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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
第五章 中央大陸英雄譚 ―邂逅―
39/90

『枷』と『副団長』

シード、ミーシャ、スイ…その3人は両手を上げていた

もちろん、ただ何の意味も無く手を上げている訳ではない

自分の身に『危険』が迫っているからだ

アレスの良く分からない行動のせいで

下手な判断で行動と発言をしてしまえば即『死刑』…十分にあり得る

シードの不安が的中した

「だから…俺達は知らない! あいつが…アレスが勝手にやった事だ! どこに行ったかもわかんねぇ!」

「…だがあの少年はお前達の仲間だろう? 連帯責任で…罪を償って貰うぞ…」

黒い軍服を着た『殲滅隊』が、剣をシード達に向けて脅す

「私達は無実です…私達は無実です…私達は無実です…」

ミーシャはまるで念仏でも唱えるかの様に小さく連呼する

「さぁ…陸姫様は何処だ…? 隠しても無駄だ…」

「だから…! 知らんもんは知らんって言っているだろ!? ミー…シャはだめか… スイ! お前も何か言ってやれ!」

シードはこの理不尽な状況に対しキレながらも、スイに弁明の言葉を言うように伝える

「ご主人様の…お姫様だっこ…うらやましい…」

スイもまた、両手を上げながらも何か小さく言っていた

アレスがレインカをお姫様だっこしたのが、余程羨ましかったのだろう

「…あぁ…もう…どうすんだよこの状況…」

シードはもう諦めムードを漂わせる

両手を上げていても、うなだれた様子で頭を下げる

「…さあ、どうする?」

「取り敢えず全員、牢に閉じ込めておくとしよう」

「見張りを数人付かせろ。 残りで陸姫様を探しに行くぞ」

殲滅隊の男達がシード達の処遇をどうするか決めたらしい

数人の男達が、懐から手錠を取り出した

手錠…と言うよりかは、腕時計とほぼ変わらない程の大きさの『腕輪』に近かった

ただし『石』で出来ている様で、グレー単色のとても固くて頑丈そうな見た目だった

その手錠には鍵穴がついており、男が手慣れた様子で鍵穴に鍵を入れて回すと、ガチャッと音がして手錠がパカッと開く

それをシード達へ付けようとする

手錠が決して『()()()()』で付けられるハズが無い

だがもう逃げられない

それ以前に、誰も()()()()()()()()

理由は…前述の通りである…

そして―――



「これは何の騒ぎだ?」

今まさに、シード達へ手錠がかけられようとしたその時、()()が現れた

「あ…『副団長』!」

「どうしてここに?」

「街の外の警備は大丈夫ですか?」

殲滅隊の質問攻めに、その現れた男は首を横に振る

「一度にそんな多く質問されても対応出来ん… 警備は大丈夫だ。 騒ぎが聞こえたからここに来ただけだが…何かややこしい事態になっているな…」

男は目を細めてシード達を見る

そして「ふぅ…」っと溜め息をつくと、シードに近付く

その男は身長がシードよりも高かった

シードは見下ろされる事よりも、その男の放つ『()()()』に圧倒される

(こいつ…『獣人』か…! しかも…俺よりデカイ…!)

『人間』と『獣人』の差は通常、外見に『獣』の要素が見られると獣人として認識される

しかし厳密に言えば、『染色体内の遺伝子に人間と獣人のどちらが濃く現れるか』で左右される

獣人が濃く現れるなら、尻尾や獣耳等にその要素が見られる

逆に人間が濃く現れるなら動物的な要素が弱く…つまり、体毛が薄かったり肌の色も白に近付く

『毛が濃い』や『肌が黒い』等は、獣人の要素がそれなりに見られているという事なのだ

そして彼は、クロヒョウの獣人であるが人間の要素も濃く現れている

彼の顔は人間にクロヒョウの特徴を重ねた顔をしていた

頭全体が短い黒い毛で覆われ、ネコの様な目、顔の左右に耳が無く頭頂部に生えた少し尖った獣耳、ちょっと高めの鼻…クロヒョウであってもかなりのイケメンだった

かつて『ボアボス・ブルブ』という猪の獣人が居た

ボアボスはそのまま猪の顔をしており、獣人の要素が濃かった

しかし彼はその比率が良いのか、人間の顔をしながらクロヒョウとしての特徴も持ち合わせている

体にもそれが現れ、黒い軍服の先から見える手も、同じく短い黒い毛で覆われている

更に腰下からは、おそらく1メートル程ある長い尻尾が生えて、上下左右にゆらゆらと揺れている

背中には柄の長い両刃斧を背負っていて、一目見ただけでもそれが重いと分かる

体格は細い

にも関わらず、その重い斧が扱えるのかと()()()()

服の上からでも分かる

彼の細い体に、筋肉とソウルが強く備わっていると分かる

だからこそシードは、目の前に居る彼の威圧感に圧倒されたのだ

「っ…!」

シードは息を呑む

「君に少し質問をしよう」

男は獣の様に低めの声でシードに語り掛ける

「…質問…?」

「そうだ。 別に難しい質問では無い。 …まず、何が起きているのか簡単に説明してくれ」

「…俺達の仲間の一人が、レインカをどっかに連れて行きやがった」

「…それは由々(ゆゆ)しき事態だな… だが、それはつまり君達の仲間が『単独』で『勝手に』行動した…そう判断して良いという事だな?」

「違いねぇ… だからどこに行ったかも分からねぇし、何が目的かも分からねぇ…」

「そうか… よし、()()()()()()()

「副団長!? 今…なんと…!?」

男が殲滅隊に向けて指示を出すが、もちろんそれに対して隊員は驚く

陸姫を連れ去った少年の仲間を、捕らえもせず拘束もせず()()()()と命令されたのだから

「陸姫様が何処へ行かれたのか分からない以上、その()()()()()()()()()()()彼らに頼った方が、まだ発見率が上がる」

隊員達はどよめく

「し…しかし

「分かっている… お前達が、彼らが逃げたり襲ってきたりする可能性もあるのではないか…と思っている事は分かる。 なら、彼らは()()()()()()()()。 それで問題無いな?」

どよめきがたちまち大きくなる

「副団長自らですか!?」

「ああ。 俺ならば、()()()()()()()だろう」

「…! 了解しました!」

「お前達は3部隊に別れて、それぞれ陸姫様を捜索しろ。 何か分かった事があったら随時報告、もちろん陸姫様を連れ去った彼らの仲間は殺さずにな」

「「「ハッ!!」」」

――殲滅隊隊員は言わずもがな、彼が『何の問題も無い』と言った時、シードやミーシャやスイも瞬時に理解した

彼に自分達3人が逃走や襲撃という行動を起こしたとしても、誰一人として逃げ切れる事など…3人がかりでも勝てる事など…()()()()()()と――

「…」

シードは、彼と彼が命令した通りに動き出す隊員を黙って見ていた

そしてその場にシード達3人と彼しか居なくなった頃、ようやく口を開いた

「…助かった…って思った方がいいのか…?」

「いや…()()助かっては無いな… 無論、陸姫様の無事が確認されても、『助かった』と言い切れはしないがな」

そして彼は、両腕を組みながら3人に向けて言う

「自己紹介をしておこう。 王国騎士団特殊殲滅隊副団長、『ロウ・パサード』だ。 すまないな…隊員の皆は少し冷静さが足りなくてな… ()()については詫びよう…」

クロヒョウの獣人、ロウは軽く頭を下げる

そんなロウに対して、ミーシャは激しく首を横に振る

「そんな…! ロウさんがいなかったら私達…今ごろ…!」

「…助かりました…ありがとうございます…」

ミーシャは牢屋に捕まった自分の姿を想像して震え、スイはしっかりと頭を下げて礼を言う

「正直、今の俺達じゃどうしようも無かった状況だった… ()()については助かった」

2人に対して、少し皮肉まじりで返すシード

「ちょっ…! シード!」

そんなシードに「失礼じゃないの!?」と言うように詰め寄るミーシャ

だが皮肉を言われても、ロウは小さく笑っていた

「君、俺は気にして無いから大丈夫だ。 現状、君達は『まだ』助かって無いからな。 君達は陸姫様だけでなく、これから『()()()()()()()()』為に働いて貰おう… まずは、()()を使ってくれ」

ロウは腰から何か()()()()()()()を取り出した

「それは…」

シードが一目それを見て、それが何か気付いた反応をした

ロウがポイッとその玉を3人に投げ渡す

「…? これって何ですか?」

ミーシャはその玉を頭上へと掲げて良く見る

青いビー玉の様に透き通った色をしているそれは、大体テニスボール程の大きさをしていた

重さは見た目に反して意外と軽かった

それこそテニスボール程の重さで、数個所持していても荷物にはならなさそうだ

ただし柔らかい

固くなく、ゴムボールを更に柔らかくした様な感じ

握ればグニュッと潰れて形を変える

見れば見るほど、これが何か分からない

困惑するミーシャとスイに、ロウが告げる

「それを頭の上まで上げて、ソウルを込めながら握り潰してみるといい。 そうすれば、それが何か分かるだろう」

言われた通りに、頭上まで掲げてソウルを流し込みながら握る

すると――

バシャャァァァッッ!!

………

その玉から、およそ体積には見合わない量の()が溢れ出て、ミーシャ達を濡らす

シャワーとは程遠い、まるで水の入ったバケツを頭からかけられた様な…それほどの水量と勢いが3人を襲った

「「……」」

「フー…」

びしょ濡れになったミーシャとスイは呆然と立ち尽くすが、シードは慣れた手付きで髪をわしゃわしゃする

「あの…ロウさん…」

「ん? どうした?」

ミーシャが突然自分の身に起きた事に理解できず、思わず()()

「確かに私達…ていうか、アレスのやった事が悪いとは思います… ですが…こんな…こんな『罰』はちょっと…本当にすいません…」

ロウはそんなミーシャに対して、少し申し訳なさそうに言う

「そうか… 君達は()()を知らないのか…それはすまなかったな…」

しかしシードは首を横に振り、『別に謝らなくても良い』といった仕草をする

「あんたが気にする事はねぇさ… ミーシャ、スイ、どうせ()()()()()()()()()()()()から心配するな」

ミーシャが凄く心配そうな顔をしてシードの方を向く

「どういう事…

何か言いかけたミーシャが、自身の体の()()()に驚愕する

「え…」

なんと、頭からこれでもかという程かけられた水で濡れた自分の体が、みるみる内に乾いていったのだ

時間にして僅か20秒程

たったそれだけの時間でシードの言う通り、濡れまくった体と服が乾いて何事も無かったかの様に元に戻った

そして何故か、ただ濡れただけでは落ちない様な汚れも一緒に無くなり、綺麗になっている

「これって…一体なんなの?」

ミーシャの問い掛けに、ロウがもう一つその青い玉を取り出して見せる

「これは『洗水魂玉(せんすいそうだま)』という物だ。 ソウルの水を押し固めた物で、流し込んだソウルと反応して大量の水を放出する。 体の汚れを落とす効果も含んでいるため、簡易的な風呂として重宝するんだ。 もちろん限りなく水に近いソウルの為、揮発性は高い…よって、濡れても直ぐに乾く。 旅には必需品だと思うが…持って無いのか?」

「ミーシャ達は知らないが、俺は持ってるぞ。 俺の荷物に『乾風魂玉(かんぷうそうだま)』と一緒に入ってる。 まあ、持ってる持って無いより、あんたがこれを持ってるのと俺達にこれを使わせた事に、逆に疑問を感じるがな」

ロウはフッ…っと笑う

「別に深い意味は無い… 簡易風呂としてでは無く、敵を怯ませる事にも使える為に持っていただけだ… そして君達の体から、少し『臭い』を感じたからな… 特に青年…君から、『()()()()()()()…」

今度はシードがフッ…っと笑う

「ああ… あんたには臭いがきつかったみたいだな… お陰様で、少しは()()()()()様だ…礼を言っとくよ…」

お互いに皮肉を言い合い、意地悪く笑う

そんな様子を気まずく思ったのか、ミーシャは手でパンッ!…っと鳴らし、話題を元に戻す

「それより! アレスとレインカちゃんがどこに行ったのか調べなきゃ!」

「…ご主人様は…どこに行ったのでしょうか…?」

「それなら少し()()がある」

シードが何か思い当たる節があるらしく、ミーシャ達に自分の予想を伝える

ロウも気になるらしく聞き耳を立てる

「アレスは少し前から何か考えていた。 その発端が、おそらく『()』という言葉を聞いてからだ… あいつの安易な考えで推理するなら、レインカと一緒に『風』でも感じりゃ良い…きっとそう思うんじゃねぇかと俺は思う」

「それってつまり…?」

「あいつがここ最近で風を感じたのは一つ… つまり、『馬に乗って風を感じれば、レインカの悩みも無くなる!』…って事だろうな。 その証拠に、あいつは俺達の馬を泊めてる『宿馬所(しゅくばじょ)』の方向に向かって行ったからな」

ミーシャとスイが、アレスの行動倫理をここまで把握している事に驚きを見せる中、ロウは顎に手を添えて思考を巡らす

「…他に考えも思い浮かばん… それどころか、その推理が今陸姫様に追い付く一番早い手段だろう… 『宿馬所』に向かうとしよう」

すっかり体が乾ききったシード達3人は、ロウと共にこの麗都(れいと)『メリートル』の『宿馬所』へと歩いて行った



『宿馬所』…他の街から来た商人や旅人が持つ馬や馬車、あるいは自動魂車(じどうそうしゃ)等を預けて置く事が出来る場所

シード達がこの『メリートル』に来た時には馬に乗っており、当然この宿馬所に馬を預けていた

シードの推理通りであれば、預けた馬が無くなっているはず…

そしてその推理は、見事()()するのであった

「何っ!? 数分前にここに来ただと!?」

ロウが宿馬所の主人の話を聞いて、大きな声を上げる

「そうですぜ旦那! ちっこいお嬢ちゃんとボウズがここに来て、『預けた馬を返してくれ!』なんて言って朝預けた馬に乗ってどっかに行ったんでさぁ!」

主人の言葉を聞き、シード達は確信する

「アレスで間違いなさそうだな。 この馬に乗り街の外に行ったらしいが…俺の黒い馬と荷物をまとめて持って行くとは思わなかったがな…」

シード達は茶色い馬が2頭、黒い馬が1頭の合計3頭でこの街に来た

その際、シードは黒い馬に乗っていた

宿馬所では、馬車に積んだ荷物や馬に乗せた荷物も預けておける

シードはそんな自分の馬と荷物を持ってかれた事に、疑問を感じつつも不安を抱く

『俺の荷物がもしアレスにむちゃくちゃにされたら…』なんて、考えない訳が無かった

「とにかく馬に乗って行った事がわかったなら、急いで追いかけましょう! 今ならまだ、そんなに遠くには行ってないはず…」

ミーシャが宿馬所に預けた馬を引き取りながら、出発の準備をする

「ご主人様を…探しましょう…」

スイも馬にまたがるミーシャの後ろに乗り、アレス達を追い掛ける用意をする

「…そうだな… おじさん、他の2頭も持って行くぜ? …さあ出発…と行きたい所だが…あんたはどうするんだ?」

預けていた馬を引き取り、またがりながらシードはロウに聞く

「俺も馬が必要だな。 自動魂車を数台で陸姫様とここに来たからな… 主人、馬のレンタルは出来るか?」

「もちろん大丈夫ですぜ旦那!」

宿馬所には、利用者が馬を泊めて休ませている間に別の作業を行う時に馬が必要な事がある

そんな人達の為に、馬をレンタル出来るシステムが宿馬所に設けられている

もちろんレンタルする時、料金が発生するのだが――

「主人、悪いが今は手持ちが無い… ()()を置いておく。 もし馬を無事に返せなくなってしまった時は、コレを自由にしてくれ」

そう言うと、ロウは背中から両刃斧を取り出して、宿馬所の主人の居る机にドスッと置いた

「…旦那!? 良いんですかい!?」

急いで借りた馬にまたがるながら、ロウが言葉を返す

「ああ… 馬の代金を後で必ず支払う。 こちらの用事が終わり次第必ず戻る…行くぞ」

ロウは主人に背を向けると、シード達と共に馬を走らせた

――「良かったんですか? 武器を担保にしても…?」

街を抜け、アレス達を探すべく馬で疾走している最中、ミーシャがロウに聞く

「ああ、()()()()。 手持ちが無かったからしょうがないのもあるが、陸姫様を見つける事が最優先だ。 後で『()()』の持つ経費を使い、馬と料金を無事に返す予定だからな… 心配しなくても大丈夫だ」

「…ところで…ご主人様はどこに…?」

「こればかりは自分の目で探さないと分からんな… 街の近くである事は確かなハズ… しらみ潰しに探すとしよう」

「……」

ミーシャ達は気付かなかったが、シードはロウの()()()()に少し恐怖を持った

――それは()()()()()だった

ロウは自分の武器を、自ら手放した

だが、他に方法があったはずだ

例えばシード達に料金を前借りする…例えばメリートルの騎士に金を立て替えてもらう等…

わざわざ自分の武器を担保にする必要は無いのだ

それをした理由はただ一つ…

つまり、『武器など無くても、シード達を制する事が出来る』…

『だから逃走や襲撃を考えても無駄だ』と…

主にシードに、そんな警告を『斧を預ける』という行動だけで伝えたのだ

「……」

シードは馬に揺られながら改めて思った

『目の前に居るこの人物は、王国騎士団特殊殲滅隊副団長なんだ』と…



「…どこかに居るはずなんだが… アレスはどこに居るんだ?」

「…ご主人様…」

「レインカちゃんも一緒なら、声がするはずよね…?」

「…近くに気配が無い… 他を探してみよう」

街の外へと捜索を開始して早くも30分が経過した

しかし未だに2人は見つかっていない

ロウが現在捜索中の雑木林から出て、他の場所へと向かおうと馬に手を掛けた時、シードがロウを呼び止める

「…ロウ…あんた…()()()()()()()()()?」

ピタッ…と、ロウの手が止まる

「…もちろんそうだろう… 陸姫様が見付からなかったら、陸王(りくおう)様に申し訳が立たない… それどころか、この大陸の『未来』に関わるのだ…必ず見付け出さなければならない」

シードの質問を肯定し、ロウは再び手を掛けようとする

しかし再び、シードは呼び止める

「いいや… あんたはそうでも、()()()()()()そんな風には感じない。 …あんた、何が目的だ…?」

「……」

ロウは、「ふぅ…」っと小さく溜め息をつく

するとくるりと体の向きを変えて、シード達の方を向く

そして低いトーンで語り始めた

「…最初の提案者は『団長』だった… 団長は誰よりも陸王様に『恩』と『敬意』を持っている… あの人の行動は、陸王様の『意思』そのものだ。 だからだろう…団長は『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』…そう言い始めたのだ…」

「…『(かせ)』?」

シードが一体それは何だと言わんばかりに尋ねる

「そう…『枷』… 幼い陸姫様に課せられた重圧…責任…不安…『陸姫』という地位に付けられたあらゆる『枷』を、陸王様は少しでも軽くしたい…そう思っていらした」

ロウは思い出す

「団長はそんな陸王様の意思を体現する為、今回の演説に必要な事と称して『街巡り』を陸王様に提案された。 同じく陸姫様にも、街巡りをされてはいかがかと提案し、俺達殲滅隊を護衛として数日前に街を巡り始めた…」

シードが腕を組んで質問する

「なるほどな… それが、レインカをマトモに探さない理由か?」

しかしロウは首を横に振る

「いいや…まともには探している…が、本来であれば自然に陸姫様を一人にする予定だった… だからこそ護衛を2人のみにし、俺も街の外を見回る事を主として、陸姫様が何処かで殲滅隊を撒く様にした。 しかし誤算が2つあった… 1つは団長が途中で何処かに行ってしまった事…もう1つは、今の()()()()だ… まさか陸姫様を(さら)うとは… まともには探すものの、内心少し焦ってはいる…が、想定外ではあるものの予定通りの結果だ… 正直、陸姫様の『枷を軽くする』という事に間接的には繋がっていて、『まだ見付からなくても良い』と思ってしまってはいるな」

それを聞いてシードは呆れ顔を見せる

「おいおい…殲滅隊副団長が聞いて呆れるぜ…?」

「でも…ロウさんの気持ち、なんとなく分かる気がするわ…」

「レインカさんもきっと…ご主人様と一緒にいて…たのしいと思います…」

ミーシャやスイも、ロウとレインカの気持ちに共感する



オオオォォ………



「!!!」

突然、ロウが()()の気配を感じてその方向を向く

「…これは…この『ソウル』は…!」

ロウが何か慌てた様子で馬にまたがる

そしてシード達に命令する

「お前達! 馬に乗れ! 急いで()()()()!」

ミーシャは頭に?が浮かぶ

「ど…どうしたんですか急に…?」

「説明は後だ! とにかく付いてこい!」

よく訳が分からないまま3人はササッと馬に乗って、走り出したロウに付いて行く





「――では、みなさんと合流して『王都(おうと)』を目指しましょう」

「ああ! シード達も待ってるだろうしな!」

「陸姫様、私は街中の殲滅隊を集め自動魂車(じどうそうしゃ)の準備をします」

「わかりました、お願いします」

「団長!」

街の近くにある『メリートルの泉』…そこに到着したクロヒョウの獣人『ロウ・パサード』は驚く

そこに居たのは彼が『団長』と呼ぶ男、『天帝(あまみかど)アーサー』だった

「ロウ…? どうしてここに?」

「団長こそ、今まで何処に居たんですか!?」

アーサーと乗って来た馬から下りてロウが話す中、その傍らに居た少年アレスと少女『天帝レインカ』に、ロウと一緒に来たシードとミーシャとスイが同じく馬から下りて駆け寄る

「アレス! レインカ! 探したぞ!」

「レインカちゃん大丈夫!? アレスに変な事されなかった!?」

「ご主人様…わたしにも…お姫さまだっこを…」

それぞれ思い思いの言葉を話す

「みんな何でここに居るんだ? もしかして俺達を探しに来たのか? そんなに心配しなくても大丈夫だって!」

「お前の心配はしてねぇ…レインカの心配をしてんだ俺達は…」

「あんたのせいで…私達がどんな目にあったか…!」

「ご主人様…わたしにも…お姫さまだっこを…」

シード達はレインカを何の前触れも無く連れ去ったアレスを追い掛け、ここまでロウと共に来た

その間、どんな苦労があったかアレスは知る由も無い

「みなさん、わたくしは大丈夫です! とっても有意義な時間で、新しい『風』を感じることもできました… それに…」

レインカが、言葉責めを受けるアレスを庇う様に3人に言葉を掛ける

「アレスさんはわたくしのためにしてくれたのです… どうか責めないで下さい…」

「…そう言われてもな…」

レインカにこう言われてしまったら、流石のシードでも言葉が出ない

そんなレインカにアレスは礼を言う

「優しいな~レインカは! シードもレインカを見習ったらいいんじゃないか?」

「何言ってんだお前は…」

「レインカは楽しかったって言ってたぞ? ならいいじゃないか! レインカ、また今度うまい料理でも食べに行こうぜ!」

元気よく言い切るアレス

それに対しレインカも答える

「は…はい… よろしくお願いします…♥」

顔を赤く染めて恥じらいつつ

「「!!!」」

その反応見た瞬間、シードとミーシャがアレスに詰め寄る

「おいアレス! お前…この短い間に何をやったんだ!?」

「ほ…本当にレインカちゃんに変な事をしたんじゃないでしょうね!?」

「ど…どうしたんだ2人とも? そんなに焦っ

「いいから答えろ! 一体何をしてたんだ!」

「レインカちゃんに変な事をしなかったら…あんな反応しないでしょ!?」

レインカの顔を赤くする反応は、つまりアレスに対して『好意』を持っている事を示唆していた

人の好き嫌いでは無く、恋愛感情を含めた『好意』を

「…うらやましい…です…」

ギャーギャー騒ぐ3人の様子を、少し残念そうな顔で眺めるスイ

彼女もまた、その『好意』をアレスに持ち、複雑な心境になっている

「陸姫様」

不意にレインカを呼ぶ声がする

レインカは振り向くと、それがアーサーだった事に気付いた

「そろそろ行きましょう。 今から出発すれば、夕方頃には王都に到着出来ます」

レインカはコクリと頷く

「わかりました、行きましょう」

――こうして『陸姫』レインカと殲滅隊『団長』アーサー、『副団長』ロウ、そしてアレス達4人の一行は麗都(れいと)『メリートル』を後にして、『王都(おうと)』を目指すのであった

♥て

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