37 プラチナピンチ
プラチナは屈強な騎士に連れていかれながら、内心でほぞを噛んでいた。
いくらなんでも動きが速すぎる。
あの書類にしても、本当に宰相が、魔術師長が、騎士団長がサインしたのか。
偽造ではないのか…と疑惑が脳裏を過った。
右隣を固める騎士が自分の方にぐいっと力をこめた。急に乱暴な扱いになり、キッと眼差しを強めて見上げれば、男は男であることの冥い喜びをその目に灯しているようだった。
左の騎士が呆れた眼差しを向けてくる。
一言「おい、任務中だぞ」と嗜めた。
それに対し、「だからいいんじゃないか」と意味がよく分からない返事をし、プラチナの首筋を空いてる方の手のひらでスルリと撫でる。
何がなんだか分からないけれど、このままでは何かがまずい、そう悟ったプラチナだが屈強な男二人から逃げられるはずがない。
書類の偽造に意識を向けている場合ではない……逃げなければ。
ぐいぐいと身をよじって男たちから離れようとするが、ますます悦ばせただけだった。
「ふふっ…そんなに我慢できないか?」
右側の男が舌なめずりをすると、左側の男に視線を向ける。そして、他の兵士たちに軽く片手を振った。
兵士たちがばらばらと散開し、その場には三人だけが残った。
左隣の男が「こっちだ」と先導する。数回廊下の角を曲がり、かがり火のささない暗い影になっている扉の前で止まった。
右隣の男がプラチナを引いてその部屋に連れこむ。左隣の男も中に入り、二人の背後に立つと鍵をかけた扉の前で立ちながら黙って剣を抜いた。
スラリと鋼の鞘を滑る音が室内に響き渡る。
右側の男はプラチナを床に仰向けで転がすと、両足を開く。バタバタと抵抗することなど全く意に介していないかのように薄ら笑いを浮かべて涙ごと頬を舐め上げた。
その甘辛いしょっぱさに男の欲望は嫌が上にも昂った。
「もう、止まらねえぞ…」
男の下履きを脱いだ姿に「醜悪なものを…」と相方の男が小さく呟いた。
その尻はよく鍛えられて引き締まっており、両足の筋肉も決して男が普段からの鍛練を怠っていない様を示していた。
しかし、男の真ん中から一本亀裂が入っている臀部にも、両足にびっしり生えた無数の脛毛にも、文字通り生理的な嫌悪を感じる。
前など、想像すらしたくない。
ガタガタと震えて涙を流しながら自分の言うなりになっているプラチナの耳元に欲情を抑えきれない昂った声で、出きるだけ優しく囁いた。
「力を抜いてろ…気持ちよくしてやる」
はぁ…っと喘ぐような声を出して、自分のモノを下履きから解放し、絶望に歪んだプラチナの目に映る自分を視認して………目の前が一気に暗くなった。
男は二人の背後に音もなく歩み寄ると、その背に深々と抜き身の剣を沈める。
心臓を貫こうと剣を突き刺すと、肋骨に当たった。
こつん、と剣先に当たる感触に何の感慨も抱かず、グッと力を込めてやると肋骨の縁を滑るようにして中にズブズブ入っていく。
剣越しに刺し貫く心臓の感覚と、全身がビクビク痙攣する感覚に死を確信した。
剣を引き抜くと、無造作に男を蹴り飛ばす。
みっともなく放り出された剥き出しの陰部を一瞥すると、さっきまでの膨張が嘘のように縮んでいた。
まるで干したいちじくのようだ、と場違いに平和な感想を持つと、呆然と天井を見つめるプラチナを抱えて起こす。
胸をあらわにされ、下着を脱がされて、まさに情事の最中と言った少女に「早く服を着なさい」と手短かに告げる。
そのまま、死体に火を放つとプラチナの手を引いて何もないはずの壁を押した。
壁がガコンと音を立ててへこむと、左右に分かれて空間が出来上がる。その先には、地下へと続く階段が伸びていた。
あとがき
ストックが…と思いましたが、朝っぱらから見苦しいものの表現を更新するよりいいのかなと思いました。




