序章 ~旅日記~
―――記入日:皐月 17ノ日 水魂日
記入者:青原ミーシャ―――
『私が漁船港町『カリーチャ』を旅立って一週間と少し…
ここまで色々ありました…
『英雄』を目指して旅をしているらしい少年『暁アレス』…
ツンツンの黒髪で黒い刀を持ったアレスは、私が所属していた海の平和を守る『海洋武装兵団』…通称『海族』の居る『カリーチャ』に来ました
そこで私はアレスと一緒に、海の平和を脅かす『幽霊船』の撃退に向かいました
アレスと一緒に旅をしていた、薄くて短い茶髪で長槍を持った青年『白鷺シード』との協力もあって、何とか幽霊船の問題を解決しました
…ちょっと…悲しい出来事もありましたけど…
私は『海族』の元団長を捜してアレス達と一緒に旅をしました
中央大陸に着いた私達は、中央大陸の王都『サニーライン』へと行く事にしました
王都へ向かっている最中、『奴隷特化地域』を通った時に出会ったのは、小さい奴隷の『女の子』でした
でもその子は『特別』でした
その子は人々を襲う魔物『エニグマ』の力を持った女の子だったのです
そのせいか、髪の毛の色がとても珍しい白い色をしていました
私もそうでしたが、アレスはもっと『奴隷』そのものを許してはいませんでした
でもその子の居た奴隷売街『ロッテルク』の元締め、『鎖牢ネレイボル』さんは少し考え方が違いました
『死刑を宣告された者、行き場所を失った者…そんな人達に『奴隷』という『居場所』を与える…それが奴隷の正しい姿』だと…伝えられました
そしてそのまま街を巡ると、体の弱い老人の方に家族同然の様な扱いを受ける『元』奴隷の人達の姿がありました
…正直、奴隷に対する考えが変わりました
アレスも同じで、私達の考えを変えた元締め『ネレイボル』さんにお礼を言いに行こうと思って会いに行きました
しかしシードだけは、初めからネレイボルさんを『信用』していませんでした
そんなシードのおかげで、ネレイボルさんの『悪事』が次々と暴露されていきました
それに激昂したアレスが、ネレイボルさんと一対一で戦いました
しかしそこで、ネレイボルさんはその女の子…『混血少女』と呼ばれていた子を使いました
しかし情緒不安定な状態で『エニグマの力』を使ったせいか、力が暴走しそうになりました
それをアレスが抑え、その子は落ち着きを取り戻しました…が、やはりそんな事をしたネレイボルさんにアレスは怒り、ネレイボルさんを強烈な一撃でやっつけました
その後、ロッテルクの街から逃げて、何とか無事に逃げだせる事が出来ました』
「…っと…こんな感じかな…? まだまだ書きたい事があるけど…今日はこれでいいかな…あっ! そうだ…これを『旅日記』にしよ! 皆に回して書いてもらおうかな!」
―――記入日:皐月 18ノ日 木魂日
記入者:スイ―――
『今日、ミーシャさんから『旅日記』を書いてほしいと言われたので、書いてみます
これまでの出来事を書く…?…そうです…
ご主人様が『ロッテルク』から逃げる時、わたしも一緒に連れていってくれました
ご主人様は優しいです…♥
そしてわたしに『スイ』という名前を名付けてくれました
そんなご主人様とミーシャさん、シードさんと一緒に次の街『メリートル』に到着しました
麗都とも呼ばれているその街で、わたし達は中央大陸を治める王族『天帝』の一人、『天帝レインカ』さんと出会いました
『陸姫』…と呼ばれる中央大陸で4番目の地位にいるレインカさんは、後日行われる『演説』について悩んでいました
箱入り娘…というのでしょうか…?
外に出たことがないレインカさんは、自分の一言で中央大陸の進む方向が決まる…そんな重大な役目を抱えたレインカさんは本当に悩んでいました
そんな時…ご主人様はレインカさんをお姫様だっこでどこかへ連れて行ってしまいました
…ご主人様のお姫様だっこ…わたしもしてほしかったです…
ご主人様とレインカさんが何をしていたのかわかりませんが…レインカさんは悩みがなくなったみたいです
そんなレインカさんと、『王国騎士団』という大陸を守る組織の1つ『殲滅隊』の『団長』と『副団長』…『天帝アーサー』さんと『ロウ・パサード』さんとわたし達4人で、王都『セントレイン』へと向かいました』
「…こんな感じ…でしょうか…? ミーシャさんに1度見せたほうがいいのでしょうか…?」
―――記入日:皐月 18ノ日 木魂日
記入者:青原ミーシャ―――
『スイちゃん凄く上手ね!
そんな感じでいいわよ!
…さて、次は私ね
王都に着いた私達は数日後に行われる『演説』まで自由に過ごしました
スイちゃんの服を買ったりしたし…おいしい物も食べたりしたし…
そうして演説の日がやって来ました
レインカちゃんの『陸姫正式就任』と『中央大陸の未来を決める』、大事な演説…
…でも、それは行えませんでした
突然、レインカちゃんの真上に大きな『黒い闇』が現れて、そこからたくさんのエニグマと『一人の青年』が出て来ました
エニグマは王都全地域を襲い、街の人々は混乱して逃げ惑いました
しかし『王国騎士団』や、この演説の為に無償で募って作った部隊『臨時攻戦隊』の活躍で街は守られました
…それでも被害は小さくなくて、街は翌日に丸一日修繕が必要なぐらいでした
それ以上に、レインカちゃんの心に大きな『傷』をつけました
青年の名前は『灰島ヴェル』…なんかアレスやシードは知っているらしかったけど…
とにかく彼がレインカちゃんの演説を『故意に』壊そうとして現れたみたいで、レインカちゃんに『一生忘れられない思い出を作る』…なんて事を言っていました
何とかアーサーさんの手助けも借りてレインカちゃんを守る事は出来ましたが、レインカちゃんはその一件でふさぎこんでしまいました…
『陸姫として演説しなかったら…』『陸姫になる演説をしなかったら…』『王都で演説をしなかったら…』
『陸姫にならなかったら…』と、後悔と責任に押し潰されてしまいました…
そんな事ないのに…
私達はそんな面会謝絶のレインカちゃんにこっそり会いに行きました
でも…レインカちゃんの私室に、レインカちゃんは居ませんでした
私達の頭をよぎったのは、王都を襲った『灰島ヴェル』…その人でした
もしかしたら彼がレインカちゃんを誘拐したんじゃないかと…そう思いました
アレスの『力』でレインカちゃんを追跡したら、なんと『王国騎士団本部』にたどり着きました
そこに居た『王国騎士団魂理工学隊団長』…そして『聖騎士』の『ユゥカ・アラクネア』さんでした
ユゥカさんに連れられて『地下』に行くと、そこは広大な『地下迷宮』でした
通称『アンダーライン』…王都全域に張り巡らされたその『地下迷宮』の先に、レインカちゃんは居ると告げられました
私とスイちゃんはユゥカさんを足止めする為に残り、ユゥカさんの造り出した生物兵器、『有…なんとか体』の『対人…兵器』…『イー…サイク・ロプス』と戦いました
とても強くて負けそうだったけど、スイちゃんとの協力技で倒しました
…でもユゥカさんは、その『サイク・ロプス』を『5体』同時に出してきて…結局、私達は敗北しました
…そして私達はその後、この誘拐事件の『真実』を知りました…』
―――記入日:皐月 19ノ日 金魂日
記入者:白鷺シード―――
『…なんで俺がこの『日記』を書かなくちゃいけねぇんだ?
病み上がりもいいとこだぞ…
それと…『日記』じゃなくて『あらすじ』になってないか?
…まあいい…
レインカの誘拐事件から2日後、俺は目を覚ました
『聖騎士』ユゥカが最新医療魂機と上位治癒魂術を使って治療したらしい
…当然だろうな
『真実』…
俺はその『真実』を目覚めた時に聞いて、これまでの出来事全てに納得がいった
俺が治療された事も…レインカを誘拐した事も…ユゥカやロウやアーサーと戦闘をした事も…
単刀直入に言う
それまでに起きた全ての出来事が『狂言』だった
『狂言』…と言うと言い過ぎかもしれないな
『試練』…そう言い換えた方がしっくり来る
レインカを誘拐し、ロウ達騎士との戦闘まで、全て仕組まれた『物語』だったらしい
俺達が王国騎士団団長や副団長…聖騎士との戦いを通じて、より強く、より賢く、そして何より『強者との戦闘という経験』…これを得て欲しかったそうだ
そしてレインカはそんな俺達の戦い…レインカを救うまで諦めずに戦う『姿』、強者に立ち向かう『姿』、レインカを救いだすという強い『意思』…それらを地下迷宮に取り付けられた監視カメラで『見て』、レインカに『勇気』を持って欲しかった…そんな『物語』らしい
まったく…はた迷惑な話だ…
何も告げられずに巻き込まれたこっちの身にもなって欲しいもんだ…
…とにかく、全てが作られた物語であった以上、俺やアレスにも直接説明と謝罪をする…という提案を『陸王自身』がしてきた
実際に会ってはいないが、アーサー経由でそう言われた
今日の午後、その陸王の居る『王接間』で話を聞く予定だ
レインカもそこで話を聞くらしい
その一件以来、勇気付けられたのか一応元気にやってるみたいだな
ミーシャ達も喜んでいたな
…正直、あんだけ死ぬ思いで戦ったってのに、何も問題なく過ごせるのもすごい事だがな…
…ちなみにだが、アレスは『狂言誘拐』の翌日には目が覚めてたらしい…羨ましいなおい…
ミーシャの話によると、目が覚めた当初はアーサーに食って掛かったらしいが、事情を聞くと落ち着いたらしい
今はアホみたいに暴れている…訳ではなく、熱心に剣を振っている
…よほどアーサーに負けた事が堪えているのかもな
今回の戦闘は全てにおいて俺は負けた
相手が強い事は当然…だが、それでもだ
『全力』を出しても勝てなかった…それはおそらくアレスも同じだ
強くなるための努力はこれからもしていかなきゃならない
…まあ…それは置いておこう
とにかく午後、『陸王』とやらに会いに行く
ミーシャ達はいいが、俺自身は謝罪の1つや2つをしてもらわねぇと気が済まないからな
…聞きたい事も幾つかあるしな』
―――皐月 19ノ日 金魂日 午後12時08分
王接間にて―――
Q.アーサーは『センス』を持っているけどロウは『センス』が無い…
なら、アーサーが『センス』使わずにロウと戦ったら、ロウが勝つの?
「いや、それはもちろん『団長』が勝つ」
「どうしてだ? 単純な力なら、あんたの方が上じゃないのか?」
「団長は『センス』を使える…それはつまり、潜在的な『ソウルの量』が多い…と言う事だ」
「? ソウルが多いと強いのか?」
「当然だ。 戦闘において、ソウルの量が多いのは戦闘の勝率に直結する。 強さ=ソウル…と言っても過言ではない。 特殊殲滅隊はあらゆる戦況に対応出来る能力も試される。 ソウルが多いなら、それも容易に可能だ。 対多人数の戦闘、暗殺、潜入、長距離移動等、ソウルが多くあればどれもやり易くなる。 それが『一対一』の戦闘でも同じだ。 団長と戦った時も、団長は『センス』を使ったがもし『センス』を使わなくても、単純なソウルの量で俺は負ける。 もちろんそれが『全て』では無いがな。 少なくとも、団長との戦いでは俺は勝てない。 それだけは言えるな」
「そんなもんなのか…」
「よく分からないけど…アーサーが強いってのは分かったぞ!」
「それでは次回、また会おう。 …俺が居るかは分からんがな」
「…あんたが締めんのかよ…」




