戦闘準備 ~魂術と銃について~
風呂から上がったアレスとシードは、脱衣場に置いてあった服を着てミーシャのいる居間へと戻る
「戻って来たわね? 早速、戦闘準備をしましょうか」
「おい…」
準備を始めようとするミーシャを止め、シードが半ばキレ気味にミーシャに突っ込む
「この服…なんだコレ…!?」
2人が着た服だが、白いTシャツに、無理矢理破れた様なギザギザな袖をしている茶色いベスト、ジーンズっぽい生地の黒みがかった青色の半ズボン…
全体的な雰囲気としては、正に『海賊』と言えてしまう様な格好をしていた
「あら、似合ってるじゃない?」
ミーシャは薄ら笑いを浮かべながらお世辞を言う
だがシードは、『こんな恥ずかしい格好でいられるか!』とでも言わんばかりの表情をしていた
そんな心の叫びを感じ取ったのか、ミーシャは冷静にシードの隣を指差す
シードがそっちを見ると、目をキラキラさせながら自分の服装を見ている少年がいた
「ミーシャ! これ、『団長』って人が持っていた服なのか!?」
ミーシャはくすりと笑いながら答える
「ええ、そうよ。 団長が昔、『海族』の若い人用に持っていた服装を引っ張り出して来たの。 悪いけど、それ以外に男性の服は無いわよ?」
アレスは少し興奮しながら、首を横に振る
「全然大丈夫だ! コレ、すっげぇカッコいいぞ! これは気合い入るな! 早く『幽霊船』に行こうぜ!」
シードは今すぐにでも着替えたい気持ちを抑え、もうあきらめムードへと入ってしまう
「ま、あきらめてちょうだい? 服はないし、新しい服を買いに行く時間もないわ。 …それより、なんであなた達が汚れていたのか理由を聞きたいわ。 それと、ここに来た経緯も聞かせてもらっていいかしら?」
…2人は椅子に座り、ミーシャにこれまでの経緯を話した
『ヒーロー』を目指して旅立ち、エニグマと戦い、山賊と闘い、ボアボスとの死闘、更に騎士からの逃走…そして結果、荷物が無くなって服も船に乗る金も無くなってしまった事…
それらをミーシャは聞き終えると、驚くを通り越してドン引きしていた
「あんたら…そんな状態でも旅をしようとしているの…? 逆に尊敬するわ… ていうか、もう自分達の町に戻った方がいいんじゃないの?」
シードは軽く頷く
「まぁ…そうなんだが… あっちに戻るぐらいなら、もう突き進むしかねぇ… 俺よりも、アレスが戻る事をしねぇんだ…」
アレスは逆に首を横に振る
「大丈夫大丈夫! なんとかなるさ! それに、『ヒーロー』になるまでは、俺は家には戻らないぜ!」
そんなアレスに、ミーシャは呆れた様子で尋ねる
「…あんた、今いくら持ってんの?」
「シード、お金あとどれぐらいあるんだ?」
「…1200マルだ」
それを聞いてミーシャは呆れ顔から驚き顔に変わる
「それだけしかないの!? 『トビリュオの丸焼き』ぐらいのお金しかないじゃない! …船に乗るには、1人3500マル必要よ」
アレスとシードは、ミーシャ以上に驚く
「えぇっ!? お金足りないじゃないか!」
「そんなにするのか… やっぱり、さっきの方法で行くしかないか…?」
ミーシャは両手を合わせてパンッ!と鳴らす
「ハイハイ… あんた達のマル事情はどうでもいいわ! そもそも船が出ないんなら、何言っててもしょうがないわ! それを私達で何とかしようとしているんだから! さ、戦闘準備を始めましょ!」
シードはそれを聞き、少し頭を冷やして対応する
「ま…そうだな。 んじゃ、まずは俺達の武装とスキル…つまり、俺達の『やれること』を確認するぞ」
そう言うと、3人は机に広げられた紙に、それぞれ書き込み始めた
―――数分後―――
「ま、こんな感じか?」
3人は、それぞれ書き込んだその紙を確認する
アレス シード ミーシャ
装備: 刀 長槍 充魂式自動連射小銃
弾倉式単発小銃
射程範囲: 近距離 近、中距離 遠距離
センス: 『獣心化』 『?』 『?』
魂術: なし 治癒魂術 魂術全般(下位)
一通り確認すると、早速アレスは気になる所に注目する
「ミーシャの装備…これ、なんて読むんだ?」
するとミーシャは席を立ち、カウンターキッチンの方へと歩いて行き、何やらゴソゴソと何か取り出して、それを机に置く
ミーシャが持ってきた物は、小型の黒い銃2丁だった
1つは、長方形の本体に銃口が少し出ていて、グリップが若干短めではあるものの、銃本体は指先から肘まで辺りの大きさがあり、女性でも扱いやすそうな銃であった
一言で言えば、サブマシンガンである
もう1丁は、早い話、ピストルだった
銃口が出ている形で無く、本体がシンプルな形状で、マガジンが着脱できるタイプのものだった
「うおぉっ! カッケぇ! これなんだ!?」
アレスは興奮して、その銃をまじまじと眺める
「こっちの長方形の銃は、充魂式自動連射小銃、銃名『マーク11』。 こっちの小型の銃は、弾倉式単発小銃、銃名『カーズ52』。 どっちも私の装備よ」
アレスは再び、頭の上に『?』が付きそうな勢いでミーシャに質問する
「『充魂式』? 『弾倉式』?? なんだソレ…???」
「俺も銃を見るのは初めてだな… どういうもんなんだ?」
「いいわ、2人まとめて教えてあげる」
ミーシャはペンを握ると、紙に色々書き込みながら説明し始めた
「まず、銃の種類は2つ。 1つは『充魂式』、もう1つは『弾倉式』よ。 大きな違いは、『弾を込めるか込めておくか』ね」
ミーシャはそう言うと、2つの銃の内、自動連射小銃と言っていた方を手に取った
「これが充魂式のサブマシンガンね。 一応、弾を込めるマガジンが取り外せる様になっているけど、ほとんど外す事はないわ。 なぜなら充魂式っていうのは、『自分のソウルを銃を持ちながらチャージできる』機構を持つ銃の事を言うの」
「「?」」
アレスとシードはイマイチ理解できない様子だった
「…じゃあ、次はこっちの銃ね」
そう言うと、次は単発小銃と言っていた方を手に取った
「こっちの銃は、ピストルね。 典型的な弾倉式の銃よ。 マガジンが取り外せるのが大体ね。 弾倉式は、『マガジンを交換して撃つ』銃の事を言うの」
「ミーシャ…よくわかんないんだけど…」
「なるほどな…」
理解が追い付かないアレスに対して、シードは大体理解した様子だった
「だがそうなると、弾倉式の方が不便じゃねぇか?」
「そうでもないわ。 サブマシンガンのマガジン…充魂式のマガジンを『カートリッジ』って言うんだけど、これはある程度ソウルが貯まってないと撃てないのよ。 これは、この銃そのものがソウルを使用して撃つ機構になっているから、『銃弾射出用ソウル』を先に補充して、そのあと『弾丸用ソウル』を貯める形になっているの。 それにカートリッジは、持ってソウルを貯める事ができるから、グリップに『吸魂石』を仕込んであるわ。 だからそのぶんだけ、ソウルを貯める事ができる量が、弾倉式に比べて少ないの。 大容量もあるけど、これぐらい小型なら差はハッキリと出てきちゃうわね」
「だが、弾倉式にもデメリットがあるんだろ?」
「ええ… まず、弾を全て撃ち終わったらマガジンを交換しなきゃいけない事があるわね。 乱戦時ならいいけど、一対一で戦う時とかは絶対に隙が生まれるから、注意が必要ね。 充魂式は常にソウルを補充しながら…つまり、リロードしながら撃てるから、その心配はないわね。 それと、弾倉式も『リロードホルダー』っていうものにマガジンを入れて置けば、自動的にソウルが補充されて撃てる様になるんだけど、そのソウルが貯まるのが遅いのよ。 マガジンそのものに『吸魂石』を使用している訳じゃなくて、マガジンの底のみに使っているから、補充速度が遅いのよね。 これも、弾倉式のデメリットと言えるわ。 でも、マガジン自体に『銃弾射出用ソウル』が『弾丸用ソウル』とは別に内蔵されているから、余分にソウルを補充する必要はないわね」
「どっちにも『強み』と『弱み』があるわけか… お前は、戦況によってはそれを使い分けているんだな?」
「使い分ける…というよりは、私は同時に使うわ。 右手で『マーク11』、左手に『カーズ52』を使うわ」
「へぇ… お前の銃の腕前、見てみてぇな…」
「ま、期待してちょうだい?」
2人の会話が一段落すると、アレスが困惑しきった顔で2人を見ていた
「オレ…ワカンナイ…」
なぜか片言になるアレスに、ミーシャは大きな溜め息をつく
「わかったわかった! 紙に書いてあげるから、しっかりと見ときなさい!」
そう言うとペンを持ち、ミーシャはスラスラと紙に何か書き始めた
「………どうかしら? これで理解できるでしょ?」
充魂式…銃を持ちながら、自分のソウルをカートリッジに補充できるタイプ
メリット…自分のソウルが無くならない限り、事実上無限に撃つ事ができる。 リロード速度は自分のソウルの量と質に左右され、良ければ高速でリロードできる。 残弾量が相手にわからない
デメリット…カートリッジに貯めれるソウルの量が少なめ。 『弾を撃ち出す用のソウル』が別に必要なため、それも自らのソウルで補充するので、それが貯まるまで弾を撃つ事ができない
弾倉式…弾を撃ち終わったら、ソウルの補充されたマガジンと交換する事ができる
メリット…充魂式に比べて『弾丸用ソウル』の量が多い。 『銃弾射出用ソウル』がマガジン内で生成されているため、そのぶんソウルを補充する必要がない
デメリット…マガジンを入れ換えるというリロードが必要。空マガジンを『リロードホルダー』に入れればソウルが補充されるが、その際の速度が遅い
「う…ん… まあ…分かりやすい…かな?」
アレスは首をかしげながらも、『とりあえず』理解したみたいだった
「まあ理解しなくても、あんたは立派な『刀』があるんだから、それ使っときなさい。 …それより、あんたのこのセンス…『じゅうしんか』?って読むのかしら? これは何?」
アレスは「待ってました!」と言わんばかりに椅子から降り、椅子を退かして腰に手を当てる
「よっしゃぁ! 見せてやるぜ! これが俺のセンス! 『獣心化』
ゴツッッ
だぁっ!?」
アレスが自らのセンスを披露しようとした時、隣にいたシードが椅子に座りながら、アレスの頭を拳骨で殴った
アレスは殴られた頭を押さえながら、床に倒れる
「こんな狭ぇ所で暴れんな。 ミーシャ、こいつのセンスは、体に獣…まぁ、狼の力を宿すセンスだ。 見たかったら、エニグマと戦ってる時にでも見せるわ」
殴られた痛みで床で悶絶するアレスを横目で見ながら、軽く笑って答える
「ええ… まあ…期待しておくわ…」
「あっっ!!」
突然アレスが上げた大声に、2人の体がビクッ!と跳ねる
「お…おい! なんだよ突然!」
シードが驚きながらアレスに問い詰める
「シード! さっきの紙! あれ、魂術の所になんか書いてなかったか!?」
アレスはムクッと起き上がり、机の上の紙を確認する
そしてその場所を指差しながらシードの顔を見ながら聞く
「あっ! ほら! シードって、魂術使えるのか!? しかも、治癒魂術を!?」
シードは髪の毛を右手でくしゃくしゃしながら、拍子抜けした様な顔で答える
「あぁ…それか… お前知らなかったのか? …まあ、伝えてもいなかったんだが…」
「あなたの魂術は独学? 属性は『治癒』かしら?」
ミーシャは興味深そうに尋ねる
「まぁ、半分独学だな。 コツとかはある人から教えてもらったからな。 それと、俺の属性は基本『風』だ。 『治癒』は、それを応用して自分で身に付けたやつだ。 …つっても、『風魂術』は使えねぇ… あくまで、槍に『纏わせる』ぐらいでしか使えねぇから、本質は『治癒魂術』の方かもな」
ミーシャは関心しながら、ポケットから何か取り出してシードに見せた
それは、長さが肘より少し手前まで伸びた手袋だった
材質は黒い革製で、手の甲の部分に何か宝石の様なものが取り付けられていた
指の第2関節から先が無く、『穴空き手袋』の様な代物だった
ミーシャはそれを身に付けると、その宝石の様なものを自慢気に2人へ見せ付けた
「私はこの『魂術魂石』を使わないと、魂術を使えないのよ… 私は細胞に属性を持ってないから…」
「まぁしょうがねぇ… こればっかりは『才能』みたいな所があるからな… んじゃ、俺達の武装と能力も確認できた事だし、早速作戦を
「ちょちょちょちょっとまって! 俺、魂術についてなんにも知らないから教えてくれ! 属性…? 細胞…? 『魂術魂石』…?? それにその手袋はなんだ??」
1人だけ理解出来ないアレスは、焦りながら2人に質問をぶつける
シードはそれを、めんどくさそうな顔で聞きながら答えようとした
「あ~~…と… まず『魂術』ってもんから説明すると… ミーシャ、後は頼む。 こういうの得意だろ?」
ミーシャもめんどくさそうな顔をしたものの、「しょうがないわね」と言ってペンを持つ
「いい? まず『魂術』とは何か?って所から、あんたに説明するわ」
アレスはコクンッと頷くと、ミーシャをじっと見つめる
「こっちの紙の方を見なさい! …いい? 私達の使う『ソウル』は、私達の『魂』で『細胞』を刺激…要するに、『細胞』は『魂』を元に『ソウル』を生成するの。 そしてその『ソウル』は、物体や肉体に纏わせたりして使用する… ここまでは大丈夫ね?」
「もちろんだ! ソウルは生命エネルギー…『魂』が弱いなら、ソウルも弱くなる! 常識だぜ!」
アレスは自信満々に言い放つ
「大丈夫そうね。 そのソウルはもちろん、『魂術』にも使われるわ。 だけど普通のソウルの生成とは違って、『属性』を持たせてソウルを生成するの」
アレスの顔が疑問に染まっていく
「『属性』?」
「そ。 普通のソウルはいわゆる『無属性』。 これに様々な『属性』と『形状』を持たせて放出すると、それが『魂術』になるの」
「『形状』?」
「例えば火の玉や風の弾…治癒の球に土の壁とか… 更に強くなると、水のレーザーや雷の剣、氷の鎧なんてのも発動させられる事もできるわ。 でも全員が全員、『魂術』を使える訳じゃないのよ?」
「…」
「細胞は細胞でも、特殊な細胞を持って産まれてくる人がいて、ソウルを生成しようとする際に『属性』を持たせて生成する細胞を持つ事があるの。 これは訓練とかでなんとかなるものじゃないけど、『無属性』のソウルも使い分けて生成できるから、ある意味1つの『才能』と言ってもいいわね。 属性は人によって決められてるけど、『形状』はある程度変えて放出する事ができるわ。 属性は『火』、『水』、『氷』、『土』、『風』、『雷』、『治癒』、『光』、『闇』…それと派生で色々あるけど、私も全部は覚えてないわ」
「……」
「つまり『魂術』は、ソウルを属性付きで生成して、形状を変化して体外へ放出する『技』って事ね。 ちなみに属性付きのソウルは体内に蓄積…つまり持ったままにしておく事ができないから、1回1回『練魂』っていう、属性付きソウルを生成して放出する形を決める作業をしなきゃいけないわ。 これは私の持っている『魂術魂石』でもやらなきゃいけない作業なの。 ちなみに、この『魂術魂石』が付いている手袋は『練魂籠手』っていう物の1つで、魂術の中でも、比較的威力が低くて練魂の早い『下位魂術』のみを発動できる『練魂籠手』なの。 『魂術魂石』は、そのランクによって『練魂』できる範囲が決まっているけど、細胞の『練魂』は鍛えれば鍛えるほど強力になっていくわ」
「………」
アレスは段々無表情になりながら、黙々とミーシャの説明を聞いていた
だが、そんな顔をするアレスをミーシャは無視して話せる訳がなかった
「…理解が追い付いてないみたいね… え~…と…まとめると
「大丈夫だよ。 『魂術』が特殊な細胞で生成した、属性付きソウルを形を変えて放出する技っていうのは理解できたし、そのソウルが常に溜めておけないから、『練魂』っていう生成と形状変化作業をしなきゃいけないのもわかった。 問題は、『魂術魂石』を俺も使えば、シードみたいに『練魂』して、武器に属性を纏わせて技を使えるのかなってこと… それはできるのか?」
「…」
ミーシャは口を半開きにし、唖然とした顔でアレスを見ていた
銃に関しての説明の理解は全然だったのに、魂術の事になると途端に理解が早くなるアレスに、ミーシャは驚きを隠せなかった
そんなミーシャに、シードは呆れた様子で話し掛ける
「…こいつ、戦闘やソウルの事はかなり理解が早いんだよ… まぁ、お前の代わりに俺が説明してやるよ」
そう言うと、シードはアレスの方を向き、先程のミーシャの説明の続きを語る
「まずさっきの質問に答える前に、1つ修正しなきゃいけない事がある。 俺の属性を纏わせる技は『練魂』をしない。 『練魂』ってのは、属性付きソウルと形状変化の放出を行う事だ。 つまり、属性付きソウルを生成するだけなら『練魂』をしなくてもいい。 だからこそ、本来なら時間のかかる練魂をせずに、一瞬で属性付きソウルを生成して技を発動させる事ができる。 俺は魂術が使えるようになりたい訳じゃねぇから、槍に纏わせる方が俺に合ってるし戦闘効率がいい。 2人で旅してんだから、アレスの後ろで呑気に練魂してる訳にもいかないしな。 俺はその一点を極めるために修行をしてきた。 それを踏まえた上でさっきの質問に答えると、出来るが薦めない… どういう意味かわかるか?」
アレスは少し考え、何か閃いた顔で答える
「そうか… 武器に属性を纏わせるのは練魂じゃないから、魂術を使った事がない俺でも多分できる… けど、シードは属性付きソウルを生成できるし、そのソウルを使いこなせるように修行をしてきた…ってことは、コントロールするのにも技術がいる… つまり、今の状態で魂術魂石を使って、属性付きソウルを生成して武器に纏わせても、それをまともに扱えないしそもそも纏わせる事もできないかもしれない… だからこそ今無理に使うぐらいなら、もっとソウルを扱う事と戦闘の技術を上げて、それから応用で使い始めた方がより効率が良いってことか…! だから出来るが薦めないってことだな!」
シードは軽く頷く
「ま、そうだな。 今の技術を向上させてから、新技術を身に付ける方がいい。 無理に覚えたての属性付きソウルで戦闘しても、足手まといになりそうだしな。 それなら、むしろ『獣心化』とかを極めた方がいい」
シードはそう言い終わると、ペンを持ち、紙に『作戦』と書き始めた
「…よし、んじゃ作戦を説明するぞ。 まず…ん? おいミーシャ、どうした?」
ソウル関係の事になるとこれほど理解が早くなるアレスに、ミーシャは呆気に取られていたままだった
だが、シードのかけた言葉でハッとして、現実に引き戻される
「え…あぁ… なんでもないわ… …そうね、あなたの考えている作戦を説明してちょうだい…」
シードは、ミーシャが正常になった事を確認すると、2人に自らが考案した『作戦』を説明し始めた―――
同日 午前11時14分 漁船港町『カリーチャ』酒場兼食堂
「…集まったか…?」
野太い声の男が、小さく声を出す
その男は、丸いテーブルに並べられた椅子の中央に、ドンッと構えて座っていた
その両脇には男2人座っており、その内の1人がその問いに答えた
「へいっ! 我ら『海族』一同、集まっていやす!」
そのテーブルを囲うように、総勢20人程の屈強な男達がズラッと並んでいた
服装はそれぞれバラバラだが1つだけ共通している所があり、体のどこかに、荒ぶる波の背景に剣と銃を交差したバツ印の上に、ドクロが書かれている何かの『マーク』の刺青があった
その刺青をいれた男達は、どうやら野太い声の主の指示を待っているようだ
「…よし… 後は…あいつが動き始めたら…だ…」
そして男はゆっくりと、テーブルに置かれた飲み物の入ったジョッキグラスを傾け、ゴクゴクッと飲みほす
プハァーッと声を出すと、突然酒場の扉が開く
そこには、テーブルを囲んでいる男達と同じ刺青をいれている男が、息を切らしながら入ってきた
「キャ…船長! あ…あいつが動き始めました!」
それを聞くと、野太い声の男が椅子から立ち上がり、酒場の扉へと歩き始めた
「ようやくか… お前ら…準備はいいな? 計画通りに行くぞ…!」
「「「イエッサー! キャプテン!!」」」
キャプテンと呼ばれる男に続き、屈強な男達も次々と扉から出ていく
―――港町の中を歩きどこかへと向かう最中、そのキャプテンという男は、ポケットから何か小さいペンダントを取り出した
そのペンダントには、写真が付いていた
若い男性とその隣に女性の老人、その手前に更に若い女性と中年男性が片足を立てながら座っている様子を撮った写真だった
それを男は見ながら、少し悲しみに染まった表情をした
「…『団長』… 俺は…あんたとは違う…」
やがてそのペンダントをしまうと、男は足早に歩いて行った




