アーサーとの修行
時は遡る………
「…アレス君」
「?」
不意にアレスを呼んだのはアーサーだった
「…私が教えた事…君ならきっと習得出来るはずだ。 頑張りたまえ」
「もちろんだ! 任せろ!」
グッと親指を立てるアレス
更に時は遡り………
―皐月 17ノ日 水魂日 午後3時06分
中央大陸『セントレイン』王都『サニーライン』
王城『スカイヘイム』内 第三中庭にて―
「…アレス君…もう動けるのか…?」
「もちろんだ! いつまでも寝ていられない…! もっと…もっと強くならなくちゃいけないんだ!」
力強く返事をするアレス
その目の前に居る人物は、中央大陸『セントレイン』の『王国騎士団特殊殲滅隊団長』であり『聖騎士』の一人である人間…『天帝アーサー』であった
金髪の身長170センチ後半で上下に鎧を着込んだ人間の男である
中央大陸『セントレイン』の最高権力を持つ王家『天帝家』に引き取られた孤児であり、天帝の人では無い
そのため『セントレイン』の陸王である『天帝バレーノ』に対して絶対的なる忠誠を誓っている
「…しかし…先日あんな事があったにも関わらず…そこまで元気に動けるものなのか…?」
清らかな声でそう問い掛けるアーサー
「大丈夫だ! それに…あんな事があったからこそ寝てられない! もっと強くならないとな! だからアーサー! 俺の修行を手伝ってくれ!」
「…君が元気ならば良いのだが…まあいい… 元より君に教える事があるからここに呼んだのだからな…」
今現在、彼らが居る中庭は芝が生い茂る殺風景な中庭である
特に何か装飾や造形された低木やらは存在しない
ただ広い中庭である
故に、城内に居る騎士団は度々ここを利用して訓練を行う
アーサーも何か『ある程度激しい戦闘をしよう』としてここを選んだのだろう
――『あんな事』
アーサーとアレスが口にするその出来事…
この日の前日…16ノ日に起きた『事件』の事である
そして結末から言えば、『狂言誘拐事件』を指している
『天帝バレーノ』と『天帝アーサー』…そして数名の協力者から成り立った『狂言誘拐事件』…バレーノの娘である『天帝レインカ』を誘拐したフリをしてアレス達に捜索させ、王都全域の地下に張り巡らされた巨大地下迷宮『アンダーライン』にてアレス達とアーサー達は戦闘を行った
アレスはその時アーサーと戦い、結果としてアレスは敗北した
…満身創痍であったアレスが翌日にここまで回復しているのが、アーサーは不思議でしょうがなかった
『あんな事があったのにここまで元気があるのは何故なのか…?』…そういう意味である
※この出来事・経緯については『第五章~第七章』を参照
(…彼と同じぐらい傷付いたシード君は早くて明日目を覚ますかも知れないのだが…何故ここまで差があるのかも気になるな…)
「それよりアーサー! 修行してくれるんだろ!? 何するんだ!?」
考えにふけるアーサーなんて気にもせず、アレスはぐいぐいとアーサーをあおる
「…ただ単にバ…単細胞なだけだろうか…」
「?」
「いや…何でもない… 修行…だったな? では早速取り掛かろう」
コオオォォッ……
「!!」
アレスは反射的に後方へと飛び退く
アーサーが自らの体に纏った『金色のソウル』を見て、アレスはアーサーが戦闘体勢に入った事を察知した
『攻撃が来る』…そう思うのは当然だった
「…私が行う修行はたった一つ… これから君を攻撃する…君はそれを避ける…それだけだ」
アーサーはその腰に付けた鞘から剣を抜かなかった
代わりに右手を広げてアレスの方へ向けた
「『幻響剣 ≪ミラージュレス≫』」
瞬間、思わず目をつむってしまう程の光がアーサーの手から発せられ、アレスは腕で目を隠す
光はたった数秒程で消え、アレスは直ぐに剣を抜く
あからさまな『目眩まし』…攻撃が来るのは明白だった
しかしそんなアレスの体は硬直する
「えっ…!?」
言葉に詰まる
それもそのはず…
目の前に『自分』が現れたのだから
しかも…
「俺が…なんで…!? しかも…『獣心化』を…!?」
アレスの目の前に現れた『アレス』は、アレスの才能『獣心化』を使っていた
「…!!? ……??」
それよりも…自分と同じ人物が目の前に現れて、しかも同じセンスを使っているよりも、アレスは気になる事があった
その『獣心化』に見覚えが無かったのだ
金色のソウルを纏い、通常は頭頂部に獣耳が生えるはずなのだが、それが2倍程の大きさで金色のソウルで出来た獣耳になっていた
『兎』に似ているが、形が不安定でゆらゆらと揺らめいている
髪の毛もなぜか『黒』ではなく『金髪』になってしまっている
左腕には金色のソウルで出来た『籠手』に似た物を纏っていた
手には鋭いソウルの爪が伸び、まるで『熊の手』の様だった
腰下から『猫』に近いソウルの尻尾が生えていた
アレスの身長よりも少し短いぐらいの長さである
体から溢れる金色のソウルが、『鎧』みたいにアレスを覆っている
通常の『獣心化』と同じく鋭い目や牙が表れ、それが一層『狼』っぽさを演出している
「こ…これ…俺なのか…!? なんだこの姿…??」
――しかしアレスには、それを考えている時間も余裕も無かった
ググッ……っと、その『異形』の『アレス』が腰を低くした
『突撃』…しようとしているのだ
「!! やばっ…!」
アレスは瞬時に回避行動を行った
しかし間に合わなかった
その『アレス』がその鋭い爪を前に出して、文字通り『光速』で飛び掛かって来た
ドュシュッッッ!!
「あぐぁっ……!!」
『アレス』の鋭い爪が、右横に飛び退いて回避したアレスの左横腹を直撃した
アレスは攻撃を受けたその勢いで後方へと飛んで行ってしまった
ゴロゴロと地面を転がるアレス
「うぐっぅぅ……!?」
思わず左横腹を押さえる
しかし血は出ていない
あの『アレス』の攻撃は『打撃属性』だった
それでも激しい痛みは襲う
アレスは足を震わせながらゆっくりと立ち上がる
「……いっ……」
グッ!……っと、姿勢よく立ち上がったアレスは大きな声を出した
「……っってえぇぇっっ!! すっっげぇ痛ぇ!! いきなり何するんだ!!」
文句をアーサーに向かって言うアレス
しかし直ぐにハッ!…っとする
先ほど攻撃してきた『アレス』はどこに行ったのか…?
攻撃から察するに、アレスの後方へ斬り抜けた形だったのは確か
それをハッと思い出したアレスはさっきの『アレス』が居るであろう方向を見る
……しかしそこに『アレス』は居なかった
「……!? あれ…『俺』はどこにいった…!?」
アレスはキョロキョロと周囲を見回す
しかし居ない
そんなアレスにアーサーは声を掛ける
「もう『彼』は消えたよ。 私がそう設定したからな」
「…!?」
アレスはそれで理解した
「まさか…『分身』!?」
アーサーはコクンと頷いた
アレスの言う『分身』…ソウルを人の形に整え、自身から放出して行動させる『技術』である
『分身』と言っても自分自身そのものを出せる訳ではない
薄い青色のソウルで出来た『人形のソウルの塊』…そういう形で出現する
そしてその分身自体には『思考回路』は存在しない
分身を作り出した際に設定した『行動パターン』通りに行動する
アーサーの持つ才能『千光の一閃』により、この分身に『光の三原色』を用いて色を付けられる事が可能になった
よって自分自身そのものの分身生み出せるのだ
(…確か正気の彼にこの分身を見せるのは初めてなのだが…分身だと良く分かったな…)
「でも分身はあんな風に色や形をしっかりと表せないはず… なんで…あっ! アーサーのセンスで作れるのか!? いやでも…それでもあんな分身を作るのにはかなりの努力がいるはず… アーサーならたぶん3年ぐらいかかるかも…やっぱり『聖騎士』はすごいな~…!!」
(…何故彼は戦闘に関してはここまで頭が回るのだろうか…?)
アーサーは軽く咳払いをする
そしてアレスに語り始めた
「いきなりすまないな… だが事前に知らせていれば修行にならないだろう… 『戦闘』が全て用意された状態で始まる訳では無い…」
「そんな事はいい! それより今の技は一体なんだ!?」
「…どうでも良いのか…? まあいい… 今の技は『幻響剣 ≪ミラージュレス≫』だ。 私の使う『幻剣 ≪ファントマイン≫』という分身を作り出す技があるのだが、『幻響剣』はそれを応用した技だ。 『幻剣』は自分自身の分身を作り出す技だが、『幻響剣』は眩い光を放ち目眩ましをした状態の後、任意の人物の分身を作り出す技なのだ。 私が見た者であればその特徴を再現し分身を作り出せる…私のセンスを使ってな」
アレスはそこで思い出した
(あの時…! まさかあの時のレインカは…この技なのか…!?)
アーサーはアレスの思っていた事を見抜いたらしい
「その通りだ… 先日…私が刺した陸姫様は、私のこの技で作り出した分身だったのだ」
『ピカアァァッッ……!!
「うぐぅっ…!」
あまりの眩しさに、アレスは目を開けていられなかった
片手で目を覆い、光を直視しないようにする
…数秒後、光は治まった
「なん…だ…? いったい…!!」
そこには、なんとレインカが居た
アーサーの目の前の床に、うつ伏せになって倒れこんでいるレインカが居た
「レインカっ!!」
しかし反応しない
目は閉じ、アレスの呼び声に返事もせず、まるで人形の様に静かに倒れている』
「…あの時のレインカはそれで作った分身だったのか…! なるほど…ん? じゃあ今の『俺』は…?」
「…君は覚えていないのか…? 君はあの状態で私と戦ったのだ…」
「えっ…そうなのか…? 全然覚えてないんだけど…」
覚えていなくて当然である
その時のアレスは『我を忘れる程の怒り』によって発現した『異形形態の獣心化』を使っていたのだから
自我がほとんど無かったのは当然である
「…さて、私が何故このような修行を行うかを説明しなくてはならないな」
アーサーは真っ直ぐアレスを見る
「そもそもな話、君が私に勝つ事は不可能だ…それは理解しているな?」
「…むむっ……んん…」
返す言葉がアレスには無かった
実際にその通りである
「だがこれから先…私と同じかそれ以上の敵が現れないかと言うとそうでは無い。 他大陸には私以上の実力者が居てもおかしく無い。 彼らとの戦闘は避ける事は不可能だろう…だから私は君に『新しい技術の提案』を君にしようと思う」
「……『新しい技術』…?」
「今の段階で君のセンス『獣心化』は発展途上である…私はそう考えている。 『センス』としては完成されているものの、君自身がその本質を理解せずに使用している…それが私には分かる…君はどうだ?」
「………」
アレスは思った
そして考えた
『狼の力を自分に宿して使役する事が出来る』…
…本当にそれを100%発揮出来ているのか?
疑問に疑問が重なる
『狼の獣人』が『狼の力』を身に付けているかと言うとそうでは無い
『人間の要素』が獣人には混じっている分、ある程度劣化して現れてしまう
ではアレスの場合はどうだろうか?
『狼の力』を宿せるため、狼と全く同じ嗅覚や感覚を身に付けれる…にもかかわらず、それを十分に発揮出来た事があっただろうか…?
過去にアレスは『狼の嗅覚の力』を存分に発揮した事はあってもそれだけである
狼と同じ身体能力は…?
…精々ソウルで肉体強化したぐらい
狼と同じ察知能力は…?
…精々『野生のカン』程度ぐらい
狼と同じ五感は…?
…精々嗅覚ぐらいしか役立ててない
そう…その程度なのである
「………」
アレスは黙ってぼんやりとしていた
思い返しても思い返しても、その程度であった
挙げ句の果てに、一時の感情に身と力を持っていかれる始末…
結果があの『異形形態』…
アーサーはそれをたった1回戦っただけで見抜いた
呆然とするアレスにアーサーが声を掛ける
「…『発展途上』だと言っただろう? つまり改良の余地がある…それを今から伝えよう」
アーサーはどこからともなく紙とペンを取り出した
そして何か書き始めた
アレスはアーサーに近寄ってそれを見る
「…今、仮に君のセンスの力のバランスを合計して『100』としよう… 大きく分けて『パワー』『スピード』『ガード』の3つに分ける。 今のセンスではそれぞれ『40:40:20』と割り振られているぐらいだろう… もちろんこれで十分だが、センスとしては不十分だ… 何が言いたいかと言うと、『単調で応用が利かない』のだ。 『パワー』と『スピード』が良い分、防御面ではいささか不安があり相手の強力な攻撃は耐えきる事が出来ない。 一方『相手を押しきれる程のパワー』も無い。 『十分なスピードもある』が別に特段速い訳では無い。 良く言えば『バランスが取れている』、悪く言えば『特徴が無い』…だからこそ、その割り振りを意図的に変える必要がある… …ここまでは理解出来たか?」
「ああ! 今の『獣心化』じゃ、もしアーサーみたいに速いやつやロウみたいに力が強いやつ…それにシードみたいに頭のいいやつと戦ったら、俺の『獣心化』の弱点を狙われる可能性があるってことだろ? 特にシードだったら『特徴がない』って所を狙われて色んな攻撃してくるだろうな…たとえば速い攻撃と遅い攻撃をまぜて攻撃してきたり、逆にカウンター攻撃してきたりしてスピードを殺してくる攻撃をしてくるかもしれないな…シード頭いいし…」
アーサーはアレスの理解の早さに驚いていた
(…何故戦闘に関しての理解が早いのだろうか…?)
「…んじゃ、俺はこのバランスをどれかに特化すればいいのか?」
「あ…ああそうだ… 『攻撃力特化』『速度特化』『防御力特化』…その3つに特化した『形態』を自在に扱えるようになれば、戦闘が一気に優位になるはずだ。 …もちろんその他のパラメーターに割り振る事も出来るが…それはまた別の機会だ…基本が出来れば他の選択肢も増やして問題無いだろう」
「分かった! …でも、どうすればいいんだ?」
「先ずはソウルコントロールを熟達する必要がある。 特化形態を手広くやるのでは無く、1つに絞ってその『やり方』を身に付けるのが筋だろう。 君のセンスはおそらく『スピード』が最も上がっているはず…よって『速度特化』に先ずは専念しよう。 そのために、先程の戦闘を行おう」
「??」
アーサーは紙とペンをしまい、アレスとの距離を取る
そして再び向き合う
「…私は今から数回、あの時の君を作り出して攻撃する。 あの『光速移動』を扱える『獣心化 ≪電光閃火≫』を、私が見た範疇ではあるが再現して君を攻撃する。 そして君はそれを回避するんだ。 具体的に言えば『獣心化』を『速度特化』させた状態で回避を行う…その際、実戦で使えるレベルにして回避するんだ…一度だけ使えれば良い訳ではもちろん無いのだからな。 やり方としては君に一任するが…助言するならば『脚部』にソウルを集中させる必要がある。 当然だが必然だろう…『脚』が強ければその分移動速度は上昇する。 …さて、準備が出来たら始めるぞ」
アーサーは再び右手を広げてアレスに向ける
アレスは軽く呼吸を整えた
「…イメージ……速い…イメージ…… 俺の体を…速い『形』に…!」
アレスは目をアーサーから離さない
「その前に2つ伝える事がある。 先程の攻撃は私の全力では無い…今からは私の作り出せる最速の分身で君を攻撃する。 これを避けられなければ意味が無いのだからな。 そして残りの私のソウルでは、あと10回が限度だ。 10回で君は『新しい獣心化』を身に付けるのだ…」
アレスは小さく頷く
「…よし……では行くぞ…!」
――そしてアーサーの手から閃光が迸る
「………予想以上だな… ここまで速くコツを掴めるとは…」
アーサーは若干息切れをしながら、地面にあお向けで寝転んでいるアレスを見る
「ハァッ…! ハァッ…! よ……よし…! こんな……感じかっ…!?」
アレスは息も絶え絶えで、全身から汗が流れている
たった10回、ソウルを使った回避行動でここまで疲弊してしまった
それだけ大量のソウル…そして『集中力』を消費したのだろう
アーサーは倒れているアレスへと歩み寄る
「…明日からは私は『殲滅隊』としての任務で陸姫様と王都の護衛に就く。 陸王様は王都はしばらく安全と言ってはいたが、民衆の心はそう簡単には休まらないだろう…だからこそ、この王都を巡回して守る必要がある。 …正直言うと今日もその任務の最中なのだが…君を鍛えて欲しいと陸王様の命を受けて君との修行を行った。 結果、君はその可能性を見せてくれた…あとは君次第だ。 その可能性を…『新しい力の可能性』を、私は十分見せてもらったぞ」
スッ…っと、アーサーはアレスに手を差し伸べる
「私は常に『光』と共にある…『陸王様』という『光』があるかぎり、私は歩みを止めはしない。 君の『光』は…『英雄』という存在だろう?」
「いや違うぜ…!」
アレスは伸ばしたアーサーの手を掴む
そしてアーサーはグイッと引っ張った
若干ふらつきながらも立ち上がるアレス
そしてニィッと笑いながら言う
「『ヒーロー』は俺が絶対になるものだ…! 『光』なんていうあって当たり前の存在じゃない…『目指すべき目標』…! 掴みたくても掴めない存在…! 『ヒーロー』は『ヒーロー』! 何かに例える事なんてできない存在なんだぜ!」
必死に踏ん張りながら力強くそう言うアレスに、アーサーは優しい顔で答える
「そうか…ならもっと強くならなくてはな…? 私の諦めたその『目標』を…実現するためにもな…」
―――そして現在………
―――皐月 28ノ日 日魂日 午後3時08分―――
シードとグァメが森の奥へと走っていった後、ブルールとフレールと獣人達は森を進んで行った
そこに居たのは――
「俺は暁アレス! この森に入ってきた侵入者! 俺と勝負しろーー!!」
「……」
「……兄さん…彼は一体…?」
ブルールとフレールは木々の裏に隠れながら唖然としていた
当然である
こちらの存在に気付いていないにも関わらず、森の木々のど真ん中で仁王立ちしながら大声で叫んでいるのだから
「………」
さすがのブルールも警戒する
(…敢えて自分の存在を主張して俺達を誘い込み、どこかで隠れている仲間が奇襲をかける算段か…? それとも…正々堂々戦って勝つ程の実力を持っているのか…?)
色々考えるブルールだが、1つの結論に辿り着く
「勝負だしょーぶ!! 俺と戦えーーー!!」
(……何も考えていないようだな…)
ふぅ…っと、ブルールはため息をつく
そんなブルールに小声で話し掛けるフレール
(兄さん…彼をどうすればいいんだい? 全員で戦うかい?)
(いや…そんな余裕は無い… 彼が本当に実力のある者…さっきの少年と同じだった場合…こちらにダメージを与えられて『撤退』を余儀なくされる可能性もある……… ここは…
「団長…! あんなガキ、俺達だけで十分ッスよ!」
小声で話すブルールに、獣人騎士団の団員の一人が話す
「さっきのガキもそうッスが…これ以上あんなガキ共に振り回される必要なんて無いッスよ! 俺達に任せて下さい!」
そう言うと木々の陰からゾロゾロと団員達が飛び出す
「オイオイオイ…! 俺達のジャマするならブッ倒すぞガキ…!」
「こっちはこんだけ人数いんだ…諦めた方がイイぜ…?」
「ダイジョーブダイジョーブ…殺しゃしないさ…ただメチャクチャイテーけどな…!」
ゆっくりとアレスに近寄る団員達
だがアレスはそれに対して怯えたりせず、むしろ笑顔を見せる
「おっ…? おおっ! よっしゃ!! これだけいればあれを使えるかも! かかってこーーーい!!」
アレスは体から少しソウルを放出し、戦闘体勢に入る
「アァッ…? このガキ…何言って
「バカやってんじゃないわよアレス!!」
するとアレスの後方から2つの陰が飛んで来た
ザザッ!!…っと地面に着地したのは、水色に染めたポニーテールを振り回しながら来たミーシャと、両腕を胸の前に交差した状態で両手に両刃剣を持ったスイだった
「あれ…なんで2人がここに
「シードに言われたのよ…! 『どうせアレスは単独行動をするからお前達でフォローしてくれ』って! ああっ…もう! あんたはどうしてそう何も考えないで行動するのよ!?」
「…シードさんはご主人様のこと…なんでもわかるのですね… うらやましいです…」
アレスの両脇へと位置取る2人
「なんだよオイ…ケッコーイイ女がいるじゃねぇか…?」
「クククッ…お楽しみが出来たなぁ…♪」
「人間だけど関係ねーな…ウマそうだぜ…」
ミーシャとスイを見て団員達は舌なめずりをする
そしてゆっくりと団員達は3人を取り囲む
…その様子を見たフレールがブルールに言う
「兄さん…ここは皆に任せよう… 僕達は協会に行こう」
「…」
ブルールは仕方がなくそれを了承した
普通はミーシャとスイの反応が当然である
『圧倒的に人数的に不利、だから臆するのは当たり前』
(だが…あの少年の『自信』はどこから来る…? もしや…本当に我々を制する術があるのか…?)
ここは自分達も加勢して、確実に彼らを鎮圧するのが一番ではないのか…?
だが先程自分が言った通り、『撤退』を余儀なくされたら本末転倒…ここに来た意味が無くなる…
やはりここは団員達に任せるしかない…
ブルールはフレールと共に、アレス達を迂回して教会へと向かった
アレスは『敵』に囲まれていた
アレスだけでない
アレスの両脇にはミーシャとスイが居た
彼らを取り囲む様に、ハイエナの獣人や犬の獣人がそれぞれ武器を持って立っていた
ジリジリと距離を詰める獣人達
彼らはあのブルールやフレールやグァメと共に居た『獣人騎士団』の者達である
実力はおそらくアレスよりも上かも知れない
そんな17人の獣人が取り囲む中、ミーシャは焦っていた
「どうするのよ! 私達じゃこんなにたくさん相手出来ないわよ!?」
ミーシャは両手に銃を構えて銃口を向けながら、焦りと恐怖が入り交じった声で問い掛ける
「…たしかに…3人だけでこの人数は…不利ですね… ご主人様…どうしますか…?」
さすがのスイでも不安になる
一方のアレスは笑っていた
「「!!?」」
ミーシャとスイは驚く
…確かにこういった時に笑うのはおかしいが…アレスに関しては無くは無い
だが、アレスの『この時を待っていた』と言わんばかりの表情に、2人は驚いた
「よっしゃ…! 見せてやるよ…! 俺はこの時を待っていたんだ!」
周りの獣人は『気が狂ったのか…?』みたいな顔でアレスを見る
しかしアレスはワクワクが止まらなかった
「アーサーとの修行の成果を…ようやく見せることが出来るぜ!!」
そしてバッ!…っと、アレスは両腕を交差させる
そして…待ちわびていた様に叫ぶ
「見せてやるぜ…俺の新しい力…! 新しい『獣心化』の形を…!!!」
アレスの体からソウルが溢れ出る
そしてアレスは『獣心化』を発現する
しかし今までと違い…ソウルが『脚』へと集中するのが感じられた
そしてアレスはとびきりの笑顔を見せた
「俺は誰にも止められない!! もう誰にも追いつけない!! 風を味方にした『速度特化』…!!
『獣心化 ≪鬣狼形態≫』
……!!!」
Q.ミーシャとスイとイェロンの3サイズは?
「それを知って……誰が得するのかしら……!?」
「…ミーシャさん…怖いです…」
「お…落ち着いて下さい…ミーシャさん… ここは後書きなんですから…」
「何言ってるのかしらイェロンちゃん…!? あなたがそんな体してるからこういう質問がくるんでしょ…!?」
「オイオイ逆ギレかよ… ハッ! 乳が小せー女は心も小せーのかよ」
「なんですって…? あんたみたいな胸が大きい女しか興味のない不良ムッツリバカには分からないわよ!!」
「な…何いってんだよ…んなわけ
「そうでしょ!? どうせイェロンちゃんの胸が大きいから付き合ってるんでしょ!? そうなんでしょ!?」
「んなわけねーだろ! イェロンの乳がデケーから付き合ってる訳じゃねー! イェロンはそれだけじゃ
「『それだけ』って何よ!? 『それ』も理由の1つって事じゃない!! やっぱり体目当てなんでしょ!?」
「み…ミーシャさん…! それ以上は…! それに私達付き合っている訳じゃ
「絶対そうよ!! 逆にそうじゃない訳がないでしょ!? バレバレなのよ!!」
「「………」」
「…おふたりとも…顔が真っ赤ですよ…?」
「ほら見なさい! 不良ムッツリバカと巨乳シスターはお似合いですこと! ふざけないでちょうだい!」
「…ミーシャが暴走してやがる…」
「ミーシャどうしたんだ? 別に教えればいいんじゃないか?」
「うるさいわ! こんなの教えたら比べられて『ちっちゃいな』とか言われて同情されるのが目に見えているじゃない!」
「…? 別にいいだろ?」
「人の気もしらないでそんな事言わないでちょうだい!」
「…そんなこんなで話がそれたが…ミーシャの場合は上から
「あーーあーーー! ちょっとシード!? 何言おうとしているのよ!?」
「…ここに設定資料が
「そんなの…撃ち破ってやるわ!!」
ドガガガガガガガッッ!!
…資料が撃ち破られたため公開出来ませんでした
「…まあ…想像に任せるって感じだな」




