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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
第五章 中央大陸英雄譚 ―邂逅―
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序章 ~野宿~

魂世紀(そうせいき)2022年 皐月(さつき) 11ノ日(じゅういちのひ) 木魂日(もくそうび) 午後8時14分――

奴隷の売買で栄える街、奴隷売街『ロッテルク』

その街に巣くう『悪』を打ち倒し、街から逃げおおせる()()

途中幾つかの町があったものの、街からの追っ手を警戒して寄らず、ただひたすらに馬で道なき道を走る

そして現在――

「今日はここで野宿だ」

とある森の中、焚き火を起こして野宿の準備をする

「シード、こんな森の中で大丈夫なのか? エニグマとか襲って来ないか?」

黒いツンツン髪の少年、アレスが尋ねる

「問題ねぇ。 退魔魂石(たいまそうせき)を地面に置いて、エニグマ対策の魂術(そうじゅつ)『セイント・エリアム』も使った。 余程強いエニグマでもなければ大丈夫だ」

背の高めの茶髪の青年、シードがそう答える

「野宿…まあ仕方ないわね。 それよりお腹減ったわ…」

髪を青く染めた少女、ミーシャが呟く

そして――

「…」

白い髪と瞳を持つ()奴隷少女、スイが焚き火の近くで暖まっていた

「…? スイ、寒いのか?」

その様子が気になり、アレスが問い掛ける

「…少しだけ…」

なにせボロボロの布切れで作られた奴隷用の服…まだ暖かい方である皐月とは言え夜は少し冷える

すると、ミーシャは自分の荷物からゴソゴソと何かを取り出す

「そんな服じゃ寒いわよね…少し大きいかもしれないけど、これを着てちょうだい」

スイに渡したのは、無地の真っ白いTシャツだった

それと女性用の半ズボンのジーンズだった

「何も着ないよりはマシだと思うわ。 着替えましょ? …あなた達は後ろを向いてて」

ミーシャは冷たく最後の言葉を言い放つ

「? なんでだ?」

アレスはそうミーシャ言うが、シードがそんなアレスの頭を掴んでグイッと回す

「いでっ! 痛たたたた! なにするんだシード!?」

「いいから黙って後ろ向いとけ…」

……

「やっぱりちょっと大きいけど、問題無さそうね。 とりあえず次の町までこれでいいわね」

「…」

ブカブカではあったものの、先程着ていたボロボロの布服よりはマシだった

「早めに次の町に着きたいわね。 スイちゃんの体に合った服が欲しいわ」

「ま、馬もあるからな。 次の町はすぐ着くだろう。 それより、着替え終わったなら飯にするぞ」

今度はシードが荷物をゴソゴソと漁る

そして何か良くわからない、小さな()を出す

手に収まる程の長方形の箱

薄い紫色で、箱の上部にレーザー光線が出る様な射出機構がある

箱の横には赤と青の二種類のボタンがあった

その反対側には、矢印の上下が書かれたボタンもあった

それをシードは、地面に向ける

そのまま青いボタンを押す

すると――

「えっ!?」

ブォンッと青い光が射出機構から出たかと思うと、その場に四角い()()が出現した

それを2つ出し、シードは手慣れた様子で鍋を用意してその四角い物を入れる

『野営セット』から取り出したY字型の棒2つの上に長めの棒を置き、そこに鍋を吊るして焚き火に当てる

少しすると鍋に入れた四角い物体が溶けて、美味しそうな匂いが立ち込めて来た

「…これ…スープ?」

不思議そうにミーシャが問い掛ける

「ああそうだ。 『卵のスープキューブ』…旅の必需品だ。 鍋に入れて火にかけると、溶けて卵スープが出来上がるんだ。 うまいぞ? 食え」

シードはお椀にスープを取り分けると、ミーシャ達に手渡した

「いただきます… ずずずっ~…ゴクッ…んっ…おいしい! 手軽にこんな風にスープが作れるなんて…すごいわね!」

「うん…! うまいっ! スイもどうだ? うまいか?」

ミーシャとアレスはそのスープに満足する中、スイもそのスープを一口すする

「……おいしい…です… わたし…こんなおいしいもの…はじめて食べました…!」

スイは笑顔でスープを更に飲む

「おおっ! スイもうまいか! シード! おかわり!」

「…って、それよりもその『箱』、一体なんなの?」

ミーシャはシードの持っていた箱を指差す

「これか? これは『物体圧縮携帯魂機(そうき)』、通称『ルテイク』。 物に向けてこの赤いボタンを押して光線を当てる。 当たった物体がなんでか知らんがこの魂機に入って、青いボタンでそれを取り出す…ていう物らしい。 矢印のボタンで入った物を選んで出せるらしいんだが、この魂機毎に入れられる物が決まっているんだ。 俺の持つこの魂機は『食料』が入れられる。 それ以外は光線を当てても入らない。 それにこれは安めの物だから、入れられるのはせいぜい7~8個ぐらいだ。 だが、食料を丸ごと持ち歩くよりかは断然良いだろうな」

アレスとミーシャはポカーンとシードの話を聞いていた

「…そんな便利な物があるなんて…」

「俺…そんな物見たことないな…」

今度はシードが逆に、ポカーンとする

「おいおい…スイの持つ()()もそうだろ?」

シードはスイの身に付けている、『腕輪』を指差す

今までボロボロの布切れの服を着ていて良く見えなかったが、スイは両腕に『腕輪』をしている

しかも、奴隷が着けていたとは思えない程立派な腕輪である

黒と銀を基調としたシンプルな腕輪だが、中心に四角い時計の様な小さな魂機が付いている

赤や青といったボタンは無く、黒いボタンがその小さな魂機の側面に付いているだけだった

「あれ? スイ、そんな物着けてたのか?」

「…これは…『腕を交差させてソウルを通せば、剣を自由に出し入れ出来る』…と…()()()に渡されました…」

「あの人…ネレイボルね… でも、これってシードの持っている物とは全然違うわね?」

シードはスイに近付いて、腕輪を眺める

「ふぅん…? やっぱり俺の持つ『ルテイク』と同じ、『バイオレット社』の物か…」

「『バイオレット社』?」

ミーシャが不思議そうに聞く

「『バイオレット社』…この『ルテイク』を始めとする様々な魂機(そうき)を開発してる会社だ。 なんでも、20年ぐらい前に起業してそこから全大陸中にその規模が拡大した、有名な会社だな。 生活を便利にする魂機や対エニグマ用の魂機、それに『()()()()()』なんてのもやってるらしい。 …むしろ何で知らないんだ?」

「そ…そんな事より! スイちゃんのこの腕輪は何なの…?」

ミーシャは無理矢理、話を元に戻す

シードは冷たい視線をミーシャに向けたが、気にしない様子で説明する

「こいつは珍しいタイプだな… これは『ティールテイク』。 この腕輪にあらかじめ設定した『体勢』をとってソウルを腕輪に通せば、この腕輪に入っている物が出るみたいだな。 おそらく、腕を胸の前で交差させるのがその『体勢』、その状態でソウルを腕輪に纏えば剣が出てくる…って事だ。 戻す時は剣を持ったまま同じ様な体勢をとればまた戻る。 あと、手から離れて5秒経つと同じく戻るらしい。 こいつに付いているボタンでも、出し入れ出来るみたいだが、基本はそうやって使うんだ」

シード以外の3人はへぇ~っと関心する

するとミーシャが疑問に思う

「でも、どうしてあなたがこれを知っているの?」

「俺の通っていた学校に、これと同じ物が1つだけあったんだ。 ただし出てくる物は真剣、そして体勢は両手で剣を真っ直ぐに構える体勢だったがな」

シードが学校に居た時の事を思い出していると、アレスがあくびをする

「ふわぁぁ~…ぁ… 眠い…」

「…俺の話で眠たくなったのか…? まぁ、今日は色々あったからな…当然か… よし、寝るぞ」

アレス達は自分の荷物から寝袋を取り出す

それを地面に敷き、それぞれ就寝準備を整える

「トイレはそこら辺でやって、歯磨きも済ませろよ。 風呂は我慢しろ。 出来なくも無いが、もう寝る前だからな」

「…デリカシーないわね…あなた… 大丈夫よ、私はもう終わったから」

「んじゃ…おやすみ~…」

そうして各自寝袋に入って寝る

スイも()()()()()()()()()()寝ようとする

「「!!?」」

もちろんこの状況に、シードとミーシャが黙ってはいなかった

ガバッ!っと2人は寝袋から出る

「ちょっ…ちょっとスイちゃん!? なにしてるの!?」

「アレス!! それはヤバいだろ!?」

アレスは寝袋の中で横になって寝ようとしていた

そしてスイはそんなアレスの後ろに同じく横になり、背中から抱き付いて寝ようとしていた

アレスは2人の声に起こされ、もぞもぞと目をこすりながら寝袋から起き上がる

「なんだ…? 俺もう寝ようとしてるんだけど…?」

「…」

同時にスイもムクッと起きる

「スイ…流石にそれはまずい… 絵面的にも小説的にも色々ヤバい…」

「スイちゃん…いくら寝袋が無くても、それはちょっと… 私と一緒に寝ましょ?」

しかしスイは首を横に振る

そして、アレスに甘える様に言う

「わたしの全てはご主人様のもの… だからわたしはご主人様に…わたしの全てを…ささげます…♥」

赤く頬を染めながら、ぎゅっとアレスに抱き付く

それを見て、シードとミーシャは驚き焦る

「私も付き合いは短い方だけど…アレスはスイちゃんの手にはきっと負えないわよ… そういえば、スイちゃん今何歳なの?」

「…? わたしは覚えていないですが…わたしの身体検査をおこなった時…『13才』と判明しました…」

「ずいぶん若いな… だが悪いことは言わねぇ…そいつはやめとけ…」

スイは軽く首を横に振り、更に強くアレスに抱き付く

「わたしは…ご主人様が好きなんです…」

『もう手遅れだ』と言わんばかりに、シードとミーシャは頭を抱える

「そうか…スイ…俺の事が好きなのか…!」

アレスはスイの言葉を聞いて、クルリとスイの方を体ごと向く

「俺はうれしい! 俺もスイの事好きだぞ!」

そしてアレスはぎゅうっとスイを抱きしめる

「…!!」

「「えぇっ!?」」

スイは嬉し恥ずかしそうに顔を赤くしながら笑顔を見せる

アレスの意外な言葉と行動に、シードとミーシャは同時に声を荒らげる

「あ、もちろんシードもミーシャも好きだぞ! 嫌いなわけないじゃないか!」

クルッと顔を2人に向けニコッとするアレス

「あ~…ありがとう…うれしいわー…」

「…だろうと思ったけどな…」

「…」

ミーシャとシードは白けた目と雰囲気で生返事をする

一方スイはちょっと残念そうな顔をする

『好き』がスイの思っていた『好き』では無かった事に、少しショックを受けてしまったのだ

「…ぁ…もうダメ…おやすみ……」

すると、アレスが何かの糸が切れてしまったかの様にドサッと倒れ、そのまま寝てしまった

「ぐ~~…ぐ~~…」

「…まぁ…()()だけのソウルを使ったんだ… ぶっ倒れるのも当然か…」

「…ねぇシード… アレスって鈍感なの…?」

シードは首をかしげる

「いや…あいつは育った環境が特殊だ… 大自然の中、ただ剣を振って修行生活していたからな… いわゆる()()()()()()()を知らないんだろ…」

(妹のアリアですら恋愛関係の漫画や小説を読んでるってのに… 勉強してるかしてないかの差なのか…?)

アレスには妹のアリアがいる

アレスと同じで学校には行って無かったものの、母親から家庭教師の様に勉強を教わっていた

良く言えば『剣一筋』、悪く言えば『無知』…そう感じざるを得なかった

そんなアレスに呆れるシード達を余所に、スイもそのまま、アレスと一緒に寝に入った

「…私達も寝ましょうか…」

「…だな…」

こうして一悶着あったものの、全員が就寝し、長かった1日が幕を閉じた




――翌日 皐月(さつき) 12ノ日(じゅうにのひ) 金魂日(きんそうび) 午前6時38分――

アレス達は起床すると、ササッと身支度を済ませて、馬に乗り走り出した

疾走する馬の上は心地よい風が吹き、アレス達は暫しその風に酔いしれた

特にスイにとって、ここまで『風』と『自由』を感じる事は無かった

馬に乗るアレスの後ろに座り、スイは感慨に(ふけ)


――1時間後 午前7時57分――

アレス達はとある街に到着した

幸い追っ手も無く、一先ず食事や今後の行動、そしてスイの服を購入する為に街に寄ることにした

街の雰囲気は良く、活気があっていざこざも無さそうで平和そのものだった

奴隷売街『ロッテルク』と同じく街の周囲を壁で囲っているのだが、それほど高くなく、およそ3メートル程の低い灰色で石造りの壁があるぐらいで、特に変わった所は無かった

街に入ったアレス達は、それぞれ別行動を取ることになってしまった

ミーシャは『スイちゃんの服を買うわ!』と言って、スイと一緒に街の服屋へと向かって行った

シードは『買いたい物がある』と言って、一人何処かへ行ってしまった

残されたアレスは何かする事も特に無く、街を一通り見る事にした

「ミーシャやスイは服を買いに行っちゃったし…シードも一人でどっか行っちゃうし… 何しようかな~…」

アレスは街をぶらつく

「―――!」

「―――!?」

すると、何やら道の真ん中で騒ぎが起きている

どうやら男女が何かもめているようだ

「? なんだ?」

そこには少数ではあるが人だかりが出来ていた

アレスも興味本意で見に行く

「――わたくしは…そのような『特別扱い』は、今日はやめて下さいと何度もお伝えしているはずです!」

小柄な少女が何かを訴えている

「いえ、そうはいきません。 貴方様の護衛が、我々の責務なのです。 故に、離れる訳にはいきません」

少女の訴えを、上下無地の黒い軍服の様な服を着た男達が拒む

「我々は貴方をお守りする為に居るのです。 貴方がこの『()()』にとって、どれ程の価値があるかお分かりでしょう…」

「…そう…ですが… わたくしは一人でこの街を…今のこの『大陸の姿』を見たいのです…! いえ…見なければならないのです!」

何か秘めた思いがあるのか、真剣な顔で声を荒らげる少女

しかしそんな思いも、自らを『護衛』と言う2人の黒服の男には届かなかった

「『見る』のが貴方の使命なら、我々もそうです。 ()()()()()』…そして『守る』… それが我々の使命です」

「っ…! …わかり…ました…」

少女はまるで、欲しい物が目の前にあるのにお金が無くてどうしようもない様な顔をし、諦めた様子でしぶしぶその2人を連れて街を見回ろうとする

「…では、行きましょ

「うおりゃあ!」

何の脈絡も無く、アレスがその黒服の一人に飛び蹴りを食らわした

「ぐおぉっ!?」

蹴りをモロに食らい、その衝撃で飛ばされ地面に体をズザアァッ!っと擦る

「何っ!? 誰だ!?」

黒服のもう一人が、自分達を奇襲した存在を確認する

それは自分達よりも随分年下の少年だった

「…何だお前は!?」

黒服の男の質問に、アレスは答えない

「おい! この子が困っているじゃないか! なんでそんな事するんだ!」

「…何だと?」

質問に答えず、ありのままの感情と言葉をぶつけるアレス

「大丈夫か? この人達がいじめるのか? 俺にまかせろ!」

「え…? えぇ…と…

「お前ら! 弱いものいじめはやめろ! それにその服、『騎士』と同じ服じゃないか! 正義の味方がそんな事をして良いと思っているのか!?」

蹴り飛ばされた男が起き上がり、アレスへと近付く

そして服に付いた土埃を落としながら、ひどく冷静に語り始める

「…君、我々が誰だか分からないようだな… いや…()()()()が誰か分からないのか…?」

「我々が君の様な『()()()()()()』の者を排除するために存在するという事を…」

「我々が君の様な少年を簡単に排除出来る、『()()()()()』であるという事を…」

「「教えてやろう」」

そう言うと、彼らは腰に付けた鞘から剣を抜き、アレスに見せつける様に構える

「来い! 俺は…お前らみたいな『悪』から弱い人達を守る…正義の『ヒーロー』だから!」

アレスは腰の鞘から剣を抜く

―――が、その腕に少女が抱き付いて止められる

「「「!?」」」

アレスと黒服の2人が驚く中、少女は何か()()した様な顔でアレスを見る

そして言い放った

「…中央大陸セントレイン『陸姫(りくひめ)』、『天帝(あまみかど)レインカ』の名において命じます… あなたを、わたくしの『ボディーガード』として雇います!!」


♥て…

マトモに絵文字なんて使った事無いのに…

♥て…

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