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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
第九章 森の中の激闘
69/90

序章 ~迫る侵入者達~




        前章のあらすじ





英雄(ヒーロー)』を目指して旅をするアレス、そんなアレスを見守り『呪い』を解く方法を探すシード、行方不明になった自分の恩人を捜すミーシャ、失われた過去を探しながら『奴隷』であった自分を解放してくれたアレスへの恩から同行するスイ…

4人の旅は、第三大陸『リーバイド』へと辿り着いた

『人間』と『獣人』が完全に分かれて生活するこの大陸の文化に驚きながら、唯一その2つの人種が共存して暮らす中立港『ダリルコート』にて『情報』を集め始めた

この大陸に、20数年前にその名を(とどろ)かせた『英雄』の一人が居ると聞いていたからだ

その人物に会い、『英雄』として持つべき()()は一体何か…『英雄』足らしめる『資格』や『力』や『知識』…それは何なのか…それを直接会って聞く必要がアレスにはあった

しかし現代…その『英雄』という概念が失われている

それは、第三大陸『リーバイド』でも同様だった

しかし『ダリルコート』で、その手がかりとなる情報を手に入れる

…『リーバイド』を南北に分断する大きな森『ウィークエンドの森』…そこに()む『ウィークエンドの悪魔』と呼ばれる青年『緑堂(りくどう)ジンビス』から断片的な情報を得る

それらを繋ぎ合わせて整理すると、彼の棲む場所に居る老婆が『英雄に繋がる情報』を持っているらしい

アレス達はその森へと入った

『一週間迷って死ぬ』と言われるその森に…

案の定迷ってしまったアレス達

そこで出会ったのは『イェロン・キュバス』という名の修道女だった

アレスのその身を削る説得により、イェロンはアレス達を自らの住む『教会』へと招く

そこには、完全に分かれているはずの『人間』と『獣人』の子供達が数人、一緒に住んでいた

更にアレス達が目的としていた老婆…『城ヶ峰(じょうがみね)ハロノラ』もそこに居た

しかし彼女から『英雄の情報』を聞き出す事は出来なかった

代わりに、この森や教会…第三大陸の情報を教えてもらう事が出来た

大量に魂機(そうき)を配置しわざと迷いやすくしている森…昔にあった『信仰心』の形である教会…戦争手前の一触即発状態である第三大陸…

様々な情報を得た後、シードはミーシャとスイを教会の外へと出して、ハロノラとシードとアレスの3人だけにする

そこでシードはハロノラに、『アレスが英雄の息子』であるという情報を伝える

そしてその情報を使って、ハロノラを『脅す』

しかしハロノラはそれに従わなかったが『英雄の情報』をシード達に教える

この『ウィークエンドの森』と教会に資金と大量の魂機を供給し、この森の管理をしている『管理人』…その人物こそ、アレス達が捜し求める『英雄』であった

その名を『紫村(しむら)リト』

彼は第三大陸『リーバイド』に本社を置く大手魂機開発・研究会社『バイオレット社』の創設者にして社長であった

そしてかつて教会に身を置いていた人物でもあった

教会に住む子供達は…人種が分かれているこの大陸で起きてしまう『不遇の出生』で大人達に爪弾(つまはじ)きにされた子供達であり…彼もその一人だった

自分を育ててくれた恩をハロノラに強く感じており、リトは教会に多大なる『恩返し』をしていた

シードはアレスの情報との『等価交換』によりその情報を得るが、ハロノラはシード達を帰さずに『3日間』も教会に滞在させる

ハロノラの持つ、『紫村リト』と円滑に会うために必要な『照会状(しょうかいじょう)』を手に入れるために、シードはそれに従うしかなかった

その間教会の手伝いをしつつも、それぞれ思い思いの行動をしていた

――だが3日目の午後…突如アレス達の耳に『警告音』が鳴り響いた

その『音』は、森に配備した罠を次々と突破出来る様な『侵入者』が来た事を報せる『音』だった

シードは『逃走』の準備を(すす)める

が、アレスはその侵入者との『闘争』を行おうとする

何を言っても聞かないアレスに、シードは『最悪策』と称して実行する

それに賛同するミーシャ、スイ、ジンビス、イェロン

ハロノラが子供達と『逃走準備』をする中、アレス達は『闘争準備』を始める―――

























 ―――皐月(さつき) 28ノ日(にじゅうはちのひ) 日魂日(にちそうび) 午後2時49分―――




「……団長~…ホントにコッチですか~…? 俺にゃ全く『()()』なんて見えませんぜ…?」

一人の若い『獣人』がそう(つぶや)

少し若い見た目で少し不良じみた高めの声をする男は、全身を薄い黒いスーツの様な服を着ていた

ネクタイは無いが白いカッターシャツを中に着ていた

だが服装よりも、腰に付けたギラリと光る『ダガー』の方が気になった

まるで見せびらかす様に透明な鞘へと納めたダガー…切れ味は言わずもがなである

いかにも戦闘好き…それは、その『顔』を見ても分かった

彼はハイエナの獣人だった

身長は少し低めの約167センチ…それもハイエナらしいが、ハイエナの獣人だからと言って戦闘好きだと分かる訳ではなく、その『目』が()()を物語っていた

顔全体はハイエナそのもの…目元が黒い毛で覆われており、ピクピクと動く獣耳も黒い

大きな口はリンゴ程度なら一口、その口から見える鋭い牙は一度噛み付かれたらその歯形はクッキリと残るだろう

そして鋭く睨み付けるその目は、まさに『狩人』そのものだった

その目で睨まれれば誰でも怯むだろう…そんな力強さが宿っていた

そのハイエナの獣人は、隣に居る『()()()()()()()()』に話し掛けていた

「このまま真っ直ぐ…なんですよね団長…?」

「…間違いない…『情報』通りならこのまま直進だ」

その人物は少し低めの、しっかりとした声で返事をした

「…その『情報』…信用出来るんですよね…?」

「信用せざるしかないだろうな… 少なくとも俺達よりかはこの『森』を知ってはいるからな」

「俺ぁ不安になってきましたよ…大丈夫なんすかね~…」

彼が話し掛けていた人物は『()()()』だった

『エルフ』の特徴である『尖った耳』…彼にはそれがあった

ハイエナの獣人同様、薄黒いスーツに似た服を着ており、それが妙に似合っている

顔はシュッとしてかなり整っており、一言で言えばイケメンである

身長は約178センチと高めで、年齢はおそらく20代後半から30代前半

髪は黒く、短めなストレートヘアーをオールバックの様にジェルか何かで固めており、若干不良っぽい感じがする

右の人差し指に赤い宝石の様な物が付いた『()()』をしていて更にそれっぽい

そして瞳の色が鮮やかな『薄緑色』だった

エルフの特徴は『尖った耳』と『綺麗な瞳』…彼の場合は薄緑色の瞳を持っていた

エルフは種族『神獣(しんじゅう)族』に属しており、れっきとした『()()』である

()()()()()()

…それが、ハイエナの獣人が(した)う理由の一つだった

そのエルフの彼が、ハイエナの獣人に言った

「…グァメ、後方の『遅れた部隊』が到着したらこのまま進む…その部隊の指揮は任せたぞ」

「了解っす団長…」

するとその2人の後ろから、ゾロゾロと『獣人』が来た

その数およそ『20人』

『グァメ』と呼ばれたハイエナの獣人と『団長』と呼ばれたエルフの獣人…2人を合わせてちょうど『20人』だった

ゾロゾロと来た獣人を引き連れていた男が2人に声を掛けた

「…グァメさん、()()()…これで全員だよ。 少し手こずったけど、あれぐらいじゃ僕達には敵わないかな…」

その男は少し高めの、しっかりとした声でそう言った

「…悪かったなフレール… この森の罠は一筋縄ではいかないが、お前なら問題無かったな」

「つーかフレールさん…俺にそいつらの世話を任せれば良かったじゃないすか? 何もフレールさんがやらなくても…」

『フレール』と呼ばれたその人物は、『団長』と呼ばれた人物と同じく『()()()()』があった

つまり、彼も『()()()』だった

薄黒いスーツの様な服を着ているのは他の人と同じだが、『団長』とは違って髪が薄い黄色の髪をしていた

首筋まで伸びたストレートの髪型で、ずいぶん大人しい印象を受ける

『団長』の事を『兄さん』と呼んでいた事から、この2人が兄弟というのが分かる

その通りで、顔立ちやパーツも似ている

身長は約175センチと少し高めで、年齢は20代後半辺り

彼もまた右の人差し指に『()()』をしていたが、兄とは違って青い宝石だった

そして違いはもう一つ…『綺麗な瞳』の色が『黄色』だった

こちらの考えている事が見透かされているかのような程の鮮やかな瞳は、エルフが高潔(こうけつ)な種族の分類に属するのを納得させる

そんな彼はグァメの言葉に対し、首を横に振る

「罠を受けた団員を救うのに、『()()()()()()()()が行う必要はありませんよ。 僕に任せておいて下さい」

「それでもっすよ…? 団長の弟で実際()()()()()んすから、フレールさんが『副団長』の方が絶対良いと思うんすけど?」

「…僕はそれほど強く無いですよ… 兄さんと協力して戦うから強いだけですよ。 それにグァメさんの方が戦闘経験が豊富で、団員の皆さんもグァメさんを(した)ってますから、適任ですよ」

「…つっても…な~んか納得いかねぇっていうか…フレールさんが副団長やった方がうまくいく気がして

「おい…無駄話は後だ。 先を急ぐぞ」

団長がグァメとフレールの話を切って先に行くのを催促(さいそく)させる

2人は(うなず)き、後ろに居る団員と共に団長に付いて行く






―――しかし、その足は止まる

いや…()()()()()

彼らの前に、一人の『青年』が立ちはだかった

短い茶髪で長い槍を右手に持ち、まるで忍者が忍術の印を結ぶ時の様に左手の人差し指と中指を立てて胸の前に(かか)げている

森の中だが道を塞ぐかの様に立っている青年の体からは、量はそれほど無いがソウルが溢れだしていた

目を閉じて少しばかりうつ向くその姿は、彼が何かしらの『()()()()()』をしているのが誰にでも理解出来る

「………」

「兄さん… 彼が話に聞いてた…『ウィークエンドの悪魔』と呼ばれている青年…?」

『団長』にフレールが尋ねる

「…いや…確か『巨大な武器』を持っているはずだ… あの『槍』は『巨大』とは言えない…ならば彼は

「団長…こういう時は直接聞いた方が(はえ)ーっすよ… おい! テメェ…何モンだ!」

グァメがケンカを売る様に『青年』に話し掛ける

「………」

しかし青年はそれに答えず、続けて目を閉じて集中している

グァメはそんな態度を取る青年に対して片方の眉をピクピクさせる

「おい聞いてんのか!? お前が誰かって聞いてんだ!」

「………」

それでも青年は答えない

明らかに聞こえている声量であり、グァメ達と青年の距離は決して遠くは無い

つまり『無視』している

当然そんな態度を取られてはグァメは頭にくる

「テメェ…!! イイ度胸してんじゃねぇ

「人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗るのが常識じゃねぇのか?」

「ア゛ァッ!?」

「…最近の騎士団はそんな事も部下に『(しつけ)』ないのか? 『団長』さん…?」

完全に挑発してくる青年

そんな彼に振り回されるグァメ

怒りが頂点に到達した時、グァメは右手を腰に付けた『ダガー』へと伸ばした

「上等だ…ブッ殺してや

「悪かったな青年…」

そんなグァメを止めたのは『団長』だった

団長はグァメよりも前に歩いて立ち、真っ直ぐ青年を見る

「俺はこの『獣人騎士団団長』の『ブルール・ルフエス』。 こっちは弟の団員『フレール・ルフエス』で…君にケンカ腰なのは『グァメ・ブチィエナ』だ。 …さて、君が誰だか教えて欲しいが…答えてくれるか?」

「……」

青年はそれを()()()()()()()()()()

そしてフッ…っと笑う

「さすが…『団長』だな… お互いの情報を最小限度の会話と最低限の情報で交換しようってんだからな… そこの不良じみたやつとは違う… 俺は『白鷺(しらさぎ)シード』…あんたらが探すやつとは違うぜ…俺はどっちかと言えば…()()()()()()()()からな」

「…何言ってんだテメェ…?」

グァメがシードに対して突っかかる

そんな言葉を軽く流して、シードは意地悪く笑う

「要するに…()()()()()()()()()()()()()()()

バッ!…っと、シードは左手をそのまま高々と上に突き上げる




「…まずは俺からの『挨拶』…受け取ってくれ」







投稿日がかなり遅くなりました…

次回からはもっと早くします…

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