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混血の奴隷少女

アレス達は()()を遠目で見る

ネレイボル元締めと呼ばれた人物が、自分の側に居る少女を使()()()記者達に威嚇行為を行う

ネレイボル元締めは、銀髪でメガネを掛け、紺色の神父服を着ている男だった

メガネの奥から覗く目は、何故か優しさを感じさせる

銀髪はおそらく染めた様で、根元から1センチ程が黒くなっていた

オールバックに似たような髪で、神父服とはあまり似合わない

背丈はおよそ180センチ程

冷静で落ち着いた声を出し神父服を着る彼は、この奴隷売街(どれいばいがい)に居る時点で聖職者で無い事は確かであるものの、彼を『神父様』と呼んでしまいそうな雰囲気を(かも)し出していた

そんな元締めよりも目に入る存在が、彼の横に居た

『年端もいかぬ少女』

第一印象はそう感じる

ネレイボルの()()()()()()()()()()()()()()()、彼女の()()()()()()()()()()()()()()

少女はミーシャよりも身長が低く、140センチ前後ぐらいと思われ、年齢も10代前半ぐらいという印象を受ける

服はボロボロでダボダボ、男物の大きな白いシャツを着ていた

だが、汚れや何やら()の様な物も付いていて、本当に白だったのか疑いたくなる程色あせていた

大きすぎる服を着ているせいか、ズボンやスカートと言った下の服を着ておらず、激しく動いてしまえば下着が見えてしまう状態だった

目は虚ろで、他の奴隷と同じく生気が無い

瞳の色が何故か白く、髪はショートヘアーで何故か白髪だった

通常、髪や肌や瞳の色といった人体の色素が現れる部分は、『人間』はあまり変化は無い

生まれつき髪が青や金などの『人間』も居るが、それは少ない分類に入る

ミーシャも元は黒髪だったが青色に染めている事や、シードは生まれつき茶髪であるのが良い例だ

そう言った変化が見られるのは『獣人』の割合が圧倒的に多い

これは人間と獣人の遺伝子構造が違うために起こりうる事で、今回のこの少女の様に、外見に獣人の要素が表れていないのにも関わらず髪と瞳が白くなるのは珍しいケースだ

そしてそんな彼女は、一般的な騎士が持つような量産性のある物では無く、両手に立派な両刃剣を持っていた

ネレイボルが記者達に言った『彼女が君達を斬り捨てるやもしれん』と言った理由が、これにあるかも知れない

その武器を持つ少女を見せ付けられて静かになったこの場に、ネレイボルが落ち着いた声で話し始める

「彼女を含めた今回のオークションは随分盛り上がるであろう。 君達も、取材だけで無く是非オークションに参加して欲しいと、私は願っている」

そして、静まりかえった記者達を置いて何処かに行こうとする

「待て!」

そんな彼を呼び止める人物が1人

そしてその人物は、右手で彼を指差しながら怒った様に問い掛ける

「なんでその子を…いや! なんで人をそんな風に『奴隷』として扱うんだ!? お前は人を…何だと思ってるんだ!?」

その人物はアレスだった

シードとミーシャが傍らを見た時には、そこに居たはずのアレスが既に居なかった

もちろん焦る2人

ここで問題なんて起こしてしまったら…それ以上に、この街を牛耳る元締めに食って掛かったりしたら…全奴隷商人を敵にまわしてしまい、旅はおろか捕まってしまえば自分達も奴隷にされかねない

そんなアレスを止める為に走り出すシードとミーシャ

ネレイボルの機嫌を損ねる前に止める必要があった

だが、そんなアレスに対してネレイボルの反応は『()()()()()

「ハハハハッ… 済まない…君の様な『奴隷制度を嫌悪する人』は久しぶりに会ってね… 君がそう反感を抱くのも無理は無いが、先ずは『オークションハウス』に行ってみたまえ。 そこで『知る』事で、きっと考えを改めてくれる筈だ」

「なに!?」

くるりとアレスに背を向け、再び何処かに行こうとするネレイボル

「君の事をスタッフに話しておく。 オークション自体に参加は出来ないが、オークションハウスには入れる様にしておこう。 …彼の後ろに居る君達も、同様に入れる様にしておくとしよう」

そして軽く左手を上げて「では」と言うと、歩き出してしまった

アレスは疑問と怒りのこもった表情でその姿を見ていた

「くそっ…! オークションなんていいから、奴隷をどう思ってるか言ってくれれ

ゴゴヅゥッ

ばっっ!?」

シードとミーシャが同時にアレスの頭を殴る

「お前っ…あれだけ問題を起こすなって言ったのに…!」

「もっと慎重に動きなさいっての…!」

頭を押さえてうずくまるアレスは、若干涙目になってミーシャを見る

「ミーシャも奴隷制度には反対だろ!? どうして殴るんだ!?」

「話を聞くことも出来なくなる様な状況には私はしないわ! 今みたいな事は、あの人とゆっくり話せる状況になってからにしなさい!」

シード小さく溜め息をつく

「とりあえず、結果としては1歩前進したぐらいだ… そのオークションハウスってやつに行くとするか… まずは荷物を宿に置いてからな」

シード達は頭を押さえるアレスを連れ、宿屋へと向かった



宿屋で部屋を取り荷物を置くと、アレス達はこの奴隷売街『ロッテルク』を歩き、この街最大の建物『オークションハウス』へと辿り着いた

外観はサーカスのテントを平たくした様な外観で、壁と同じく石造りであった

その建物の入口にオークションのスタッフが何名か立っており、アレス達が声を掛けるとすんなり通して貰えた

オークションハウスの中は薄暗く、まるで劇場を見るかの様に建物奥に演壇、そこから広がる形で扇状に座席と机が広がっていた

壇上には頑丈そうな鉄格子が置いてある

中には何も入って無いが、おそらくそこに奴隷が入れられるのだろう

その瞬間を今か今かと待ち望む人達で、座席は埋めつくされていた

アレス達は座席には座らず、入口近くで遠目で立ち見する事にした

席に座るのは基本オークションで取引する人達だけだからだ

数分間待っていると、いきなり演壇が光魂石(こうそうせき)で作られたライトで照らされた

そして1人の男が壇上に上がる

手には音魂石(おんそうせき)を使用したマイクを持っていた

マイクで拡張された男の声がオークションハウスに響く

「皆様、大変長らくお待たせ致しました! これより、ロッテルク・スレイブ(奴隷)・オークションを開催したいと思います!!」

ワアァァァッッ!と会場全体が沸き上がる

「…奴隷のオークションで…なんでこんなに興奮できるんだ…!?」

アレスがわなわなと震える

「ここに居る人達は、『人』を売買するとは思ってないのよ…」

ミーシャは怒りよりも、むしろ呆れた様子で会場を見る

「今は、大人しく見とくとするか… あの『元締め』が、俺達の『奴隷制度』に対する考えを変えてくれるらしいからな」

シードはそう言って、今から始まるオークションを眺める

アレスもミーシャも、同じ様に演壇を見る

「本日最初はまずこの男! 彼の破壊衝動は誰にも止められない! 町1つを己の『力』だけで破壊した正に『破壊神』! スレイブネーム『ブレイクマン』!」

壇上に居る司会者がバッと手を斜めに上げると、鉄格子の中に1人の男が入れられた

筋骨隆々としたかなりがたいの良い熊の獣人で、上半身が毛皮で覆われて顔は熊そのままだった

腰から下は布が巻かれていて、普通の奴隷が着ている服を腰にしか巻いていない為に、その体格の良い肉体を目視で確認出来る

暴れるのを防ぐ為か、手錠が3つほど付けられている

不思議な事に、他の奴隷と違って目には生気が宿っていた

鉄格子にその男が入った事を確認すると、司会者は話を続けた

「この男は町を1つ破壊した罪から来週『死刑』の判決が下されていましたが、ネレイボル元締めが彼を()()()()、オークションの品として出す事が出来ました!」

司会者がその男の説明を終えると、鉄格子に近付いてその男にマイクを向ける

「何かアピールポイントは有りますか?」

そう言われた男は、ニヤリと笑う

そして大きな声で叫ぶ

マイクなど必要無いと言わんばかりに

「俺は『破壊』する事が『生きがい』だ!! 俺を『闘い』以外の目的で買うつもりなら!! 買ったヤツを俺が『破壊』してやろう!! それだけだ!!」

その男の声が会場全体に鳴り響き、大きな歓声が上がる

司会者が再びマイクを自分に向け、話し始める

「では奴隷競売を始めます! 方法はいつも通り、お手元の番号札を上げて頂き、私がその番号をお呼び致します! 呼ばれた番号の方は、その奴隷にいくら出すか声を出して私にお伝え下さい! これを繰り返して行き、最終的に札を上げる方がいなくなって、最後に出された値段の方が奴隷を買うことが出来ます! …では皆様、宜しいでしょうか? 先ずは最低競売価格3000マルからスタートです!」

その言葉を皮切りに、オークション参加者が次々と札を上げて値段を出していく

「人をお金で取引するなんて… こんなの間違ってる…! シード! やっぱりあの元締めに今すぐ会いに

「待て。 …もう少し見とけ」

「なんで…!?」

熱くなるアレスを、シードだけで無くミーシャも止める

「アレス…私もそう思うわ… あの人が()()()()を見せるだけでここに招待したとは思えないわ…」

「………」

アレスは何か言いたそうだったが、こうも2人に言われると流石に反論出来ない

そうこうする内に、1人目の奴隷競売が終わりそうだった

「…他にいらっしゃいませんか!? ………では1人目『ブレイクマン』は番号札58番の方、38万マルで落札です!」

ワアァァッ!っと会場が沸く中、鉄格子に入っていた男がそのまま壇上を降り、会場横のアレス達が入って来た出入口とは別の出入口から外に出る

それに続いて番号札58番の男も会場から出ていく

どうやら1回奴隷を落札すると、その場で売買が行われてそれ以降の競売には参加出来ないらしい

その様子を見届けたのを確認した後、司会者は次の奴隷を紹介する

「それでは次の奴隷をご紹介します! 孤独と瓦礫に埋もれたメイド! 新たな主人を求める彼女は、誠心誠意その体を以て尽くします! スレイブネーム『ホームメイド』!」

次に鉄格子の中に入ったのは、奴隷の格好では無く、きちんとしたメイドの服装を着込んだおよそ奴隷とは言えない雰囲気を出す奴隷だった

薄ピンク髪の女性の人間で、背丈はミーシャよりも少し上、年齢はシードと同い年ぐらいに感じる

「彼女の仕えていた主人の屋敷が犯罪者(テロリスト)に襲撃され、屋敷の人が全員惨殺されると言う悲しい事件現場から救出されたメイド! 崩壊した屋敷の瓦礫の下から見つかった彼女は、仕える主人も帰る場所も無くなって1人『孤独』に埋もれていました! そこをネレイボル元締めに拾われ、少しの間ネレイボル元締めのメイドを勤めた後、新たな主人を求めてオークションへの出品を自ら望んだのです!」

会場が沸き上がる中、司会者はマイクをそのメイドに向ける

「ではアピールポイントをお願いします!」

「私はあの日、全てを失いました… その時にネレイボル様と出会い、私は救われました… そんなネレイボル様が私に新しいご主人を見つけて下さる機会を与えて下さった事に、私は大変感謝しています! 第2のメイドとしての人生を歩む為に、私はどなたであっても誠心誠意真心を込めて仕えさせて頂きます!」

「ありがとうございます! それでは最低競売価格3000マルからスタートです!」

再び一斉に番号札を上げ始める参加者

整った容姿から、彼女は確かにメイドとしても人としても美しいが、人気の理由の1つにその薄ピンクの髪も少なからず影響しているのだろう

「…! やっぱりこんなの…間違ってるよ…」

アレスは訴える様な声でミーシャ達に言う

が、ミーシャは何か()()()をしているようだった

「…」

「ミーシャ…?」

「…そういう…ことなのかも…」

「その可能性はあるな。 あの元締めは、『()()』を見せたかったのかもな」

シードとミーシャは何かに納得し始める

一方アレスはよく分かって無いらしい

「えっ…? 何? どういう事!?」

「まぁ見とけ。 まだまだこのオークションは続きそうだからな」

すると会場からまた歓声が上がる

「…では『ホームメイド』は番号札113番の方! 29万マルで落札です!」

先程の男の時と同様に、メイドと113番の男が会場から出ていく

「それでは次の奴隷を紹介します―――」



それから同じ様に次々と奴隷競売が続く

他大陸の指名手配犯、元騎士の老兵、海賊に捕らえられていた獣人等、様々な奴隷が競売に賭けられる

だがいずれも、その目には生気が宿っていた

むしろ望んでこのオークションに出品されているかのように――

「――では続いて、本日の『目玉商品』をご紹介しましょう!」

すると今日最大の歓声が会場内を奮い立たせる

「『目玉商品』って…もしかしてあの子!?」

「ネレイボルって人もそう言ってたし、間違いなさそうね」

「『目玉商品』… そんな感じはしなかったがな…」

アレス達も壇上を注目する

「スレイブネーム『混血(こんけつ)少女』! ではご覧下さい!」

そして鉄格子の中に、アレス達が見掛けたあの奴隷少女が入った

ただし両手に剣は持って無く、代わりに手錠をしていた

変わっている所は他に()()()()

うなじから鎖が繋がってる所など、そのままだった

その繋がっている鎖は演壇の袖へと伸びているが、不思議な事に、鉄格子と()()()()()()()のだ

つまり、鎖と鉄格子は当たっておらずに鎖が透過しているのだ

だがそんな鎖など気にせずに、その少女について司会者は語り始める

「この少女は人間です! が、普通の人間ではありません! なんと! ()()()()()()()()()()()なのです!!」

会場全体がどよめき立つ

当然、アレス達も驚く

「…エニグマと人間のハーフ!? シード、どういう事!?」

「俺が知るか…」

ザワザワと騒ぎ立つ会場に、1つの()()()()()()が響く

「それは私から説明しましょう」

突然壇上に現れたのは、その少女を連れていたネレイボル元締めだった

「皆様ご機嫌よう… 奴隷売街ロッテルクの元締め、鎖牢(さろう)ネレイボルです。 オークションを楽しんで頂いているのを、大変有り難く思います。 彼女については、私が説明します」

ネレイボルは小さく咳払いをする

右手から少女に向けて伸びた鎖をグイッと引っ張る

それに反応するように、参加者に自分を良く見て貰う為か、少女は体を前に進めさせる

彼女自身が、それを望んではいないにも関わらず

そしてネレイボルは、会場に居る人達に話し始める

「彼女はとある()()()の前で倒れていたのを見つけて保護したのです。 …何の研究所かは、もう潰れてしまい分からなくなりましたが… そして彼女の健康状態を確認するために検査を行った所、なんとエニグマの反応があったではありませんか! 私は彼女を『護衛』として連れ、然るべき日にオークションに『目玉商品』として出品する予定でありました。 そして、それが今日なのです。 …先ずは、彼女の『()』を見て頂きましょう」

ネレイボルが目線で司会者に合図を送ると、司会者は演壇の袖に消え、両刃剣2本と奴隷を2人連れて来た

と同時に、ネレイボルは鉄格子からその少女を連れ出し、司会者が連れて来た奴隷と向き合わせる様にして立たせた

お互いの奴隷の両手首に付いていた手錠が外れ、少女には両刃剣を、2人の奴隷はそれぞれ1本ずつ剣を渡された

「その奴隷は今夜処刑を行う予定だった犯罪者です。 だが私が引き取り、『彼女を殺せたら無罪』と告げています。 …では、彼女の力を見て頂く、絶好のデモンストレーションを開始して

「ふざけんな…」

そう呟いたのは、2人の奴隷の内の1人だった

剣を持つその手がわなわなと震える

「俺達は処刑されてもおかしくねぇ罪を持ってはいる…」

2人の奴隷が、怒りのこもった声でネレイボルに言い放つ

「だがな! こんな()()()にされる事を望んじゃいねぇぞ!」

「ネレイボル!! あんたが原因なんだ! あんたさえ居なければ…こんな事にはならなかったんだよぉ!」

「殺してやるぜぇぇ! ネレイボルゥゥ!!」

大きく壇上を蹴り、勢い良くネレイボルに向けて走り出す奴隷達

アレス達を含めた会場内に居る全員がどよめく

怒りの形相を見せる2人の奴隷に対し、ネレイボルは()()()()()

()れ」

ネレイボルが小さくそう言うと、両刃剣を交差させて、少女は奴隷達と同じ様に走り出した

「退けええぇ

シュンッ

ぇぇぇっっ!!?」

一瞬だった

奴隷に向かって走っていた少女に奴隷が剣を振り下ろす前に、少女は素早く懐へと潜り込み、目にも止まらぬ速さで的確に奴隷達の首へ剣を振り抜き、何事も無かったかの様に壇上に直立不動で立っていた

うなじから鎖が伸びている事を感じさせない程の洗練された動きであった

2人の奴隷は首が斬られたが、鮮やか過ぎる斬り方のせいか首は飛んでは行かず、首筋から血が流れるのと同時に倒れ、やがて絶命した

シィン…と静まり返る会場

そこにネレイボルが興奮した様子で声を響かせる

「素晴らしい… これが彼女の力である! エニグマの力により、彼女の身体能力は人間を越えている! 彼女の力は、今のデモンストレーションで十分に理解して頂けただろう! では、オークションを再開するとしよう。 最低競売価格50万マルから

バリバリバリッッ!!

突如として激しい稲光と共に、耳をつんざく様な音が響き渡る

それは、誰も予想していなかった()()()()()()()()()()()

「……っ!!」

少女は必死に声を出すのを抑える

静まり返った会場から、どよめきの声が聞こえる

やがて5秒程、その稲光と音が続いた後ようやく治まり、少女はガクンッと膝から崩れ落ちる

「…私に、『殺意』を覚えたのか…?」

ネレイボルの言ったその声は、落ち着きを通り越して()()()()()

ネレイボルは再び右手から出た鎖をグイッと引っ張る

先程よりも、強く、勢い良く、冷徹に

年端もいかぬ少女は、その勢いに抗え無かった

引っ張られて壇上にその体を打ち付ける

ネレイボルは、そんな少女を()()()()()

「私に! 敵意を持つと! どうなるか! 理解! して無い! のかっ! このっ! バケモノがっっ!!」

何度も何度も踏みつける

ざわついていた会場も、再び静まるが――

「やめろぉっ!!」

突然鳴り響いた声の方向を、会場内の全員が一斉に見る

シードとミーシャも驚いた顔でそっちを見る

怒りの表情を顕にしているアレスがそこに居た

その声にハッとしたようで、ネレイボルは少女を蹴る事を止めた

そして荒くなった息を整え、小さく咳払いをするとマイクを使って冷静に話し始める

「取り乱してしまい申し訳ありません… 私は感情が高ぶるとどうも荒っぽくなってしまうようで

「お前は! こんなのを俺達に見せるために、ここに呼んだのか!?」

「…」

ネレイボルはやれやれという様子で首を横に振る

「ここに居る方々に改めてご説明しておきましょう。 私は『奴隷制度』に対して真摯に向き合っております。 今回のオークションで出品されたのを見て頂ければ分かる様に、彼等は自ら進んで『商品』として出品されました。 それは何故か? それは、()()()()生きる方法が無いからです。 破壊衝動を抑えられず死刑宣告をされた者を救い、行き場の無くなったメイドに新たな主人を紹介する… 社会的に居場所を失った人に、全うで適切な生きる場所を与える… それが私の理想とする『奴隷制度』なのです! 奴隷のイメージが悪いのは、奴隷の取引そのものでは無い…奴隷を扱う者達が、奴隷を正しく扱っていないからなのです。 奴隷を正しく扱えれば、奴隷もその奴隷を買った者も『幸せ』になれるのです」

ネレイボルはまるで()()の様な演説を行い、自らが『正義』である事を強調した

「そんなのウソだろ!」

ネレイボルの考えを否定するかの様にアレスは言い放つ

「いいえ…私はこれが『正義』であると信じてます」

「違う! その子は今、何一つ『幸せ』じゃない!!」

ネレイボルは呆気に取られる

そして小さく笑う

「…確かにその通りですね… しかし()()は特別です。 エニグマ…なのですからね。 …この街を見て回るのをお勧めする。 きっと、君の考えもそこの友人達の様に変われるはずだ」

シードとミーシャは、既にネレイボルの考え方に理解し納得出来た様だ

「皆様大変申し訳ありません… この『目玉商品』の『混血少女』… 少しキズが付いてしまいました… よって明日、彼女()()の競売を行います。 何卒ご了承頂ける様、よろしくお願いします」

深々と頭を下げて謝罪するネレイボル

――そしてオークションを再開する為の準備が行われた

『混血少女』は袖へと消え、少女が殺した奴隷の2人も()()()られ、ネレイボルも退場、司会者が準備を終えた事を確認し、アレスの叫びも少女の殺人も()()()()かの様にオークションは再開された

それを、既にオークションハウスから怒りのあまりに出ていっていたアレスは、知るよしも無かった

奴隷制度は全体陸に広まってます

この中央大陸では、現在アレス達が居る地域が一番栄えているだけです


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