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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
第八章 森に棲む『悪魔』
66/90

教会にて ~森と教会と第三大陸について~




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 |          | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |

 |       | ̄ ̄        | |

 |       |     ⑤    | | 

 |       |          | | 

 |       |=====④====| |

 |       |①=③==④===②| | 

 |  _____|=====④====| |

 | |               _| |

 | |              |   |

 | |        ⑥     |   |

 | |______________|   |

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


①第三大陸中立西貿易港『ダリルコート』

②第三大陸中立東貿易港『ミギルコート』

③教会

境界戦門(きょうかいせんもん)『センタクル』

王都(おうと)(獣人側)『ウェルトリア』

王都(おうと)(人間側)『シタルシュバ』







ハロノラは事務机の引き出しから一枚の『紙』を取り出した

それは『地図』だった

ハロノラは言った

「これが…この第三大陸『リーバイド』の地図さ… このリーバイドの大陸はこんな形をしているんだよ」

「なるほど…? それよりも…この所々にある数字は一体…?」

「これは説明する時に分かりやすくする為の数字さ… あと…」

「?」

「これからは会話だけで進行するみたいだね…覚えときな」

「んん…? ああ…分かりました…」

「さて…と…先ずはこの『===』で表された場所…これが何か分かるかい?」

「もしかして…この『ウィークエンドの森』ですか?」

「その通りだよ… 『ウィークエンドの森』はこのリーバイドを南北に分断する形で森が続いている… まぁ…ここまでは聞いた事あると思うけどね…」

「…それと…『一週間迷って死んでしまう森』…とも聞いています…」

「それが本当かどうかは…あんた達も分かっただろう?」

「実際にはそれは()… 高々と生える木々や深い『霧』で方向感覚と平衡感覚(へいこうかんかく)が狂う様に見せかけて…本当は何かよく分からない『技術』でそれを引き起こしている…そうですね?」

「そうさ… あんた達が見たか分からないが…イェロンはこの『霧』を操作できる『魂機(そうき)』を持っている… その『魂機』でこの森に入ったり出たりする人物も確認出来る…勿論、やろうと思えばこの『ウィークエンドの森』全域を監視・操作する事も出来る… だけど普段は…この教会周辺だけそうしているけどね…」

「ですが…それだけではないと思います… 私達、あの森で…『霧』だけじゃない…その…うまく言えないですが…『()()()()()()()()()』ような感じがして…」

「俺もそれは感じた…だからこそ『平衡感覚が狂う』と思ったんだ」

「そうか? 俺は何も感じなかったけど?」

「…あんたは()()なのよ…色々とね…」

「…なにか…『しかけ』があるのですか…?」

「まぁ…あんた達が()()なるのも無理はないね… ウィークエンドの森には…迷わせる『仕掛け』が多くあるのさ…」

「『仕掛け』…? あの霧以外に何か仕掛けが…?」

「そうさ… 森に入った誰かに反応して霧を自動的に発生させる魂機…森の木に擬態(ぎたい)した動く魂機…平衡感覚をおかしくする魂波(そうは)を出す魂機…魂機を正常に機能させなくする魂波を出す魂機…嫌な音を出す魂機…幻覚を生み出す魂機…色々あるのさ…この森にはね…」

「そんなにあるのか…だからこの森は『一週間迷って死んでしまう』…『ウィークエンドの森』と呼ばれているのですね?」

「それがこの森の正体…ってことさ…」

「『動く木』もあるなんて…それじゃ迷うわけよ…」

「…ですが…」

「言いたい事は分かるよ… この教会に…()()()()()()()()()…てことだね?」

「確かに俺も気になっていた… とてもじゃないが…この教会に、それほどの設備を整える金は無いはずだ…」

「はっきり言い過ぎじゃない?」

「確かにボロボロだからなこの教会!」

「…あんたねぇ…!」

「フッフッフッ… 良いね…ハッキリ物が言えるのは子供の特権だよ…確かにあんた達の言う通りさ… この教会にそこまで金は無いさ…」

「…それは…()()()()()()()()()()()が…あるということでしょうか…?」

「………いや…違うな… 『金を手に入れる方法』はおそらく別にある… それとは別に…()()()()()()()()()()()()()…のか…?」

「…賢いね… 頭の回転が早いのも…子供の特権だよ…」

「…? …シードさん…どういうことでしょうか…?」

「金は…おそらくさっき言っていた『()()()』…それが関係しているはずだ… 港で会ったあの『熊の獣人』が言った言葉…覚えているか?」



『ビックリするだろう! このダリルコートは第三大陸でもそうとうデケェ港町だからな! それにモノも大量に取引される! ホレッ! 今日入ったばかりの『ウィークアップル』だ! 兄ちゃんにやるよ! カネは要らねぇさ…なんたって、今日は()()が入る予定だからな! サービスしてやるよ!』



「あの言葉を元に考えるなら…その『果樹園』ってのが『ウィークアップル』だと推測出来る… それを売って生計を立ててるのなら納得出来るが…それだけじゃ、この教会を維持する事は無理だろうな…例えそれが『()()』だとしてもな… なら、どこかからか別で『金を援助してくれる人』が居てもおかしくない…違いますかシスター…?」

「…あんたも『()()』さね… このウィークエンドの森は人が立ち入らない…でもね…ここの『土壌』は上質なんだよ… これだけの木々が立派に育つ…てことは、土が良い証拠さね… だからこの森で作物を育てるのは必然…だけど森に入る事は出来ない… それならば森の入口付近で育てるしかない…でもそれじゃ中途半端にしか育たない…てことは…もう分かるだろう? この教会の近くで育てる作物はかなり『上質』になるのさ…それを売って生計を立てているのさ…」

「…やはりそうでしたか…」

「勿論それだけじゃ教会の維持なんて無理さ… そこで…『()()()()()()()()()()』から協力してもらっているのさ…」

「管理する人物…『管理者』…ですか?」

「そう…私達は『管理人』と呼んでいるよ… その『管理人』が、この森の設備を全て整えているのさ… 収穫した果樹園の作物も、その『管理人』が回収…売却手続きもやっているんだよ… 専用の箱に作物を入れて…指定された場所に置いておくだけで、後は勝手に持っていっているのさ…」

「なるほど…その管理人が箱を回収しているのですか?」

「いいや…どっかの業者か誰かが持っていってるみたいだね… 管理人はこの森に来れないみたいだよ…忙しいのかね…? まぁ…こっちは料金さえ貰えればいいんだけどね… 売却した作物の料金はちゃんと教会に送られて来ているからね…」

「…『管理人』…」

「…それが…あの港町で取引されていた『上物』…なんでしょうか…?」

「そうだよ…これが良い値で取引されるのさ… 子供達のおやつにも最適さね… この『ウィークアップル』を…①の第三大陸中立西貿易港『ダリルコート』で売っているのさ…」

「…売れ行きは良さそうだな…」

「そうだね…ダリルコートの反対側にある…②の第三大陸中立東貿易港『ミギルコート』に、こっちからは売って無いからね… まぁ…ダリルコートで取引された物がミギルコートで取引はされていると思うけどね…」

「『ミギルコート』…ダリルコートと同じ『中立港』ですね?」

「まあ私達はそっちに行く事はなさそうね」

「そうだな。 …ところでシスター…③の教会は分かりますが、この④の境界戦門(きょうかいせんもん)『センタクル』とは…どういった場所なのですか?」

「ここは…『人間の住む大陸』と『獣人の住む大陸』との()()()()()なのさ… 『街』と言ってもそれぞれ森の入口に少し大きな街があって、その間を『大きな橋』と言えばいいかね…? とにかく『道』が一つ通っているのさ…」

「道が…?」

「ウィークエンドの森に入らず…人間側と獣人側を行き来できる道がここにはあるのさ…」

「そんな場所が…」

「…ですが…」

「そうさ…()()()()使()()()()()()()んだよ… 当然さね…これだけ人間と獣人の仲が良くなかったら使われる事はまず無いさ… でも…ウィークエンドの森を通らずに両側同士を行き来できる『()()()()』とも言える… 警備も厳重さ…『どっちかが攻めてくるかも知れない』って具合にね… そのおかげなのか知らないが…両端にあるセンタクルの街は栄えてるらしいがね…」

「両側へ行き来できる唯一の道… 『境界最前線の門がある街』…いや…()()()か…? だから『境界戦門』と呼ばれている訳か…」

「この街から真っ直ぐ上に行けば…⑤の獣人側の王都『ウェルトリア』があるんだけどね…あんた達には関係無さそうだね…」

「確かにそうですね。 今回俺達はそっちには行く予定はありません。 むしろ『逆』…」

「『人間側の王都』…⑥の『シタルシュバ』に用があるんだね…? あそこに行くのは()した方が良いと思うがね…」

「…どうしてでしょうか…?」

「そこに『英雄(ヒーロー)』の一人が居るんだろ!? 俺は絶対行くぞ!」

「…行くのは構わないけどね… あそこは…まぁ…一言で言えば『()()』なのさ…」

「『異常』…とは?」

「あんた達はこの大陸の人じゃ無いだろう? よその大陸からこの『リーバイド』に来た人はね…この『シタルシュバ』では()()()()()()()んだよ…あそこは…」

「!? どういう事ですか…?」

「このリーバイドが『人間』と『獣人』が完全に分かれて生活しているのは…よその大陸でも知られちゃいるけどね…でも現実はそう甘くは無いさ… 『シタルシュバ』の獣人贔屓(びいき)は『異常』なんだよ… それこそ…『獣人』なんて言葉を口にすりゃ()()()()()()程にね…」

「…そこまで…」

「今まで獣人と一緒に暮らしていた人は…そこじゃ常識が通じない… もちろん『騎士』も人間を重視している…少しでも獣人の味方をする様な素振りをすりゃ捕まっちまう…そんな所なのさ…」

「そんなに獣人の事を…?」

「当たり前さ… この『()()』が()()だからね…王都なら尚更さ…」

「…そこに…俺達は行くのか…」

「アレス…嫌なら行く必要は無いぞ…? 俺がここに連れて来るからな」

「…いや…行くよ… 来てくれないかもしれないし…自分で捜して自分で直接会いたいんだ」

「…分かった。 とにかく目的地は『シタルシュバ』だ。 それでいいな?」

「分かったわ」

「…了解しました…」

「…さて…これで()()()()()()()()は全部教えたさね… 後は…聞きたい事は無いかい?」

「…とりあえずはありませんね。 俺はこれで十分です」

「ちょっ…ちょっと待ちなさいシード! わ…私はあります! この…この『教会』はなんでここにあるんですか!? ()()()()()()()()()()()()()()が分かりません! それに…()()()()()()()()()()()()()()も…! どうして…()()()()()()()()()()()も知りたいです…! それにここは『人間』と『獣人』が一緒に居ます…この教会に居る…この子達は…()()()()()()()()()()()()()()んですか…!?」















「………」

ハロノラは沈黙する

うつむいて、目線をミーシャ達に合わせようとしない

「「「「………」」」」

4人はその様子を黙って見ていた

…やがて、ゆっくりと口を開く

「…この教会はね…()()()()()()()()()()()()()()()()』なのさ… どういう意味か分かるかい…?」

ハロノラはそう問い掛ける

「…それは…この大陸が昔、『()()()()()()()()()()()()…と言う事ですか?」

シードがそう答える

ハロノラはそれを聞くと、ゆっくりと(うなず)

「私が産まれる前…この『リーバイド』は平和だったらしいんだよ… そしてこの森も…『ウィークエンドの森(一週間迷って死ぬ)』なんて言われて無かった頃…この森を抜けて、2つの領域を行き来していた時代もあったらしいんだよ… この教会はその頃の『名残』…森を抜ける商人や旅人の憩いの場…そして…失われた『()()()の形』なのさ…」

「?」

ミーシャは良く理解出来なかった

「…『信仰心が失われた』…それはつまり…『神をたてまつる文化がない』…ということでしょうか…?」

スイはそう尋ねる

ハロノラは再び、ゆっくりと頷いた

「このリーバイドの人々は…『神を信じない』のさ… なんでか分かるかい?」

「「「………」」」

3人は黙りこくる

正直分からないのだ

だがシードは違った

「…『神』は()()()()()()()です。 それはつまり、『人間』にも『獣人』にも分け(へだ)てなく接する、という事… だからこそ信じない。 『神に祈る』事は、人間ならば『獣人』にも…獣人ならば『人間』にも…人種の違う者にすら平等に慈悲(じひ)を与える『神』を、この大陸の人が信じる訳がない…そういう事ですね?」

ハロノラは三度(みたび)、ゆっくりと頷いた

「悲しいけどね…そう言う事さ… どっちの味方もする神を信じる人なんて…このリーバイドには居ないのさ… だからどの街にも…『教会』なんて施設は無いんだよ…」

するとハロノラは、ゆっくりと立ち上がった

やはり身長はイェロンと同じか少し上ぐらいだった

そしてゆっくりと、後ろにある本棚へと近付いて行く

「…私はね…元々『シタルシュバ』に住んでいたんだよ… でも…そこでの『獣人』に対しての異様な()()()に嫌気が差してね…隣の…中央大陸『セントレイン』に行こうとしてたのさ… でもね…その時の私は…もう『どうなってもいい』とでも思ってたのかね…? 『ダリルコート』に向かう正規の道を使わずに、森の中を闇雲(やみくも)に歩いていたのさ… そしたら見付けたんだよ…この『教会』をね… 今みたいに小綺麗じゃなく…ボロボロで人なんて住めるかどうかも分からない様な形でね… でも()()んだよ…『()()()』がね…」

「「「!!?」」」

「…どういう事でしょうか?」

驚く3人と質問するシード

「今と同じさね… 人間と獣人の子供達が入り交じって、ボロボロの教会に7~8人一緒に住んでいたのさ… 驚いたよ…なんでこんな所に教会があって、そんな所に子供達が住んでいるのか…そして『人間』と『獣人』が一緒に… 『()()()()()()()()()()一緒に暮らしているのに…私は驚いたね…」

「「「!!?」」」

「『今と同じ』…? 『捨てられた』…?」

「……」

ハロノラはシード達の方を振り向く

「…あんた達…『人種遺伝論(じんしゅいでんろん)』って…知ってるかい?」

「…『人種』…」

「…『遺伝論』…」

「…?」

アレスもミーシャもスイも、頭に『?』が浮かぶ

聞いた事が無い言葉である

「『人種遺伝論(じんしゅいでんろん)』…」

しかしシードは違った

「『人の遺伝子』は常に『2つの種類』が存在する…もちろん『人間』と『獣人』だ。 そのどっちかが濃く現れるかで、人の『見た目』が変わってくる…『人間の遺伝子』の方が濃いなら肌が白く毛が薄くて獣の要素が無い、『獣人の遺伝子』の方が濃いなら獣耳や尻尾が生えて人間の要素が少なくなる… それが普通だが、逆に『人()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 例え『人間』であっても『獣人の遺伝子』は持っているんだ。 …そしてそれは、()()()()()()()()。 つまり両親や先祖が『人間』なら、『獣人の遺伝子』は薄くなっていく…逆も場合もそうだな」

「……」

アレスの両親は『人間』と『獣人』…

そして、アレスは『人間』だが『獣人の力』も持っている

全人類がそうでは無いが、アレスの両親がそうだったからこそ、アレス自身は『獣人の力』を持ち得る事が出来たのだ

アレスはそれを痛感していた

「…だが…それはあくまで『()()』だ。 少なくても全人類に二種類の遺伝子があるからこそ、例え()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 簡単に言えば…()()()()()()()()()()()()()()()()…って事だな… それが『人種遺伝論』…血縁や家系に関係するものの、人は人間にも獣人にもどちらにも産まれてくる可能性があるという論理だ………!? …そうか…()()()()()()()()って事か…!?」

ハロノラは深く頷く

「…その通りだよ… ここに居る子達は…『人間側に産まれた獣人』や『獣人側に産まれた人間』の子供達なのさ… 大人に見捨てられた…可哀想な子達だよ…同じ『人』なのにね…」

「ですが…どうやってここに…? 『見捨てられた』とは…?」

「…そうだね…あんた達なら…()()()かい…?」

突然そんな事を言われて、戸惑うミーシャ達

「えっ…!? どういう事ですか…!?」

「………なるほど………それが『見捨てる』って意味ですか…」

「…シードさん…? どういうことでしょうか…?」

「……………」

「…アレス(そいつ)の事は放っとけ…」

ハロノラが薄く笑う

「…全く…頭が良い子だね…」

ハロノラが軽くため息をつく

「この『リーバイド』の大人は…()()()』でね…『()()()()』では無いのさ… 『全大陸共通項目』の一つ…『各大陸で文化や法律を自由に制定する』がある…だからこのリーバイドがここまで自由に動いているんだけどね…それでも項目の一つ『殺人だけはこれを容認しない』…これがあるからこそ…戦争が起きずに均衡が保てているのさ… でも一度火が付けば止まらない…誰でも『殺人者』や『火付け役』になんてなりたくないだろう?」

「…?? えっ…と…どういう事ですか…?」

「つまりだ…自分とは違う人種の子供が産まれて、それを殺せる親や大人が居るか? 少なくても、さすがの俺でもやらないしやれないな。 殺人(それ)をすれば、一生その『罪』を背負って生きていく事になる…それに、()()()()()()()()()()()()()()だろう。 もしその子供が『人間』なら、『人間の子供を殺した』として戦争の引き金になる…逆にその子供が『獣人』でも、『獣人の子供を殺した』として戦争の引き金になる… そんな『()()()()()()()』には誰にもなりたくはない… 例え、いくら隠しててもいつかはバレる…だから…『()()()()()んだ」

「…!??」

「…『失踪』…ですか…?」

「そうだよ… 子供をある程度まで隠して育てて自立させる…そして自覚させるのさ…『()()()()()()()()()()()()()()()』…ってね… 周りは自分とは違う人種…そして毛嫌いされる人種…大人からそうやって…色んな『重圧』を掛けられてれば…いつかは分かるだろうね… 『自分は必要とされてなくて嫌われた存在』…だとね… そしてこうも聞かされるのさ…『()()()()()()()()()()()()()()()()』…ともね…」

ミーシャやスイは、そこでハッとする

「…まさか…」

「その子供は…その森を通って自分と同じ人種の居る方へ行こうとするんですか…!? この…『ウィークエンドの森(一週間迷って死ぬ森)』に…!?」

「ああ… 境界戦門『センタクル』に行っても通してはもらえないだろうな…なにせ人種が違うからな…聞いてももらえない… ならどうするか…? 当然『森』を通る…そして…『失踪』扱いだ」

「その通りだよ… 子供に…わざと自覚を持たせて、自ら居なくなった事にする… 『失踪』させて『行方不明』にさせる… それが…誰も『罪』を背負わずに『火付け役』にもならずに出来る…唯一の『()()』なのさ…」

シードは呆れた顔をする

「…おいおい…『人でなし』を通り越すぞ…呆れる… そんな大陸だったとはな…」

ハロノラも同意して頷く

「私も呆れてね… そんな大陸なら直ぐにでも離れたいと思ったけど…そんな話を子供達から聞いて、何もせずに他の大陸に行くなんて…私には出来なかったね… それからだよ…私もそこで住み始めたのはね…」

ハロノラはスッ…っと本棚から何かノートを一冊取ると、椅子に座ってそれを広げてアレス達に見せた

「私もその頃はまだ『資金』や『人脈』があったからね… お金と人手を使って教会をちゃんと住めるぐらいに改修してね…徐々にだが…今みたいにまともにはなったのさ…もちろん教会らしさも忘れないようにね… 資金集めの為に『果樹園』を作ったり…森に入ってしまった子供達を見つける為に毎日森を巡ったり… 全てはここに居る子供達に…『未来』を感じたからだね… いつかこの大陸が…『人間』と『獣人』が仲良く手を取り合って住める様な大陸の…『先駆け』になって欲しいからね…それを私が…『子供達』()望んでいるんだよ… このノートは…かつてここに居た子供達の名前や…この教会の資金のやりくりをまとめた…ちょっとした『帳簿』だよ…」

確かに色々名前や数字がびっしりと並んでいる

パラパラとページをめくり、そしてパタンと閉じた

「………」

シードは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

が、今は深く追求しなかった

ハロノラがノートを脇へと退かして喋り始めたからである

「…困ったもんだね…どうもこの(とし)になると喋り過ぎちまうよ… さて…今度こそ今の私が伝えられる事は伝えたよ… あとはあんた達の自由さ…王都にでもどこでも行きな…」

どうやら、もう彼女が語る事は無いそうだ

しかしこの教会や森…第三大陸『リーバイド』も含めた、知らなかった情報は多く得る事が出来た

それは十分な収穫と言える

だが肝心な『英雄の話』はまだ聞いていない

「あ…あの…ハロノラさん…? 私達、まだ聞きたい事が

「待てミーシャ…」

ミーシャがそれを聞こうとするが、シードがそれを(さえぎ)

「ミーシャ、スイ…あとは()()()()()()… 2人は外に少し出ていてくれ… 下で子供と遊んでていいぞ」

突然そんな事を言われても納得出来ない

()()()()()

それでもミーシャとスイは了承する

何故なら…こういう時のシードは()()()()()

何か考えがある

そしてそれは自分達2人が居ると出来ない事…

自分達2人が居ないその代わりに、確実に聞きたい『情報』を得る手段を、シードは実行しようとしている…

『絶対なる信頼関係』が()()()()()()()

()()()()()()()()()』で『()()()』からこそ信じられる

一見矛盾しているそういった関係が、シードを信用するに値する

ミーシャとスイは承諾した

「…分かったわ… あなたに任せるわ」

「…わたしたちは外で待機しています…」

そして2人は扉から外へと出て行った

バタンッ…っと扉が閉まり、カツッ…カツッ…っと階段を降りる音が遠く聞こえた頃、ハロノラが尋ねた

「…あの子達を外に出して…どうしたんだい…?」

「……」

シードは急に真剣な顔になる

「シード… 俺はここにいていいのか?」

アレスも不思議そうに尋ねる

「当然だ… お前が居ないと()にならない」

シードは軽く息を吸って、吐く

一呼吸置く…そしてハロノラに言った





「こいつが…アレスが、『()()()()()』って言ったら…あんた信じるか?」




前回の続き

怪我とか何でも治す『治癒魂術』があるならば、薬とか要らないんじゃないの?




「簡潔に言いますが、『治癒魂術』で治せるのは『毒』までです。 風邪や熱といった『病気』は治せません。 これは『毒』と『ウィルス』が別の物だからです。 この『サークルワールド』での毒の定義は『弱体化』です。 毒を受けた人物は、あらゆる『免疫力』や『抵抗力』といった『自衛防御力』を低下させられます。 よって毒に含まれる軽微なウィルスでも効果が肥大し、弱体化した肉体はそれに対抗できずにダメージを受ける…それが『毒』なんです。 対してウィルスの定義は『攻撃』です。 ウィルスにかかった人物はウィルスそのものが持つ『攻撃力』に負けてしまいます。 いくら体の外にソウルを纏うのが強くても、体の『内』にはソウルを纏えません。 人は内側には無防備なんです。 その内側に『攻撃的細菌』を受けてしまうと、たちまち風邪や熱を出してしまいます。 これが『毒』と『ウィルス』の違いです。 『治癒魂術』はあくまで『治癒』…つまり『回復』や『治療』を専門とします。 よって『弱体化』した肉体を『回復』する事は出来ますが、内側に入り込んだ『細菌』を『攻撃して排除』する事は出来ません。 それを回復するために、『薬』があるんです。 薬は『抗生物質』…医学関係の力で生み出された、細菌を攻撃して排除する薬剤なんです。 要するに、『毒』には『治癒魂術』が、『ウィルス』には『薬』…この関係が絶対なんです。 だから薬は必要なんです…『治癒魂術では病気は治せない』ので… ちなみに怪我を回復させる治癒魂術を使えば病院はほとんど必要ない…はずなんですが、それは不可能です。 理由は3つ…『使用するソウルが多すぎる』『医療技術・知識が必要不可欠』『医療関係のバランスが崩れる』の3つです。 ソウルを使う量が多いのは当然ですね…自然治癒とは比べられない程の『組織再生』を行うのです…大怪我を治すならもって1日10回程度が限度ですね。 医療知識や技術がないと組織構造が分からないので組織再生は難しいですね…私は独学でしたが、相当の勉強が必要になります。 そしてこの2つを持つ人が多くなれば、世界は医者であふれてしまいます…そんな事になれば、確かにエニグマから受けた怪我を治す人が多い事になりますが、逆に言えばその怪我を治す医療機器や道具が売れなくなります…更に…もしも戦争になれば…最前線で治療を行わせる様になってしまいます…強制的に…まあそれは余程の事ですが… とにかく治癒魂術には限界が色々とあるんです。 薬は必要で、力と知識が更に必要…あとは

「『才能』…か?」

「…そうですね… 言いづらかったのですが…ソウルを相当量扱えてコントロールも上手…知識も覚えなければならないとなると…やはりある程度の『才能』が必要なんです… だからこそ、多くないんです…この『治癒魂術』を扱う者が…」

「…なるほどね…」

「…長く喋りすぎてしまいましたね… 今回はこれでおしまいです… また次回ですね」







「…だから俺の出番は…?」

「私達もなかったわよ…」

「……」




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