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19 目指す筋肉

「皆さん、148ページを開いて下さい。今日は高等魔術についてのおさらいです」


教壇で先生が言っている言葉をメモに取りながら教科書に載っている挿し絵を眺めていた。

勇者と呼ばれる剣を携えた人が悪の魔王と呼ばれるモンスターと戦っている絵だ。

勇者は王国を守るため、命をかけて3日3晩戦った、と書いてあった。


挿し絵の勇者の回りには光の描写があり、背後には輝く神樹と、それに膝をついて巫女が祈りを捧げる描写がある。


「よく鍛えられた身体だわ」


挿し絵の勇者はローブをたなびかせているが上半身は魔王の攻撃のためか衣服が剥ぎ取られていた。ぼろぼろの布切れがところどころ引っかかっている状態だ。


そんな勇者の身体のラインをプラチナは白い指先で撫でた。


「エリックさんよりもややスレンダーな気がするけど…」


服の上から見せる弾けそうなエリックの筋肉を思い出して呟く。

今現在、自分がエリックから与えられた宿題は筋肉のトレーニングだ。あの重たい装備をつけながら言われていることをこなすのは、とても大変だった。


「朝早く起きて、大正解だった」


興奮していたのか、プラチナはいつもより3時間も前に目が覚めた。普段ならこのまま二度寝をするのだが、エリックの顔がちらつく。


ベッドからもぞもぞと起き出すと、顔を洗って制服に着替え装備を着用した。

ただつけるだけでも重いのに、装備のままで腕立て伏せを30回、スクワットを30回、腹筋を30回やれと言う。


プラチナは取り敢えず腕立て伏せから挑戦した。両手と爪先を床につけ、腕で支えて身体を持ち上げた。


「いーち…」


にぃ、さん…と続けて5回目で腕が震えて身体が潰れた。べしゃっと装備ごと床に崩れるが、足首まで覆う毛足の長い絨毯が敷き詰められていたため全く痛くなかった。


「くっ…負けません!」


貧弱な自分の身体に鞭打って先を続ける。潰れながら、挫けそうになりながら腹筋30回を達成したのは、実に1時間後のことだった。


そのあとに続く腹筋、スクワット…といまだかつて経験したことのないような地獄のトレーニングにプラチナは天井を大の字で仰いで肩を上下に揺らしていた。


ぜぇぜぇ…と荒い息を吐きながら小さく微笑む。


「や、やりました…私、やりとげました」


額に浮かぶ玉の汗を手拭いで拭うと、身体中が汗まみれなことに気づく。

せっかく昨日入浴しても、これでは意味がない。プラチナは臭いを香水で誤魔化すのは邪道だと思っていた。


「またお風呂に入りましょう」


昨日のお湯を抜き、新しい湯をバスタブに張る。お風呂洗いから始まる入浴の準備は、悲しいほど手際が良かった。

そうして温められた湯につかると、酷使した筋肉にもいいような気がする。リラックスも出来るし身体にとっても良さそうだ。


「はぁ…いい気持ち…」


朝からお風呂に入って身体をほぐすと授業を受ける準備をする。学院指定の制服を身に纏うとプラチナは鞄を手に部屋を出たのだ。





「…さま、プラチナさま」


はっ!と意識を目の前の授業に戻す。教壇の前で教師が「お気づきになられたようで、安堵いたしましたわ」とにっこり笑った。


しかし、その目は笑っていない。


「随分熱心に教科書をお読みになってらっしゃったのだから、私の質問にお答え頂けますわよね?」


とこめかみをひくつかせながらこちらを見る。しかしプラチナはその問いかけに対し、何事もなかったかのような泰然とした面持ちで応えた。


「もちろん、なんなりと仰って下さいませ」


輝くプラチナブロンドが小首をかしげた拍子にさらりと顔の横にたれた。

それを無造作に払う仕草すら、洗練されていて神々しいまでの美しさを感じさせる。


「……では、お聞きします。魔法を発動する場合、呪文の詠唱は必要です。ですが無詠唱での発動の場合、何をすればいいかお答え下さい」


教師が今話していた内容は、教科書の今学んでいるページに書いてある。授業を聞いていれば分かるはずだった。


「そうですね、そもそも何故詠唱が必要かというと、呪文とは祈りのこと。言葉にすることで音の波を生み出して力の源に干渉することで現象を源が生み出します。しかし無詠唱の場合は直接イメージを力の源に送ることで干渉しているのです。ですから先ほどの先生の質問に対する答えは「源にイメージを送る」です。こんなふうに…」


そこまで話すと、プラチナは自分の周りを吹き抜けるように風を起こす。バサバサっと教科書が落ちる音が響き、後ろで「きゃあっ!」と悲鳴が上がった。


そこには教科書の下で隠れるようにルイス嬢とエルメス殿下が指を絡めて手を繋いでいた。


今の悲鳴で二人が教室中から視線を浴び、そして手繋ぎを目撃される。


二人がパッと手を離した。


「お二人とも、仲がよろしいのは良いですけど今は授業中でしてよ」とプラチナがやんわり注意する。


冷ややかな一瞥を向け、ふいっと二人から視線を外した。












お詫びとあとがき

新しく19話目を投稿です


先にアップした19話ですが、やはりあまりに暗くて今後自分がこの設定を利用するのは難しいなと思い差し替えました。これからはころころ変わらないようにストーリーをきちんと練って投稿したいと思います。


こちらの都合で差し替えました件、重ね重ねお詫び申し上げます。


※あらすじに付け加えていた上記のお詫びをこちらに移動しました。

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