幽霊船の真実
不気味な程の静けさが包み込む幽霊船
その甲板で3人の人と、人の形をした幽霊の様に透明な人らしき存在が大勢並ぶ
その3人は幽霊の様な人達に驚くが、それ以上に、彼らの放った言葉に驚く
「頼む…! 俺達を…救ってくれ…!」
この幽霊船の船長らしき人がそう言い放つ
船長帽をかぶり頭を下げるその姿からは、透明な事を除けば普通の人間だと感じる
しかし『救ってくれ』と言う言葉と、船長と船員が全員頭を下げる事、そして『透明』な事が重なり、シードとミーシャは警戒心をより一層高める
当然と言えば当然の反応である
だが、その当然の反応をしない人物が1人
「わかった… 俺にできる事なら何でも手伝うよ!」
アレスは手を差し出して握手を求める
「お…おい! アレス!? お前…少しは警戒ってもんを…!」
シードは警戒心ゼロのアレスを止めようとする
ミーシャも同様に止めようとするが、遅かった
「ボウズ…! ありがとうな…! こんな俺達に協力してくれる奴ぁ居なかったからなぁ!」
「まかせてくれ! …で、何すればいいんだ?」
「あぁ… それなんだが
「「ちょっと待ったぁ!!」」
シードとミーシャは同時に叫ぶ
「オジサン、船長なのか?」
「おうよ! この船長帽が見えるだろ? これが証拠よ!」
和気あいあいと話すアレスと船長を先頭に、その後ろにシードとミーシャ、更に船員が続いてゾロゾロと歩いている
この集団は幽霊船の船内を歩いていた
ざわざわと騒がしい声を出しながら歩く一行は、船内を歩いてとある部屋へと向かっていた
甲板でアレスを止めた2人は、まず幽霊の様な彼らが何者なのか?と言う事、そしてこの幽霊船とは一体何なのか?と言う事を聞くため、ゆっくりと話を聞ける部屋を目指していた
やがて古い木のドアを開け、船の一室へと足を踏み入れる
全体的にボロボロ、船体同様に戦闘でもあったのか、所々穴が空いている
部屋には幾つかテーブルと椅子が並び、その中の1つに船長と名のる男が座る
同じ様にアレス達も椅子に座り、男の話を聞く体勢をとる
一息つくと、男が話し始めた
「まぁ先ずは自己紹介からだな! 俺はこの『幽霊船』の船長、元人間の荒波ゴウレンってんだ! んで、周りの奴らは同じこの幽霊船の船員だ。 仲良くしようぜ? ボウズ共?」
「よろしくオジサン! 俺は暁アレス!」
「…」
元気良く挨拶するアレスとは対照的に、未だに警戒心を解かずに沈黙するシード
「んで、こっちが白鷺シード! 俺の仲間だ!」
そんな事を気にもせず、勝手に名前を出されて迷惑そうな顔をするシードだったが、同じく気にもせずに笑うゴウレン
「がっはっは! まぁ当然か! 警戒しねぇってのが無理な話だ!」
笑うアレスとゴウレン、警戒するシード、だが彼らとは更に対照的に驚くミーシャだった
「荒波!? どうして…!? どうしてあなたがキャプテンと同じ頭名を!?」
それを聞くと、ゴウレンも少し驚いた表情をする
「んん? って事は、お前さんが『青原ミーシャ』か? 弟に聞いてた通りだな?」
ゴウレンは髭を触りながら、ミーシャをまじまじと見る
そしてニヤリとすると意地悪そうな口調で話す
「確かに随分と可愛いじゃねぇか? こんな美少女に好きになってもらうなんて、ジョイスも幸せもんだな?」
予想もしなかった言葉を言われて、赤面になるミーシャ
「な…何を言ってりゅのよ!? そんな…そんなきょと…」
「お前何照れてんだ…?」
シードは冷静な目で、呂律が回らないミーシャを見る
「て…照れてない! それより、キャプテンの兄って本当? それと団長の事を知っているの?」
話を強引に戻そうとするミーシャ
余程団長と自分の関係に触れられたく無いのだろう
だが、確かに気になる事ではある
それについてゴウレンは話し始める
「あぁそうだ… 弟のゴウトン…俺が生きていた時はまだ『海洋武装兵団』の副キャプテンだったが、ジョイスの奴が居なくなってからはキャプテンになったんだったな? ま、その頃には俺達は死んじまってるし、あんま詳しく知らねぇけどな」
「ゴウトン? 誰だ?」
「荒波ゴウトン… 私達『海族』の現キャプテンよ。 この人がキャプテンと同じ頭名なら、兄弟って事になるわね… そう言えば、どことなくキャプテンに似ているような…」
頭名…いわゆる名字なのだが、人間と獣人との間に産まれた子供には、頭名が違うという事は良くあるものの、兄弟で違うという事はあまり無い
アレスの家族が良い例で、兄のアレスと妹のアリアは同じ頭名であり同じ人間である
同じくこのゴウレンも弟のゴウトンと同じ人間であるため、兄弟であると言う事は明白になる
よってミーシャは、この人物が自分の知るキャプテンの兄弟である事を理解した
アレスはゴウトンという人物を知らなかったが、シードはあの食堂に居た野太い声の人物だと確信した
「あんたがあの『キャプテン』の兄ってのは分かった。 じゃあ『ジョイス』ってのは…ミーシャの言ってた『団長』で間違いないのか?」
ゴウレンは軽く笑いながら頷く
「『団長』… 俺はアイツぐらいしか、そう呼ばれる奴ぁ知らねぇな。 んだが、俺からアイツの事を言うよりも、そっちの嬢ちゃんから聞いた方が早ぇんじゃねぇか?」
「確かにそうだな… ミーシャ、そのジョイスってやつの事を教えてくれ」
ミーシャは少し恥ずかしそうに語り始める
「…私達『海族』が『団長』って呼んでる人…本名『海原ジョイス』って言うの。 でも私達は、団長が『船長やキャプテンだと海賊っぽいからそれ以外で呼んでくれ』って言っていたから『団長』って呼んでいるの。 …まあ、服装とか行動とか海賊っぽさがあるから、矛盾しているんじゃないかなって事は思っていたけど、呼びやすいし本人もそれがいいって言ってたし、団長って呼び方が定着したの」
「そうか… なら、そのジョイスはどんな人なんだ?」
シードは更に追求する
「団長は…3年前なら24歳。 若くても団長を務めれる程周囲からの人望が厚くて、戦闘に関してもソウルの量や扱い方も良くて、海族の中でも一番強かったわ。 一度だけ見たことがあるけど、センスも持っていたわ。 どんなセンスか忘れちゃったけど… それと…私の名付け親…かな?」
「名付け親? どういう事だ?」
シードは疑問を持つ
「私は本当は、青山ミーシャって名前なの。 でもこの大陸で海族になろうって決めた時、団長が『山と海は正反対』って言って、『青山』から団長の『海原』の1文字をもらって『青原』にしたの。 『青い大海原』…そんな意味が込められているの。 本当は、団長と同じ『海原』か『青海』がいいって言ったんだけど、『海原だとお前の親から貰った名前が無くなっちまうし、青海は俺の友人と頭名が似てるからややこしい』…なんて言われて『青原』になったの。 だから私の名付け親なの」
「そんで初恋の人…てか?」
ゴウレンから不意に言われた言葉に、ミーシャは顔を真っ赤にして否定する
「!! ち…ちが…!」
そんなミーシャに対して、周りの船員がヒューヒューと囃し立てる
「年の差カップルか~?」
「初々しいね~!」
「お似合いだぜ~?」
それを聞いて、更に顔が赤くなるミーシャ
シードは冷静に咳払いをし、脱線しかけた会話を元に戻す
「…ミーシャとジョイスの事は分かった。 次はあんた達の事だ」
一瞬、ピリッ…と空気が張り詰める
ミーシャを囃し立てていたのが嘘の様に鎮まる
やがて、ゆっくりとゴウレンが話し始める
「俺達がこうなったのは…ちょうど3年前だったな… あの日、俺達は普通に航海していた…」
―――3年前 ゴウレン視点―――
「船長! 今日も海は穏やかっスね!」
「あぁ違えねぇ! いい航海日和だ!」
俺達は海賊…と言っても、自由気ままに海を渡って、同じ海賊をブッ倒して荷物を奪ったり、時には『海洋武装兵団』と売買して食料なんかを取引して、のんびりと生活してたのよ
俺達は海が好きなのさ
誰にも縛れず、誰からも縛られない…そんな自由を生きていたのさ
だがその自由は、あの日壊されたんだ…
「船長…アレ…何でスかね?」
「んぁ? ありゃあ…船か?」
随分ボロっちぃ小さな船だと思ったよ
何せこの船の半分ぐれぇの大きさしかねぇからな
だが近付いて見ると、ボロい事よりもだ~れも居ねぇ事に驚いたね
「…なんだ? ただのボロい船か? とりあえず、なんか金目のもんを探して
ドオオォォォォンッッッ!!!
突然大きな音がしたかと思ったら、急にその船がこの船にぶつかりやがったのよ
「っっ!? あの船…! 誰か乗ってんのか!?」
俺達ゃ最初こそ驚いたが、直ぐに戦闘体勢になった
相手が人間なら、迎え撃っても勝てる自信があったのさ
人間…だったら良かったんだがな…
攻めて来たのは…大量のエニグマだった
船がぶつかった瞬間、そのボロい船の甲板にゾロゾロとエニグマが出てきて、この船に乗り込んで来やがったのさ
と言っても、ボウズ達が倒したあの魚人のエニグマじゃ無く、魚類型のエニグマさ
普通魚類型のエニグマは、人魚みてぇな形かトカゲみてぇな形をしてんだが…ソイツらはちょ~っと違ったのよ
何かこう…様子がおかしいって言うか…なんつーかこう…最初っからこうなる予定だったっつーか…
…ソイツら、妙に特攻隊みてぇに突撃して来やがって、後先考えねぇで船を沈めるつもりだったらしい
いや、船を沈めるつもりも無かったかも知れねぇ…
ソイツらは俺達を完全に殺しに来やがった
もちろん、俺達はエニグマと殺し合った
だが、特別強い訳じゃねぇ…
弱くも無かったが、エニグマらしくない攻撃をして来やがった
『自爆』…そんな事をしてくるなんて聞いたことねぇ…
腹が膨らんだかと思ったら、次の瞬間、ドでかい爆発を起こしやがって…
仲間の数人、それで吹っ飛んじまって…殺られちまったのよ…
それを次々やられたらよ…俺達ゃどうしようもねぇさ
結果、俺もそれで殺されてよ…この船はめでたく敗戦ならぬ廃船の仲間入りさ
そこまでは良くある、普通の海賊の末路だ
だが、そっからが違った
気が付いた時にゃ、生き返っていた
肉体がじゃ無く、魂のみがな
俺達もどういう訳か知らねぇ…
だが、体が透明で意識もある…そんな生命体になっちまったのさ
幽霊…って訳じゃねぇ…実際、壁なんか通り抜けられねぇし、物だって触れる
それに腹も減らねぇ…だからこそ、俺達は何もんなのか考えた
んで、その答えの1つがエニグマにあったんだ
時々アイツらがこの船に乗って来やがる
まぁこんなボロ船で漂流してりゃぁ、海に幾らでも居やがるエニグマに襲われるなんて珍しい事じゃねぇ…
だからこの体で奴らと戦う事になった時、『霊体だから関係ねぇ!』と思って高を括ってたんだが…どうやら甘かったみてぇだ
「うわああぁぁっ!!」
「船長! こいつら…俺達の腕を食いちぎりやがった!?」
俺もさすがにビビったね…なんせこちとら、奴らの攻撃なんざ効かねぇと思ってたからな…だが…
「狼狽えてんじゃねぇ! こんな体になっちまっても、やるこたぁ変わらねぇ! いつも通りに、コイツらをブッ倒すやり方で問題ねぇ! 」
ビビったら負ける…そう思ってよ
それから俺達はいろんな海を移動しながらのらりくらりと放浪よ
やる事もやれる事も無ぇからな
その内、各地の港町で俺らの船が見られてよ…
いつの間にか、『ボロ船に幽霊が乗って移動してやがる』…なんて言われちまって…
その結果、『幽霊船』なんて呼ばれる様になったのさ
…ゴウレンの話が終わっても幽霊船の一室は、始まる前と同じ静けさに包まれたままだった
アレスは珍しく真剣な顔で聞き、シードは何か考え事をしている顔をしていた
しかしミーシャは、様々な感情が入り交じった顔をしていた
「…ま、ボウズ達がどう思っても、俺達が死んだっつう事実は変わらねぇし、どうしようもねぇのは実際、誰にも出来やしなかったしな… この船に来た『海洋武装兵団』の連中も、俺達の姿を見た瞬間に話しも聞かずに帰っちまうし、こんなボロっちい船で急に現れたり居なくなったりするんだ… 『幽霊船』なんて名前が付けられちまうのも当たり前だ… 『幽霊船』って名前だけが独り歩きしやがって、今みたいにこうなってんのさ」
「「「………」」」
アレス達3人は、何も言えなかった
ゴウレンが寂しそうな顔をしているのもそうだが、確かにそれを聞いて、自分達では何も出来ない事が事実であるからこそ言葉が出なかった
更に言えば、自分達が彼らに対して行った行為が決して『正しい』と言えるものではなく、後悔と反省の念が彼らの口を塞いでしまった
実際問題、アレスは別として、シードとミーシャは彼らを見た瞬間に敵、もしくは警戒をするべき相手である行動をしたのだ
これでは何を言っても言い訳にしかならない
そう思うと、自然と口から言葉が出て来なかった
「…おいおい!? 何しんみりしてんだ? 確かに俺達の体はもうどうする事も出来ねぇが、ボウズ達はこうしてここにいるじゃねぇか! 俺達にとって、久し振りにマトモに話す人なんだぜ? それだけで十分よ… だから、そんな顔すんなよ嬢ちゃん…」
ゴウレンはミーシャの方を向きながら、なだめる様な口調で話す
ミーシャは一瞬ビクッとして目線をゴウレンから逸らす
「嬢ちゃんは『海賊』に襲われたそうだな? 弟から聞いたよ… 嫌いなんだろ? そりゃぁ仕方ねぇさ! …だからこそ複雑なんだろ? 自分の嫌いな海賊と一緒に居る『嫌悪』の気持ちと、その海賊がこんなに理不尽な死に方と生き方をしてる『慈悲』の気持ち、そして何とかしたいって『善意』とそんな事しなくていいって『拒絶』… 嬢ちゃんが、そんな感情の入り交じった様な顔をしてんのも分かるさ」
シードもゴウレンの気持ちを汲み取ったのか、ゴウレンに続いて言葉をかける
「そうだミーシャ…気にする事はねぇ。 この人達は、道は違えど海賊は海賊… 言わば自業自得… 何言われても文句は言えねぇよ」
その言葉で、アレスとミーシャはキッッとシードを睨む
この2人の行動を予想していたのか、シードは素早い動きでアレスの口を塞ぐ
「そんな言い方ないでしょ!? この人達は何も悪くないのよ!? それなのに…」
ミーシャは突然ハッとした
「そうだな… この人達は何も悪くねぇ… ちゃんと言えたじゃねぇか…?」
シードはニヤッと悪い笑みを浮かべる
そしてゴウレンは、明るい優しい笑みを浮かべる
「ありがとよ兄ちゃん… 嬢ちゃん、その言葉が嬢ちゃんの本音なんだな? その気持ちだけで、俺達は救われる… いくら複雑な顔をしても、嬢ちゃんのその優しい心だけは、真っ直ぐ素直で正しいのさ… 嬢ちゃんはやっぱり、ジョイスの奴の『魂』をしっかり受け継いでんのが分かる… もちろん、弟のゴウトンも一緒だぜ?」
ミーシャは自分の心の内側を見透かされた事に、先程とは違う意味で顔が赤くなる
その隣でアレスがモゴモゴ言っているため、シードは口を塞いだ手をパッと離した
「それじゃ、これでオジサンを救えたんだな!」
「んなわけあるか… その事も踏まえて3つ、質問がある」
真っ直ぐゴウレンを方を向き、シードは真面目な表情をする
和やかムードから一転、シードの声で空気がピリッと張り詰める
「…言ってみな、兄ちゃん…」
ゴウレンは物静かにどっしりと構える
「まず、あんた達は自分自身が何なのか…大体予想がついているんじゃないのか?」
周りに居る船員達がザワザワと小さく騒ぎ始める
「…」
「さっきあんたは、『自分達が何もんなのか、その答えの1つがエニグマにあった』…そう言ったな? 俺はそこで、何かしらの答えが見つかったと思うんだが…どうだ?」
ゴウレンは薄ら笑いを浮かべる
「兄ちゃんの言う通りだ… 俺ぁ半分わかっちまった… 物理攻撃が効かねぇ俺達が、エニグマの攻撃には当たる… つまりだ…俺達のこの体は、ソウルで出来てるのさ…」
それを聞くと、シードは「やっぱりか…」と小さく呟いた
「早い話、半分エニグマになってんのさ… 体全てがソウルで出来てるエニグマに、俺達はなってる… 予想の範囲だが、少なくても俺はそう思ってる」
アレスとミーシャはひどく驚いた表情を見せるが、シードは予想していたのかそれほど驚いた様子では無かった
「確証がない以上確かめられないが、おそらくそうだろうな… どうしてそうなったのかも分からないが、それは今はほっとくしかないな… 次の質問だが、魚類型のエニグマが攻めて来たって話だったな… 俺達の戦った魚人型とは違うらしい… なら、少なくても俺は見たことがない、あの魚人型はどうやってここに来たんだ?」
ゴウレンは感心する
年のわりには的確に要点、そして核心に触れてくる事を
「来た…と言うのはちと違うな… 奴らはここから生まれたのさ… 俺達の船には時々、ああいう化けもんが生まれてくるみてぇなんだ… 原理は分からねぇが、どうやら俺達の元体を利用して生まれるんだ。 もう骨だけになっちまった死体に、ソウルで肉体が創られて魚人みてぇになんのさ… だが、あんだけ沢山生まれたのは初めてだ…」
ゴウレンは髭を撫でながら、不思議そうな顔をする
そしてシードはそれを聞いて、更に質問を投げ掛ける
その顔は、さっきまでの2つの質問の時とは打って変わって、より疑問が濃くなった様な顔をしていた
「なら3つ目だ… 『救う』… これはどういう事だ?」
突如、椅子から立ち上がるゴウレン
「ついてきな… 見た方が早ぇだろうな」
「俺達がこの海域に来たのが2日前… その時から奴らがわんさか生まれて来たんだが…」
幽霊船の船内を歩きながら、何処かへと向かうゴウレン達
「この海域に来た時、船が揺れておかしくなりやがったんだ」
下へ下へと、船の中を降りて行く
「揺れたのはこの船の下から… そこには、『貨物室』がある」
やがて、少し大きめの扉へと辿り着く
「貨物室には、3年前までに集めに集めた俺達の武器や食料…そして交易に使う予定だった大量の『魂石』があった」
その古びた扉を開けると、とても大きな何かが居た
「「「!?」」」
当然のごとく、3人は驚く
「おっと… デケェ声は出すなよ? 起きちまうからな…?」
口元に指を当てて、小さくシィィー…と言う
シードは思わず唾をゴクリッ…と飲む
「これは…生き物なのか!?」
「いいえ…生き物なんかじゃないわ…! こんな大きな生き物、この海で見たことない…! でも、私は知っているわ… この…魚を…!」
「あ! これって、『トビリュオ』じゃん! 俺食ったからわか
ゴヅッッ
る゛っっ!!」
シードとミーシャは同時にアレスの頭をゲンコツで叩く
「声がデケェ!」
「起きたらどうするのよ!?」
この見知らぬ物体が何か分からないが、とにかく寝てるのならば起こす必要も無い
だが、もう遅かった
「起きちまったな…」
ズズズズズゥッ…と何かが這いずる音が、暗がりの向こう側から聞こえる
「兄ちゃん、さっきの質問に答えようか…」
明かりは部屋の壁に点々としか存在しない『光魂石灯』で、うっすらとしか見えない
「アイツが居るせいで、俺達ゃ死んでも死にきれねぇ… この船が沈められるなんて考えたらな」
アレス達は冷や汗が止まらない
「この船が沈むことは、俺達が本当の意味で死んじまう…だからこそ『救って』欲しい…」
その存在が放つ、圧倒的な威圧感で
「アイツをブッ倒して、俺達が悔いもなく成仏出来る様にな…! 頼んだぜ…『ヒーロー』…!!」




