいものなんだろうか。
こんな美しいと心から思えるものは今まで見たことがなかった。
その美しさのあまりまたごくっと喉を鳴らした。
そしてこうも思った。
フルーツサンドを食べたい。
私は一つ、フルーツサンドを手に取り口に入れた。
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