覚醒 ≪リライト≫
≪Relight≫
意味:再び火がつく、火をつけ直す、点火・点灯する
≪Rewrite≫
意味:書き直す、書き換える、書き改める、塗り替える
≪電光閃火≫
意味:
(俺が強かったら…守れたかもしれないのに…!!)
(目の前に居たのに…守れなかった…!!)
(あの時と同じ…もう2度と…同じ思いはしたくない…!!)
(そう思っていたのに…!!)
(俺が弱いから…俺の『意志』が弱いから…俺が『英雄』じゃないから………)
(いや………違う……)
(レインカを殺したのは………アーサーだ……)
(悪いのは……『悪』なのは……俺じゃない……)
(『憎い』)
(俺の弱さじゃなく………あいツが『憎イ』……)
(レインカを殺しタ……アいツが『憎イ』…)
(殺す………)
(殺す…殺ス…)
(殺す殺す殺ス殺す殺す殺ス殺す殺ス殺す殺す殺ス殺してコロスコロスコロス殺す殺す殺す殺ス殺ス殺すコロス殺す殺ス殺す殺スコロス殺す殺す殺す殺す殺ス殺ス殺スコロスコロスコロス殺ス殺す………)
殺シテヤル……!!
「少年…これで君が『ヒーロー』になる事を望む者は居ない… 君が自分自身が『ヒーロー』になる事を望むとしても、それを祝う者も願う者も居ない。 …私と同じだ… これほど非情な世の中だと言う事を君に知って
「うるセェ…」
アーサーはアレスを諭す
しかしそれをアレスは聞かない
いや…聞けない
「…?」
「うるセェうるセェ…ウるセェ…!!」
今のアレスは、たった2つの感情で満たされていた
「ウルセェェェェエェェッッッ!!!」
『怒り』と『憎しみ』
「!! これ…は…!!」
アーサーはこれを予期していなかった
もしも今、アレスがアーサーであったなら…『絶望』に苛まれ、膝から崩れ落ちていたはずだ
立ち上がる気力も、武器を握る力も、何もかも失っていたはずだ
しかしアレスは違う
『英雄』を誰よりも目指していたアレス
『英雄』になって救いたい人がいたアレス
アーサーと違う所はそこだ
誰よりも自分が『望んだ』から
『望まれたい人』がそこに居たから
だからここまで折れなかった
アーサーは、アレスを『折る』つもりだった
しかしアレスは、予想とは逆に『反り返った』
折れなかった、しかし曲がった
決して曲がってはいけない方向に
「何だ…!! その『姿』は…!?」
アレスは沸き上がる感情に身を任せて『獣心化』を発現した
しかしそれは異形の姿だった
≪Relight≫
意味:再び火がつく、火をつけ直す、点火・点灯する
≪Rewrite≫
意味:書き直す、書き換える、書き改める、塗り替える
≪電光閃火≫
意味:
『怒り』と『憎しみ』の感情の点火による
『獣心化』の異形形態への改変
『 覚醒 ≪リライト≫ 』
アレスの発現したそれは、今まで発現したそれらとは全く別の姿だった
まず纏っているソウルの色が、アーサーと同じ『金色のソウル』だった
通常、ソウルは薄い青色をしているが、今のアレスの纏うソウルは金色に輝いていた
もちろん『獣心化』時のソウルは普通に薄い青色だ
だが青色の面影は一切無い
それどころか『獣心化』時に発現する、アレスの頭頂部に生える獣耳…これが金色のソウルで生えていた
普通の獣耳が生えるはずが金色のソウルで作られており、その大きさも2倍程大きくなっていた
上に大きく伸びて『兎』っぽいが、ソウルが不安定なのか形が一定に保てていない
刀を持つ腕とは逆の左腕には金色のソウルを纏った、まるで『籠手』の様な装甲が纏っていた
少し長めの立派な鋭い爪と、肩までにかけて纏った、腕が多少見える程度の密度の濃い金色のソウル
まるで『熊』の様な形をしたその爪はきっと、触れた物を瞬時に斬り裂くだろう
そして腰下には、アレスの身長よりも少しだけ短い『尻尾』が生えていた
もちろん金色のソウルで作られた尻尾だが、通常の『獣心化』ではこの尻尾は生えない
荒々しいが『猫』の尻尾に近い、長くて少し細めの尻尾だ
身体中に纏う金色のソウルも普通では無い
湯気の様に立ち上る訳では無く、全身を覆い尽くす程の強大なソウルが、まるで『鎧』の様にしっかりとアレスの体に合わせて覆っている
かといって『鎧』の様な形を作り出している訳でも無い
体から溢れ出る程の金色のソウルが、アレスを覆い尽くす様にして纏っている
そうしてアレスを『守っている』
更に『狼』の様な目付きと牙も、通常時よりも威圧感高めの姿になっていた
だが、目付きは『怒り』と『憎しみ』の感情がこもった恐ろしい目に、牙は一度喰らい付かれれば確実に肉がえぐりとられる程の鋭利な牙に変わっていた
しかし…『耳』よりも『腕』よりも『尻尾』よりも『鎧』よりも『目』よりも『牙』よりも、全く変わった『所』がある
それは、アレスの『髪』だった
髪が伸びたとか髪質が変わったとかそういう事では無く、『髪の毛の色が変わった』のだ
黒から、アーサーと同じ『金色』の髪に
――これらの変化は、アレスに『怒り』と『憎しみ』のという感情に『火がついた』結果で起きたという事であるのは言うまでも無い
が、それとは別に、アーサーはこう思った
(………『似ている』… どこか…いや…ほとんど似ている…! 他ならぬ…私に…!)
『金色のソウル』…『金髪』…それだけで、今のアレスはアーサーと酷似していた
「ヴヴぅ……ぁァァあ……」
しかし…しかし、
「ゥゥゥ………ァァァァアアアアッッッ!!!」
その沸き上がる『激情』だけは違った
「アアァァアアッッ!!」
アレスは大きな雄叫びを上げると、右手に持った刀を思いっきり振り上げ、そして思いっきり振り下ろした
その瞬間、アーサーは辛うじて見えた
刀から放たれた、『金色のソウルの斬撃』を
「!!?」
アーサーは瞬時に剣を前にかざしてガードする
ギャイィィンッッ!!っと、鋭い金属音を鳴らし、アーサーは後ろへと仰け反る
「がっっ……!」
アーサーは驚きのあまりに、声が出なくなる
(速……過ぎる…!! 斬撃が見えなかった…!)
何故なら、刀を振り下ろした瞬間にはもう、斬撃がアーサーを襲っていたからだ
常人なら確実に斬撃を喰らい、今頃もう起き上がる事すら出来ていなかっただろう
しかしアーサーはセンス『千光の一閃』を使い、その斬撃が直撃する瞬間にはもうガードをしていた
だが、かなりギリギリのタイミングだ
次はもう油断しない…そう思った時だった
(次はもう油断しない…!?)
目線を前に戻した時にはもう、そこにアレスは居なかった
(どこに…!?)
そう思う暇も無かった
アレスは既に、アーサーの正面斜め上の空中に居た
その『熊』の様に立派な爪を振り下ろそうとして――
「ッ――!!」
だが、やはり『聖騎士』アーサー
瞬時にアレスの殺気を感じると、防御が間に合わないと直感
目線をアレスではなく正面にしたまま、一瞬で数メートル先に『光速移動』する
爪がからぶるアレス
移動したアーサーは直ぐに体勢を整える
(『瞬剣 ≪リフポート≫』…! 回避するしか無かった…! 何という…『殺気』…!)
アーサーはアレスを真っ直ぐに見据えながら、次の一手を考えていた
この状況であっても、アーサーはアレスを『殺す』気は無い
彼が考えていた方法は…
(どうやって彼を無力化させるか…!)
それだけである
当然、アレスはそんなことを考えない
目の前の敵をどうやって殺すか…それしか考えていない
首をグリンッ!っと回し、鋭い目付きをアーサーに向け、次の攻撃に移る
「ウゥゥ…オオォああァァあアッッ!!」
刀に金色のソウルを纏わせ、思いっきり振り下ろす
再び、超光速で斬撃が飛ぶ
アーサーも最大限の反応速度で対応し、それを剣で防ぐ
「ぐっ…!!」
怯んだ隙をアレスは見逃さない
「ガァァぁアアッッ!!」
縦、横、斜め…刀を連続で振り、何発もの斬撃を飛ばす
アーサーは剣でそれらを防ぐ
速度は言わずもがなだが、威力も高い
一撃一撃が、アーサーを後ろへと徐々に押して行く
「ゥアァあアアッッ!」
アレスはそんなアーサーを斬り裂く為に、今度は左腕を振り上げる
鋭利な爪を、アーサー目掛けて振り下ろす
しかし当然、アレスとアーサーの間には距離がある
振り下ろした爪から斬撃を放つ
―――と、アーサーは思っていた
…フッ
「!!?」
一瞬だった
時間にしてわずか0.1秒もたっていなかったと思うほど一瞬で、アーサーの目の前にアレスが現れた
その熊の様に立派で鋭利な爪が、アーサーに振り下ろされる
だがその一撃はかすっただけだった
瞬時にバックステップを行い、アーサーの着ている薄いが頑丈な鎧にわずかに当たっただけで回避した
「ッ…!! 『響剣 ≪スタンドライト≫』…!!」
アーサーは剣を前に掲げる
キィィヤァァァァァッッッ!!!
「ガァッ…!! ァァアアッ!」
鳴り響く剣と剣が擦りあった様な金属音、目を閉じる事しか出来ない程の閃光
自身の目の前でそれが起これば、アレスでなくても当然怯む
アレスは二、三歩後ずさりし、アーサーはその隙に距離を取る
「ハァッ…ハァッ…! 『光』と『音』による『目眩まし』だ…! 流石に君でも効いたようだな…!」
アレスは頭を押さえ、自分の目の前で起きたそれらに耐える
アーサーは呼吸を整える
そして――
「油断はしない…一気に決める…!」
アーサーはアレスの目の前の『空間』に焦点を当てる
「『瞬剣 ≪リフポート≫』…!」
フッ…っとアーサーが消えたかと思うと、フッ…っとアレスの目の前に現れた
そして剣に金色のソウルを纏わせ、それをアレスの後ろ首へと思いっきり振り下ろす
(ソウルで『打撃属性』にした剣だ…! 切れはしないが痛みはある…これで少しの間…寝ててもらうぞ…)
振り下ろした瞬間に、アーサーは後悔した
剣を振り下ろした事では無く、今のアレスが自分と似ているという事を思い出したからだ
ジュシャシャシャシャシャシャッッ!!!
「なっぁ…!! ハッ…!?」
アーサーは分かってしまった
それ以上に、見てしまった
アレスの周りの空間に、自分と同じ技がある事を
(…!! これ…は…!!)
アーサーは全身が斬り刻まれた
これを自ら『放った』記憶がある
アレスを取り囲む様に周囲に浮かぶ、小さな小さな『光の剣』
それが一斉に爆発し、その場に無数の斬撃を起こしたのだ
(これは…『天閃剣 ≪ヒャクシキ≫』…!! 何故…この技を…彼が!?)
アーサーにそれを考えている余裕は無かった
幾つもの斬撃をその身に受けたのだ
必然的に攻撃が止まる
そうなると次に来るのは、アレスの反撃だった
「ウゥッ…ガアぁァッ!!」
アレスはまだ目が眩んでいる
しかし後方から受けた自身に向けられた殺気、そして声を頼りに、左腕を後ろへと振り回す
ドゥグゥッッ!!っと鈍い音を出し、アーサーにアレスの『裏拳』が直撃する
「うぐぅっ…!!」
アーサーはなんとかそれを同じくソウルを纏った左腕でガードする
しかしその衝撃は強い
アーサーは問答無用で吹き飛ばされた
「…ぐっ…ぁあ…ああ!」
吹き飛ばされたアーサーは地面に背中を強打し、転がる
その痛みに耐えながら、転がる勢いを利用して立ち上がり、体勢を立て直す
「フー…ッ! フー…ッ! ぐぅ…ッ…!」
痛みを堪え、何とか戦闘体勢を取る
「うゥ…ゥうウ…ッッ…!」
アレスもようやく目が元に戻ったのか、アーサーを真っ直ぐに見据える
お互いに向き合い、『次の一手』を繰り出す準備をする
ここでアーサーは考える
(…今の彼は、私とほとんど同じだ… 使う技や能力も私に近い…だが、その使用する技の多くが一度私が使った技である事は確かだ…! ≪リフポート≫…≪ヒャクシキ≫…どちらも私が『見せた』技…ならば対策としては1つしか無い… 『彼が見てない技で攻撃』するしか無い…!)
アーサーはソウルを自身の体に纏わせる
そして集中する
そしてその体がぶれ始める
正面から見るアレスにはそう見えている
そして――
「『幻剣 ≪ファントマイン≫』…!」
そのぶれているアーサーがハッキリと元の姿に戻った
何故かと言うと、アーサーが二人になったからだ
アーサーはぶれていた自分から、その『ぶれていた自分』を体から引き離し、『もう一人の自分』を生み出したのだ
姿形は一緒、見た目が完璧に同じアーサーが二人、アレスから見て左右に別れてアレスに向かってくる
僅かな違いと言えば、少しだけ体に纏うソウルの量が違うぐらいだった
早い話、アーサーは『分身』を作り出したのだ
光のソウルで自分と同じ『存在』を作り出した
『光』を操るアーサーにとって、『光の三原色』を操作する事は集中さえすれば容易に出来る
ましてや『努力』を誰よりもしてきたアーサーならば尚更だ
光による色の加減により、見た目を同じにする事は簡単に出来た
しかしソウルで『人の形』を作り出し、更にそれを『動かす』事は簡単では無い
ソウルの量が単純に大量に必要であり、それを自分と同じ形に圧縮して成形しなければならない
その時点でソウルコントロールがかなり必要で、ソウルを扱う繊細さは必要不可欠である
そして最も重要なのが、『分身を操作する能力』である
実はソウルの分身を操るのはそう難しい訳では無い
ソウル自体が『魂の力』そのものなので、一種の『生き物』として生み出す事は鍛練を積めば十分可能である
分身を生み出す際、どうやって動いてどこに行って何をするという『行動パターン』を頭で念じて分身に記憶させるだけでいい
分身は単純な行動しか出来ないが、それで何とか分身を行動させる事が出来る
だがアーサーの場合、見た目も同じにしている事が、それを難しくしている
アレスと向き合い、体にソウルを纏わせて自分と同じ様な『人の形』を作り、それを自分から引き離している最中に見た目の『色』を付け、更にそこで『数秒間の行動パターン』をその『分身』に記憶させ、その分身と共にアレスへと向かう…それをほんの一瞬で行っているのだ
ただ単に行動パターンを記憶させるだけの作業では無い
それほどの複雑で繊細な事を行えるのは、この世界ではアーサー一人だけだろう
(この技は簡単には真似出来ない… これで
「!!!」
しかしそのアーサーの考えは甘かった
アーサーは戦慄する
何故なら、アレスも同じく『分身』を生み出したからだった
しかも、『色』も全く同じ分身を上に跳ばせて生み出していた
アーサーと同じ分身の様な、姿形と見た目も同じアレスが一人その場に残り、その上へと高く跳んだアレスの分身を、アーサーは見た
「そんな…バカな…!!」
アレスは当然ソウルコントロールは上手く無い
むしろ下手な方だ
(私が…私がここまで速く『幻剣』を扱える様になるまで…3年はかかったのだぞ…!? それを…一度見ただけで…!!)
アレスから見て左へ移動したアーサーが、驚きの顔を見せる
しかしまたしても、そんな驚いている暇は無かった
アレスはその左腕を大きく振りかぶって、前方を薙ぎ払った
もちろん目の前にアーサーが居る訳ではない
その腕は空中をむなしく空振る
「…!?」
このアレスの行動に、アーサーは何の意味があるのかと疑問に思った
腕を振る前と後では、左腕に纏わせた金色のソウルの爪の大きさが違うぐらいしか、違いが無かった程である
「…!!」
瞬間、アーサーは理解した
『これは攻撃』なのだと
やがて地面が『光りだした』
アレスを起点に、扇状に広範囲の地面が光を放ち始める
(これは…! 『天光剣 ≪ハンドレイムライト≫』…!! 上に≪リフポート≫で回避せねば…!)
バッ!っと目線を上に向け、一瞬でアーサーはその方向へと移動する
その直後、アーサーが居た地面は『光』に包まれ、テニスコート程の広さが『光の柱』を上げる
アーサーは空高く跳んだ為に当たらなかったが、アーサーの『幻剣』から作られた分身は避ける事をしないし出来ない
よって『光の柱』に分身は飲まれ、その存在は文字通り『光の彼方』へと消えていった
その様子を上空から見ていたアーサー
(危ない…! 威力も範囲も…私とほとんど同じ…! 喰らえばただでは済まなかった…)
空中へと跳んだ事を、アーサーは後悔した
上へと跳んで回避した事では無く、自分と同じ上空へとアレスが分身を出した事を思い出してしまったからだ
アーサーの視線が前方を向く
そこには、空中で体をひねりながら刀を振りかぶるアレスの『分身』が居た
アーサーには避ける事も、防ぐ事も出来なかった
辛うじてだが、薄いが身体中にソウルを纏う事が辛うじて出来た
そしてアレスはアーサーに向かって真っ直ぐに縦方向へと刀を振り抜く
ズシュッッ…
「うぉ…ぉぉあぁあ…!!」
縦に、真っ直ぐに、アーサーは『斬られた』
この現象を、アーサーも知っていた
(『輝剣 ≪テルマジャラス≫』…! この…技まで…!!)
纏ったソウルで致命傷にはならなかったが、アーサーの左肩から右横腹にかけて斬撃が『発生』した
『痛い』では済まさない
その斬撃により、ソウルを纏っていた事も相まって、アーサーが吹き飛ばされる程の衝撃が発生した
ソウル同士で反発し、防ぎきった分は衝撃として、防ぎきれない分は斬撃として、アーサーを襲った
当然『痛い』では済まさない
斬撃は鎧に傷を付け、衝撃はアーサーを地面に強く打ち付けた
「ぅぐう…っ!」
痛みを堪え、すぐさま起き上がる
分身ではないアレスの追撃を恐れたからだ
だが、アレスは追撃をしなかった
代わりに、次の一撃の準備をしていた
アレスは刀を上へと真っ直ぐ掲げ、その刀に全ソウルを集束させていた
自分のソウルを刀に集め、超強力な一撃を放とうとしていた
自分の『獣心化』をも解除して、尻尾や獣耳、目付きや牙も、金髪すらも無くなり、その分のソウルを全て刀へと集める
それは、空中に居た分身も対象だった
与えられた『行動パターン』を終えたソウルの分身は、自然消滅するのが普通だ
しかしアレスの分身はそうならず体がスウッ…っと、まるで煙の様に消えていき、アレスの刀に吸収されていく
今にも弾けそうな程、圧縮されたソウルがアレスの刀を包む
間違いない
これが今のアレスが放てる、最高最大の一撃だ
「グゥぅ…ッ…! お…オマエ…が…!」
アレスは半ば理性が欠如した状態でアーサーに語りかける
いや…理性が少しだけ戻った…の方が正しいのかも知れない
それでも、その目には『怒り』と『憎しみ』の感情がこもった、獣の様な獰猛な目をしていた
「レイんカを…殺シた…ッ…!! ユルせ…ナイ…! 許セナい…!! コロス…殺ス… コレデ…殺シテヤルッ…!!」
刀に纏ったソウルが最高潮に達した時、その集束が止まる
「……」
アーサーは何も言わなかった
だがこう思った
(やらなければ…殺られるだけだ…)
アレスと同じ様に、アーサーも剣を上へと掲げる
そして同じ様に、剣へ自身のソウルを集束させて行く
2人は鏡で向かい合ったかの様に同じ姿で立つ
しかしアーサーは少し違った
剣に纏ったソウルが、光り輝き始めたのだ
光り輝く宝石の様に金色のソウルが美しく光り、薄暗い広場を明るく照らした
だが、アレスには伝わっていた
その『剣』がどれ程のソウルを凝縮し、どれ程の威力があるか、獣の力を宿していなくても簡単に感じてしまった
「………ヴぅぅ…ぁぁあアア…!!」
「………これで…終わらせよう……」
そして――2人同時に武器を振り下ろす
「『閃狼剣…ッ!! たオゼんトウルふェリオん』…ッ…!!!」
「『天光閃剣 ≪ミリオンライト≫』!!!」
『閃狼剣・タオゼントウルフェリオン』…アレスが振り下ろした刀から放出されたそれは、巨大な『狼』の姿をしていた
アレスの全ソウルを圧縮して巨大な『狼』を作り出し、それをアーサーへと走らせた
金色のソウルに身を染めたその『狼』は、リアルな姿や形では無く、朧気とした幽霊の様な姿をしていた
頭から尻尾まで金色のソウルの毛に覆われ、睨み付けられたら体がすくむ程の鋭い眼光、噛み付かれたら全てを砕く事が出来そうな頑強な顎…そしてその巨躯は、アレスが20人でも足りないぐらいの大きさを持っていた
一目見たら分かる
圧倒的な量のソウルを圧縮した一撃だと、子供でも分かる
これを喰らえば、もちろんただでは済まさない
その狼が喰らい付いた場所は、ソウルの衝撃とエネルギーにより魂を含めた全てが破壊されるだろう
『天光閃剣 ≪ミリオンライト≫』…アーサーが振り下ろした剣から放出されたそれは、『空』から落ちてきた
アーサーの持つソウルを圧縮させて広大な『光の雨』を作り出し、それを前方へと降らせた
金色に輝くソウルがアーサーの前方を雨の様に照らし、それが一気に地面に向けて降り注いだ
『天光剣 ≪ハンドレイムライト≫』は地面からだったが、この技はソウルを空へと滞留させ、そこから重力で押さえ付けるかの様に地面へと降らせる技なのだ
効果範囲は≪ハンドレイムライト≫の2倍、テニスコート2つ分もある
一目見たら分かる
圧倒的な量のソウルを圧縮した一撃だと、子供でも分かる
これに巻き込まれれば、もちろんただでは済まさない
その雨が降った場所は、光の衝撃と熱により細胞を含めた全てが破壊されるだろう
―――その2つがぶつかった事で、2人の居る広場は『閃光』と『轟音』と『衝撃』に包まれた―――
―――静寂が、少しだけその空間を満たした
だがすぐに、1人の男が声を出す―――
「……加減はした…… 君は…無事か…?」
その声の主はアーサーだった
土埃が立ち込めているその広場から、アーサーの声が響く
「…無事ならばそれでいい… 君は死んではいけないか…!!?」
アーサーは語る言葉を切って、つい驚きの表情を見せる
土埃が治まってきたその広場に、アレスの姿が見えた
しかし、最早生きていなかった
それは比喩表現ではあるが、そう言っても過言では無かった
「はぁ……っ…はぁ……っ…はぁ……っ…」
辛うじて呼吸をする…呼吸をするのが精一杯と言った感じだった
目は虚ろで、生気が一切失われていた
刀は地面へと転がり、両腕はダランッ…っと垂れ、もう上がる気配は無かった
ソウルはもう少しも纏ってはいなかった
『死人』…そう言ってもいい
しかし…そんな状態になっても、足だけは止めなかった
ゆっくりと、確実に、その両足を動かしてアーサーへと歩み寄る
「はぁ……っ…はぁ……っ…」
何も出来ない…どうしようもない…それなのに、アーサーへと向かうアレス
「……っ!! もう…止めろ…! 止めるんだ…!」
流石にアーサーは、そんな状態のアレスを攻撃なんて出来なかった
「はぁ……っ… レインカを………返せ………」
「止めろ……! それ以上はもう……っ!!」
アレスはもう考えてはいなかった
叶わない事ではあると言うのに、目の前で失ったレインカを、アーサーに求めたのだ
『返せ』と…奪った『命』を…『魂』を…アーサーに求めたのだ
考えて動いてはいない…本能的にだ
返せるかどうかなんて考えていない…奪われたものを本能的に求めているのだ
それが…出来ないと分かっているとしても…
「はぁ……っ…はぁ……っ… 返……せ……レインカ……を……」
「……もう…!! もう…限界です『陸王』様っ!! これ以上はもう限界です『陸王』様!! 今すぐ……今すぐ『中止』して下さいっ…!! これ以上はもう
「アレスさんっ…!!」
バァンッ!!
突如響いたその音は、広場にあった扉が開く音だった
古い遺跡の様なコケが薄く生えた石造りの広場には似つかわしく無い、立派で強固そうな『赤みがかった扉』が勢い良く開いた音だった
そしてそこから聞こえた『声』には、聞き覚えがあった
「アレスさん! もうお止め下さい! 大丈夫です! わたくしは…ここに居ますから…!!」
間違いなかった
間違いなく、レインカ本人だった
アーサーに刺されたはずのレインカが何故生きているのか…?
それをアレスは聞く事は出来なかった
「レイ……ンカ……? どう……し…て………」
ドサッ………
―――アレスは、そこで意識を失った
Q.更新遅くね?
「だって…ね…? あの…その…色々あるじゃない… 忙しいとか…構想を考えなきゃいけないとか… まぁ…ストーリーはもうメチャクチャ先まで考えているから…それは理由にならんけど… とにかく…ほら… あの…気分があるじゃん…? やりたい時とやりたくない時って…こう…気分でノッてる時があるでしょ? 波があるんだって… ほんとほんと! やる気に満ちあふれている時はずっとやってるもん… ただ…そういう気があんまし無かったっていうか… ちゃんと次は早くやるから…ほんともう…勘弁して下さい… すいませんでした…」




