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17 ざる警備

何だかんだで思い入れのあるローブをぶんどられたエリックが今度は自分のためにローブを見始めた。


今まで見ていた実用性に優れていながら、そこそこ見た目も綺麗なものではなく、実用性オンリーの野暮ったい灰色のものを一枚選ぶ。


二人の装備をそれぞれ整えた後、店を出た。辺りは日が落ち、店先の灯りが夜を照らし出していた。


王宮と神殿の区画の中に学院もある。

王族を始めとする貴族の子息や令嬢たちが生活をする空間のため、護衛は堅牢にしなければならないが、しかし経費がかかる。


考えられた末に出た結果が重要施設を一ヶ所に集めて人件費を削減するという方法だった。


空に浮かぶ月を眺めてしばし黙考にふけったのち、エリックは「…しかしなぁ」としみじみ呟いた。


「あんなずさんな警備でよく何もなかったもんだ」


数百メートル先の王宮や学院を見ながら眉を引き上げる。これまでの自分なら思いつきもしなかったさまざまな犯罪が脳裏を過っていた。


「要所を一つにまとめた方が警備が楽、か。阿呆の考えだな」


そう言って、苦虫を噛み潰したような顔で隣を歩くプラチナに視線を向ける。プラチナは何も気付かず、懸命に歩いていた。


「洗脳でも祝福でもどうでもいいが、悪党が決して攻めて来ないという確証がなけりゃ、そんな真似は出来ん」


一ヶ所にまとめて警備が楽…一ヶ所さえ潰せば国がひっくり返る。

何とも危うい話しだった。


「おい、プラチナ。お前が戻ったら決して中から扉を開けるんじゃねえぞ。常に複数人で行動しろよ……あと、どんな時も装備を手放すな」


まだ使い込んでいない真新しい装備を早く使いこなせるようにしてやらないと、危険なのかもしれない。

エリックは眉をしかめてプラチナを学院入り口に送り届けた。


「明後日にまたギルドに来い」

「はい、エリックさん。またよろしくお願いします」


はぁはぁと息を荒げて顔を染めながらもプラチナはしっかり返事をした。


「あと、1日に装備のままで腕立てふせ30回、腹筋30回、スクワット30回、それを3セットやっとけ。これから毎日こなすお前のための特別メニューだ」


「……はい」


今度の返事は、弱々しかった。




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