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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
第七章 中央大陸英雄譚 ―終結―
60/90

一期一会、そして疑問


―――皐月(さつき) 22ノ日(にじゅうにのひ) 月魂日(げつそうび) 午後3時58分

  シューラス内宿馬料理店(しゅくばりょうりてん)薫風亭(くんぷうてい)』にて―――


「…第三大陸の北部から来たんですか?」

「そうよ? あそこは良い所よ? 暖かい所で環境も良いの…」

「でも僕達は()()()だから、これぐらい厚いコートを着ているのさ」

アレス達は軽く自己紹介した後、円形の木製テーブルを同じく木製のイスで囲みながら、ミーシャ達は話をしていた

机上には多くの料理が並べられ、6人で食べきるのには少し多いのではないかと思う程だった

しかしアレスはそんな事お構い無しにガツガツとがっついている

「……」

そんなアレスを横目でシードが見ている

だが今は少しでも第三大陸の『情報』が欲しいのか、直ぐに目線を2人に向ける

「…早速だが、第三大陸の『状況』を教えてほしい。 第三大陸『リーバイド』は『人間』と『獣人』が分かれて生活している…その『状況』は現在どうなのか…それを教えてほしい」

真剣な眼差しで『地下(ちくだり)ザヌ』と『地下(ちくだり)エナイ』の2人を見るシード

しかしフッ…っと笑うザヌ

「そう(にら)まなくても大丈夫さ。 簡単に言うと…()()()()()()()()…かな?」

「…? どういう事だ?」

「そのままの意味さ… 2つの種族が争っているのは依然変わらない。 ただ…それが『()()()()()()()()()()()()()()』の違いなんだ」

シードは腕を組む

そして少しだけ考える

「……つまり、『いがみ合う関係が今も続き、いつ戦争になってもおかしくない状況』…という事か?」

「そうだね。 2種族間の関係は良好ではないのさ」

「…」

「ちょっと待って…」

ミーシャが間に割り込む

「シード…前々から気になっていたけど…そんな危ない所に行って私達大丈夫なの…?」

「心配はいらないよ。 第三大陸は『人間』と『獣人』が()()()()()分かれているから、人間が住む地域に行けば何も問題はないさ」

ザヌがそう告げる

「でも…港で止められたりしないかしら?」

「その点も問題ないよ。 第三大陸は合計『2ヶ所』の『中立港(ちゅうりつこう)』と呼ばれる『特別な港』しかないんだ。 人間も獣人も一緒に居る港が第三大陸には存在するのさ。 その他の海に面する場所は『港』じゃなくて『漁港』…一般の舟は停泊出来ない。 安心して大丈夫だよ」

「俺達はまずその2ヶ所の内の片方の港に行き、そこから陸路で『人間側の王都(おうと)』に行く。 覚えておけよ?」

「分かったわ」

ミーシャは納得する

次にスイが質問する

「…人間が獣人側の地域にもし入ってしまったら…どうなるのですか…?」

「…それは…おそらく()()()()()()()だろうね… それほど2種族間はいがみ合って、嫌悪している。 人間側には人間側の法律が、獣人側には獣人側のルールが、それぞれある。 だがお互いが干渉してしまった時、そこに『秩序』は存在しなくなる。 リーバイドに行くなら、それは気を付けておかなくてはいけないよ」

「まあ俺達は全員『人間』だ。 問題ないな」

「…そうですね…注意します…」

スイも納得する

すると次はシードが質問をする

「そもそもだが…あんたらは何しにこの中央大陸に来たんだ?」

それについて、ザヌも答えるがエナイも答えた

「僕達はただの旅行さ。 第三大陸はあまり居心地は良くない。 この中央大陸の活気を知っておきたいのさ」

「中央大陸は良いところね~? 移住は大変だけど、こっちに住んじゃおうかしら?」

「ダメだよ姉さん…父さんや妹も居るし、移住は僕達だけで決められる事じゃないよ」

「う~ん…残念ね… その代わり、お土産をいっぱい買って行きましょうか?」

「そうだね。 皆もきっと喜ぶよ」

「……」

シードはチラッとアレスを見る

「モグッ…ンン…うまいなコレ! あむっ…っんん! ウマイっ!」

こっちの会話なんて気にもせず、夢中でガツガツ食べている

「…おいアレス…」

「スイ! これ食べるか!? ウマイぞ!」

「おいアレス…」

「…んっ? シードも食うか!?」

「…お前…これから第三大陸に行くんだぞ? なんか聞いておく事とか無いのか?」

「……」

アレスは食事の手を止め、考える

そしてハッ!っとする

「あっ! そういえば『ヒーロー』が居るんだろ!? その人の事、知りたいな!」

アレスの言う『ヒーロー』とは、昔に世界に蔓延(はびこ)った『脅威』…それを退けた『英雄達』を指している

アレスの父『黒月(くろつき)トレス』もその一人である

アレス達…と言うより、アレスはその人に会いに行くべく、第三大陸へ向かうのだ

「『ヒーロー』…ごめんだけど、その人については正直あまり知らないんだ」

ザヌが申し訳なさそうに言う

「名前も…なんだったかしら…? 忘れちゃったわ…?」

エナイもまた、思い出せないようだ

「えぇっ~~!? 知らないのか!?」

アレスはガッカリする

「すまないね…『英雄』と呼ばれる存在が居る事は知っている…けど、彼は表に出てくる事は滅多に無い。 と言うより、()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいなんだ…」

「私も他の『英雄』さんを聞いた事ないわ… やっぱり、『英雄』って本当は居ないのかしら…?」

「…存在はする…が、会うのは少し難しそうだな…」

「シード! 俺は『ヒーロー』に会うまで第三大陸に居るぞ!」

「分かった分かった…なら第三大陸の王都で会えなかったら、お前だけ置いて俺達は次の大陸に進むとするか」

「なっ…なんだそれ!? ひどいな!?」

「……」

怒るアレスを余所(よそ)に、シードはまた考え込む

「……」

「…? どうしたんだシード?」

「…いや…なんでもない…」

シードがこうして考え込むのは珍しい事ではない

事実、今までもこういう場面は何度かあった

だからこそアレスは気にしてはいたが特に追求はしなかった

「…ザヌ、第三大陸は戦争直前までの状況だったな? 俺達が第三大陸に着いて戦争が起こる可能性はあるか?」

「…」

ザヌは少し考える

「…なんとも言えない…かな? 僕の考えだと、『()()()()()()戦争(それ)は起こる。 逆に『何か』さえ無ければとりあえず戦争(それ)は起こらないだろうね。 あくまで、僕の見立てだけどね」

「そうか…何も無ければ良いんだがな…」

シードはこれまでの経緯を振り返ってみた

…正直、その『何か』をやらかして来ているので、『絶対に何も無い』とは言い切れなかった

だがシードの心配する所は()()では無かった

「ところでエナイさん達は、これから王都に向かうんですか?」

ミーシャがエナイに尋ねる

「そうよ…あそこならいっぱいお土産が買えるから、楽しみにしているの!」

「…ですが…ここから王都までかなり距離があります… どうやって移動するのですか…?」

「「………」」

スイの至極真っ当な質問に、2人は固まる

サンドイッチを買うお金を差し引いたら必要最低限のお土産を買える程度しか無いほど、彼らには手持ちが無いのだ

そんな状態で馬で2~3日掛かる距離をどうやって移動するのか?

馬どころか、商人の馬車に乗せてもらう程の運賃も無い

「…まあ…なんとかするさ…」

「難しい事は後で考えましょう…?」

どう考えてもそれが最優先で解決しなくてはならない事だが、2人はそんな言葉を振り絞って声に出した

「…まあ…そっちはそっちで何とかしてくれ… 悪いが、俺達はそれに対しての『当て』は無いからな…」

「……」

シードがそう言った直後、アレスがキョトンとした表情でシードを見つめる

何か気になる事があるのか、食事をする手を止めてまじまじと見つめていた

「…アレス、どうかしたか?」

「…いや…なにも…」

シードの素っ気ない態度に、アレスはそれ以上何も言わなかった

逆にシードが尋ねる

「お前…それ何杯目だ?」

「6杯目」







     ―――同日 午後4時53分―――



食事を済ませた6人は店を出た

その後アレス達は宿屋を目指した

今日はここで休み、明日の朝に出発するようだ

それをザヌとエナイに告げると、2人はこれからの事を相談する為に町をしばらく歩くらしい

おそらく2人とはここで別れるため、アレス達は別れの挨拶をした

「じゃあな2人共! 王都まで頑張って行けよ!」

「騒がしくて悪かったな」

「またどこかでお会いしましょう!」

「…お気を付けて…!」

アレス達は別れを惜しむ

ザヌとエナイはそれに対して、ニッコリと笑顔で返す

「色々とありがとう! 君達も気を付けて旅をしてくれ!」

「ふふっ…! ありがとうね…」

エナイはそう言うと、スッ…と雰囲気が変わる

「アレス君…」

「ん?」

「アレス君は…『一期一会(いちごいちえ)』…と言う言葉を知っているかしら?」

それを聞いて、アレスはポカーン…っとしている

「それは…『言業(ことわざ)』か…」

「知ってるのシード?」

「短い言葉に意味を詰め込んだ言葉の事だ…古い言葉でもあるから、知らない人も少なくないはずだ」

「物知りねシード君… 『一期一会』は…今の貴方達と私達の事を指しているのよ?」

エナイはスッとアレスに歩み寄り、その手を両手で握る

「『一期一会』は、自分の一生で一度だけ会う事を意味するの。 でもね…私はこの言葉を、『一つ一つの出会いを大切にして、その出会いに感謝して、悔いのない様な出会いにする』…私は、そう考えているの…」

「…?」

「私達がこうして出会ったのは『運命』と呼べるかも知れないわ… それが『必然』なのか…はたまた『偶然』なのか…それは分からないけど、私達は貴方に出会えて良かったと…そう言えるわ。 少しの時間で…お互いを理解しあった訳でも無かったわ… それでも、私はこの出会いに感謝しているのよ? だって…もしかしたら、本当に一生に一度かも知れないのよ? 『出会えた事』自体が素晴らしいじゃない? だから…ありがとうね…? それでも…また会えたらいいな…って、私は思っちゃうけどね…?」

「……」

アレスは不思議な感覚になった

見ず知らずの人から何か(さと)される様な助言を受ける事は、アレスにとってどちらかと言えば多い方だった

その度に、アレスは『いつもの事だ』と思って軽く適当に聞き流していた

そういう性格なのだ

だがしかしエナイの言葉には、何か聞き流せないような…何か自分の『()』に直接訴えかけるような…そんな感じがしていた

(しつけ)』だとか『説教』とかでは無い

適当に『それっぽい事』や『なんとなく』で言っている訳でも無い

うまく言葉で表現出来ないが、例えるならば『息子を心配する母親の様な()()』…

赤の他人がアレスに言う様な薄っぺらい感謝の言葉ではなく、本当にアレスと出会って良かったと思う言葉であった事が、アレスでさえも感じられた

「う…うん…大丈夫だよ…! またどっかで会えるよ…きっとね…!」

アレスは手を握られたまま、エナイの感情にただただ気圧されてしまった

「…それじゃ、そろそろ行こうか姉さん」

その様子を(ほが)らかな表情で見ていたザヌが催促する

そう言われたエナイは手を離し、笑顔で手を振ってザヌと共に町中へと歩いて行った

そんな2人の背を、不思議そうな顔でアレスは見送っていた

…この後、複雑そうな顔になったスイとニヤけた顔になったミーシャ達と宿屋に入り、翌日の為に早めに就寝したのだった
























         おかしい…



      ―――シード視点(ビジョン)―――




まず気になったのは、あの『買い物』だ…

金が無いのにも関わらず、あのサンドイッチを買おうとしていた所だ…

土産を買うために金を温存している…それは分かるが、食事もままならなくなる程にまでなっているなら、『土産を買うために』という考えそのものすら無くなるはずだろう…

王都へ行く、王都から帰る為の運賃だって必要なはずだ

あれじゃまるで…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…そう思われてもおかしくない…!

次に気になったのはあの『コート』だ…

いくら寒がりだとしても、あの膝下まであるコートは大きすぎる…

何枚か厚着をするか…もしくは『熱魂石(ねつそうせき)』で体を温めるとか…他にも方法があるはず…

あれじゃまるで…()()()()()()()()()()()()()()()()様にしか見えない…!

更に会話をして一番最初に気になったのは、『北部から来た』事だ…

第三大陸の事は、もちろん俺は詳しく知らない

だがこれから向かう大陸なんだ…無知識で向かう事の方が危険だ…

だからこそ調べたから知っている…

第三大陸『リーバイド』は、()()()()()()()()()()()()()事を…

つまりあいつは…『嘘』をついた…

本当は、獣人が住む北部とは逆の南部から来た…そういう事だ…

だがその嘘に…何の意味があるんだ…?

あれじゃまるで…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()様なもんだぞ…!

そして『英雄』についても気になった…

ザヌは言った…『すまないね…『英雄』と呼ばれる存在が居る事は知っている…けど、彼は表に出てくる事は滅多に無い。』…と…

これはつまり、『英雄と呼ばれる人を多少なりとも知っている』…と言う事だ

表舞台に出てこない事を知っているのならば、()()()()()()()()()()()()()()()はずだ…

その人物を全く知らないならば、そもそも表舞台に出てきた事すらも知らないし分からないからな

その『英雄』を『()』と呼んで、『男性』である事を特定している訳だしな

普通なら『その人』やら『英雄と呼ばれる人』とか、性別すらも分からない呼び方をするはずだ…

なら…だ…

知っているのなら…知っているのならば何故、()()()()()()()()()()()()()()()()()…?

アレスがどれだけ『英雄』に憧れ、会いたいかはあの場で分かったはず…

性別はともかく、髪の色や体型、性格や特徴なんかの『人となり』を何かしら教えても良いはずだ…

あれじゃまるで…()()()()()()()()()()()()()()()()()()様にしか聞こえない…!

そして最後に気になったのは…()()()()()()()()()()()()()…だ…

港からこのシューラスまで、おそらく馬でもそこそこ時間が掛かる…

ならばここまで来たその移動手段を使って、そのまま王都まで行けばいい…

もしここまで来た移動手段が、誰かの商人に乗せてもらったとかなら分かる…が、そんな無計画で中央大陸を移動しようとしているのは浅はかすぎる…

…どっかの無計画少年アレスじゃあるまいし…

だからこそ気になった…どうやってここに来たのかが…

ミーシャやスイは気にしなかったが、俺はそれを気にせずにはいられない…

あれじゃまるで…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かの様な言い方だぞ…!

………

だが…()()()のどれよりも…

最も気になった事が…全ての疑問に共通する気になった事が…ある…

それは…

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…だ…!

あいつは『嘘』をどうしてか見破れる…!

それが『隠し事』でも…だ…

『隠し事』が『何か』が分かるのではなく…『()()()()()()()()()()()』が分かる…

だからこそだ…だからこそ…!

あれだけ『嘘』や『隠し事』をしているザヌとエナイに対して…何も反応をしなかった事が…最も気になった…!

俺は最初、アレスの『目』がおかしくなったのだと思った…

どういう原理でアレスがそれを見破れるのかは分からないが、もしもアレスの体調が悪かったりその場の環境…今回で言えば、人が多く居る様な環境だったら使えないとか、そういう類いなら分かる…

だが、()()()()()()()…『…まあ…そっちはそっちで何とかしてくれ… 悪いが、俺達はそれに対しての『当て』は無いからな…』

これに対して、()()()()()()()()()()()()

正直、『当て』はあった

例えば町に居る騎士の『衛兵隊(えいへいたい)』に事情を話し、王都へ向かう様な馬車や商人を探してもらって、労働力と引き換えに乗せてもらう…簡単な話、『雑用をしてその代わりに乗せてくれ』…そう頼み込むのも悪くはない…

実際俺達も一度、前にそうしようとしていた事もあったからな…

それに、一旦帰るのも手だ…

下準備が出来ていない以上、王都に向かうのは非常に困難…なら、このシューラスで一旦第三大陸へ引き返すのも手段の一つ…

王都へはまた今度行けばいい…

それらの方法も考えられるからこそ、俺はあそこで『()』を言った

『当ては無い』…と…

『嘘』をついたからこそ…アレスは反応した

俺が本当は『当て』があるのにも関わらずに『無い』と言った事に対し、アレスは俺の顔を見て『何で嘘を言ったんだ?』と言いたげな顔を俺に向けたんだ…

つまり、人が多く居る場所(あの場)でも問題なく『目』を使えた…という事…

それは…()()()()()()()()()()という事に他ならない…!

………

おそらくだが…あいつらの『正体』は………

なら…それなら…

…いや…()()だとしても…




何故…あいつらは嘘を言ったんだ…?

何故…そんな事をする必要があったんだ…?

何故…








         …俺達の前に現れたんだ…?























     ―――同日 午後5時02分―――




「…どうだった姉さん…? 面白い人達だったでしょ?」

「そうね… なんだか応援したくなっちゃう子達だったわ…!」

ザヌとエナイは町中を歩きながら会話をしていた

()()()()()にあんなに面白い子達に会えるなんて…()()()したかいが有ったわ…!」

「そうだね…僕も楽しかったよ…! そうだ…! このままもう少し歩き回ろうか?」

「いいわね~! お買い物もしたいし…もう少し遊んじゃおうかしら!」

「ならこのまま町を……っ!! しまった…!」

陽気な笑顔をするエナイに対し、何かまずい事が起こったのか…ザヌは顔を(ゆが)める

「…?」

()()()…! 急いでここから

「見付けましたよ…! 御二方…!!」

2人の元に走って来たのは、黒い隊服が特徴的な『王国騎士団特殊殲滅隊(とくしゅせんめつたい)』の団員の一人だった

ザヌは『しまった…!』という顔をしてその場に立ち止まる

「ようやく見付けました…! 一体何処に行っていたのですか!?」

息を切らした団員が、凄く焦った顔をして尋ねる

「あらあら…見つかっちゃったわ…」

「しまった…もう少し早めに()()()()()…!」

後悔するザヌの元に、更に5~6人の団員が駆け付ける

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と…我々の面目が立ちません…!」

『ジニー』と『シエル』…

陸彦(りくひこ)』と『陸妃(りくひ)』…

それらの『名』と『称号』が何を意味するのか…

それは()()()()()()()()

ザヌはため息をつく

「やれやれ…ここまでか… しょうがない…姉さん…いや『母さん』…()()()()()()()()()()()

「う~ん…もう少し遊びたかったけど…残念ね…」

そう言うと、エナイは自らの茶色いコートにそっと手を当てると、小さく呟いた

「『解除(リリース)』」

すると突然、2人の着ていた茶色いコートが(あわ)く光り始め、空中へと霧散(むさん)していった

同時に、2人の髪の毛も光り始めた

ザヌの短い、エナイの長い黒髪が段々と色が薄くなり、やがて眩しい程の()()()()となった

…やがて真の姿を表した2人は、最早別人だった

あのコートの下には、赤と白を基調とした『王族の服』を着ていたらしい

ザヌはスーツの様な服…俗に『宮廷洋装』と呼ばれる様な服を着ており、赤に白の線が入った装いは貴族そのものだった

エナイも同じく、赤と白を取り入れたドレスを着ており、膝上まで伸びた少し短めの宮廷服を着ていた

所々にフリルをあしらった、見た目も良い上に動きやすさも重視した美しい服装だ

両者共の服には金色の模様が付けられ、それがより一層『身分の高さ』を象徴している

これほどの見ただけで高位な存在だと分かる服になったザヌの顔は、心なしか苦い顔をしていた

「…ふぅ… 僕はこの服、あまり好きではないんだけどな…」

「何をおっしゃっているのですか! 『中央大陸廻国(かいこく)視察』の途中なのですよ!? しかも…『陸王(りくおう)様にはこの視察に付いていっている事を秘密にしてくれ』なんて…勝手に付いてきて…更に勝手に居なくなられて…突然衣服も着替えられても困ります!」

団員の一人が叱りつける

「はいはい…分かっているさ…」

「陸妃様も…! むやみやたらに『才能(センス)』を使わないで下さい! 変装した貴女方を捜す此方の身にもなって下さい…!」

今度はエナイを注意する

「ごめんなさいね… ちょっと遊びたかっただけなのよ…?」

申し訳なさそうな感じで謝るエナイ

団員はふぅ…っと大きなため息をつく

そして2人を(うなが)

「全く… 貴女方が『ザヌ』と『エナイ』と言う偽名を使う上に変装までしてしまったら、捜す事が非常に困難なのはご存知なはず…そして現在、王都へ帰る途中なのも理解しているはず…しかし我々には、(とが)める事は出来ても処罰する事は出来ません…! とにかく今一度、『リムルジン』へお戻り下さい…! 今日中には王都に到着は出来ませんが、既にこの先の街で宿泊予約は済んでおります…本日はそこでお休みしましょう」

団員は2人を連れ、シューラスの外に駐車している自動魂車(じどうそうしゃ)『リムルジン』の所まで連れて行った

エナイは静かに付いていったが、ザヌは最後の最後まで渋っていた









―――同日 午後5時23分 中央大陸廻国視察専用

自動魂車リムルジン『A()ラウンド』車内にて―――




「もう少しで、本日宿泊する街に到着致します。 もうしばらくお待ち下さい」

「了解…まあ、気長に待つさ」

「ゆっくりでいいわよ? 旅はのんびりとしないと…ね?」

「…旅じゃありません…視察です…」

リムルジン『Aラウンド』内で次の街へと向かうのを待つジニーとシエル

「そういえばジニー?」

「なんだい母さん?」

「今回のお芝居で…あの子達に私達の正体はばれなかったかしら…?」

「その点は心配ないよ。 ミーシャ君やスイ君…特にアレス君には、何もばれなかったからね…でも、アレス君にばれなかったのは、やっぱり母さんの『服作用(ドレスコード)』のおかげかな?」

ジニーのその言葉に、シエルはちょっと照れる

「ふふっ…♪ 嬉しいわ…」

「アレス君の『目』を(あざむ)くには、僕達の芝居だけじゃ足りなかったよ。 何をしても、嘘や隠し事はばれてしまう…」

「でも…ジニーの『運命(ジャッジメント)』で()()()()()()()()から、私の『服作用(ドレスコード)』で()()()()()のよね?」

「そうだね。 でもただ『未来が視える』って言っても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()… だから母さんの未来を視たら、僕達の嘘がことごとく彼にばれていたからね… そこで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のさ」

「不便な『才能(センス)』よね~… ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんてね~… やっぱりあの人と同じで、『何かを導く力』…『天帝(あまみかど)』の才能の影響かしら…?」

ジニーはやれやれといった動きをする

「仕方ないよ…父さんの『天帝の血』はどうしようもないからね。 僕の『センス』より、母さんの『服作用(ドレスコード)』の方がすごいよ」

「そうかしら…?」

「そうだよ! 『自由自在に衣服を創れる能力』もすごいけど、それ以上に『創った服は全て一定以上の物理・ソウルの攻撃を遮断する』なんて… その力のおかげで、アレス君の『目』から『嘘や隠し事を見破る力』を防げたんだからね? どんな才能から発言したか分からないけど、僕やレインカには無い才能だからうらやましいよ!」

「まあ…照れちゃうわね…♪」

シエルの顔が少し赤くなる





「…ジニー…?」

「? どうしたんだい母さん?」

「あの子達の『未来』…『視た』のかしら?」

「……」

少しだけ口をつぐみ、一瞬で真剣な顔になるジニー

「…ああ…視たよ… いや…『()()()()()』…からね?」

「どうだったかしら…? ちゃんと…『導けた』かしら…?」

もう一度、ジニーは静かになる

「…どうだろうね… 彼の未来は…決して平坦で安全で何もない『未来』じゃなかった… きっと僕達が思う以上に…過酷で困難で…誰よりも苦しむかもしれない未来だったよ… それでも…少なくても、僕達と出会う前よりかは、少しだけ良い『未来』に導けたと思うよ? 母さんの最後の『言葉』で…彼はきっとこの先の出会いを…より大切にするはずだからね…?」

「そう…それなら良かったわ…!」

「それよりも…」

「…?」

ジニーが先程までとはうって変わって険しい表情になる

それはまるで…()()()()()()()()()()()()()()()()()をしていた

「問題はアレス君の隣に居た彼…()()()()の方さ… 彼は誰よりも頭脳明晰(ずのうめいせき)…いや…最早『()()』と呼べるかもしれない…! 『頭が良い』という天才ではなくて…『才能の塊』…自分自身と他人の持ちえるあらゆる能力を使いこなす天才…と…言えるかもしれないね…」

「??」

「彼は半信半疑ではあるけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』に気付いていた…

それで…僕達が『天帝の人間』かもしれないという仮説も立てただろうね… 分かりやすい事も多かったけど…彼はそれを()()()()()()()…! あの場で僕達を追及すればその謎を解明出来た…にも関わらず、それをしなかった… 『面倒事を避ける』とか、『追及しても意味が無い』とかじゃなく…()()()()()()()()()()()()()んだ…! どうしてか分かるかい…母さん…?」

「???」

「それはもし僕達のことを深く追及して、正体を知ったとしたら…事情やお互いの事を深く聞いたとしたら…そして関係を深く良くしたとしたら… 万が一陸彦と陸妃(僕達)に何かあった場合、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からなんだ…! 例えば僕達の居る場所や行動や性格を、自分達(シード君達)が第三者に間接的に情報を提供したんじゃないかとか…例えばどこかで再会してその後僕達に何かあった場合に、自分達は何をしていたとか聞かれて疑われる事を恐れているんだよ…!」

ジニーの推理に、シエルは少し驚く

「ちょっと考えすぎじゃないかしら…?」

そこまで深読みするのかという意味でだが

しかしジニーはそうならない

それは、ジニーにはそう思う()()があったからだ

「彼の未来を視た時…彼の未来が()()()()()()んだ…! 未来が歪んでいるなんて…そんな未来が視えた理由は一つしかないんだ… それは…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…!」

「……」

シエルはもちろんジニーの母親だ

誰かの未来がもちろん視える訳ではないが、息子がこんな表情をしているのだ

信じざるを得ない

「未来を導けないのは…『死』が間近に迫っているとか…あるいは…更正出来ない様なよほどの『()』か…なんだ… だから彼はそれを恐れていたんだ… 容疑者として自分達が疑われる事を避ける為に… その未来を視て、アレス君を『導けば』きっと彼も変わるんじゃないかと期待したんだ… でも…そうならなかった… だから今、彼はきっとこう思っているはず…」




















 サークルワールド HERO ~一期一会編~ 第七章

    中央大陸英雄(たん) ―終結―  最終話


















「『何故………()()()()()()()()()()()()()()()…俺達の前に現れたんだ?』…とね…」



















       一期一会、そして疑問











           完






これにて中央大陸編は終わりです

次回は第三大陸で繰り広げられるサークルワールドの物語を存分に楽しんで下さい

その前に登場人物集や用語集を見ておくといいかも知れませんね

ちょっと分かりにくい所とかも多々あるので…

それではまた次回、お会いしましよう…


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