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「お…親分! 親分!!」

アレスと戦い逃げた山賊が、とある建物へと入って行く

その建物はサーカスのテントを小さくしたような建物であった

山の森の中へと溶け込む為か、緑色の布を主としたテント状の建物は、大きさは普通の一軒家の居間と同じほどであり、それほど大きくない

外観は質素だが、内装はしっかりとしている

茶色のカーペットが敷いてあり、壁は木の板で出来ているために頑丈そうな造りである

床にはナイフを始めとした武器類が散乱し、中には食糧や服が混じっていた

おそらく、商人や町人から奪い盗ったものだろう

そして奥に行くにつれて、食糧を食べた後のゴミが床に落ちているのが見える

そこに、『親分』と呼ばれる人物が居た

「親分! 大変です! 異常に強ぇガキ2人が襲って来たんです! 俺達もやられて、ラレッタ…さんもやられちまったんです!」

「…」

「お…親分…?」

ゆっくりと、『親分』は山賊の方を振り向いた

「おまえ…()()()()()()()()()…な?」

「へ…?」

「まぁ…別にガキ2人ぐらいなら…この2()()で十分だ… 問題はない…」

『親分』は、低く、何か()()のあるような声…そして、獣のうなり声に似た声色をしており、彼が恐らく『()()』では無い事を物語っていた

それは、彼の体の大きさからも見てとれた

建物の中が薄暗くて全体像は見えぬものの、その体の大きさはここに来た山賊の2~3倍程の大きさをしていた

「んん…そうだ… お前にその情報を持ってきた褒美をやらないとな…」

『親分』は何やらゴソゴソすると、1枚のコインを取り出した

「ほれぇ…受けとれ… まぁ…()()()()()()()()()()…」




「シード…あの建物…」

「あぁ…間違いねぇ… あそこに『親分』ってやつがいるはずだ」

アレスとシードは、山賊が逃げて行った建物を見つけた

木の陰に隠れながら、様子を伺う2人

だが、そんな状況にしびれを切らしたのか、アレスがスッと立ち上がる

「お…おい! もう少し慎重に

「いいや! 突撃あるのみだ!!」

アレスは刀を抜くと、刀を後方右下に向けて構えて走り出した

そんなアレスを止めるため、シードが木陰から出て叫ぶ

「ちょっと待

シードがそう言い出した途端、突然その建物のドアが勢い良く開いた

と同時に、()()()飛び出してきた

「「!?」」

アレスは走り出した足を止め、シードはその場に踏み留まる

2人は建物から飛び出してきた何かを見る

それは、()だった

先程アレス達が追いかけていた山賊が、建物から出てきたのだ

その山賊に2人は駆け寄る

「おい! 大丈夫か!?」

アレスが山賊を揺さぶりながら問いかける

「…」

返事が無い

どうやら気を失っているようだ

「シード… これって…何で吹っ飛んで来たんだ?」

「さぁな… 気になるが、今はほっとくぞ。 それよりも武器を構えろ。 ()()()…」

アレスとシードは建物に向けて身構える

(吹っ飛ばされた…? いや、それにしちゃ妙だ… 殴られた、投げられたなんて形跡が無い… ただ、()()()()()()()()()()()だ… それだけでこうなるか?)

シードは構えながらも、横目で山賊を見ながら考える

確かに飛ばされて来た山賊は、腹部に大きな衝撃を受けた様子が見られる

しかし、大きな何かを当てられたのではなく、小さな何かが当てられたような跡があるのが分かる

そしてその脇にあるコイン…

(これか…? いや、()()()か…?)

「シード!!」

もっとよく見ようとした矢先、アレスが叫ぶ

シードが正面を見ると、2人の男が建物から出てきた

2人共同じ背格好であり、身長はシードより少し高めで体格は一言で言えばがたいの大きい体格をしていた

服装も同じで、町中で見るような一般的な服装ではなく、動物の毛皮でできたノースリーブのベストを着ていた

ズボンはダボダボの、工事現場の人が履くようなズボンを履いていた

だが、手に持つ武器は違っていた

1人は馬鹿デカイ包丁のような武器を、そしてもう1人は刃が通常の2倍ほどある手投げ槍を持っていた

アレスとシードはソウルを軽く放出し、何時でも戦える体勢をとった

すると、2人の内の1人がアレス達に話し掛けてきた

「ふん…本当にガキだったとは… さすが親分だな」

「…そこをどけ… 俺達はその『親分』ってやつに用がある」

シードは槍を突き付け、建物の方に目線を向ける

「まぁ待て… 親分の前に、まず俺達と『()り会おう』じゃねぇか…」

槍を軽く振りながら、更に言葉を続ける

「俺はギノ… で、こっちの無口な方がゲノ。 俺達は親分の右腕と左腕として、親分に付き従っている」

そう言うと、その2人はソウルをアレス達と同様に放出した

が、その量はアレスとシードの2人分を足しても、ギノとゲノの1人分にも満たなかった

「…!!」

アレスは驚く

シードは逆に、予想していたのか平常心だった

()()()()()従うんだ… 親分がどんだけ強いか…分かるよな?」

アレスは刀を強く握り直し、真剣な面持ちで2人を見る

「ちょうどいいぜ…! 親分ってやつと戦う前に()()()()()()…! シード、俺の3年間の成果を見せ

「待った」

アレスの前に、槍を横に突き出して彼の言葉を遮る

「シード?」

「お前…さっきの戦いで少し疲れてるな? ソウルもそこそこ使ってまだ回復してないだろ? だからここは、俺がやる… お前はそこで()()でも食ってろ」

シードは道具袋から豆のようなものを取り出してアレスに渡した

アレスはそれを受け取ると苦い顔をした

魂薬(そうやく)…アレスが少し前に食べた回復薬で、一言で言えば不味い…だからアレスは、苦い顔をしている

「そいつはソウルの回復を主とした充魂薬(じゅうそうやく)だ。 食ってそこで待ってな」

シードがそう言うと、アレスは嫌そうな顔をしながらそれを口に含み噛んだ

その瞬間、失われたソウルが回復していく感覚がした…が、治癒魂薬と同様に全く旨くない

なんとも言えない顔をしているアレスを尻目に、シードはギノとゲノに質問する

「なんだ? 攻撃して来ないのか?」

「お友達との会話を遮って斬りかかるほど、悪者じゃ無いからな」

「へぇ… ずいぶんと優しいんだな…おい…」

「お友達との()()()()()だ… 邪魔しちゃ悪いだろ…?」

「…」

ギノは槍を何時でも投げられる体勢を取り、ゲノは包丁を持ちながら両手をぶら下げて、前屈みの脱力状態になる

しかしその状態でも隙が無く、2人はシードの攻撃に備えている

「ふっ…」

2人は疑問を感じる

…シードが軽く笑っているからだ

「おい…どうして笑ってんだ?」

質問せずにはいられなかった

明らかに自分よりも強く、それが2人もいる…そして、自ら望んだとはいえ2対1の状況…

それで笑えるということは、恐怖でおかしくなったか…

もしくは―――

「いや…悪いな… あんたら、自分達が強いと思うんだろ? 実際強ぇさ… そのソウルの量と質で簡単に分かる… でもな、俺はあんたらとは違って『覚悟』と『決意』がある。 何を犠牲にしても…何をしてでもな… 例えあんた達を」

シードは(まばた)きをしたその瞬間、雰囲気が変わる

人の命を何とも思っていない殺人鬼と同じく―――

『何の躊躇(ためら)いも無く人を殺せる』

―――そう思っており、それが実現できる『鬼』と同じだった

そんな雰囲気に変わったシードが言い放つ

()()()()()

刹那、ゲノが飛び掛かってきた

シードの発する冷徹で冷血な言葉に危険を感じたのか、包丁を大きく振りかぶり、シードに振り下ろす

シードも素早く槍を構える

しかし両手ではなく、()()()槍を持つ

そのまま力強く踏み込み、槍を突き出す

それは、ゲノがシードに斬りかかるよりも速かった

「『風刃(ふうじん)』」

突き出したその槍を、ゲノはまともに喰らってしまう

ゲノの腹部を直撃したその槍は、刃先にソウルの小さな竜巻が発生していた

まるで『風』を纏った『刃』…

風刃は、槍の刃先に風属性のソウルを纏わせ、それを突き刺して相手を大きく吹き飛ばす技である

それはゲノも例外ではない

ゲノは、槍が当たる瞬間に包丁を横にして腹で槍を防いだものの、その勢いまでは防げなかった

ゲノは後方へと吹っ飛ばされて、木に背中を強く打ち付けられる

そんな彼を、ギノは心配しない

いや、それよりも、ギノは()()()()()()()()

シードはそれを探さなかった

何処にいるか分かっているからだ

()()は、シードの真後ろ…槍を突き刺した瞬間に、ギノは高速でシードの背後へ移動していた

そして手投げ槍を振り上げる

―――だが、シードはそれよりも速かった

『風刃』により踏み込んだ足を軸に、前方へと小さく移動…手投げ槍の攻撃範囲から外れたその瞬間に、後方へと目線を向ける

「『烈旋(れっせん)』」

風刃を、まるで()()()()()様にシードの回りに風が吹き荒れる

その風と勢いに任せて、槍を大きく一周振り回す

その槍はギノへ当たる

もちろん、ギノはそれを防ぐ

振り下ろした手投げ槍を素早く戻し、振り回された槍の一撃を防ぐ

だが、ゲノと同様に、槍の勢いそのものは防げなかった

ギノも吹っ飛ばされたが、木ではなく、地面を擦るようにザザザァッと音を出して吹き飛ばされる

そんなギノを見もせず、シードは素早く体勢を整え、先程吹っ飛ばしたゲノの方へと走り出す

ゲノはそんなシードを迎え撃つ為に、打ち付けられた木の根元に座り込んでいた状態から素早く立ち上がり、武器を構える

やがて、シードは槍の攻撃範囲内にゲノを入れると、槍を両手で構える

「『牙連(がれん)』」

風刃ほどではないが、十分すぎる程の速さで槍を突く

無論、ゲノはそれを包丁で斬りつけ防ぐ

だがゲノは、己の目を疑った

まるで()()()()()()かの様に、突き出した槍をシードはもう構え直していた

そしてもう一度、槍を突き出す

ゲノはそれを防ぐ

…が、結果的に体勢が崩れてしまう

それはシードの突き出した槍が、初手とは違い、下段の方向へと攻撃してきたからだ

つまり、足下を狙って来た攻撃だった

それを予期してなかったゲノは慌てて包丁を振り防ぐ

だが、それによって若干前屈みの状態になってしまい、さらに武器を振って防いだ事も相まって、体勢が崩れてしまった

もう一度攻撃されたら確実に喰らう…

そうゲノが思ったのは自然な事だった

シードもまた、()()()()事はごく自然の事だった

ハッとした時、すでにシードは槍を構え直していた

やがてその槍を、今度は腹部目掛けて突き刺した

ゲノは避ける事も防ぐ事も出来ず、モロに喰らってしまう

ズジュッッ

鋭い刃が肉に刺さる音がした

「………!!」

寡黙なゲノは、苦悶の表情を浮かべてその場で震える

シードはゲノから槍を引き抜く

ゲノは刺された腹を手で押さえながら、膝から崩れ落ちる

「この…ガキィィッ!!」

シードの背後から、ギノが怒りの形相で襲い掛かってくる

クルッとギノの方向へシードが振り向くと、再び槍を構える

その時、槍の刃先に『風』が纏う

ギノはそれを確認すると、手投げ槍と体により一層ソウルを纏わせる

先程の『風刃』を警戒して、高速の突きを防げるように準備をする

「しっかり避けろよ…? ()()なりたく無かったらな…」

そうつぶやくシードは、槍を()()で構える

「『風牙連刃槍(ふうがれんじんそう)』」

風を纏った槍を、ギノへ向けて突き出す

当然それを、ギノは前屈みになりながら躱す

だが、ゲノの時と同じく、もうすでにシードは槍を構え直していた

今度は足下へと槍が突き出される

ギノは、いくら警戒していたとしても、シードのこの技を見るのも喰らうのも初めてだった

予期せぬ攻撃に、前屈みになったギノは自然と飛び跳ねてそれを回避する

その瞬間、それが間違った回避方法だと()()()()()()

三度、槍を構えているシード

そして、真っ直ぐに突き出される槍

それを、手投げ槍で防ぐギノ

しかし、風を纏った槍に手投げ槍が触れた瞬間、手投げ槍が弾かれ宙に舞った

ザグシュッッ

深々とギノの腹部に刺さる槍

風を纏ったその槍が刺さったことで、風の勢いで槍が抜けて、ギノが吹き飛ばされる

再び地面に倒れるギノ

…やがて、静寂が訪れる

「………」

アレスは唖然としていた

「シード…メチャクチャ強ぇな!」

唖然とするが、それよりも目を輝かせてシードの強さに感激する

「…フー…」

パチパチパチ…

「「!?」」

シードが一息ついた瞬間、建物内から拍手が聞こえた

アレスとシードは同時にその方向を向く

そこには、シードの体より約3倍程の体格をした()が立っていた

獣…という表現は決して正しくは無い

正しくは獣人である

だが、そう思わせるほどの威圧感と存在感…それが彼から感じられた

「お…親分…」

ギノが、震える声で呟く

「アイツがそうか…」

シードはギノの言葉で確信する

見た目はまるで相撲取りの様な佇まい

服はギノやゲノが着ているものと同じく、動物の毛皮で出来たノースリーブのベストを着ていたが、体に合わせてかなり大きめだった

ズボンは2人に比べて逆に短く、それも動物の毛皮で出来ていた

右手には、シードの身長と同じぐらいの大きさの斧が握られていた

左手には()()握られている

だが、服装や武器よりも、顔に注目がいってしまう

大きな牙を生やした、猪そのものだった

目が細くて、人を見下す様な目をしてシード達を見ている

顔も全身も体毛で覆われており、毛色は濃い茶色をしていた

「こんなガキにやられるとは… 最近のガキは強くなったようだな…」

低く、重みのある言葉でそう呟く

…シードはこの『親分』から、目を離さずにいた

ギノとゲノとは違う、()()()()()()を放つこの男に、警戒をしない訳がなかったからだ

すると、親分はゆっくりと話し掛けて来た

「そこの2人を負かすとはやるな… お前ら、下がれ」

ギノとゲノは一瞬ビクッとしたが、傷口を押さえながら直ぐにその指示に従って、建物へと退避していく

それを確認した後、親分が再び語りだす

「あの2人をあそこまで追い詰めた君には『褒美』をくれてやろう…」

すると、左手に握っていたものをシードに見せつけた

(あれは…)

それはコインだった

シードはそれに見覚えがあった

最初に建物から吹っ飛ばされてきた山賊の傍らに落ちていたコインと同じものだった

「まあ遠慮はいらん… 受け取ってくれ… ()()()()()()()()()な…」

シードは警戒心を最大にする

何をされるかわからない為、いつでも対応できるように構えた

ドグゥッッ

だが()()は、意図も容易く破られてしまう

「なぐっ……!?」

シードはわからなかった

これだけ警戒し、構えていたにもかかわらず、親分が投げたコインが一瞬で消え、反応出来ないほどの速度で自分にそれが当たった事がわからなかった

そして、まるで風刃を喰らったかのようにその勢いが凄まじく、シードは大きく後ろへ吹っ飛ばされてしまう

シードの腹部にめり込むようにコインが当たっただけで、親分は特別な事は何もしていない

ただ、コインを()()()()()()()()()()()()()()だった

「シードっ!?」

アレスはシードに何が起きたかわからなかった

だが、あの親分が何かをしたに違いない

アレスは親分に対して武器を構えて戦闘体勢をとる

「グッフッフ… おっと悪いな… 少し()()が強すぎたか…?」

親分は笑いながらアレスに向けて話し掛ける

「俺はボアボス・ブルブ… ここの山賊をまとめる親分だ… 有り難く思え… 俺が自ら…()()()()を…な」

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