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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
第八章 森に棲む『悪魔』
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序章 ~約束~




    ―――その日は雨が降っていた。








決して強く、多くはない雨が降りしきり、()(しげ)る木々で作り出された『森』の乾いた地面に、(うるお)いを与えている

ここがどこかは分からない

ただ、森の中だという事は分かる



「ひっぐ……ひっく……ぐすっ…ぅぅ…ぁ…」



雨のサアァァァ……っと小さな音が森に響く中、それよりも更に小さな誰かの泣き声が聞こえる

どうやら女の子のようだ

地面に座り込みながら泣いている

その子の着る服はそこら辺で買える様な安物では無く、どこか高貴な雰囲気を持つ白い服ではあるが、全身泥だらけになりボロボロである

見た目はおそらく10代手前だろうか…と思う程に幼い

だが幼さを見せない特徴が彼女にはあった

それは『髪』である

金髪まではいかない…しかし薄い訳でも無い…

立派な『黄色の髪』が、少女の美しさを物語っていた

ただ染めただけではこうはならない…おそらく地毛だろう

背中の中心辺りまで伸びたその髪は、見る者全てを魅了する

しかしそんな髪ですら泥と雨に濡れ、元の美しさが無くなってしまっている

何があったのか…それは知るよしもない

しかし()()()()()()()のか…それは直ぐに理解出来た

少女の目の前…泣いている少女の前には、一人の男の子が()()()()()()()()()()

年齢は少女とそう変わらない…大体3~4才程の差だろう

髪の毛の色は黒で短髪…少女とは対称的に、上へと伸びてしっかりとした髪だった

その子が着る服はそこら辺で買える様な安物であり、白いTシャツ、黒い短パンのいたってシンプルな服ではあるが、全身泥だらけになりボロボロである

…決して死んではいない

それでも起き上がろうとはしていない

「……ごめんなさい……ごめんなさい…」

少女は泣きながら謝っていた

少女が泣いているのは、この少年に対する『()()』だという事は容易に理解出来た

少女は謝り続ける

雨の中、ただ一心に

「ごめんなさい…ごめんなさい……ごめんなさ

「あや…まんなよ…!」

少女は驚いた

突然、その倒れていた少年が声を出したのだから

「おまえのせいじゃ…ない… おれの…せいだから…」

少女は首を横に振る

「ちがうよ…! わたしの…わたしのせい…! ジンくんの…ジンくんのせいじゃない…!」

「ちげーよ…おまえが泣いてんのは…おれが『()()』からだ…!」

力強くそう言うと、少年はグググッ…っと必死に上体を起こそうとする

「おれが…もっと強かったら…おまえを守れた…! おれが…もっと強かったら…こんな風にたおれてなかった…! おれが…おれが『弱い』から…おまえを泣かせたんだ…!」

グッタリとした…どこか全身の力が抜けきった様子で上半身を起こし、足を伸ばした状態で地面に座る少年

「おれ…『()()』するぜ…! かならず…かならず『強く』なるから… おまえを…おまえを守れるぐらいに『強く』なるから…だから…もう泣かせねーって『約束』する…!」

少年はゆっくりと、右腕を上げる

プルプルと震えながら、少女に向かって腕を突き出す

そして指を曲げ、小指だけ伸ばす

「…『約束』…だ…!」

少女はコクンっと(うなず)

そして少年と同じ様に、少女も腕を出して小指のみを伸ばす

「わたしも…わたしも『約束』する…! ジンくんだけじゃなくて…()()()()()()()()()()()()()()()…! もう…泣かないように…ジンくんがまもらなくてもいいように…強くなるから…! 『約束』する…!!」

少女と少年は、互いの小指を合わせ『約束』する

少年は強くなり、少女を守る事が出来る様に…

少女は強くなり、少年に守られなくてもいい様に…

2人は誓いあった

涙目になっている少女の顔と、この雨の降る天気が()()()事を祈りながら…

2人は誓いあった









    「『約束』だよ…ジンくん…!」




  「ああ…『約束』だぜ……イェロン…!」

































「―――ハッ…!」




青年は唐突に目が覚めた

「…ハァ…ハァ…」

黒く上へとしっかり伸びた短い髪をした青年は、ベッドにあお向けで寝転がり天井を見上げている

…どこかの部屋だろうか?

木でできた机や本棚、同じく木造である床や壁…

一見すると殺風景な一室である

そんな部屋の窓際に置かれたベッドの上で、青年は自らが着る白い半袖のTシャツと黒い短パンを冷や汗で若干濡らし、まるで()()から目が覚めたかの様に目を見開いている

「……チッ… また…見たくねー夢…見ちまったな…」

青年は(ひたい)に手を当て、顔に付いた汗を拭う

ムクッ…っと上半身を起こす



コンコンッ…



「ジンビス…起きているかい? ちょっと頼みたい事があるんだが…」

ドアをノックする音と、そのドア越しに青年の名を呼ぶ少し甲高(かんだか)い老人の声が聞こえた

「……ばあちゃん……あぁ…起きてるぜ… 今行く…」

ジンビスと呼ばれた青年はゆっくりとベッドから降り、床に乱雑に置かれた衣服の中から適当に一枚の黒いジャンパーを取ると、それを羽織(はお)ってドアを開けて部屋から出て行った











シャッ……シャッ……シャッ……




一人のシスターが、箒を持って草木を掃いていた

頭には頭巾の様な白いフードを被り、紺色の修道女の服を着た、まだ若い女性が地面を竹箒で掃いていた

黄色の長い髪の毛を修道服の中へと入れ、まるでその美しい髪の毛を誰にも見せないかの様にしながら、穏やかな表情で地面を掃いていた

「イェロンおねーちゃーん!」

シスターの名を呼ぶ子供の声がする

シスターは振り向くと、4人の子供がシスターに駆け寄って来た

2人は『人間』で、2人は『獣人』である

獣人の子は犬と猫の獣人である事が、そのもふもふとした毛で(おお)われた顔を見れば一目瞭然である

「イェロンおねーちゃん! いっしょにあそぼう!」

子供達が笑顔で話し掛ける

それに対し、イェロンも同じく笑顔で返す

「だめよ…? まだお掃除が終わっていないの。 終わったら、一緒に遊びましょうね?」

優しく子供達にそう言うイェロン

「わーーい!! イェロンおねーちゃん! あとでねー!」

今すぐ遊べない事にガッカリした子供達だが、掃除さえ終われば遊べると分かり、走って『教会』へと戻る子供達

イェロンは教会の前で掃除をしていた

木製の教会…紫の屋根に十字架が一つ建てられた、何ともシンプルな教会である

大きさは二階建ての一軒家が奥に三軒程繋がったぐらいの大きさになっており、小さく古くてあんまり綺麗とは言えない(たたず)まいだが、それでも大切に使われて来たのが分かる教会だった

その教会は、どこかの街の中にある訳では無かった

『森の中』だった

辺りを木々で囲まれた森の中に、その教会はあった

森の中にありながら、まるで広場の様に開けたその場所に、年期の入ったその教会が建っていた



ピピピッ! ピピピッ!



そんな教会の扉を子供達が開けると、突然イェロンの腰から何かの機械音が鳴り響いた

「…!」

イェロンは急いで腰から、その音が鳴る魂機(そうき)を取り出した

手のひらに収まるぐらいの『四角い魂機』…まるでスマートフォンの様な魂機で、ボタンと丸形のダイヤルが数個付いており、真四角のディスプレイが一つあった

イェロンはその魂機に付いたディスプレイを覗き込む

するとディスプレイの下部に、小さな緑に光る玉が映った

「…誰か…()()()()()の…!?」



バァンッ!!



イェロンはその音が鳴った方向を見る

そこには、教会のドアを勢い良く開けたジンビスが居た

「イェロン! ()()()()()()()あった!?」

ちょっと焦った様子を見せるジンビス

「ジンビス君…! 『下』から反応があったわ…!」

その問い掛けに答えるイェロン

「『下』…街の方か…!」

ジンビスはそれを聞くと、一目散に森へと走って行った

「待ってジンビス君…!」

そんな彼を呼び止めるイェロン

「…()()…持って行くの…? 危ない事…しちゃダメだよ…?」

()()は絶対必要だ…俺は『()()』なんだからな…エモノは持ってねーとな… それと…『危ない事をしない(それ)』は約束出来ねーな…ヤツらが何をするか分からねーからな」

イェロンの言う『それ』…ジンビスの言う『コレ』…

一体何を指しているかと言うと、ジンビスが背負った『物』が、その正体だった

ジンビスの身長は170センチ後半…その身長よりも少し低い約150センチ程もある大きな『十字架』を、ジンビスは背負っていた

どのような代物かは分からない

しかしその十字架を逆さに背負っており、かつ十字架の伸びた下部分の先が『柄』になっていた

十字架の十字部分をハンマーの様にして使うのか…?

よく分からないが、とにかく『武器』である事は分かった

それを背負ったジンビスは、イェロンに指を突き付ける

「イェロン…()()()は俺に任せて、()()()はお前に任せる。 いつも通り、森の侵入者をちゃんと監視しといてくれ。 だから教会を離れるなよ。 だが…俺はさっさと帰って来るが、もしまだ帰ってなかったら、侵入者を()()()()()()()頼む。 いいな?」

そう言うと、ジンビスは森へと走って行った

「あっ…」

その様子を、何か()()()()()見送るイェロン

「……」

イェロンは両手を組んで祈った

()の無事を祈って…










静かになった教会に、(かす)かに『鐘の音』が響いた






それは、中央大陸から客船であり貨物船である『中央大陸・第三大陸間往復魂機船(そうきせん)』の到着を知らせる、『鐘の音』だった





Q.前回の最後のシードの『考え』が良く分からない



「なら答えよう。 あの時の俺達とザヌ達との会話の中で、俺はあいつらが『嘘』や『隠し事』をしているという事に気が付いた。 嘘を言うという事は何かを隠しているという事…それはつまり、罪を隠したり事実を隠したりするからこそ嘘をつくんだ。 だが初対面である俺達に、罪も事実も何も無いだろう… ならば何を隠しているか…? それは簡単に予想出来た。 あの状況で嘘をつく理由は一つ…『自分の身分を隠すため』だ。 更に言うと、身分を隠す必要があるのは大体が『貴族』や『高貴』なやつって相場が決まっている。 ならばザヌ達はどっかの『貴族』って事になる。 それまでの会話で、あいつらが第三大陸の出身では無いと知った以上、今居る中央大陸出身である可能性は高い。 ならば、中央大陸の貴族と言ったら『天帝』である可能性も高くなる。 『嘘をつき、身分を隠し、それが天帝かも知れない』…という予想をし、ここで一つの疑問を抱く。 『もしも天帝ならば、自分達の命が狙われる可能性は考えないのか?』という事に…だ。 いくら俺達が子供だとしても、天帝に怨みや怒りを持つ事も少なく無い。 天帝が全ての人に好き好まれている訳じゃ無いだろうからな。 俺達経由で、もっと力を持つ大人に情報が行く事も十分考えられる。 つまり、『俺達に接触した時点で、自分達を危険にさらす可能性が高まる。 更に情報提供する事で、それはもっと高まる』…これが分からない訳が無い。 だからこそ、こう思う訳だ。 『将来『敵』として現れるかも知れない…俺達の前に現れたんだ…?』…とな。 『物理的な敵としても、情報を流した間接的な敵としても』…という意味でな」



「………」

「シードさん…ご主人様が…」

「スイちゃん…ほっときなさい…」



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