突然のお風呂回 ~第二大陸について~
…チャポン………ザバァァッ……
「んんっ……はあぁぁ~~…♪ 気持ちいい~~…」
第二大陸王都『ラシシェル』にそびえ立つ王城…そこにある『大浴場』…そこにミーシャ達は入浴していた
そこいらにある銭湯や浴場とは比べ物にならない
20人は入っても余裕がある風呂が2つ、少し小さめだが10人はゆったりくつろげる乳白色の薬用風呂が1つ、そして軽く30人は入浴出来る小さな滝と言ってもいい『打たせ湯』がついている風呂が奥に1つ…
床は汚れ1つ無い金色に似た色のタイルで、優に5メートルはある天井から降り注ぐ『光魂石』の光が浴場全体を照らしている
全体的にゴージャスではあるが、所々に石造りの風情を残しており、それがなんとも言えない雰囲気を演出している
ミーシャ、スイ、イェロンの3人は、その打たせ湯の風呂に入っていた
当然ここは女湯…更に3人しか居ない
完全に貸し切り状態である
…ゆえに、身体にタオルも巻いていない
「あぁぁ…最高ねぇ~… まさかこんな…こんなお風呂にこんなタイミングで入れるなんて…」
「ここ数日、こうしてゆっくり湯船に浸かる事が出来ませんでしたから…せっかくですから堪能しましょう…♪」
「………すごく……気持ちいいです……」
3人は湯船に浸かり、最高級の風呂を堪能する
「ですが…いいんでしょうか…こんなにゆっくりして…」
「なに言っているのよイェロンちゃん! 風呂に入ろうって言ったのはあの人でしょ? ここはご厚意に甘えて、ゆっくりしましょ…はぁぁ~~…」
緩みきった顔でミーシャは肩まで風呂に浸かる
………ゴルトが『風呂に入ろう』と言ったあと、ミーシャ達は牢屋から連れ出された
そして牢屋から出ると、そこは大きな『城』の中だった
さすが王都…『城』の規模が桁違いである
金色に装飾された床や壁や天井…長く続く廊下…多すぎる部屋のドア…メイドや執事が横行し清掃を行っている
完全に場違いなミーシャ達6人はゴルトと一緒に、城のとある一室に行く
そこがこの『大浴場』であった
入るやいなや8人のメイドがサササッと現れ、ミーシャ達女性とアレス達男性をそれぞれの脱衣場へと案内し、手際よく衣服を脱がしてどこかへと持って行った
されるがままに浴場へと入り、現在へといたる
「あっ…イェロンちゃん、それって…」
ミーシャがイェロンの背中の方を見る
するとそこには、黒い『悪魔の尻尾』が湯の中からちょろんと出ていた
先っぽがハートマークになっている細い尻尾…イェロンの腰下辺りから生えていた
「もしかして…イェロンちゃんの見た目に『獣人』の要素がないの気になってたけど、それが『サキュバス』の『獣人要素』なのかしら?」
「はい。 私は『サキュバス』の『獣人』ですが、見た目だけでは『人間』と一緒なんです。 『獣人』の要素が少なくて、この尻尾がその証明になりますね。 普段は修道服に隠すように、腰に巻いて裾から見えないようにしています…修道女ですので、相反する『悪魔』の見た目を出さないようにしているんです」
「…イェロンさんも大変なんですね…」
湯に浸かりながら、3人は談笑をする
そして話題はそれになる
「んん~…それにしても…」
「………」
「えっと…何でしょう…か…?」
ミーシャとスイはイェロンをじ~…っと見つめる
困惑するイェロンに2人の視線が注がれる
…正確にはイェロンの『胸』にだが
「………大きいわね……」
「………そうですね……」
「…!! なっ…なんですか…!?」
ササッと腕で隠すが、それでも2人は見つめ続ける
イェロンの白い肌…そして実った2つの魅惑の果実…
…正確には睨みつける方が正しいが
「ちょうだい」
「………えっ…?」
「それ…私にちょうだい」
「!? そんなこと…出来ませんよ…!?」
「よこしなさい! それがあれば…きっと団長も…!!」
「落ちついて下さい…! 出来ませんってば…!」
「………うらやましいです……それがあれば……きっとご主人様も…!」
「!!? スイちゃんも…!? む…無理ですって…!!」
「嫌なのね…なら……『強硬手段』よ!!」
むんずっ
「ひやぁあああっっ!!?」
ミーシャの両手がイェロンのその豊満な胸をわしづかみにした
「このっ…この胸をよこしなさい! むしり取ってあげるわ!!」
「ちょっ…やめてくだっ…あっ…やぁぁっ…! んぁっ…!」
イェロンが小さなあえぎ声を出す中、ミーシャはそんな事お構いなしにイェロンの胸をめちゃくちゃに揉みしだく
「ぬぅぅっ…なんて柔らかい…! そして大きいっ…! やっぱり『G』以上は…!? ぐぬぬぬっ…うらやましゃーーー!!」
「ちょっ…んんんっ…! …はぁっ…だめっ…ん…!」
わしゃわしゃと両手で揉み、その手に合わせて自由に形を変える
柔らかさもさることながら、大きくても形が良く弾力も十分
男を惑わす魅惑の胸…羨ましく思うのはミーシャだけではなかった
「ちょっんん…! スイちゃっ…! 止め…てっ
「…ミーシャさん……片方…わたしにも…」
「っ…!?」
スイに助けを求めるイェロンだったが、男を惑わす胸は同時に、女を狂わす胸でもあった
「いいわスイちゃん…思いっきりやっちゃいなさい!」
もみゅっ
「ひんっんん…!!」
スイが右、ミーシャが左の胸を両手で揉みしだく
「あぁっ…はぁあ…ぁぁ…」
イェロンは小さく震えながら、自らに与えられる快楽に酔いしれてしまう
イェロンは元々教会に住んでおり、そもそもそういった経験が無い
ジンビスといえど、イェロンに対して当然そんな事をした事が無い
だから初めてである
「んんっ…んあぁ…」
『恥辱行為』は行き過ぎると『快楽』に変わり、やがて身体が『何も考えられなくなる』
イェロンも例外ではない
初めて身体に与えられた感覚に、イェロン自身もイェロンの身体も『快楽』を感じ始めた
「あぁぁっ……やぁああっっ……♥️」
目がとろんっ…とし、口からよだれが垂れ、顔がふやけてだらけきる
もはや抵抗するという考えそのものが存在しなかった
「……なんという……」
「ぐふふ…イェロンちゃん…なかなか可愛い声を出すじゃない…? これはこれで…イジメがいがあるわねぇ…♪」
ミーシャが悪い顔で更に緩急をつけて揉み続ける
…もうただの悪ふざけになっている
「おいテメーら!! イェロンに何してやがるッ!!」
――そこに、男の怒号が鳴り響いた
一方こちらは男湯
女湯と大きな壁を一枚挟んで隣接している
内装は女湯と同じ
壁の上部には隙間があり、大きな声であればそこから聞こえる様になっている
…当然、先ほどのやりとりが女湯から男湯にまで聞こえてしまっていた
「おいテメーら!! イェロンに何してやがるッ!!」
隣から聞こえてきたイェロンを辱める声に、ジンビスは気が気ではない
おそらく壁がなければ止めに行っていただろう
ここは浴場…ジンビスも全身裸の状態であるがそんな事お構いなしに突撃するだろう
イェロンや教会の子供達を守るために鍛え上げられた肉体は仕上がっており、腹筋が割れている
筋肉もしっかりとついており、健全なる身体を持っている
そんな身体をわなわなと震えさせ、壁の前に立ち尽くすジンビス
壁の向こうにいるイェロンが心配で仕方ない
しかし…
「イェロンに何かしやがったらそっちに行ってテメーらを
「うっさいわね『巨乳バカ』ッ!! あんたは黙ってなさいッ!!」
「きょにゅ…っ!?」
ミーシャの鋭すぎる一言に、ジンビスは固まってしまう
壁の前で白目をむいて立ち尽くすジンビス
…もしもマンガなら、真っ白に描かれているだろう…
「…あれはキツいな…まあ…そう言われても仕方ねぇか…」
湯に浸かりながら、哀れんだ目でジンビスを見るシード
シードは体格はそう大きくないが筋肉は多くついている
細めでも力が強いと一目見て分かる
「……しかし…
「おーいシード! これ見てよ! 『滝』があるぞ『滝』が! おっ? こっちの風呂はなんか白いぞ!? すげー! この風呂なんて父さんやシードと行った湖とおなじぐらい広いぜ!」
アレスがバシャバシャと風呂の中を泳ぎまくる
裸ではしゃぎながら泳ぐ様はわんぱく少年そのものである
「…さっきまで寝てたくせによくそんなに元気に暴れられるもんだ… それよりもお前が行ったそこは『湖』じゃなく『池』だったぞ」
冷ややかな目でアレスを見るシード
やはり現在、『不安』しかない
突然こんな風呂に入れられてくつろげる…いい予感は絶対しない
しかし他にする事がない
いや、ここに居る以上、他に出来る事がない
風呂に居て『風呂に入る』以外、やれる事がない
シードの不安は更に高まる
だが、その『不安』は『大きな声』でかき消される
「ハッハッハッ! 最高だろうこの風呂は! 我はあまりここには入らないのだがな!」
そこには、腰にタオルを巻いただけの裸のゴルトが腕を組んで立っていた
細い身体ではあったが、やはりあの服の下は仕上がっている
細マッチョとも言うべきだろうか…とても『陸王代理』とは呼べないほど強そうだった
「リプスを説得させるのに時間がかかってしまってな! さあ! 共に汗を流そうではないか!」
ゴルトが笑いながらシード達に言った
「やはり風呂は良い…! 身体中に纏った穢れを全て洗い流してくれる…! 君達もそう思わないか!?」
「「「………」」」
ゴルトとシード達は湯船の中で対面に座る
あのはしゃぎまくっていたアレスですら、湯船の中に静かに腰を下ろしている
「………そうだな… あんたが言うこと全てを言ったら、俺の『穢れ』も流されると思うんだがな」
「ハッハッハッ! 確かにそうだな! 我の年齢は21だ!」
「21…!? オイオイ…俺より上じゃねーか…」
「…そんな事は聞いてない…」
「そうだったな! 我は自分を『我』と呼んでいるが、これは昔に我が父が『王家としての威厳ある態度をとれ』と教えられた故にだ! この『我』と呼ぶ事に慣れるのは随分と時間がかかったものだ…!」
「うへぇ~…俺は勉強とかキライだからな~… やっぱり王さまってのは大変なんだな~…」
「…そんな事でもない…」
「そうだったか!? ならば我が『レオンライト家』の歴史を
「おい…くだらない事で無駄な時間を使う趣味を俺は持ってはいない…さっさと『本題』に入れ」
シードはゴルトを睨みつける
その目は冷たく、そして冗談など一切なかった
「……」
ゴルトは自身に向けられたその目に対し、軽く笑みを浮かべながら黙っていた
「「………」」
一触即発の雰囲気に、アレスとジンビスの2人ですら黙ってしまう
「…さっさと答えろ。 俺はこんな風呂に入ったぐらいで警戒を解くほど甘くねぇ…あんたが何も言わないなら、なおさらだ」
「………ハッハッハ…」
ゴルトは目を閉じて軽く笑う
「…やはり…君は見たままの性格をしているな…」
「!!?」
シードは突然言われたその言葉に動揺する
「…ハッハッハッ! シード君! 君の質問に対して答えたいのは山々なのだが…その前に! 説明する必要があるのだ!」
ゴルトはそう言うと、スッと左手を前に出す
よく見ると、ゴルトの左手の人差し指に小さな『赤い宝石』の付いた指輪をしていた
そしてその宝石が淡い光を放つ
次の瞬間、ゴルトの目の前に一枚の『地図』が現れた
ゴルトはそれを広げてシード達に見せつける
「先ずは知ってもらう必要がある…この『リーバイド』についてな…!」
「この大陸の地図?」
「…仕方ないな…」
「つーかそんなのここで出して大丈夫なのかよ?」
「問題無い! 防水加工されているからな!」
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①獅子閃煌王都『ラシシェル』
②熊猛死皇帝都『ベクマート』
③柳緑花将紅都『オルヒトグス』
「…今、我々が居る場所はこの①の『獅子閃煌王都ラシシェル』。 我々『レオンライト家』が治める、第二大陸の王都だ!」
「第二大陸の王都ねぇ…あんな牢屋が平気である王都なんざ聞いたことがねーけどな」
「申し訳無い! だが…ここが一番安全で管理しやすいのでな!」
「安全…? 管理…?」
「…それが…おそらく『第二大陸が全大陸で最も危険な大陸』である理由に繋がってるわけだな…?」
「…そういえばそんなことをシードが言ってた気がする…ような気がする…」
「そういや船の上で『戦争がいつ起きてもおかしくない』とかいってたな」
「ハッハッハッ! それは一理ある! むしろ『逆』だがな!」
「…? どういう意味だ?」
「この大陸が『危険』である事は間違い無い! しかしだ…それはこの大陸の『バランス』が崩れた時の話なのだ!」
「…?? まったく分かんねーぞ…」
「この地図を見て分かる様に、この第二大陸は『3つの都市』で成り立っている! 『ラシシェル』が王都であるのに対し、他の②『熊猛死皇帝都ベクマート』と③『柳緑花将紅都オルヒトグス』は第2の王都と呼ばれる程に栄えている! …そしてそれぞれの都市は、各『王族』の管理下にある!」
「…『レオンライト』『ベアルランテ』『狩獲猟』か」
「その通りだ! 『ラシシェル』は我々『レオンライト』が、『ベクマート』は『ベアルランテ』、『オルヒトグス』は『狩獲猟』がそれぞれ治め、それぞれの都市を中心として領土を管理しているのだ! つまり…シード君なら言わずとも分かるはずだな!?」
「…?」
「…??」
「…『その均衡が崩れれば、一気に戦争へと発展してしまう』…『逆にその均衡が崩れなければどの大陸よりも安全である』…って事になるな…」
「正にその通りだ! 危険と安全は表裏一体! 我々が故意にそのバランスを崩す事さえしなければ…この大陸はどこよりも安全なのだ! 我々『レオンライト』は元より、『ベアルランテ』も『狩獲猟』も戦争を望んではいない。 …故にこの第二大陸はどこよりも何よりも安全だ。 君達が危惧している様な出来事はほぼ起こらないだろう」
「『ほぼ』かよ…ま、今すぐは大丈夫って意味だな」
「なあなあ…それよりもこれ…なんて読むんだ? なんか難しい字でいろいろ書いてあるけど…」
「ん? 『獅子閃煌王都』の事だな?」
「しし…なんだ…?」
「『獅子閃煌王都』…この『ラシシェル』の別名だ。 それぞれの都市にはそれぞれの『王族』が存在し、それぞれの『王』には『孔名』と呼ばれる名がある。 我々『レオンライト』…つまり我が父上には、『獅子閃煌王』という『孔名』があり、『ベアルランテ』には『熊猛死皇帝』、『狩獲猟』には『柳緑花将紅』と…それぞれの『孔名』があり、皆は尊敬の念を込めてそう呼んでいるのだ」
「そいつらが治めている都市だからそう呼ばれてるってわけか…」
「…つーかこの『ベクマート』ってとこ…他の都市から遠くねーか?」
「それは仕方がない! 『ベアルランテ』は我々『レオンライト』や『狩獲猟』に比べて純粋に『力』が強い! 『権力』然り『支配力』然り…! 昔から徐々にその勢力を広げ、今や第二大陸最大の勢力となった! 故に他の都市との距離を置き、例え攻められたとしてもその間に撃退出来る様にしているのだ…! …まあベアルランテ自身は『この大陸の王はレオンライト…王ではない我々ベアルランテが大陸の中心に座す必要も権利も無い』と言っているようだが」
「それっぽい事を言ってるな…」
「なんつーか…仲悪いんじゃねーのか?」
「確かに実際、『レオンライト』と『ベアルランテ』の関係はあまり友好的ではない…『狩獲猟』も同様に、我々とも『ベアルランテ』とも友好的ではない」
「みんな仲よくすればいいのに…どうしてそんな風になったんだ?」
「ふむ…理由は複数あるが、一番の原因は『レオンライトが強すぎた』事が原因だろう…」
「? どういう意味だ?」
「レオンライトがこの大陸の陸王である事から理解出来る様に、レオンライトは昔から権力が強かった…当然そこには、『レオンライトに対する不満』を持つ者が必ずいる。 自らの意見や主張を持ちレオンライトに反発する者が多く現れ、レオンライトはそれに対し『力』ではなく『権力』で抑え込んだ…『民を重んじるレオンライト』の政策がやはり裏目に出たのか、反発する者達で徒党を組み、逆に『力』で討ち倒そうとする勢力としてレオンライトに反旗を翻した。 その際の中心人物が『ベアルランテ』…『力による政治のベアルランテ』が生まれ、このまま行けば戦争が始まる事態にまで発展したが、『自然を守る狩獲猟』がそこに介入…『力』で自然すらも壊しかねないベアルランテに対抗するためにレオンライトと手を組み、直接的な交戦は無かったものの『亀裂』を残したまま『和解』という形で、一時的に『休戦』を勝ち取った… 現在もその『確執』は残り、ベアルランテの一部は我々レオンライトに敵意を持っているのだ」
「レオンライトが生やさしい政治をやっているから、それを歯がゆいと思った連中が倒そうとした…って事か」
「ハッハッハッ! そうとも言えるな!」
「オイオイ…皮肉ってるじゃねーか…」
「だがそれは事実だ! しかし『全員がそうでは無い』のも事実だがな! ベアルランテ自体にも、レオンライトのやり方に同意する者も当然居る…あくまで、一部の者達が個人的に反発しているという事だ」
「………」
「なら『狩獲猟』っつーヤツらはどうなんだ? 友好的じゃねーんだろ?」
「狩獲猟は確かに友好的では無い…が、ベアルランテの様に反発するという事はしていない。 あくまで『静観』している…という印象を受けるな。 狩獲猟は自然を守る者達…自然が壊される『戦争』が止まれば、介入する必要も無いという考え方なのだろうな」
「う~ん…なんかむずかしい話だな…」
「とにかく! 我々はベアルランテとも狩獲猟とも友好的でありたい! レオンライトの政治が受け入れがたいものであったとしても、それを改善していく寛大な懐を持ち合わせている! だからこそ…この重要な時期に、我々レオンライトがこの大陸を正しき『光』で導き照らさなければならんのだ!」
「…陸王サマは大変だな。 ま、オレ達にゃ関係ねーがな」
「………」
「………さて…そろそろ教えてもらおうか」
ゴルトが一通り語り終えると、シードが冷たく切り出した
「ん? 一体何の事だ?」
「とぼけても無駄だ… あんたの『説明』をこっちは聞いた…だが一番聞きたい事を俺達は聞いていない…」
「ハッハッハッ! その聞きたい事とは何だ?」
「当然…『俺達を牢屋から出した理由』と『今、この大陸で何が始まる』のか、だ…」
「……!」
ゴルトは思わず息を呑ん息を呑んだ
「そういやそれはまだ分かってねーんだったな…俺達が若けーからか?」
「風呂に入らせてくれるんじゃないのか?」
「お前達は黙ってろ」
シードが放ったその一言に凍りつくジンビスとアレス
「あのリプスってやつも言ってたが…『非常に忙しい』だとか『この時期』だとか、今のこの大陸で何が始まる…? 俺の予想だが、この大陸で起こる『何か』と『俺達の解放』が無関係では無いはずだ。 答えろ…でなければ、俺はここであんたを今すぐにでも殺してここを出てくぞ」
「……」
シードはゴルトを『殺意』を込めて睨む
逆に、ゴルトはシードを『興味深い』目で見つめる
「ハッハッハッ! そう怖い顔をするな…シード君、我は何でも答えるつもりだ!」
「…ならさっさと
「だがその前に…君達がここに、この『大陸』に来た経緯を教えてもらおうか! 我は君達の素性自体は気にしないが、何故君達が一緒に行動しているのか気になる…特に、君がな」
「……」
風呂に浸かっているためよく分からないが、シードは頬に『冷や汗』をかいていた
それはシードが、ゴルトに対して『恐怖』や『不安』を抱いていたわけでは無い
『分からなかった』からだ
何を考えているのか分からない『恐怖』ではなく、何が見えているのか分からない『不安』ではなく、ただこの『ゴルト』という人物が『分からなかった』からだ
「ハッハッハッ…別にいいだろう? 減るものでは無いはずだ! だが賢明な君ならば、これから質問の答えを伝える相手の事を『知りたい』という欲求が理解出来ない訳ではないだろう?」
「………分かった……こっちの事も知ってもらう必要はある…か…」
シードは渋々、これまでの経緯をかいつまんで説明した
「…ほう…? 『英雄』になるため…各大陸を巡っていると… 素晴らしいな…アレス君は…!」
「だろ!? 『ヒーロー』は俺の目標なんだ! 俺はこの大陸でも『ヒーローになるために必要なものは何か』を探す! あ! そういえばここに陸王がいるんだっけ!? あとで会ってもいいかな!?」
「ハッハッハッ! 『ヒーロー』を目指すという志しを持つ…『ヒーローになろうとしているアレス君』が素晴らしい…! やはり我の目に狂いは無かった…! 我も協力をしたいが…今の父上、つまり『陸王』には今は会えない…理由も残念だが教えられない」
「ええ~!? なんで今は会えないん
「後にしろアレス…それよりも、こっちの経緯は教えたぞ。 さっきの質問に答えてもらおうか」
シードが再びキッ…っとゴルトを睨む
「ハッハッハッ…当然だ。 『君達を解放した理由』『現在のこの大陸で始まる何か』…そして『我の眼の力』… 説明させてもらおう」
…ゴルトは軽く咳ばらいをした
「まず『この大陸で始まる何か』…現在この大陸ではとある『会議』が始まろうとしているのだ」
「…『会議』?」
「もちろんただの『会議』では無い。 この大陸の未来を決める『会議』…つまり、『次の陸王を決める会議』が行われるのだ」
「あ? 次の陸王はアンタじゃねーのか?」
「確かに我の父上は陸王なのだが、陸王の子が自然と陸王になる事は無いのだ。 次期陸王を選出するために『会議』が行われるのだ」
「だがレオンライトが代々陸王をしているのなら、自然とあんたになるはずだろう?」
「それまでの陸王はレオンライトの家系が継ぐ事になっていたが、定期的に行われるレオンライトとベアルランテと狩獲猟の『合同会議』で、『陸王を選出する会議を行う』という案が可決されたのだ。 父上が陸王となったのがおよそ20年前の話…この20年で、ベアルランテも狩獲猟も勢力が強大になった… 今やレオンライトはこの大陸で最も強い勢力では無くなった…レオンライトが第二大陸の陸王である『必要性』が失われてしまった。 悲しいが、これが現実なのだ」
「なるほど…だから死に際に次の陸王を決めようって事か」
「……!!」
ゴルトは一瞬、ほんの一瞬だけ鳩が豆鉄砲をくらった様な顔をした
しかしほんの『一瞬』
それこそ、アレスやジンビスはゴルトの表情が変わったことすらも気が付かなかった
しかしシードは違う
「『当たり』か…? まあ可能性が一番高い予想を言っただけだがな」
シードは軽くニヤッ…っと笑う
「あんたは『3つの王族の中から次の陸王を決める会議』として通したかったみたいだが、俺には『陸王が死ぬから次の陸王を決める会議』としか聞こえなかった… ま、あんたの話をそもそも信じない事前提で聞いていたからこそそんな予想が立てられたんだがな」
「………ハッハッハッ…信用されていないのだな…我は…」
「いいや…俺がそういう人物なだけだ」
ゴルトはふぅっ…っとため息をつく
「実際に会議は行われる…が、シード君の言う通り『現在の陸王が政策を執行出来ない状態になった時、合同会議を行い次期陸王を選出する』のだ。 …レオンライト一強であった第二大陸も、その勢力図は年々拮抗し始めている…最早レオンライトが陸王として君臨する必要性が無くなって来たのだ…故に『合同会議』でもその様な意見が多く出てしまった…」
「当然、だな。 …で、その『合同会議』があるからあんた達はピリついてるわけか… んじゃ、次だ」
シードはゴルトを睨む
「この大陸がそうなってるのは分かった。 だがそれと『俺達の解放』が結びつかない…それを教えてもらおうか」
「もちろんだ。 その前に…『これを見て貰おう』」
ゴルトはその少し大きめな目を3人に見せつけた
薄い緑色の瞳が、3人を見つめる
「…?」
「ハッハッハッ…『我の目には未来が見える』…と言ったら信じるか?」
「え…未来…?」
ゴルトの意味深な発言を、シードとジンビスは信じなかった
「んなわけねーだろ? そんな
「「アホみてーな才能あってたまるかよ」」
「嘘をつく必要はあるとは思うが…
「「そんな能力を持ってるとは思いたくないな」」
その瞬間、シードもジンビスも信じざるを得なかった
「…今…」
「俺達の言葉を…」
「ハッハッハッ! やはり我の『目』に狂いは無かった…既にその『未来』は視えているぞ? 我には、次に君達が『何を言う』か見えていた。 それが我の『目』の力だ」
「…信じられんな…」
「そしてその『目』で、君達を解放すれば良き未来を切り開けると視えた…それが理由だ! ハッハッハッ!」
ゴルトは高笑いする
「『未来が見える能力』…ってか? オイオイ…『才能』っつーか『超能力』じゃねーか…」
「ハッハッハッ! これが理由だ。 納得してくれたかな?」
「すげぇ! 俺もそんな力がほしいな〜… でも、なんか『ウソ』ついてる?」
「!!?」
ゴルトは目を見開いた
もしも『嘘を言っている』という言葉をシードが言ったとしても、ゴルトはここまで驚かなかっただろう
アレスだからこそ、驚いた
しかもここから更にゴルトは驚かされる
「あ〜でもウソっていうか…半分本当のことを言ってるって感じ? たぶんだけど…『何個かあるうちの能力のひとつ』…なのかな? 『未来が見える』ってのは?」
「っ…!! アレス君…君は…それが君の『才能』なのか…!?」
「あ〜…残念だが…それはアレスの『才能』よりも『特技』みたいなもんだ…『才能』は別である。 それよりも…アレスの言ったことは本当か?」
「……」
ゴルトはまだ驚いた表情をしていたが、シードの質問に答えるために切り替えた
「…アレス君のその『特技』については後程聞かせて貰うとして…先にその質問に答えよう。 我の『才能』は『未来が見える能力』では無い…あくまでそれは『能力の一端』だ。 我の『才能』は『人の思念を光で見る』…それが我の『才能』だ」
アレスもシードもジンビスも、一斉に首をかしげる
「?? どーいう能力だ?」
「人は誰しも、何か行動しようとした際に『どこにどのようにどうやって』行動するかを『考えてから行動』する。 だが全ての行動がそうとは限らない…いわゆる『反射神経』がそれに該当する。 しかし我の『目』はそれすらも『視る』事が出来る! それは我が『思念』を視る事が出来るからだ!」
「??? え〜…っと…??」
「『人の思念』とは、言わば『人そのもの』。 思考、行動倫理、概念、性格、感情、動作、欲求…『思念を視る』という事は『人そのものを視る』のと同義なのだ。 『人が行動する前』には、必ず『思念による行動予測』を行うのだ。 『前に歩く』事をする前に、『前に歩こうとする思念』が必ず存在し、実際に行動する前に『思念が先に行動する』。 我はそれを『光で視る』のだ。 それは『思念による行動』が無い反射神経を使う行動においても、我はそれを視れる。 『思念』は人だけではない…1つ1つの『細胞』や『脳』にもそれはある…とても微弱ではあるがな。 そもそも『思念』は人が持つそれらの『思念』が集まり1つの『塊』として形成し、『人の形をした思念』として現れる。 それらを我は『光の軌跡』として認識し、『未来予知』『未来予測』『人格の理解』を視る事が出来る…それが我の『能力』だ。 実際には見る事が出来ない、人の『思念による先行行動』…更にそれに付随する『光の形』による『思考回路の予測』…合わせて『光の色』による『人格掌握』…これらをまとめて『視る』事が出来る我の『才能』…名を『輝跡』と呼ぶ。 我は幼少期からこの力を持っている…慣れるのには苦労させられたがな…ハッハッハッ!」
「まとめるとあんたの能力…『人の思念』ってやつを視て、そいつが『やろうとしている行動』を『光の軌跡』で読み取る事が出来る…要するに『今から何をするかを光の軌道で視れる』…そして思考回路や行動パターンを『思念の形』で視て、たとえ反射神経という『思念がない行動』であったとしてもある程度予測を立てる事が出来る…つまりそいつの『細胞や脳や体といった肉体の状態からどんな行動をするか光の軌跡で予測する』…さらに直接そいつの『思念そのもの』を視る事でどんな人格を持っているか分かる…だから『光の色で性格や人格を理解する』…そんなところか…?」
「概ねその通りだ! 流石シード君だな…理解が早くて助かる! ハッハッハッ!」
「…全く分からねー…」
「…全然わからん…」
「お前らは別に理解しなくてもいい…とにかく、『厄介な能力』って事だ」
…そう言ったシードだが、内心は穏やかではなかった
(…『人の思念を光の軌跡で見れるセンス』… 言葉では簡単に言える能力だが…たとえ俺がこの能力を持っても絶対に使いこなせない…それははっきりと言える… 『思念の軌跡を見て未来を視る』…さっきみたいに、俺やジンビスが言おうとした言葉に重ねて同時に言葉を発するなんて…普通は無理だろう… 『視て』から『行動』する…そんなの、あの一瞬で出来るようにするには相当な努力…いや、一瞬で見てから一瞬で反応して一瞬で考えて一瞬で行動する…とてつもない反射神経と思考能力、そして自分の『才能』に対しての理解力がないと出来ない芸当だ… いくら子供の時からその能力を持っていたとしても…そこまでのレベルに達する事が出来るのか…? それに…そもそもどんな『才能』があったからそんな『センス』を発現出来たのか…それも気になるな…)
シードは色々と考えを巡らせるが…結局の所、それは次の質問には関係ないと割り切ってゴルトに尋ねた
「…あんたの能力はある程度理解した…だが結局の所、それが『俺達の解放』と関係あるのか? まさか本当に、『俺達を解放すれば良い事が起こるという未来を視た』わけじゃないだろう?」
「ハッハッハッ…! それは嘘ではあるが、あながち間違っている訳では無いぞ…! 実は君達に…ある『重要な任務』を頼みたいのだ…! その為に! 我はアレス君の力を借りたいのだ!」
アレスはキョトンとした顔をする
「へ…おれ?」
「なんでコイツを?」
「君達に頼みたいという任務は我一人では出来ない…だからこそ『協力者』を集める必要があった… 本来は別の『用途』ではあるが、あの牢屋に捕まっている『犯罪者達』も我の『協力者』として勧誘するつもりではあった」
「別の『用途』…あの牢屋に捕まってる連中にも何かさせるのか…?」
「ハッハッハッ…今は気にする必要は無いだろう? だが…やはり『罪を犯した者達』というのは簡単には信用出来ん…だからこそ我の『目』を使うのだ。 我の目…『輝跡』の持つ能力の1つ、『人格掌握』は『人そのものの思念を視てどんな人物かを理解する』という能力… 人の身体から立ち上る『オーラ』の様な思念を我は視て、我はそれを理解する。 色や形、量や大きさを鑑みるのだが…なかなか居ないのだ…我が勧誘したいという者も、それに見合う思念を持つ者もな… そんな折、若き青年達を捕まえたという話を聞いてな…是非ともこの『目』で見てみたいと思ったのだ! そして『輝跡』で見た時、我は確信した…君しかいないと…!」
ゴルトはビシッ!…っと指をアレスに向けた
「我はアレス君…君のような『穢れなき思念』を持つ者を見た事が無い! 純白で光り輝く思念…そして強く大きく、しかし純真無垢で不安定ではある…が、それ以上に君には惹かれるものがある…! 君の『光の軌跡』は…我には眩し過ぎる程だ…! だからこそ…だからこそ君に協力して欲しい…! 君に頼む『任務』は、正直君には難しいかも知れない…しかし! 君なら頼めるのだ…! 我の協力を受けてはくれないだろうか…!?」
「……」
シードはゴルトの言葉自体には何も違和感はなかった
むしろこれは…受けなければならないのだ
ここで断ったりしたら何をされるか分からない…
ゴルトが言った『別の用途』…それを強制的にやらせられる可能性が非常に高い
ある程度自由が効くであろうその『任務』…受けるべきではあるが詳細が分からない以上、安易に首を縦にふる事は出来ないと思っていた
それはシードならばそうする
もちろん、アレスはそんな事考えない
「なんだかよく分からないけど…やるぜ!」
「ハッハッハッ! 君ならそう言ってくれると思っていた…いや! 我の『目』に狂いは無かった…既にその『未来』は視えていたぞ! 宜しく頼もうアレス君!」
ゴルトとアレスはがっしりと強く握手をした
「……」
「ま…お前ならあんな簡単に言わねーだろーな…諦めな」
「……そうだな…」
シードはもはや、何か言う気力すらもなかった
「つーか結局…その『任務』ってヤツは何なんだ?」
「ハッハッハッ! それはここで言ってもいいが、君達の仲間である彼女達にもそれは伝えておかなくてはならない… 風呂から上がり、全員揃ってからそれは伝える事にしよう!」
「…それもそうだな…んじゃ上がるとするか…」
「え〜! もう戻るのか!?」
「うるさいぞアレス。 のぼせるし、俺はさっさとその『任務』ってやらを知りたいからな」
そう言うと、しぶるアレスを引き連れてシードとジンビスは風呂から上がり、脱衣場へと戻り始めた
「………」
「…あんたは上がらないのか?」
ゴルトは湯船から上がったシード達とは対照的に、まだ湯船に入っていた
「…我はもう少し汗を流してから出るとしよう。 外にはメイドの者達が着替えを用意しているはずだ…着替えたら第4客室で待っているといい。 我も直ぐに向かおう」
「分かった。 …なら先に上がっておく」
……そして浴場にはゴルト1人だけ残った
シード君…君は尋ねなかったのだな
『なら俺の思念の色は何色なんだ?』……と…
アレス君は限りなく『純白』…誰よりも何よりも、美しく純真無垢な『光』を放っていた…
裏を返せば、『何色にも染まりやすい』…白き『光』はそれほど繊細なのだ
ジンビス君は『灰色』…白と黒が混ざり合った実にジンビス君らしい色だ…
我は彼の事をあまり知らないが、きっと彼は『正義感のある悪者』…護りたい者の為に自ら進んで悪魔にでもなる覚悟を持った…きっとそんな『思念』だろうと我は視えた…
だがシード君は…彼は違う…
『純黒』
いや…黒であるかどうかすらも分からない程の『黒』…
我は…あれ程の思念を視た事が無い…
強大…かつまともに見る事も出来ない…我もその思念にあてられる可能性もあった…
彼が…彼が何者かも分からない
シード君…君はアレス君とは真逆の存在…
そんな君がアレス君と共に行動しているのが不思議な程だ…
君のその『思念』なら…我が君達に頼む『任務』を遂行出来るだろう…
我はアレス君に期待している…それは事実である
だが君以上に…我はシード君に期待を寄せている
『白き思念』は全ての者を平等に受け入れる…例えそれが『悪』であっても
…アレス君はきっとそうであるだろう
だが…『黒き思念』ならば…全てを疑い、拒絶してから受け入れる…だが、それでも信用しない
…シード君がきっとそうである様に、
自分自身でさえも
「フフッ…♪ 今度は…こっちの番ね…♪」
「!? イェロンちゃん…!? その羽…その雰囲気…その口調…まさか…」
「…『もう一人』のイェロンさん…?」
「ええ…そうよ? 私のカラダ…堪能してくれたかしら? 次はアナタの身体を…私が堪能するわね♪」
「ちょっ…待っ…!」
「フフッ…フフフッ…♪」
「ひぃっ…ひやぁぁぁぁ…!!」
『小説内ではとても書ききれない内容』
「ぅぅ…あぁぁ……♡」
「イイ顔ね…♪ 良かったわよ…アナタの身体…♪」
「…ミーシャさん…」
「さっ…次は…♪」
「…!」
「スイちゃん? と〜ってもキモチよくしてあげるわ…だ・か・ら、大人しくしててね♪」
「…!!」
『小説内ではとても書いちゃいけない内容』
「…はぁっ…ぁぁ…♡」
「ハァ〜♪ 最っ…高…♪ さて…と…? ここからが『本番』ね…♪」
「「……!?」」
「もっとイイコト…してあげるわね…♡」
「「……!!!」」




