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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
第三章 海族と幽霊船
22/90

港町を飲み込む不安

港町を太陽が照す

港町『カリーチャ』に到着したアレスとシードは、今一度自分達の荷物が何も無い事に気付かされた

このままでは旅どころか、宿屋にも泊まれず食事すらもままならない…

そんな彼らを見かねた、2人をここまで連れてきてくれた商人が、1泊分の宿代と今日1日分の食事代をまかなえる程のお金を恵んでくれた

2人はたっぷりとお礼をし、商品を仕入れなければいけないと言った商人と別れを告げ、朝食をとれる飲食店を探した

港町『カリーチャ』は面積でいえば農業の町『ハイトス』とほぼ同じといえる大きさだが、町の3分の1が漁船を停泊させる船着き場と、魚の荷揚げと売買を行う漁港で占めている

町全体に活気があり、海から吹くやさしい潮風が心地よい

建てられた家々もハイトスと同じく、切妻造りの屋根の家が建ち並ぶ

そんな港町の広間の一角に、美味しい魚料理を提供する酒場兼食堂が存在する

アレスとシードは、町を軽く見回りながらその食堂へと行き、商人がオススメする魚料理を朝食として食べながら、今後どうするか相談するのだった

「…うん! ウマイ! あのおじさんがオススメするのがわかる! …あぐっ…もぐっ…っぅん! ウマイ!」

その美味しさに感動しながらがっつくアレスに対し、まるで嫌いな野菜を目の前にする子供の様な顔をするシード

「…」

思わず手を止めてアレスは聞く

「…っんん? シード、食べないの?」

「…お前コレ…どう見ても『魚』じゃねぇだろ…?」

シードとアレスの前に出てきた魚料理セットだが、()を丸焼きにした物に海で採れた海草のスープ、何やら赤みがかった小さい物が混ぜられた、炒めたライス等が1セットになった朝食プレートが出されたのだが、

そこにある魚が少し変わっている

魚のヒレの部分が異様に長く、まるで()が生えた様な形をしていた

胴体そのものも、普通の魚の2倍ほど長い

そして頭には()が生えていた

「…こんなの見たことねぇぞ?」

「シード知らないのか? これは『シュリップ』って言って、なんか鎧みたいな殻がついていて火を通すとくの時に曲がる

「それは知ってる… これは食った事があるからな。 …そっちじゃ無くて、()()()の魚だ… 角と羽が生えた魚なんて見たことねぇぞ…」

シードは焼いた魚を指差した

「あ、それは『トビリュオ』って言う魚なんだって。 形が竜みたいな魚で、ここら辺でしか獲れない魚なんだ。 味は…なんだろう…こう…」

「わかったわかった… 味は美味い… そこら辺の白身魚よりも、濃厚でしっかりとした歯ごたえがある白身だが…見た目がどうもな… ていうか、『シュリップ』もその『トビリュオ』もなんで知ってるんだ? どっちも食った事ないだろ?」

シードはその魚を、美味いが食べる事に抵抗しつつも、つまみながらアレスに聞いた

「んむぅ? あぁ、朝あのおじさんに聞いたんだ。 『シュリップの焼きライスとトビリュオの丸焼きがウマイ』ってね!」

アレスはムシャムシャ食べながら答えた

ひとしきり食べた後、シードが今後の事について話し始めた

「んで、これからどうする?」

「うぅ~ん… どうしよう?」

「…一応考えがある。 金がねぇ以上船にも乗れねぇから、次の『中央大陸』に行く船に()()()()として雇わせてもらおう。 『雑用でも何でもやるから乗せてくれ』ってな。 …頼んでも乗せてくれるかわからねぇがな」

シードは水を飲み一息つく

「それいいかも! …でも無理かもしれないよソレ?」

アレスはおかわりした焼きライスを食べながら答えた

「? 何でだ?」

「だって船出てないからね」

シードは思わず、口に含んだ水を吐き出しかけてしまった

「!? どういう事だ!?」

「おじさんの話だと、なんかこの近くで『()()()』が来てるんだって。 それで漁船も客船もここ2日間ぐらい出てないらしいよ?」

「それ、いつ聞いたんだ?」

「朝、シードがまだ寝ぼけてた時かな?」

シードは丁度その時昨夜の事を思い出しており、アレスと商人の話を聞いていなかった

「あの時か…」

シードは呟きながら頭を抱える

もう海を渡る方法が無くなってしまった

船がその『幽霊船』のせいで出航しない以上、別の大陸に行く手段が無い

更に荷物も金も無い現状、旅どころか生活すらもままならない

「…どうすんだ…この状況…」

「おかわり!」

真剣に考えるシードに対し、朝から通算3杯目になるライスを食べるアレス

「…こうなったら、1回ハイトスの町まで戻って荷物を

「『ほっとけ』ってどういうことなの!?」

突然、ガヤガヤと賑わっている食堂に響く、女性の大きな声がシードの後ろから聞こえた

シードが振り返ると、アレスと同い年に見える少女が机を両手で叩いていた

その机には、大人の男性が3人同席していた

辺りを見渡すと、数人がその少女を振り返って見ていたが、直ぐに正面を向いて自分達の食事を再開する

シードもとりあえず、食事に夢中になっているアレスの方を向くが、その少女の会話が気になり、聞き耳をたてる

「騒がしいぞ、ミーシャ… 他の客に迷惑だろう…」

同席している男性の1人が、野太い声でその少女を叱る

「だって! ()()をほっとくなんて出来ないわ! アレのせいで、町のみんなが不安になってるの! 漁師のおじさんだって、港近くの海でしか漁が出来ないのよ!? 沖まで行けば、もっとたくさん魚が獲れるのに、アレのせいで沖まで行けないの! それをほっとけなんて

「ミーシャ! 船長(キャプテン)がほっとけって言ってるんだ… 素直に聞け…」

同席している2人目の男が、なだめるように小さな声で言う

「…っ! でも

「おいミーシャ! 船長(キャプテン)の命令が聞けねぇってのか!?」

3人目の男は、少し挑発じみた口調で少女に強く言う

「…」

反論する言葉が見つからないのか、少女はうつむいたまま椅子へと座る

「いいか? ミーシャ…」

()()()()()と呼ばれた野太い声の男が、傍らにある飲み物の入ったジョッキを飲みきり、それを机に置く

そしてフゥーッと息を吐くと、冷静な声で語り掛ける

「何も完全に放っておく訳じゃねぇ… アレはこの周囲の海域で目撃されてるが、いつも3~4日でアレは居なくなるらしい… そしてまた、どこかの海域に出没する… 明日でその3日目だ。 だから()()()()()()。 それでもアレが居るようなら、()()の出番だ… お前も、それは分かってくれるだろう?」

その男は、少女の顔を覗き込むように顔を近づける

「…」

少女は黙りながら、うつむいたままだった

近づけた顔を元に戻し、男は話を続ける

「それに…だ、アレは特に何も()()()()()だろ? 攻撃してくる訳でもない… 何か海に悪影響がある訳でもない… なら、何もしない方がいい。 不用意にアレに近づいて、万が一怪我人や死者が出るような事があった場合、お前…責任取れるのか?」

「取れない…わ… でも…」

少女はうつむいた顔を上げ、真剣な眼差しで男達に詰め寄る

「その為に… その為に()()()がいるんでしょ!? この町とこの海の『脅威』と『不安』を打ち倒して、『平和』を守り続ける… その為に私たちはいるの! 私たちがやらなきゃ、誰が『平和』を守るの!?」

そんな説得を聞くも、男達はあっけらかんとしている

「んなことはわかってら!」

「だが、お前は船長(キャプテン)じゃ無い…」

「お前1人の感情的な行動に、俺達が付き合う筋合いは無い… 船長(キャプテン)は俺だ… 『何もするな』。 …返事は?」

少女は唇を噛み締めながら、感情を必死で抑え返事をする

「…イエッサー… キャプテン…」

少女のそんな姿を見て、そのキャプテンは懐から鍵を取り出して机に置く

「…明日、アレに向かうかもしれん… 船の整備はしておく必要がある。 俺達の拠点の泊地(はくち)にある、『小型魂機船(こがたそうきせん)』の点検をしておけ。 その鍵で、泊地への扉を開けられる。 今日の夕方までには済ませておけよ」

少女は鍵を受け取る

「…わかったわ…」

少女は意気消沈のまま、鍵を持って店から出ていく

その様子を眺めながら、男達は呟く

「あいつ…何もしなけりゃいいけどなぁ…」

「ミーシャ1人じゃ…何も出来ないはず… そうですよね? 船長(キャプテン)…」

「確かにそうだ… だが…まぁ…あいつの気持ちも分かる… この町の活気がいつもより少ないことは、町を見れば直ぐ分かる… それだけ、アレに対する『不安』が大きいって事だ… そして、あそこまであいつを突き動かす原因は、あいつの中で()()の存在が大きいせいだろうな…」

そう言うと、男達は食事を再開した

「…」

シードはそれまでの話を後ろで聞きながら、熟考していた

「…アレス」

小さい声でアレスに喋りかける

「むぅん?」

焼きライスを頬張りながら、アレスは答える

「それ食ったら行くぞ。 ちょっと考えがある」

「んん!? …んぅん……わかった!」

アレスはまだボウルに残っている焼きライスを掻き込む

「…」

シードはその様子を見て、呆れた顔で質問する

「…アレス… それ、何杯目だ?」

「んん? 5杯目」



食堂を出た少女は広場を通り抜け、とある一軒の家の前に立っていた

何やら考え事をしながら、その家を見上げていた

その家は、周りにある家々と比べると古そうな雰囲気を出しており、外壁には植物のツタが這っていた

2階建てで赤い色の屋根が特徴の家だが、なぜだか人の気配がない

ここ数年、誰も暮らして居ないように見えた

そんな古めかしい家を眺め、少女は独り言を呟く

「どうして…? 正しい事をしちゃいけないの…? 『守りたい』って、その気持ちだけじゃいけないの…? どうしたらいいの…教えて…()()…」

少女は下を向き、目にうっすらと涙を浮かべる

「おい」

突然呼び掛けられ、涙ぐむその目をこすり、声のした方向を向く

すると、背中に槍を携えた青年と腰に刀をぶら下げた少年が、そこにいた

「誰!? あなた達…!?」

もちろん少女は警戒する

なんの心配も意味もなしに、涙ぐむ少女に『おい』と声をかける人物を、警戒しない方がおかしい

それを青年も感じとったのか、そそくさと会話を始める

「俺達は…あ~…まぁ、俺達の事は()()どうでもいい… それより、手を貸そうか?」

「え…」

少女の警戒心が緩み、代わりに疑問とほんの少しだけの()()が、少女の心を満たす

だが、少女は冷静に対応する

「…なんの事かしら? 悪いけど、あなた達みたいな子供でも十分怪しい人達に、協力するつもりは無いわ」

少女は彼らに背を向け、どこかに立ち去ろうとする

「『幽霊船』」

少女は足を止めてバッと振り向き、少し驚いた顔で青年達を見る

「…!」

「ま、そうだろうな… お前らの言ってた『アレ』ってのは、『幽霊船』ってので間違いなさそうだな」

青年は片腕を隣にいる少年の肩へと回し、半笑いで少女に語りかける

「俺達は今、金もやることも何もねぇ… だが、()()()()()()()()()()がある… その為に、この海を渡る必要がある。 だから()()()()ぜ? お前にとっても、俺達にとっても、プラスになる事だからな」

「…あんた、何を考えているの…? 目的は…一体何…?」

それでも少女は、決して『拒絶』しない

「俺が何を考えているか… 目的は… お前が『協力』するなら、話してやる」

質問の答えを『拒絶』されるが、少女が首を縦にさえ振れば、その答えが返ってくる、が…

「…っ! 私は…あんた達と協力しないわ… 私1人でも出来る…! 何も…困ってなんかいないんだから! だから…手なんか借りないわ…」

そんな容易に、怪しい2人の協力を許す自分はいなかった

「そうかい… んなら、俺達だけであの『幽霊船』を何とかしてみるか… お礼に、『中央大陸』まで船出してくれるかもしれねぇしな」

青年は、少年の肩に回した腕をほどき、スタスタとどこかに歩いて行こうとした

それを止めたのは、少女では無く()()だった

「なぁ… 俺、イマイチ状況がよくわからないんだけど…?」

青年は体を少年の方に向け、あまり気の乗らない感じで話し始めた

「そこの女が困ってんだけど、別に協力しなくていいって言ってんだよ。 だから、俺達だけでそれを解決してやろうって事さ」

「!? 別に困ってなんか

「そうなのか!?」

少年は少女の方に顔を向け、やさしく元気な表情で語りかけた

「お前、困ってることあるのか? なら、俺達に手伝わせてくれ! なんたって、俺はヒーローになるんだからな! ヒーローは、困っている人を見過ごすなんて事は絶対しないからな!」

「…!!」

少女は雷に打たれた様な顔をした

「あ! 俺、(あかつき)アレス! んで、こっちが白鷺(しらさぎ)シード! よろしくな!」

少女は目をつぶり、何か思い出した様な顔をし、やがて目と口を開いた

「…わかったわ… 私に協力して… 私と一緒に、あの『幽霊船』を何とかしてほしいの!」

必死の形相で協力を求める少女に対し、アレスは笑顔で答える

「もちろんだ! 任せろ! …んで、『幽霊船』って?」

少女はガクッと肩をおとす

「…知らないのね… まあいいわ… とりあえず、詳しい話しをしたいから、この家へ入りましょう?」

すると少女はポケットから、食堂で受け取った鍵とは違う鍵を取り出し、その古そうな家の鍵穴へと差し込み、ガチャリと鍵を開けた

()()()()()挑発すりゃ乗ってくると思ってたが、予想外に乗って来なかったな… もう少しで作戦失敗するところだった… まさにアレスに助けられたって感じだな… しかし、感情的なヤツには感情的なヤツをぶつけるのが正しいのかね…?)

その様子を少し遠目で見ていたシードは、そんなことを思いながら家へと歩いて行く

「あっ!」

何かを思い出したかのように、突然大きな声を出すアレス

その声に反応して、シードと少女は同時にアレスを見る

「そういえば、名前まだ聞いてなかったよな? 名前は?」

((そんなこと、大きな声で「あっ!」って言うことでも無いと思うけど…))

シードと少女は同時に思う

ふぅっ…とため息をつき、少女は両手を腰にあてて、アレスの方を向く

そして自慢気に自己紹介する

「私は『海洋武装兵団』団員、青原(あおはら)ミーシャ! 海の『平和』と『秩序』を守る、強くて陽気な『正義のヒーロー』よ!」



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