『世界』
―――ロウ視点―――
なんだ…!?
これは何が起きている…!?
一体…!?
白い空間…!
見えているもの全てが白に…!?
いや…これは…白い部屋に飛ばされた…!?
俺の居る場所に…白い空間を生成して俺ごと閉じ込めた…!?
これが…『センス』!?
この…この大規模な空間を…!?
…いや…待て…落ち着け…
問題はそこでは無い…
問題は…この俺の体に起きている…この『異常』だ…!
突然だった…
いきなり何の前触れも無く…この体に…まるで『全力疾走した後の様な脱力感』を…!
『ソウルをこれでもかと言う程使用した様な喪失感』を…!
俺に…触れてもいないのに…そんな動作をしていないのに…!?
どうやって…!?
『自己中心的な世界』…だと…!?
こんな…こんな『センス』が…!?
能力は…一体…何なんだ!!?
「…なぁ…どうしたんだ…? そんな顔して…? …まぁ…今がチャンス…って感じだなぁ… 行くぜ…?」
ゆらぁっ…っとゆっくりだが確実に、ロウへと歩いて行く
「ぐっ…ッ! うおぉっ!!」
ロウはバッ!っと急に走り出し、シードに向かって両刃斧を振る
するとシードは避けない
「なっ…!?」
ズゴッッ!!
鈍い音を出し、斧はシードの左腕ごと体に直撃する
ロウはこんな状態であっても、斧にソウルを纏わして、刃を『切れない』様にして攻撃を繰り出した
だが、まさか『避けない』とは思わなかった
斧が当たったシードはそのままの勢いで床にズザァァッ!っと倒れる
「何故避けない!? いくら切れないとは言え…衝撃は緩和していない…ぞ…!?」
ロウの言葉はそこで途切れた
何故か…?
それはシードが、斧で与えられたダメージなど意に介さず、ゆっ…くりと立ち上がったからだ
「…俺は本気では無いとは言え…手加減はしていない… 何故…立ち上がれる…!? その状態で…その一撃を喰らい…何故立ち上がれる…!?」
それに対してへらへらと笑いながら、シードは言う
「…あんたの攻撃…ずいぶんと軽くなったな…どうしたんだよ…? もっと…本気で来いよ…」
挑発するシード
ロウは訳が分からず、がむしゃらに斧を振ってシードに喰らわせる
「うお…おおおぉっ!!」
ドズッドズッ!!っと斧がシードに当たる
しかしシードはまるで気にしない
サンドバッグの様に斧を打ち込まれるが、その度にシードは立ち上がれる
「ハァッ…! ハァッ…! 一体…どうなっている…!?」
「『どうなっている』…か…? じゃあ…これならどうだ…?」
ズッバシャァッ…!!
「がぁうッ…ハァッ…!!?」
またあまりにも突然だった
そして理解出来ない現象が起こった
ロウの全身が…足や腕…頬に至るまで、全身が切り傷に覆われていた
いつの間に…いや、瞬く間に切られたロウは、当然困惑する
だが切られた傷よりも鋭く、ロウは閃く
「この…! 傷は…っ!」
この傷が付いた場所に、ロウは見覚えがあった
それ以前に、この傷を付けたのは自分だと、直ぐに分かった
それが…『シードの体に』と言う事も
(これが…この傷が…! 何故俺の体に…!? これが…能力…!? 『自分と他者の肉体ステータスを同じにする』…能力か!?)
「ぐっ…クソッ…!!」
ロウは力強く斧を握り締め、斬撃を真っ白な空間へと向けて放つ
「『ギルス』!!」
ビュオッ!っと放たれた斬撃は、白い空間を斬ろうとする
が、フワァッ……っと斬撃のみが空間から出て行ってしまう
「!?」
「あぁ…ムダだぜ…? 狙いは良いが…ここは壊れねぇ… 俺を倒すか…走ってれば…ここから出られるかもな… まぁ…そんな事させねぇけどな…」
シードはのらりくらり…とロウに近付く
ロウはバッ!っと斧を構えて、シードからの攻撃を警戒する
「そんなに警戒すんなよ…? 大丈夫だって…すぐに終わるからよ…」
ヒュンッ
「『断空』」
一瞬で、一瞬でシードがロウの目の前に迫った
「なぁッ…」
驚く間もなく、ロウの首に大きく体を捻って振り抜いた槍が迫る
全身を襲う強烈な脱力感と苦痛を振り払い、必死でそれを跳んで避ける
「うぉあぁっ!!」
ヒュンッ
「!!?」
なんとロウも、シードと同じく一瞬で移動したのだ
あまりの勢いに、上手く着地出来ずに床に倒れる
「ぁぐあっ…! …なん…だ…っ!?」
息を切らしながら、自分とシードに何が起きたのか冷静に分析するロウ
(おかしい…! これは…本当に何が起きているのか分からない…! なんだ…何なんだ…これは…! だが…『何が起こるか分からない』が…『何をしている』かは…徐々に理解出来た…!)
ロウは傷付いた体を素早く起こし、シードへと飛び掛かろうとする
「…すげぇな…さすが…副団長だな…」
両足でしっかりと地面を蹴り、上空からシードを叩き斬ろうと跳ぶ
が…ロウは直ぐ様『後悔』した
跳んだ瞬間、重力が3倍になったと思うほどの『重さ』がロウを沈めさせた
ズンッ
「ぐぁっ…ぐっぅ…!?」
空中から地面にいきなり叩き落とされたロウは、仰向けになって倒れ込む
(ま…ずい…っ!!)
ロウは直感で危険だと判断する
この状態…この体勢で居たら…何をされるか分かってしまう
「大丈夫だ… 俺も…同じだからな…?」
シードは震える
グググッ…っと、槍をゆっくりと両手で持ち上げる
その震えは、とても重たい岩を持ち上げた時の様な震えだった
それでも両手でがっしり槍を持ち、ロウに向ける
「…『刺砲』…」
シードの持つ槍先から、矢尻の様な形をした風属性ソウルの斬撃が放たれる
ビュオッ!っと飛んだ斬撃が、ロウに目掛けて一直線に向かって行く
当たればもちろん、『痛い』では済まない
「ぬぅ…ぉぉおおあぁっ!!」
動きたくても動けない
そんな体を必死に動かして、力の限り体を転がしてそれを回避する
ザシュッ!!っとシードの放った斬撃が地面に刺さる
ロウは更なる追撃を恐れ、息切れしながらも重たい体を起こし立ち上がる
「ハァッ…ハァッ…! この『センス』は…! そう言う能力か…!」
ロウは気付いた
シードの発現したセンスの能力を
「…やっぱり…気付くよな…」
「ぬぐぅっ…! 当然…だ…! ここまでされれば…自然と気付くっ…!」
「だよなぁ…」
スゥッ…っと、シードは槍を短く持つ
矢尻の根元近くの柄を逆手に持ち、まるで短刀で切腹する様に槍を自身の腹へ向ける
「!? 何を…!?」
「…頭の良いあんたなら…分かるよな…?」
「おい…! 止め
「止めねぇよ」
ズグッ…
シードは刺した
自身の肉体へ、何の恐怖や躊躇も無く、槍を刺した
うすら笑みを浮かべながらロウの忠告を無視し、土手っ腹に風穴を空けて血飛沫を撒き散らしながら
「君は…! 君は自分が何をしているのか分かっているのか!? そんな事をすれば…君が死ぬかも
ズグッ…
…しれ…ない…ん…だ…」
ロウはそっ…っと、目線を下に向ける
そこには…シードと同じく、土手っ腹に風穴の空いた自分の肉体があった
「ぅあ…ぁぁあ…! こん…な…ことが…っ!!」
ロウは自分の身に何が起こったか即座に理解した
理解して、何も出来なかった
ただただ膝から崩れ落ち、地面に両膝を付く
地面に両膝を付いて、過呼吸に陥る
「ハッ…! ハァッ…! ぁぁ…! そん…な…! のう…りょくが…」
「痛ぇよな…? 俺も…そうだぜ…?」
シードはロウを2つの意味で見下す
シードは立ったままだった
ズボッ…っと槍を体から引き抜き、そのまま歩いてロウに近付く
もう、シードにもロウにも、『重さ』は無かった
「…ロウ…あんた…辛そうじゃねぇか…?」
ロウにあと5歩程で触れれるぐらい近付いた距離で語り掛ける
「当然だ…ろう…! この…『痛み』…! 尋常じゃ…無い…!」
ロウは斧を強く握り締める
そして地面に突き刺し、それを支点に杖の様にして立ち上がる
息を切らしながらも、シードに尋ねる
…少しでも、自身の体力を回復させる為の時間稼ぎとして
「…シード…! 君の…『センス』! これが…君の…センスなのか…!? 『この白い空間に居る…全員に…! 自身と…同じ状態にさせる…能力』…! これが…これがセンス…なのか…!?」
だが、シードは首を横に振る
「あ゛ぁ…残念だな…少し違うな… この『白い空間そのもの』も…俺の『センス』だ… そして…『俺と同じ』じゃねぇ… 『俺の『世界』を創り出し…そこに居る全員に…同じ『効果』を与える…』… それが俺の『センス』だ… それが…俺の『自己中心的な世界』だ…」
ニヤッ…っと笑い、そう返事をするシード
ロウは険しい顔で、シードを睨む
(同じ…『効果』…だと!? 『自己中心的な世界』…! なんて…! 恐ろしい…能力!!)
(だろ…? 『自己中心的』な…俺にピッタリの『力』だ…)
(!!?)
ロウは何も喋って無い
そしてシードも喋って無い
『脳』だ
つまり『頭の中』に、シードがロウに直接語り掛けて来たのだ
簡単に言えば『テレパシー』
その類いだった
(何故…!? 俺の心の声が…!?)
(…俺がそうした… 俺が…『思っている事を共有する』…そう決めたからな…)
(…!! そんな…事すらも…可能なのか…!?)
(あぁ…出来るぜ…? なんたって…『自己中心的な世界』…だからな…)
(…なんという…能力!! これが…『才能』と言えるのか!? シード…!)
「………あぁ… もう…『心の声』は…『共有』しないぜ…? それはもう…止めた…」
「!!? そんな…『切り替え』も一瞬なのか…!?」
一歩―――
一歩だけ、シードは足を出す
ロウに近付く為に
「…あんた…体力は…十分回復しただろ…? さぁ…続き…殺ろうぜ…?」
シードは体から、『殺気』を溢れさせる
明確なる『殺意』…それが、今のシードを支配していた
体力は限界、ソウルも尽き始め、肉体は死ぬ一歩手前
シードを動かす原動力は、最早『魂』だけだった
『殺意という魂を動かす原動力』…それが、ボロボロになったシードの肉体を動かす…折れかけている魂を支える…ただ1つの『力』だった
「まて…待て! 答えろ…答えてくれ…! なぜ…何故そこまで戦う…! そんな怪我を負ってまで…それも自ら…! 自ら望んでそこまで…する必要があるのか…!? 確実に…死ぬ程の怪我を…その体に受けているのだ!! 怖くないのか…シード! 君は…! 『恐怖』を知らないのか…!!」
「……『恐怖』…?」
「当然だ…! 『同じ効果』…! 『自己中心的な世界』を使う前…体力とソウルを限界まで削り…! 俺を自分と同じ…俺の体力とソウルの『高い』状態から…シードの『低い』その状態と同じにして…そして…傷付いた『自分と同じ怪我を与えて』俺を弱体化する…! そこまでは分かる…! だが…!」
ロウはビシッ!っと左手でシードを指差す
「そんな肉体で…! 痛くないと分かっていても『与える・与えられるダメージを0にする』なんて…! そういう効果を与えても…振られる斧を『避けない』なんて事は出来ない! 『全員の重力を軽くする』効果の後…! 『全員の重力を倍にする』…! そんな肉体でそんな事をすれば…立っている事すら普通は出来ない! そして…! 『俺を傷付けた肉体にする為に! 自らの肉体を傷付けて同じ『効果』を与える…! それも…腹に風穴を空けるなんて』…! どうかしている! 『恐怖』があれば…! こんな事は出来ない! シード…! 君に『恐怖』は無いのか…!?」
「………」
ロウは気を荒立てながらシードに詰め寄る
だが逆に、シードはとてつもなく落ち着いていた
そして静かに、語り出した
「…何言ってんだ…俺にも…『恐怖』はある… どうしようもねぇ『恐怖』を…3年前のあの時に…俺の『魂』に刻み付けられた… そんで今…同じ様な恐怖を…俺はまた感じちまった… だけどよ…それは…『本当の恐怖』じゃねぇ… 『本当の恐怖』は…『誰かや何かから与えられる恐怖』じゃなく…『自分が絶対に拒絶するもの』が『本当の恐怖』なんだよ… 俺にも…当然それはある…」
シードは、非常にゆっくりと、まるで『思い出』を語るかの様に囁く
「アレス…と…アリア… 2人の『姿』を見れずに死ぬのが…俺の『本当の恐怖』さ… アレスが…『英雄』になる瞬間…そして…アリアの…『呪い』が解かれた瞬間… 2人の…その『姿』を見れないまま『死ぬ』事… それが…俺の…『本当の恐怖』なんだ… だからこそ…俺は死なねぇ… 俺の『罪』を解放するまで…『ヒーロー』を見るまで…『呪い』を無くすまで… 俺の目的を…果たすまで…! 俺は…死なねぇ…!」
シードは徐々にその体にソウルを纏わせていく
それはつまり、『戦おうとしている』のだ
もうまともに動けるはずが無いのに
「…!! シード…!」
「…あんたも…そこで…大人しくしときな… 安心しろ…それ以上…槍以外であんたに『効果』は与えない…からよ…」
「…それは…純粋に『戦うだけ』と…言う事か…?」
「…さぁな… 解釈の仕方は…自由だぜ…?」
ヒュゥンッ!
槍が空を斬る音がした
シードが槍をロウに向けて振り払った
しかしロウは後方へと回避する
空振った槍を引き戻し、今度は一歩前進して突き出す
しかしそれも、ロウは横に移動して回避する
シードはそれらを避けるロウに対し、槍を振り、槍を突き、連続で攻撃を仕掛ける
だがその連続攻撃は、空しくブンッブンッと空振るだけだった
「………くそっ…」
シードはポツリとそう呟き、諦念の相を顕にする
それは攻撃が当たらない事では無く、ロウが順応している事に対してだった
そしてそれは純粋に…
『シードの敗北を意味していた』
「……やっぱり………遠い……なぁ……」
シードはもちろん狙って槍を振り回す
一方ロウも『狙って』避けている
シードと同じ様に傷付いているにも関わらず、シードと同じ様に虚脱感に襲われながらも、ロウはこの状況に順応していた
摩訶不思議な白い空間、そこで与えられる異常な『効果』、今まで体験した事無い現象を受けて動揺していたが、それでも『王国騎士団特殊殲滅隊副団長』…乱れる息を整え、激しく動く心臓を落ち着かせ、残り少ないソウルを有効に使い、シードの2手3手先を読んだ動きをする
そんなロウに、今のシードが追い付ける訳が無かった
「は…はっ…はぁ…」
呼吸すらままならないシードに対し、ロウは止めを刺す
ただし…『精神的』に
「…『リウェイト』」
スッ…っと、ロウは自分の穴の空いた腹に手を当てて言う
ロウの纏うソウルがフッと消える
厳密に言えば消えた訳ではない
ただ、体の中へと集約されただけだった
どういう事か?…ロウが体に当てた手を退かすと、その意味が分かった
「…!! …おいおい…傷が…」
完全に傷が塞がってはいないが、それでも流れ出る血液の量が抑えられたのは事実だ
「…あんた…『治癒魂術』も…使えんのか…?」
「いや…これは『治癒魂術』ではない… 俺のソウルで体の『筋肉を操作』した… 肉体操作を己のソウルで行い、傷口を簡易的にではあるが塞ぎ出血を最小限に抑えた… 同時に筋肉疲労を和らげ、少量の疲労回復と肉体硬度上昇効果も付加させる… それが『リウェイト』だ…賢明な君なら…この意味が分かるな…?」
「……はっ…言われなくても…分かってら…」
そう…それはつまり…『俺は肉体を回復してまだ戦える余裕がある。 これ以上戦っても、君は俺には勝てない。』
言葉には出さなくとも、そう言っているのはシードには理解出来てしまった
では『諦める』か…?
それをシードはしなかった
「……まだ……俺は……戦え…る……」
シードは段々とロウに近付く
一歩、また一歩、足を前に出す
槍を振り上げる
そして―――
ドサッ…
乾いた音が、小さく鳴り響いた
地面に、ありとあらゆる『力』が抜けた様に倒れる
シードはもう…『何も出来なかった』
倒れたと同時に、シードの『自己中心的な世界』が解除される
2人を覆っていた『白い空間』が、霧が朝日で照らされたかの如く晴れて行く
サアァァッ……っと『白』が消え、元の薄暗い石造りの広場へと戻る
「……」
ロウは倒れ込んだシードを静かに見守った
『反撃に備えて』では無く、『これ以上無理をしない』ように
「……あ………れ…す…… わ…り……ぃ…」
生きてはいる
しかしその目には生気が無かった
どこか遠い目をしており、『死』が目前まで迫っていた
やがて…フッ…っと、シードは意識を失った
そんなシードに近付いてしゃがむロウ
「……生きてはいるな… 随分瀕死の状態ではあるが…」
(しかし…恐ろしい男だな… 最後の最後まで、『諦める』と言う事をしなかった… 強いな…『力』もそうだが、『魂』が…誰よりも強かった…!)
コツッ… コツッ… コツッ…
「……あなたであれば…彼を治せますか…?」
…ロウは、自分とシードの居る広場に入って来た人物に、そう尋ねる
「……」
「…申し訳ありません… そんな事をお聞きするのは杞憂でありましたね…」
返事をしなかったその人物の気持ちを汲み取り、ロウはそう言って謝罪する
そしてスッと立ち上がり、もう聞こえてはいないシードに、獣の様に低い声で言う
「…今の君の体では何も出来ない… 諦めるんだ。 後は…俺達に任せろ」
(匂いは…『2つ』…あったんだ… レインカと…もう一人…! ちゃんとした匂いは嗅いだ事はなかったけど…なんとなく…同じ感じが…したんだ… でも…違うかもしれない…そう…思ってた…けど…ロウを見た時…! 俺の…俺の考えている事が…本当なんだって…!)
『……』
『…? どうした…アレス?』
『シードは気になる』
『先程からアレスの様子が少しおかしい』
『何か考え事でもあるかの様な…心ここにあらず…そんな感じである』
『あんたが『敵』だという証拠が『4つ』ある…』
『…さっき『俺が敵である証拠が4つある』…そう言ったはずだが、『3つ』しか言わなかったな… それは何故だ?』
『…あんたが敵である証拠なんて3つで十分だ… その服みたいに、あんたはもう十分『クロ』って分かってんだからな…』
「はぁっ…はぁっ… はぁっ…!」
アレスは息切れをしながら、とある広場に到着していた
先程までシード達と一緒に居た、同じぐらいの大きさの広場だ
唯一違うと言えば、広場奥に、場違いの立派で強固そうな『赤みがかった扉』がある所だった
そしてその扉の前に―――見覚えのある人物が立っていた
「はっ…! はぁっ…! はぁっ…!」
「…息を…整えた方が良い… そんなに動揺する事では無いだろう…?」
「はぁっ……! はっ…!」
――息が詰まる
対峙するだけで、冷や汗が止まらない
呼吸がままならない
無意識の内に鞘から抜いていた刀を持つ腕も、『恐れ』からか震えてしまう
しかし目線は外さない
睨み付けるその目付きからは、『覚悟』の様子が見て取れる
『知っていた…予想していた…確信した…』からこそ、アレスは『覚悟』が出来ていた
「…その様子を見る限り、ここに来る途中である程度は予想出来ていたようだな… 残っていた痕跡を辿って捜索している最中に…『疑問』を持ち始め…そしてロウを見たその瞬間に、『疑問』が『確信』に変わった…君のその様子を見れば一目瞭然だ」
その人物はゆっくりとアレスに近付く
まだそこそこ距離はあるものの、今のアレスには十分プレッシャーに感じる
「君の仲間の…シード君なら、おそらくロウと出会った時、『ロウを見た時の君の様子で、ロウが君達の『敵』である事を理由の1つとして』提示していてもおかしく無い… …当然だろうな… 『ロウが居るという事』が、『私も居る事を裏付ける』のだからな… それを確信した君の表情を見れば、自然とそう推理出来る」
「はぁっ…はぁっ… すぅぅっ……フゥーーー………」
アレスは息を大きく吸い、大きく吐く
気持ちを落ち着かせて、これからの戦いに備える
次回 サークルワールド HERO ~一期一会編~
「この扉の先に…『陸姫様』は居る… だが…当然、私を倒して行かなくてはならない…」
第六章 中央大陸英雄譚 ―騒乱―
「ふぅ…… もちろんだ…! 俺は…お前を倒す…! そして…レインカを助け出す…!!」
暁 アレス
「私は常に『光』と共にある… それが私の生きる『道』なのだ… 『道』に立ち塞がるのであれば容赦はしない…」
「お前の生きる『道』を邪魔はしない… だけど…俺の進む『道』を…邪魔するな…!」
VS
「行くぞ…!! アーサー…!!!」
天帝 アーサー
Q.センスって、その能力を分割して使用出来るの?
シードは『ワールド』を少しだけ使って『カントリー』が使えてたみたいだけど?
「そりゃ無理だ。 『センス』は分割して使えるもんじゃねぇんだ。 『カントリー』は本来『ワールド』で生成する『白い空間』を、霧状にして周囲にばらまく。 もちろん肉眼じゃ見えないぐらいにしてな。 その効果範囲に入った『もの』を自分の方向に向ける…それが『カントリー』だ。 『ワールド』を使っていても他の効果を与えられないのは、『ワールド』の本来の使い方じゃない上に、『才能』が『自己中心的』だから…みたいだな。 色々試したが『認識を自分に向ける』以外効果を与えられなかった… センスを中途半端に使っているからこそ弱点も多い。 センスを分割出来るかよりも、『やる必要がない』…ってのが正しいかもな。 俺の『カントリー』も無理矢理使っているもんだからな。 ま、ここら辺の説明は『技・センス集』に載せとくつもりだから、そっちで確認してくれ。 んじゃ、また次回な」
「…私達の出番…」
「…ありませんでしたね…」
「次は俺も喋るぞー!」




