英雄との会話【結】
「セイスビークさんの『才能』…一言で言えば、『声で相手を支配する』能力だ」
「『声』……厄介だな…」
自身の持つ長所や特技が『ソウル』により超強化された能力…『才能』
一部、『遺伝』や『家系』…そして『人格』や『性格』、更に『欲望』や『渇望』といった『その人自身を表すもの』も強化され、『才能』として現れる場合もある
しかし9割方は長所や特技が強化された『才能』である
それはセイスビークも例外では無い
「彼のセンスの名は『絶対王声』。 『声を聞かせた者に可能な事ならば自由に行動させる』能力…それが彼の力さ。 自身の発した『声』を相手に聞かせる事で、その声の『命令』通りに相手の肉体を『支配』させる事が出来る『才能』…例えば『手を上げろ』と言う『声』を聞かせれば、その言葉を聞いた者全員に手を上げさせる事が可能なんだ。 これは『絶対王声』が相手の耳を通じて『脳』に直接その『支配』を作用させる為、自分の意思ではどうやっても抵抗出来ないからそこまでの『支配』を確立させる事が出来るんだ」
「なんという能力…! 声さえ聞かせれば相手を支配する事が可能なのか…!」
「セイスビーク陸王がそんな力を持っているのなら…戦争が起こってしまった場合、僕達『獣人側』が勝利するのは不可能…厄介だね…」
「だが…もちろん『不可能』もあるんだろう? それに…何でも『支配』させる事が出来るなら、戦争なんて起こす必要もないだろう… 察するに…『出来ない事』を『出来る事』にするために『あんた』の協力が必要だった…ってところか?」
「………そうか……そこまで……」
リトはシードを心から恐ろしいと感じた
たったこれだけの情報でそこまでの推理が出来る事…そして確実に『真実』に迫るその思考能力…
『天才』…そう言えるだろう
「シード君、ほぼ君の予想通りだよ。 彼…セイスビークさんの『絶対王声』にも『弱点』が存在する。 まず『支配は単語で単調な命令形しか出来ない』事だ。 『長文の命令』…あれやこれやをやってこうしろ、なんて『支配』は出来ない。 これは『脳』に直接作用する『絶対王声』の性質上、『考えて何かをやらせる』事が出来ないからだ。 『複雑な行動』と『命令形でない支配』は出来ない…そこまで完璧では無いね。 次に『一定声量の声を聞かせないと支配出来ない』事だ。 耳を塞いで『声』そのものを聞かなくしたり、何か遮音性の高い物で『声』を阻害すれば『支配』されないんだ。 正確な声量は取りあえず置いといて、『はっきり』と『聞こえる』程度でその『支配』は発動する。 そしてその『支配』も、『その人物が出来る範囲内の行動のみ』しか出来ない。 例えば『歩け』という『支配』をさせるのは可能だけども、『浮遊しろ』なんて普通の人ならばまず不可能…だからそれの『支配』は出来ない。 逆に…『その人物が可能な事ならばどんな事でも支配出来る』んだ。 と同時に、これは弱点では無いけど、『支配』する人物の特徴によって『言葉の意味合い』も違ってくる。 例えば『跳べ』は『足がある人物』にならそうなるけども、羽の生えた人物…獣人の『ハーピー族』や『ドラゴン族』に分類される『鳥族』や『有翼族』等には『飛ぶ』と言う意味合いに自動的に変換される。 逆に『ジャンプしろ』と『支配』すれば、例え『有翼族』でも『跳ぶ』と言う『支配』になる。 セイスビークさんの能力は応用力も支配力も抜群なんだ…単純に言って『ほぼ無敵』だよ…」
「……『ほぼ』…ですか…?」
ブルールが聞き返す
「『絶対王声』の致命的な弱点として、『自分の声でのみ支配出来る』と言う点だ。 つまり『録音音声』や『拡声魂器』を使った『擬似的な自分の声』では相手を『支配』出来ない。 更にその『支配範囲の狭さ』…これも致命的な弱点だ。 人の声量にもよるが、普通は大きな声を出せば数十メートル先に簡単に声を出す事が可能…もちろん、それを聞き取るのも十分可能だ。 でも『絶対王声』の性質上、『聞こえた』レベルでは『支配』は発動されない。 耳には聞こえても、『脳』に直接その『支配』を及ばす事が出来ない…目測ではあるけど、約5メートルから10メートル前後ぐらい…だったかな? 正確な数字を言えないから何とも言えないけど…」
「………なるほどな……それで?」
「………」
シードが含みたっぷりの声を出す
「それであんたは何の協力をしているんだ…? 大方、『絶対王声』の『支配範囲を広げる方法』を考えてくれ…とでも言われたのか? …『絶対王声の効果を付加させる事が出来る拡声魂器』でも作ってる…のか?」
「「「「!!!!???」」」」
「………」
シードの言葉に、ブルールやフレールはもちろんジンビスやイェロンも驚く
逆にリトは静かだった
それは…その静寂は、『それが真実』である事を物語っていた
「……僕とセイスビークさんの『最終的な目的』は違う… でも『戦争を起こさせる』という目的は一致している…それがとても『個人的な力では出来ない』事も… だからお互いに『協力』した。 僕は『知識』と『技術力』の提供…セイスビークさんは戦争へと導く『戦争の立役者』として…それぞれが『目的』を持ち、『協力』した… そしてその『技術力』の一つとして、『絶対王声を発現出来る拡声魂器を作る』…これが最重要項目だった。 それさえ出来れば、戦争を確実に勝利する事が出来る。 『声』を聞かせれば、誰でも『支配』出来るんだからね。 …そしてそもそも、戦争すらも起こさなくて良くなる…『武器を捨てろ』とか『動くな』とかで『支配』すれば簡単に拘束して…あまつさえ『殺害』も出来る… 一方的な『支配』が可能なんだ。 …だけど…結果的にはまだ完成していない…簡単には作れないさ…『不可能』を『可能』にしているんだからね」
「…そうですか…良かった…」
「それが完成してしまえば、俺達『獣人』には手の打ちようが無い… 博士、なるべくならば…」
「大丈夫だ…何とか誤魔化しているから安心してくれ。 それよりも…」
リトは唐突に立ち上がった
そして魂機がゴチャゴチャと置かれている部屋の隅へと移動する
そしてその隅の壁際を何やら触っている
「……えっと……ここか…」
カチッ
何かのスイッチが押された様な音が鳴り、急にリトの立っていた場所の直ぐ横の床がシュゥンッ…っと音を出して開いた
落とし穴の様に穴が開いて、暗闇へと続く階段が見えた
「…!? 博士…これは『地下室』ですか…?」
「兄さん…多分違うよ… これは『地下通路』だよ…!」
アレス達も立ち上がり、その穴を覗き込む
「フレール君の言う通りさ。 これは『地下通路』へ続く道だ。 この王都『シタルシュバ』には『地下迷宮』が存在する。 王都全域を行き来出来る程の広さを持つこの『地下迷宮』は、あまり整備されていないどころか『エニグマ』まで棲み着いている始末…今じゃ誰も使わずに封鎖されて放置されているんだ。 この道はその『地下迷宮』の一画に繋がる道なんだ。 …君達はここを通って王都を脱出してくれ。 …それと…」
リトは懐から『小さな箱』を取り出した
それは『ルテイク』だった
青色の『ルテイク』と呼ばれるタバコの箱ぐらいの大きさの魂機には、赤や青のボタンと上下矢印のボタンが数個付いていた
手慣れた様子でリトは『ルテイク』を操作すると、『ルテイク』から赤色の光線が飛び出し床にそれが当たると、そこに何かしらの物質が形成されていった
ほんの数秒で、何も無かった床の上にアレス達の『装備』が現れた
「これは俺の武器…『叛撃十字架』!」
「私の『叛逆十字架』も…!」
「あっ…! 私達の武器もあるわ…!」
「…わたしたちの所持していた『ルテイク』や…持ち物もすべて…そろっていますね…」
「よかった~…俺の刀、なくしたら大変だったからな~!」
「………」
アレスの持つ『黒刀』やミーシャの『銃』、スイの『ティールテイク』にシードの『長槍』…
そしてジンビスの『巨大な十字架の武器』とイェロンの『十字架が3つ繋がったネックレス』が目の前に現れた
どれもこれも、教会から離れる時やセイスビークに捕まった時に落としたり没収された物であった
更にシード達が持っていた自分達の荷物が入った『ルテイク』すらもそこにあった
「僕が密かに回収していた君達の荷物だよ。 無くしたりしたら困るだろうからね… それに僕も困る…その2つの『武魂』は2人に適合するように調節して製作した、僕のオリジナルの『武魂』だからね。 簡単に壊されたり無くされたりしたら流石に僕も落ち込んじゃうよ…」
「この『武魂』…リトさんが作られたんですか…!?」
「マジかよ…知らなかったぜ…」
「ちょっ…ちょっと…! まずその…『武魂』って…何なんですか…!?」
会話がトントン拍子で進まれても、ミーシャは付いて行く事が出来なかった
「ああ…ごめんごめん… 『武魂』って言うのは、正式名称『魂構搭載型可変・可動式駆動武装』…通称として『武魂』と呼ばれている『武具』の事だよ。 ソウルをエネルギーとして駆動する『魂構』と呼ばれる『機構』を組み込んだ武具を『武魂』と呼んで、武具にもよるけどソウルを流し込めば変形したり動作したりする『ギミック』が内蔵されているんだ。 例えばジンビス君の持つ『叛撃十字架』ならば、柄の先端にソウルを流し込めば十字架の先端に埋め込まれた『砲口』から『弾』が発射される。 流し込むソウルの量や性質を変える事で、『放射』や『弾丸の速度の調節』も出来る重量級武器なんだ。 逆にイェロン君の『叛逆十字架』は『所有者のソウルを倍増する機構』が組み込まれているんだけど、僕はそれに追加して『ネックレスの繋ぎ目の部分にソウルを流し込むと、ネックレス形態と戦闘形態に自由に変えられる』という機構を組み込んで『武魂』を作ったんだ。 ネックレス形態は小さな十字架が3つ繋がったネックレスになり、戦闘形態は人ひとりと同じぐらいの大きさの十字架が3つ浮かび、それを自由に操作しながらソウルの威力や効果を最大『3倍』に出来る武器になる… ジンビス君の怪力やイェロン君のソウルコントロールが成せる『武魂』なんだよ。 元々は別の大陸の『技術』を僕が真似て作った『武魂』だから、正確な機構や駆動方法は少し違うけどね」
「俺はこの武器に慣れるのに『3年』はかかった…さすがにそこのシードでも、『使いこなす』なんて出来ねーはずだぜ?」
「『叛逆十字架』から『魂術』を放つ事が出来るのですが、私も最初はよく暴発していました…慣れるのに『4年』は掛かりました…」
ミーシャは唖然とした
「…私達には絶対無理ね… でもそんな『武器』があるなら心強いわね…!」
「いいな~…俺もそんな『変形武器』ほしいな~…」
「…ご主人様は…今の『刀』のほうが強くてかっこいいです…」
「………」
シードは静かに『2つ』考えていた
厳密に言えば『今』は関係ないのだが、シードは中央大陸での出来事を思い出していた
中央大陸『セントレイン』の王都『サニーライン』にも、同じ様な『地下迷宮』が存在する
『アンダーライン』…そう呼ばれている
多分この『シタルシュバ』に存在する『地下迷宮』にも名前が存在するのだが…
それはこの際置いておこう
もう1つ目の方が直接関係ある
そもそも『ルテイク』は、『あらかじめ設定した物質のみを圧縮し携帯出来る魂機』である
しかしリトは『アレス達の荷物を圧縮したルテイクごと、ルテイクで圧縮して携帯していた』のだ
これは既存の技術ではかなり不可能に近い
『ルテイク』は例えるなら、『氷』を一旦『水』に変換して『ペットボトル』に入れて携帯する様な物
『氷』が『物質』で、『ペットボトル』が『ルテイク』である
『ペットボトル』に『氷』を『入れやすい形』にして圧縮して携帯する
これが複数個あったとしても、同じ『氷』である以上は変換も圧縮も簡単である
『ペットボトル内』に幾つもの『部屋』があるイメージで、その物質の質量や形がある程度決まっているのならば変換構造も圧縮量も簡単に設定出来る
しかしそれがリトの場合は違う
1つの容器の中に、大きさも質量もバラバラな物質を大量に変換した上で、それらが混ざらずに1つの容器内に納める『ルテイク』を持っているのだ
…だが、リトならば可能なのかも知れない…
事実、あの『武魂』を作ったリトならば、そういった『ルテイクを圧縮携帯出来るルテイク』を持っていても不思議じゃない
シードはそれを踏まえた上で…
『どうやってそのルテイクを作ったのか?』とかじゃなく、『どうしてそんなルテイクを持っているのか?』なんかじゃなく…
なぜ『教会』に置いてきた2人の『武魂』を、リトは持っているのか…?
あの場に居たブルールやフレールに頼んで回収してもらった…?
いや、あの場には『セイスビーク』が居た
彼の目を盗んで『ハロノラ達を安全な場所に連れていく』任務を受けていたはず…
セイスビークの視線を掻い潜りながらそれをやるのはかなりの難易度だ…
ハロノラ達が無事な以上、セイスビークはハロノラ達を見付けて殺害する事が出来なかった…という事になる
『それ』をしないと、戦争は起こす事が出来ないからである
じゃあどうやって…?
シードはそれを聞こうとしたが、尋ねている暇は無かった
ピーーー
「「!!!」」
「…? この音は一体…?」
イェロンはこの部屋の『自動魂機ドア』の方を見る
「『紫村博士…先ほどお連れした者達との会話は終わりましたか?』」
ドアの外から声がした
この声は『殲滅隊』…さっき自分達を連れてきた人達の声だった
ブルールとフレールは、この音がドアのインターホンの音だと直ぐに気付いた
「…やはり…!」
「紫村博士…! どうしま
「静かに… ここは僕達で何とかしよう…アレス君、皆で下に行ってくれ… 後で合流する」
そう言うと、リトはドアの前まで行く
「…どうしたんだい? 彼らとの会話はとっくに終わっているが…?」
「『…? こちらには戻って来ていないのですが…?』」
「それは本当かい? …僕も…僕達も一緒に捜すよ。 人手は多い方が良いだろうし、彼等に逃げられては『計画』が台無しだからね…」
リトはそう言うと、振り向いてアレス達に目で合図をした
(行くぞ…さっさと行った方が良い…)
シードは全員を催促して、階段を下ろさせる
「…準備が出来次第、僕達も行く。 この研究所はそれほど広く無い…捜せば直ぐに見付かると思うよ」
「『…分かりました。 ですが…念のため、紫村博士の部屋を捜索しても宜しいですか?』」
「…大丈夫。 断る理由も無いからね。 ちょっと待っててくれ…」
アレス達は急いで階段を下り、その穴をリトは閉じる
そして自動魂機ドアを開ける
「『…お疲れ様です紫村博士…ん? 獣人騎士団のお二人も一緒だったんですね…?』」
「『ああ…今回の任務の事で少しね… 彼等にも協力して貰って捜そう』」
「『…了解です博士…』」
「『…任せて下さい』」
閉じた穴の中で階段を下りながら、背後でそんな会話を聞いてアレス達は下へ下へと暗闇へ落ちて行った…
―――水無月 1ノ日 月魂日 午前10時45分―――
アレス達は『地下迷宮』を進んでいた
曲がり道があるものの、ほぼ一本道の薄暗い『地下』だった
中央大陸の『アンダーライン』は古い遺跡の様なコケの生えた石造りの地下構造だったが、ここは人工石材(俗に言うコンクリートの様なもの)で造られた灰色の半円形の通路をした地下構造だった
どうやらかなり昔に造られた訳ではなく、ある程度昔に造られたという印象を受けた
…リトの言う通り、整備されておらずにエニグマが棲み付いている
アレス達はそれらを片付けながら先へと進む
炎や氷といった素体型、蛇型、人の形をしたもやで出来た黒い幻人型、浮遊したボロボロの剣の幽剣型等…強すぎる訳ではないが、数が多くなかなか手こずった
「…ふぅ…ふぅ…どれぐらい進んだのかしら…?」
「かなり進んだはずだが…つーかどこまで行けばいいんだ?」
「…そろそろ…目的地に到着しても…おかしくはありません…」
「私も…ちょっと休みたいです…」
「ていうかどこに向かってるんだ?」
「…さあな…」
道はあるがどこに行けばいいのか分からない
道は真っ直ぐだがどこに行くのか分からない
その不安は、ようやく解決した
「………来たね…道中は大丈夫だったかい?」
進んでいたその道の途中、横道からリトが現れた
「リトさん…! 私達の事…バレてしまったとか…?」
「それは大丈夫だよ…君達が『逃げた』事はバレても、僕が『逃がした』事はあの『殲滅隊』にはバレていない」
「…良かった…」
「しかし…アンタはどーしてそんな所に…?」
「研究所の別の場所からも、この『地下迷宮』に入れる秘密の通路があるんだ…僕はそこを通ってここまで来た…大丈夫、誰にも気付かれてないよ」
リトはそう言うと、アレス達と合流して先に進もうとする
「リトさんも私達と一緒に…?」
「ああ…この先に僕の設置した魂機が存在する。 それを起動して、君達を脱出させる。 その魂機は僕しか起動出来ないからね。 もう少しでその地点に到着する…それまで宜しく頼むよ」
「…よろしくお願いします…」
…ふとアレスを見ると、かなりワクワクしていた
「…ご主人様…?」
「…『ヒーロー』の…『ヒーロー』の実力が見れるのか…!? 俺…すっっっごく楽しみだ!!」
興奮で震えている
しかしリトは残念そうな顔をする
「…申し訳無いけど…僕の戦闘装備は今は持っていないし、この先はその魂機を設置した関係上でエニグマは全く居ない…『退魔魂石』を張り巡らしているからね… とにかく急ごう」
――その言葉通り、リトが合流して進み始めてからエニグマと遭遇しなかった
アレスのテンションが徐々に下がって行き、約3分後…その魂機を設置した場所へと到着した頃にはもう項垂れていた
「…よし、着いたね。 ここが目的地だ」
そこは行き止まりだった
半円形の人工石材の壁で行き止まったその前の床に、人ひとり余裕で乗れる程の大きさの薄い円形の魂機が配置されていた
「…これは…『転送魂機』か…?」
「そうだよ…今、起動しよう」
リトは懐から小さなリモコンの様な物を取り出してボタンを押した
ピッと音が鳴ると、その円形の魂機から上方向へと円錐状に淡いソウルが立ち上った
「実を言うと、『転送魂機』自体は小型化は成功しているんだが…燃料であるソウルの充魂量が多くなくて、『3回』程起動したらしばらくの間充魂しなくちゃならない上に、転送先に小型の『転送受信魂機』が必要なんだ…目的地にそれを置いていないから、君達全員を転送するならこっちの方が確実だし早いからここまで来て貰ったんだ。 この『転送魂機』に乗れば、王都を抜けて海岸線の崖にある雑木林へと移動出来る。 ただし一方通行…こちら側からあちら側に移動したら戻って来る事は出来ない。 そしてそこに、船を一艘用意している。 小型の『魂機船』で速度も十分、少し狭いがある程度くつろげる部屋もあるし食べ物も保管している。 隣の大陸に行くまでなら問題無い。 この大陸を脱出して、いずれ起こる戦争に備えて欲しい。 …他大陸の君達も例外じゃ無いからね」
リトはそう言うと、何か言いかけたジンビスとイェロンに向かって更にこう言った
「もちろん君達2人も、戦争が一旦落ち着くまでしばらく他大陸に身を潜めていて欲しい」
「なっ…!? オイ! 何言ってんだ!?」
「少々お待ち下さい! 私達も…シスターや皆の場所で
「悪いがそれは出来ない。 君達の顔は既に『殲滅隊』はおろかセイスビークさんにも知られてしまっている… この先、彼等と遭遇して君達の素性がバレない保障はどこにも無い。 特にジンビス君は『ウィークエンドの悪魔』と呼ばれる程に有名だ…君を知っている人は大勢居るだろう。 恐らくセイスビークさんは君達の情報提供を大陸中に呼び掛ける…そうなった時、ハロノラさん達の居場所も直ぐに気付かれてしまう…『身を隠す』のではなく『行方不明』として居なくなった方が、ハロノラさん達や皆を保護している僕の為にもなる…理解して欲しい…」
「「………」」
リトの言っている事は正しい
この先、ジンビスやイェロンが隠れている場所から一歩も外へ出歩かないのなら話は別だが、それはかなり不可能に近い
何故なら2人が『何もしない』と言い切れる保障がどこにも無い
戦争が始まったら黙ってそれを見ている…なんて事、ジンビスやイェロンは到底出来ない
自分達の住む大陸の危機を指をくわえながら見ている事は絶対にしないし出来ないだろう
これは、リトが100%正しい
だからこそ何も言えなかった事が悔しくて、だからこそ何も出来ない事が歯がゆかった
意気消沈の2人は、とぼとぼと歩いて『転送魂機』まで進んで行く
「他大陸に居ても、この第三大陸の情勢はきっと耳にするだろう…戦争はもう止められない…開戦まで『一ヶ月』程だ… だけども終戦までは恐らく早い…どれぐらいかは分からないけどね… そうしたら、この大陸まで戻って来てくれ…ハロノラさんもきっと君達の帰りを待っているはずだ。 気を付けてくれ…もちろん、アレス君達も…!」
リトは優しく微笑んで、アレス達を見送った
「ありがとうございました…! ほらアレス! いつまでもガッカリしてないで行くわよ! スイちゃんもシードも……?」
その時、ミーシャは気付いた
そして項垂れているアレスも気が付いた
…先ほどからシードは静かだった
こういう時、シードは何か考えているのだが、最後にはそれを全て言っていた
今までの道中、いつもそうやって来たからだ
今回もそれをどこかで言うのだろうと思っていたが、結局言わなかった
でも…この『転送魂機』を前にして、シードの雰囲気が一変した
それと同時に、安心した
「なあ…『英雄さん』…」
静かに、淡々と口を開くシードを見て………
「俺は、一度『怪しい』と思った相手に対して『信用』はするが『信頼』はしない。 それが白鷺シードなんだよ。 だから…俺にあんたを『信頼』させるためにも………ちょっとした…『答え合わせ』に付き合ってくれないか…?」
『いつものシード』………だと……
次回 答え合わせ【解】
いや〜…
更新遅れた遅れた




