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24 目でみて読んで考えて

エリックの近くにかごを置くとプラチナは「疲れました」と言って座った。葉っぱがもさもさ生えている木の下では周りに茶色くなった落ち葉が土と同化していた。


よく見ると去年の冬に落ちた実が木の幹を囲むようにしてぽつぽつと残っている。


エリックがかごを覗きこむと、中身を草の上に撒いた。そして、摘んできた薬草を一つ一つ丁寧に検分していく。5つのうち、1つ程度がかごの中へと戻された。


「こんなもんだろう」


満足そうに言うと草の上に撒かれたままの残りを指さすと「この葉が何だか調べてみろ」と言いながら、かごの中の薬草を一つ取っては光りに透かして見ている。


プラチナは目の前に積まれていく薬草じゃない何かを呆気に取られて見ていたが、エリックの言葉にはっとした。急いでポーチの中から辞書を取り出すと草原に生えている植物について調べはじめる。





「薬草は年中緑の葉が茂る常緑多年草の一種であり、繁殖力が非常に旺盛なため世界各地に広く分布している。葉は双葉であり、地中から吸い上げた水を虹色に変化させる働きがある。光りに透かして見ると葉脈に沿ってわずかに虹色が見える」





そこまで読んだプラチナは急いで下に放り出された葉を光りに透かして見た。

虹色の葉脈など全く見えない。


次にかごの中身を一つ取って光りに透かす。

今度ははっきりと葉脈が虹色に輝いている。


「お前、ちゃんと読んでから探さなかっただろう。挿し絵だけで判断したな?」


エリックが静かに問いかけると、プラチナは「…はい」と頷いた。

あからさまに沈んだ声を出している。


「続きを読んでみろ」


促されて読んでみればそこにはちゃんと書いてあった。





「薬草と共に共存関係にある植物が薬草もどきと呼ばれるものであり、薬草から栄養を与えられる代わりに動物のエサとなる役割を持っている。全く同じ見た目だが、薬草よりもやや高さがあるため動物が食べやすい特徴を持つ」




「この植物は薬草もどきです」


「気づいたか。そうだ、大抵の素人は薬草と薬草もどきの区別がつかない。光りに透かして葉脈を見るんだ」

エリックが薬草を透かして見せた。


「じゃあ、これをポーションにするために準備するぞ。まず、ポーチから乾燥ネットを取り出して、薬草を入れたら木の枝にぶら下げろ」


言われた通りにネットを出すと、折り畳み式のネット状の筒だった。それが固めのネットで縦に仕切られている。

各層に薬草を重ならないように敷き詰め、一番低い枝に引っかけた。


作業を見ていたエリックは自分のリュックの底をがさがさと漁り、中からカップを2つ取り出すと大気中から水を発生させ、注いだ。


爪の先ほどの小さい火球をカップに入れると、取っておいた薬草を1枚入れる。スプーンでかき混ぜた。


とたんにハーブティーのいい香りが辺りに広がる。そのうちの一つをプラチナに手渡すと「とりあえずお疲れさん」と言う。

一緒に自分も飲み始めた。


プラチナは一口含んだとたん、口の中に広がる爽やかな苦味とほのかに感じる甘味に体の力を抜く。熱いのに、喉を通る時にはすぅ…とする爽快感を感じて驚いてしまった。

何の手も加えられていない野生そのものの味にプラチナはやみつきになりそうだった。



しばらくのんびりとした時間が続く。

不意にエリックが森を指差した。


「あそこに向かって10歩ほど行ったところに低級モンスターが沸く。行ってこい」


さらりと簡単に告げられた言葉にプラチナはドキドキする。

モンスターという言葉は自分にとって無関係だった。

それが今、そのモンスターと対峙することになる。

緊張しつつもしっかりとした足取りで立ち上がった。


「行ってきます」


決意に満ちた声をだし、勇気を出して歩き出した。










あとがき

ハーブティーって美味しいですよね。

カモミールとかレモンバームのティーとか美味しいです。

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