雨の日の約束
―――ジンビス視点―――
出会いなんて覚えちゃいねー…
そもそも…そんな昔の事覚えてても意味がねーからな
だが…あの時の事は忘れたくても忘れられねー…
とにかく『雨』が降っていた
小雨だ
強くはなかった…それは覚えている
俺は無我夢中で一人の女の手を…イェロンの手を引いて…『森』へと走ってた…
理由は…『逃げていた』…それしか言えねーな…
『誰か』からもそうだが…『しがらみ』…ってやつからか…
俺達はそれから逃げてた
俺には…逃げる事しか出来なかった
『アイツら』に立ち向かって勝てる気がしなかった
だから…必死で『逃げ道』を探した
もう俺は…『そこ』に逃げるしか…思いつかなかった
だから…アイツの部屋に行って連れ出した
そこに居た、目の前に居る女が背負わされた『しがらみ』…
本人の意思を無視して…『全部』持って行かせようとしたクソみてーな『家』から…俺達は逃げてた
俺には『力』が無かった…その時の俺はな…
戦っても勝てねー相手ってのは…一目見て分かった
だから俺は…『森』に入って…逃げた…
…ずいぶん…つっても、その時は俺達はガキだったから大した距離は走ってねー…はずだったけどな…
けど…今思えば相当走ったんだって思い知らされたな…
あの教会が見えた…って事はな…
イェロンを連れて森に入った俺は…特に何も考えずひたすらに走った
この森を抜けたい…そして反対側に出られれば…何とかなるんじゃねーかって思ってた
が…しょせんはガキ…そっちに行く前にバテちまった…
俺だけじゃなく…イェロンもそうだった
走って走って走りまくって…疲れて倒れこんじまった時…それは起きちまった
イェロンは『サキュバス』…しかも、他の『キュバス家』の連中よりも力が強い
だからこそ…アイツは『キュバス家』の『しがらみ』を背負わされた
それがアイツはとてつもなく嫌だった
もともとアイツはサキュバスの力が嫌だったのもあってか、そういった『しがらみ』を捨てたくて仕方がなかった
それが…無意識に出ちまったのかね…?
イェロンはその力…『サキュバスとしての本来の力』を無意識に抑えるようになってた
その抑えてた力が…その時に暴走した
走りまくって体力が限界を越えて…自分の背負うべき『しがらみ』に魂が潰されかけて…
それを…俺にも背負わしたという罪悪感…
そんなもん全くねーのにも関わらず…アイツはそれを必要以上に重く受け止めちまってる…
だからだ…だから…
…体力の尽きた俺達は森で立ち止まった
少し休憩しなけりゃ、こっちが持たねーからな
俺は少し休めば大丈夫だった…が、イェロンはそうじゃねー…
失った体力と責任の重圧…
マイナスにマイナスが掛け合わさって、イェロンは抑えていた『サキュバスの力』が暴走した
長い黄色の髪がピンク色に…瞳が紅く変わり、喋り方も『サキュバスっぽさ』に満ちた声になった
そして…目の前にある『食事』に喰らい付いた
――そっから先は…何をされたかはあんまり覚えてねー…
次にぼんやりと目を開けた時は…全身を襲う強烈なダルさと、泣いているイェロンの顔だった
―――キュバス視点―――
私は別に何も気にして無かった
ジン君の事じゃなくて…家の『しがらみ』の方ね
第三大陸『リーバイド』でもかなりの上位階級に当たる『キュバス家』…貴族の中でも高い権力を持っていて、大きな領地も所有している大貴族…
当然、『次の当主は誰か?』…なんて話しが持ち上がって…
私はもちろん、それの一人の候補になった
『キュバス家』の中でも一番ぐらいになる『力』を、8才の私が持っている…
実力でならば候補に上がっててもおかしくはないけど、普通なら当主に絶対選ばれる訳がないわ
でも…『キュバス家』は違う…
『実力主義』…そう言葉で表した方が分かりやすいかもね…
8才の私でも、『実力』があれば次の『当主』になりうる可能性があった…
さっきも言ったみたいに、私は別に『何も気にして無かった』
当主候補でもなんでも、なって損は無かった
大人になってそういった『権力』があれば、将来的に不自由なく過ごせるから
でも…1つだけ…
そんな『権力』があったら出来ない事が1つだけ…
『あの人』と…会えなくなってしまう…
それだけ…それだけ気にしてた…
『私』も…『あの子』も…
『私達』が好きになっちゃった…『あの人』に…
だけど私は食べてしまった
体力が無くなって、私はすぐに『ごはん』が必要だった
人の持つ『精気』を、私は必要としていた
『サキュバス』は他者の精気を食べる習慣があるの
もちろん食べなくてもいいんだけど…
それでも精気はご馳走…特に、体力や気力が底を尽きた状態では肉体がそれを求めてしまう…
それは…自分の大好きな人ならなおさら…にね…
ただ…『食べたかった』
少しだけ…ほんの少しだけ、食べれればそれで良かった…
でも…私は『サキュバス』
抑えは効かなかった
『あの人』に…ジン君に…
ジン君を押し倒して馬乗りになって、手首を押さえて全身に力を込めた
『サキュバス』は普通精気を吸い取るために、キスや○○○して吸い取るんだけど…
私は『力』があった
対象に触れるだけで、精気を十分に吸い取る事が出来た
ジン君に馬乗りになった状態で精気を吸い取って『食事』を済ませるだけだった
だけど…やっぱり抑えが効かなかった
好きだった
どうしようもなく
…そして空腹だった
どうしようもなく
…全て食べたかった
どうしようもなく
私はジン君を貪り喰った
小さな体で抱きつき、口付けを何度も繰り返して、ジン君の精気を吸い取っていった
空腹が満たされても、それは止まらなかった
でも死ぬ事は絶対無かった
精気を吸われても時間がたてば回復するし、そもそも8才なら吸い取れる精気の量も限りがあるし
それでジン君が死ぬ事は絶対無かった
――それでも…だめだった…
『私』が『私』を許せなくなる理由には…それで十分だった…
……『私』が『私』の中で眠りについたのは、『全て』が終わった後だった
―――イェロン視点―――
『オマエ…つまんねー生活してんなー…』
…『彼』に初めて出会った時…そう言われた…
『人間』と『獣人』が分かれてるこの大陸で…『人間』のジンビス君と『獣人』の私が会う事は無かった…
でも…私の家は貴族の『キュバス家』…
第三大陸中立西貿易港『ダリルコート』に私用と交易に訪れるのは、別に不思議ではなかった…
中立港は『人間』と『獣人』が一緒に暮らしていて、他の大陸からも人が来る…それは同時に、『他大陸との交易が行われる』という事…
…あの日もそうだった…
お父さんに連いて行って『ダリルコート』に来たあの日…
いつも通りに、お父さんが仕事の話をしていた時…私は港町を見て回っていた…
『当主になるなら観る事も重要だ…』なんて…とても8才の娘に言う言葉じゃないのに…
それでも…お屋敷で勉強するよりもずっと楽しかったし、私の触れた事の無い文化を知れる事がとても面白かった
何より…私の住む『獣人側』には絶対に居ない、『人間』と会う事が出来たから
元々『人間』の姿をしていた私だったから『人間』と喋りやすくて、すぐに港町の子供達と仲良くなれた
でも一人だけ…いつもこの港に居る子供とは違う子が一人…その日には居た
そして一言…初対面の私に向かってこう言った…
『オマエ…つまんねー生活してんなー…』
初めて会った子にそんな事を言われて…もちろん私は驚いたし怒りもした
でも…『彼』だけだった
私が悩んでいる事を、そのまま言ってくれる人は
一緒に遊んでいた子はおろか、大人の人にも常々言われていた言葉…
『何一つ不自由の無い生活で羨ましいな』
…私と会う人はみんなそう言っていた
でも『彼』は『つまんない生活』…と言った
『家』に縛られるだけの、不自由じゃなくても自由が無い私の事を…理解してくれる子だった
その日はそれだけで終わってしまった
でも再び会えた
その月はダリルコートに何度も訪れる必要があったから
『次期当主候補』である私は、この『人間』の情報が行き交う場所において、得るべき物が多すぎるためだった
つまり…『戦争』…
『人間』と『獣人』の戦争が始まった場合…膨大なソウルの量を持つ『キュバス家』は、間違いなく戦争の最前線に送り込まれる可能性があった
そうなった場合、少しでも『人間』の情報はあった方が有利に進む…そういった考えがあったらしいから…
それに加えて他大陸の『技術』…
第三大陸にある『バイオレット社』という全大陸中最大規模を誇る『魂機開発・研究企業』とは違う技術…それがあれば、『人間』を出し抜けるとお父さんは考えていた…
『裏ルート』からそういった技術を買うためにも、頻繁にここを訪れる必要があった
しかもこの頃は戦争間近の状態…
今も一触即発の状態だけども、この頃に比べたら落ち着いている
だから何度もここに来ていた
…そして来るたびに、『彼』と会った
周りの人とは少し違う…不良みたいだけど変わった子…
私は会うたび、『彼』が気になっていった
乱暴だけど…なんだかんだいって皆を気にかけている変わった子…
…私は知りたかった
『彼』の事を…もっと詳しく…
『彼』がどこから来たのか…どうしてここに居るのか…好きな食べ物や趣味や特技…
小さな事でもいいから、もっと『彼』を知りたかった
そのために…私を知ってもらう必要があった…
『わたしはイェロン・キュバス…あなたのなまえは…?』
『………おれは―――
でも…長くは続かなかった
『準備』が整ったらしく…私は戦争の最前線に配属されてしまった
もちろん『戦争』は起きないはずだった
あくまで『牽制』目的…『戦争が起きれば実力行使に打って出る』と、人間側に知らしめる必要があるって獣人側で提案されたらしく…
…私は…それに利用される事になった
最前線に立ち、人間に獣人の実力を見せびらかす…それが目的だった
『キュバス家の力』は、それにうってつけだった
そして同時に、他大陸で入手した『技術』も見せ付ける予定だった
…当然…私は『反対』だった
そんな危険な事を…私はしたくなかった…戦いたくなかった…
それ以前に…私の力は誰かを傷付けるために使うものじゃない…
『次期当主候補』だからって…『力がある』からといって…
それが『戦う理由』にはならない…!
それに私は…『自分の力』を抑える自信がなかった…
一度使ってしまえば、『もう一人の私』が暴れてしまうから…!
『サキュバス』としての…私が…
私は嫌だった…
『キュバス家』の一人として…居たくなかった…
でも…
断る『勇気』も…逃げる『決意』も…
私には無かった…
そして………その日が…その時がやってきた…
ダリルコートを出発して、人間側に牽制をするために『最前線』へと向かうその日…その日は雨が降っていた
私はそこへ向かってしまう準備をしていた
そこへ…『彼』がやって来た
宿泊先のホテルのロビーにやって来たジンビス君は、『イェロンに会いたい』と言って私を呼び出した
この時、今までお父さんや『キュバス家』の執事の人達はジンビス君と会っていなかったために、突然現れた少年に私と会わす事はしなかった
でも…ジンビス君は知っていた
私を知ってもらうために…私が色々ジンビス君に教えていた
ホテルの部屋の場所…『キュバス家』がどういう立場に居るのか…
そして私をどう『利用』するのかも…私がそれをたまらなく嫌だという事も…
それを知った上で、ジンビス君はお父さんに尋ねた
『イェロンに会いたい』と…
だけども返事は『断る』
それを聞いた時、ジンビス君は決めたらしい
私を…この『つまんねー生活』から脱け出させるのを
ジンビス君はお父さんや執事の人が追い付けない程の速さで移動してホテルの階段を上がり、一直線に私の部屋に来た
私がそのドアを開けると、ジンビス君が勢いよく私を抱き抱えた
うろたえる私を無視して一気に部屋の窓を開けて、そこから飛び下りた
元々5階建ての2階…それほど高さはなくても、子供である私達には十分の高さ…
ジンビス君は何の迷いもなく飛び下り、その着地の衝撃を『ソウル』を纏った足で防いだ
ジンビス君はちょっと痛がっていたけれど、それを気にせずそのまま走り出した
向かう先は…『ウィークエンドの森』と呼ばれる、広大で高々と生える木々で方向感覚を失い『一週間迷って死んでしまう森』と言われる第三大陸を分断する形で伸びる森だった
…別にジンビス君は私と心中するつもりではなかった
ただ…『逃げ場所』がそこしかなかった
『キュバス家』は間違いなく、私が逃げれば『総力』をもって私を捜すだろう
それが『獣人側』であればなおさら
だけどもこの『曰く付きの森』であれば、それは多分しない
いくら『次期当主候補』であっても自分が死んでしまうかもしれない所には探索には来ないだろう
だけども…それは私達にも言える事…
ジンビス君と私は…『一筋の光明』に頼った
森の中をこのまま突き進み…もしも『人間側』へと通り抜けられたとしたら…?
私は『獣人』でも外見はほとんど『人間』と変わらない
『獣人』としての要素を抑えているだけで、『解放』しなければ問題ない…
それに…まだ詳しく聞いていなかったけども、ジンビス君の『両親』に頼れば何とかなるかも…
『希望』はあった
あとはそれが『現実』になれば全て解決する…はずだった
でも…『望み』が全て叶う訳ではなかった
…森の中央端にダリルコートが存在してそこから出発したとしても、子供の足で広大すぎる森を抜ける事は『不可能』に近かった
森に有象無象と生えた木々とぬかるんだ地面…
木の枝や葉っぱに服が引っ掛かりボロボロに、跳ねた泥が服に付いて泥だらけになる
お気に入りだった白い服はもう雑巾みたいになってしまった
それでも…この『つまんねー生活』から抜け出せるなら…一切気にしなかった
走った
走って走って走りまくった
『森』から…『生活』から…『しがらみ』から…『家』から…
脱け出すために…
そして私はそこで…『空っぽ』になってしまった
失った『体力』が…どんどん増していく『食欲』が…抑えようのない『渇き』が…私を徐々に満たしていった
目の前にある…『最高のご馳走』が…
『私』を『私』で居させてくれなかった
―――その日は雨が降っていた。
決して強く、多くはない雨が降りしきり、生い茂る木々で作り出された『森』の乾いた地面に、潤いを与えている
ここは『ウィークエンドの森』…
その力強くたくましく育つ木々と広大すぎる地形により、『一週間迷って死んでしまう森』と呼ばれ恐れられる森である
この森に入る者はそうそう居ない
地元の者はもちろん…『次期当主候補の少女』を捜す貴族であっても…
「ひっぐ……ひっく……ぐすっ…ぅぅ…ぁ…」
雨のサアァァァ……っと小さな音が森に響く中、それよりも更に小さな誰かの泣き声が聞こえる
彼女の名前は『イェロン・キュバス』
貴族『キュバス家』の『次期当主候補』である
そんな彼女が地面に座り込みながら泣いている
イェロンの着る服はそこら辺で買える様な安物では無く、どこか高貴な雰囲気を持つ白い服ではあるが、全身泥だらけになりボロボロである
イェロンは現在8才で、年相応に幼い
だが幼さを見せない特徴が彼女にはあった
それは『髪』である
金髪まではいかない…しかし薄い訳でも無い…
立派な『黄色の髪』が、少女の美しさを物語っていた
ただ染めただけではこうはならない…おそらく地毛だろう
背中の中心辺りまで伸びたその髪は、見る者全てを魅了する
しかしそんな髪ですら泥と雨に濡れ、元の美しさが無くなってしまっている
何があったか…そして何故泣いているのか…それは直ぐに理解出来た
少女の目の前…泣いているイェロンの前には、一人の男の子があお向けで倒れていた
年齢は少女とそう変わらない…12才だった
髪の毛の色は黒で短髪…少女とは対称的に、上へと伸びてしっかりとした髪だった
その子が着る服はそこら辺で買える様な安物であり、白いTシャツ、黒い短パンのいたってシンプルな服ではあるが、全身泥だらけになりボロボロである
彼こそが『緑堂ジンビス』
イェロンをこの森に連れてきた本人である
――そしてここで、イェロンはジンビスを襲った
『サキュバス』としての『イェロン』が、自らの『空腹』を満たすため、目の前の『ご馳走』に喰らい付いたのだ
ジンビスの『精気』を…余すところなく…ほぼ全てを…
だが…決して死んではいない
それでも起き上がろうとはしていない
「……ごめんなさい……ごめんなさい…」
イェロンは泣きながら謝っていた
イェロンが泣いているのは、ジンビスに対する『謝罪の表れ』だという事は容易に理解出来た
ここまで連れてきてくれた大切な人…
そんな彼の精気を吸い付くしてしまったのだ
淫らに…妖艶に…
『好き』と『欲』にまみれた肉体を、彼に押し付けながら
『本当の自分』が目覚め…こうならない様に気を付けていたはずなのに…
しかし『自分』がしてしまったという事実はどうやっても変えようがない
なんの罪滅ぼしにもならない
が、謝る事しか出来なかった
イェロンは謝り続ける
雨の中、ただ一心に
「ごめんなさい…ごめんなさい……ごめんなさ
「あや…まんなよ…!」
イェロンは驚いた
突然、倒れていたジンビスが声を出したのだから
「おまえのせいじゃ…ない… おれの…せいだから…」
イェロンは首を横に振る
「ちがうよ…! わたしの…わたしのせい…! ジンくんの…ジンくんのせいじゃない…!」
「ちげーよ…おまえが泣いてんのは…おれが『弱い』からだ…!」
力強くそう言うと、ジンビスはグググッ…っと必死に上体を起こそうとする
「おれが…もっと強かったら…おまえを守れた…! おれが…もっと強かったら…こんな風にたおれてなかった…! おれが…おれが『弱い』から…おまえを泣かせたんだ…!」
グッタリとした…どこか全身の力が抜けきった様子で上半身を起こし、足を伸ばした状態で地面に座るジンビス
「おれ…『約束』するぜ…! かならず…かならず『強く』なるから… おまえを…おまえを守れるぐらいに『強く』なるから…だから…もう泣かせねーって『約束』する…!」
ジンビスはゆっくりと、右腕を上げる
プルプルと震えながら、イェロンに向かって腕を突き出す
そして指を曲げ、小指だけ伸ばす
「…『約束』…だ…!」
イェロンはコクンっと頷く
そしてジンビスと同じ様に、少女も腕を出して小指のみを伸ばす
「わたしも…わたしも『約束』する…! ジンくんだけじゃなくて…わたしもいっしょに『強く』なるから…! もう…泣かないように…ジンくんがまもらなくてもいいように…強くなるから…! 『約束』する…!!」
―――少女と少年は、互いの小指を合わせ『約束』する
少年は強くなり、少女を守る事が出来る様に…
少女は強くなり、少年に守られなくてもいい様に…
2人は誓いあった
涙目になっている少女の顔と、この雨の降る天気が晴れる事を祈りながら…
2人は誓いあった
「『約束』だよ…ジンくん…!」
「ああ…『約束』だぜ……イェロン…!」
―――『約束』した2人はゆっくりと立ち上がった
すると…木々の向こう側に…
紫の屋根に十字架が一つ建てられた、何ともシンプルな木製の教会が見えた―――
Q.『獣人』の力って、イェロンみたいに抑えられるものなの?
ていうかイェロンって『獣人』なのに外見に『獣人の要素』現れてないよね?
「私の場合は、ピンク色の髪をした私が『本来の私』なんです。 今の黄色の髪をした私が、その『本来の私』とは違う『偽物の私』… 全く別の存在という訳ではないのですが、同一人物という訳でもない…いわゆる『二重人格者』という事ですね」
「………???」
「…イェロンさん…ご主人様が混乱しています…」
「まず前提として、『獣人の力は抑えられない』。 これは遺伝子上、どうしようもない事柄だからだ。 現れるかそうでないか、色濃く出るか出ないか…それはもう決まっている。 だからこそ、その『ちょっとした違い』で『人間』か『獣人』か分ける必要がある…そういう事だ」
「…? シードさん…それではイェロンさんはどうして…?」
「イェロンの場合、『獣人の要素を抑えている』のではなく『ただ変えている』…そういった意味合いなのかもな」
「…?」
「そこからは私が… 実は…『獣人要素』がここにあるんです…」
「…? 後ろの『腰』…ですか…?」
「ここに…その……『尻尾』がありまして…」
「なんだ…そんな所に獣人要素があるのか? ちょっと見せて
「ふざけんじゃねー! イェロンに何すんだ!」
「うるせぇな…そこまで突っかかんじゃねぇよ…」
「私なら見てもいいよね? イェロンちゃん?」
「…ええ…構いません…」
「……そういう訳で、あなた達? どっか行っときなさい」
「あぁ? 何で俺が
「い い わ ね ?」
「………」
「………本当ね… 『悪魔の尻尾』みたいなのがあるじゃない!」
「はい…本編でまだそう言った描写が無いのに加え、修道女の服を着ているので見せられなかったのもありまして…」
「…確かにこれを見たら『獣人』ね… でもこれだけだと、イェロンちゃんの性格や髪と瞳の色が変わるのに説明がつかないじゃない?」
「それは…次回の本編に説明が入るそうですよ?」
「…まさかの…次回本編へのつなぎですか…」
「何でもありね…」




