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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
第三章 海族と幽霊船
23/90

『海族』青原ミーシャの過去と意志

外壁に植物のツタが這う、赤い屋根の家に入ったアレスとシード、そして青原ミーシャの3人は、漁船港町『カリーチャ』に突如として現れた『幽霊船』を排除するために、その作戦とお互いの事情を話し合おうとしていた

ミーシャは、まるでこの家に住んでいたかの様な手慣れた様子でリビングの照明を点け、コップと飲み物を出す

更に、ちょっとホコリっぽい机の上にペンと大きめの紙を広げ、話し合いを始めた

3人の居るこの家は外観こそ古びているものの、家の中は定期的に清掃されているようだった

ホコリを被っている場所は点々とあるが、人の手が全く加わって無いという訳でもない

天井に取り付けられた照明や、飲み物を取り出した『冷蔵魂機(れいぞうそうき)』も問題なく使用出来ているため、誰かが時折使用しているという事が予想できる

そしてその『誰が』という()()が、3人のいるリビングに置いてある

リビングは椅子が4つある机に、少し立派なカウンターキッチン、奥には旧型ではあるが『映像受信出力魂機―ティレィブ―』の乗った台があり、この椅子に座りながら映像受信出力魂機(ティレィブ)を見ていたのであろうと、第三者の目からでもその光景が浮かべれた

そんな机の隅に、()()が置いてあった

それは写真立てであった

写真立てに入っている写真…そこには、若い男性と、その隣にお年を召した女性が写っており、その2人の前に中腰になる10代前半に見える少女と、片足を立てながら座る中年男性の姿があった

写真が撮られた場所は、どうやらこの家の前のようだ

だがそれを疑いたくなる程、今とは比べ物にならないぐらいキレイな建物だった

植物のツタも無く、特徴的な赤い屋根は鮮やかな赤色だった

その写真に写る若い少女は見覚えがあった

だが、違うところもある…例えば―――

「改めて、自己紹介させてもらうわね。 私は青原(あおはら)ミーシャ、17才よ。 この周辺の海域を守る『海洋武装兵団』に所属しているわ」

そのミーシャという少女は、背丈はアレスよりも少し小さく、白い半袖のベストに青いボーダーラインの入ったTシャツ、大小様々なポケットの付いた丈夫そうなズボンを履き、長い水色の髪の毛を後ろで束ねてポニーテールにしていた

どうやらその水色の髪の毛は地毛ではないらしく、髪の根元が黒くなっているのが若干見えた

そんな彼女に、アレスは質問をぶつける

「『海洋武装兵団』って、なんだ? ていうか、ここってミーシャの家なのか? 親はいないのか? そんなにポケットばっかりで動きづらくない

「うるさ~~い! いっぺんにゴチャゴチャ言わないで!」

…当然の反応だった

そんなアレスに代わり、シードが静かに1つずつ質問する

「『海洋武装兵団』… 噂ぐらいは俺も聞いた事があるが…どんな組織なんだ?」

ミーシャはコホンッと小さく咳払いをし、自慢気に答える

「いい? 海洋武装兵団っていうのは、各『港町』に常駐する『騎士』みたいなものよ。 でも、騎士とは大きく違う所があるわ」

「わかった! 守る所が『海』か『陸』か、だろ!?」

その答えを聞いて、シードは片手で頭を抱え、ミーシャは呆れた顔で大きくため息を吐いた

「まあ…間違ってはいないけど…」

「悪ぃな… 見ての通り、頭が良くねぇんだ… 確か…『()()()()()()』…なんだよな?」

「ええ、その通りよ。 あなた達、この世界は大陸ごとに文化や法律が違うことぐらいは知っているわよね? でも、いくつか『全大陸共通項目』っていうものが定められているの。 その中に、海洋武装兵団に関する項目もあるの。 それが分かるかしら?」

アレスは頭上に?が出てくるんじゃないかと思うぐらい不思議そうな顔をしていたが、シードは何か思い出したような顔をした

「そう言えば思い出したぞ… 確か…『騎士以外の武装組織の存在を禁ずる』…ってやつだったか?」

「そう! だから私達は、本来なら存在してはいけないの… でも、私達は特別に、『()()()()()()()()()』非公式でも公式なの」

「??」

アレスはさらに?を増やす

「どういうことだ?」

さすがのシードであっても、分からないようだ

「海って、専門知識がかなり無いとまともに働くことが出来ないのよ。 船の操舵技術、航海知識、体力、魚の種類、遊泳技術とかとか… 陸地の町より、港町の方が圧倒的に少ないし、関わり合いもしないから、そういう騎士の専門組織を立ち上げてもあんまり意味が無いのよ。 ていうかむしろ、無駄って考えちゃうのよね」

「???」

アレスは相変わらず?が増える一方だった

「なるほどな… 海上専用組織を立ち上げるコスト…専門知識を持った教育者、教育施設、武装、船等の魂機(そうき)… それらを新しく配備するくらいなら、もうすでにある()()()()()()に戦闘許可を与えりゃ解決するってことか」

「そ。 だから『組織としては()()()』、でも『法律上は一応()()』… そういう扱いなのよ。 ま、少しは活動資金をもらっているし、文句は言えないんだけどね」

シードはこれで納得できた

が、ふと横を見ると、頭や口から煙が出そうなくらい理解が追い付かない様子のアレスがいた

「…まぁ、こいつはほかっとくとして… んで? ()()()()()()はお前でいいのか?」

予期せぬシードの言葉に、ミーシャは一瞬硬直してしまう

「…なんで分かったの? だって

「『()()()()()()()()』ってか? んなの、顔見りゃすぐ分かるだろ?」

アレスは今まで写真を見てなかったらしく、煙を出しそうな勢いを止め、写真を覗きこむ

「んん…? おっ! ほんとだ! これミーシャなのか! 髪が全然違うから分からなかったぞ!」

この写真に写る少女は()()()をしているが、アレスとシードが知る、()()()()のミーシャと酷似していた

更に、現在よりも長くは無いが、肩上まで生やした髪の毛を束ねてはいなかった

同じと言えば、現在と同じくポケットの多い丈夫そうなズボンを履いている所ぐらいだった

シードはヒョイッと写真立てを持ち上げミーシャに見せる様に、写真の中の若い男性を指差す

「恐らくだが…この男と隣の婆さん、もしくはお前とこの婆さんが、親子か孫の関係でこの家に住んでいた。 んでお前と、あの食堂で『キャプテン』とか言われてたこの座っているおっさんが、なぜか一緒に写ってる…ってことは逆算すりゃ、この若いやつが『海洋武装兵団』の()()()()()()()… 間違いねぇか?」

シードは自信たっぷりに笑顔で言う…が、ミーシャの様子がおかしい事に気づき、すぐに笑顔が心配顔になる

「お…おい? どうした…?」

ミーシャは泣いてこそいなかったが、とても悲しくてせつない…何か大切なものを失ったような…そんな表情をしていた

「わ…わりぃ… ちょっと自己中だったか…」

ミーシャはそう謝るシードに、少し笑みを向ける

「いいえ…大丈夫よ… ちょっと思い出しただけ… この人…『()()』と…おばあちゃんが一緒にいた…あの時間と場所の思い出を…」

シードはミーシャに、写真立てを手渡す

ミーシャがそれを受け取ると、シードは聞く

「その婆さん…お前の身内なのか?」

「いいえ… 私に両親はいないの… それに、私は『中央大陸』からここに来たの。 だからこの人は、私の本当のおばあちゃんじゃないわ…」

「ミーシャ、父さんと母さんいないのか!?」

アレスが驚いた顔で聞く

「ええ… 私は7年前、『中央大陸』からこの大陸に来た大陸間往来船に乗っていたわ。 そしてこの港町に到着寸前に、『海賊』に襲われたの… その時、私は船の上から海に落ちてしまったわ… 海賊は往来船の人達を次々襲って、最終的に海に落ちた私さえも襲おうとしたわ… でもそこに1つの船が来て、海賊を倒したの。 それが団長のいた、『海洋武装兵団』だったの。 私は団長に助けられて、そのあと団長のおばあちゃんの家に住ませてもらう事になったわ。 …だから、おばあちゃんは私の『家族』みたいな人なのよ…」

「…だが『中央大陸』に戻れば、親戚や祖父母の家に住む事も出来たんじゃないのか?」

「そうね…その選択肢もあったわ。 でも…」

ミーシャはゆっくりとした足取りで、壁際へと歩いていく

その壁の上の方には、何やらマークの書かれた旗が飾ってあった

マークは、荒ぶる波を背景に、剣と銃を交差したバツ印の上にドクロが描かれた、まるで『海賊旗』のようなものだった

それを見上げながら、ミーシャは話を続ける

「私は()()()の… 団長達みたいに、海の平和を守るその『()()()』に憧れちゃったの… 私を助けてくれた『優しさ』…海賊を倒すほどの『強さ』…そしてなにより、団長そのものの『生き様』に、私は憧れたの。 だから、私もそうなりたいって思って、『中央大陸』に戻らないでここに住むことを決めたの。 そして私は、憧れだった『海洋武装兵団』で、こうして活動しているの」

しみじみと語るミーシャに、アレスはふと疑問を感じる

「んん? でも、なんでその『団長』って人とばあちゃん、ここに居ないんだ?」

「亡くなったわ…」

そう静かに言うミーシャの言葉に、アレスは驚いた顔をした

「…そうか… この家は、その団長とばあちゃんの家なのか?」

「ええ… この家に、おばあちゃんと団長と私…3人で住んでいたわ… おばあちゃんは、4年前に亡くなったの… おばあちゃんが亡くなってしばらくは、団長と2人でこの家に住んでいたけど、団長が()()()()()()3年前に私はここじゃなくて、海洋武装兵団の拠点で住み始めたの。 …ここに住んでると、色々と思い出しちゃうから…」

「そうなんだ…」

アレスは気が付かなかったが、シードは違和感を覚え、()()を指摘する

「…()()()()()()って、どういう事だ? 戦死したとかじゃないのか?」

ミーシャは首を横に振り、話を続ける

「団長はね…()()になったの… でも治療法はおろか、病名すら分からない病気になって、誰にもどうする事も出来なかったの… 私達は必死に治療法を探したけど、3年前のある日…突然居なくなったの… たぶん団長は、自分の病気が誰かに移るかもしれないから、それを恐れて誰にも言わずに居なくなったんだと思うわ…」

「…」

アレスとシードは何も言わずに、ミーシャの話を聞き入る

「…でも私は悲しくないわ… 団長から受け継いだ『()()』と『()』が、私にはあるの… 団長が住んでいたこの港町と、海の『平和』と『秩序』を守る、強くて陽気な『ヒーロー』としての『意志』が…! この旗は、そんな団長がデザインした、私達が全員『家族』のような団結力を表す『()()()()』の旗なのよ」

「『()()』なんて、お前は一番嫌いなんじゃないのか?」

ミーシャはそれを聞くと、机の上にあるペンを急に持ち、同じく机の上にある紙に怒りながら何やら書き始めた

「そっちの『海賊(かいぞく)』じゃないわ! 『海』の『家族』と書いて『海族(かいぞく)』よ! 団長は、『海洋武装兵団』だと長いし親しみにくいって言って、私達の事を『海族』って呼ぶようにしたの。 略奪行為を笑いながらする、そっちの『海賊』と一緒にしないでほしいわ!」

シードは「そうか」と言いながら内心思った

(『海族』の方が『海賊』と口頭で間違えられやすそうだし、親しみにくいと思うが…それを言ったら、また自己中だの何だの思われそうだな…)

確実にそうなると思い、そっと口をつぐむ

一方アレスは、なぜか涙を流していた

「ミーシャ… そんな過去があったなんて… 俺、感動したよ! その団長って人の『意志』を、俺にも受け継がせてくれ!」

アレスはそう言いながら、手を差し出して握手を求める

ミーシャはその言葉と行動に、アレス同様感動で涙を流して握手に応じる

「ええ! この港町と海を守る団長の『意志』を、私達で継ぎましょう! 一緒にあの『幽霊船』を撃退して、この町を守るのよ!」

「ああ!」

(なんだコイツら…)

熱く握手を交わす2人に対し、シードはそのテンションについていけなかった

「…とにかく、その『幽霊船』をなんとかするためにも、()()()()をしなけりゃいけない… さっさと始めるぞ」

シードは机の上に広げられた紙に、『アレス』と『シード』と書き、その下にそれぞれ『刀』と『槍』と続けて書いた

「まず俺達の装備だが

「ちょっと待って」

説明を始めようとするシードの話をミーシャは遮り、スッと家の奥を指差す

「その前に、あなた達ずいぶん汚れているわね… 戦闘準備と汚れている理由を聞く前に、お風呂に入って来なさい。 『浄水魂機(じょうすいそうき)』は整備してないけど、『湯水流魂機(ゆすいりゅうそうき)』の整備はちゃんとしてあるから、汚れを落とすのには十分よ」

確かにアレス達は、昨日の夜馬車で移動して朝この町に到着した為、風呂どころかシャワーすらも浴びてはいなかった

だが、町の危機を一刻も早く解決しようとするアレスは、それを拒否する

「そんなの後でいいよ! 早く準備して

「いいから入って来なさい!」

ミーシャがズバッと言い放つと、シードは渋るアレスを引きずって風呂場へと向かう

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