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依頼

町へと歩く2人の少年、アレスとシードは、先程の戦闘について話していた

「アレス、ソウルの使い方はまあまあだったな。 剣さばきも悪くねぇ… 流石、英雄の息子だけあるな」

「シードも、あんなたくさんのエニグマを簡単に蹴散らすなんて、俺の知らない所でも鍛えてたんだな!」

お互いの力を把握し合い、3年間の努力を確認しつつ、アレスはシードに質問する

「そういえば、さっきのベルトのやつ… 何だアレ?」

アレスはシードが背に巻いた、小さな機械付ベルトを指差す

「コイツか? これは『ウェポンホルダー』って言って、柄の長い武器…槍や斧とか、そういったもんを背負う為の物だ。 武器の柄を小さな機械で挟んでいて、武器経由でソウルを流し込めばその拘束が緩む。 そうすれば簡単に取り外せるんだ。 …まあ、結構旧式のやつだから、持ってるやつは少ないけどな」

「へぇ… でも便利だな! 俺も欲しいな~…」

「お前は刀だから要らねぇだろ… さ、着いたぜ?」

2人が辿り着いた町は、アレス達が居た町の隣町で、町の周囲を根元が石で固定された、少し高めの木の柵で囲まれている小さな町である

中央の道は石で出来ており、そこから枝分かれした形で各家や店に道が続いている

そのメインストリートの入口、出口に逆U字型のゲートが建っており、この上にはこの町の名前『ハイトス』と書かれた看板が付いていた

この町に建つ家々は、木造の一般的な切妻(きりづま)造り(屋根が三角形の、家と言えばこの形みたいなやつ)の家が建ち並んでおり、その中で一軒だけ石造りの長屋の様な建物がある

その建物の上に旗が立っており、その旗には大きな盾と、その正面に交差する形で2本の剣、更にその盾の上下にライフルの様な銃とスパナが描かれており、その建物だけ町の中でも雰囲気が違っていた

「ふぅ…隣町とはいえ、歩くと中々の距離だったな…」

シードはゲートの下に立ち、一息ついた

「シード! これからどうする? 早速()()()()()()()!?」

アレスはウキウキしながらそう言い放つ

「絶対嫌だね… 少しは休ませろ…」

シードは疲れた様子で、1つの2階建ての家を指差す

「アレ見てみろ… あの家は、俺達みたいな旅人や冒険者の為の『宿屋』だ。 今日はあそこで休むとしよう」

「えぇ! もう寝るのか!?」

「当たり前だ… まだ午後の2時だが、朝からここまで歩いて来たんだ… 休める時に休んでおいた方がいい。 みんながお前みたいに、体力有りまくりの連中じゃ無いんだ…」

アレスはえーとかうーとか言いながらも、シードと共に宿屋へと向かった

向かう途中、アレスはシードに素朴な疑問を問いかける

「そういえば、この町をエニグマは襲わないのか?」

「正確に言えば襲う…が、そもそもエニグマが何なのか、お前は知ってるのか?」

「えーと… たしか、『100%体がソウルで出来た生命体』…だっけ?」

「お、お前にしちゃぁ珍しく正解だ。 体組織がソウルで出来ているエニグマには、人間で言う心臓みたいな『(コア)』がある。 この核からソウルが精製されて、エニグマは生きていける…だから別に、肉体全てがソウルで出来ている以上、食事を必要としない… つまり、人間を襲う必要は無い。 だからこそ、エニグマにとっては、人間は言わば『御馳走(ごちそう)』みたいなもんだ」

「襲う必要がない… でも、俺達は襲われたぞ?」

「自分達のテリトリーに『御馳走』が2つ歩いて来たら、襲わない訳がないだろ? そういった状況にならない限りは、エニグマは人を襲ったりしない。 それに、こういった町には大体『退魔魂石(たいまそうせき)』を使用した物が置いてあるからな」

「『退魔魂石(たいまそうせき)』?」

「読んで字のごとく、エニグマが嫌うソウルを放つ石だ。 …まぁ、魂石(そうせき)の説明は面倒だから今度な。 この町は回りを囲む木の柵の根元に、それを使ってるみたいだ。 ほら、着いたぞ」

そういった会話をしながら歩いていると、宿屋へと到着した

いかにも宿屋と言わんばかりのベッドのマークが書かれたドアを開けると、宿屋のカウンターに2人の男が立っていた

青色の服を着たその男達は、宿屋の女将に何やら言われている

「…ですから女将… そのような依頼は我々の所には届いておりません…」

「何言ってんだい!? 3ヶ月も前からずっと依頼を出してるんだよ!? この町のみ~んな、おんなじ依頼を出してるって言う話じゃないか!? いったい何時になったら解決してくれるんだい!?」

「そう言われましても… 依頼が無い以上、我々も動く事が出来ませんし…」

その後も女将がガミガミ2人の男に言い続け、アレス達には気付かない様子だった

「シード…依頼って?」

その間、アレスはシードに問いかける

「騎士っていうのは、こういう常駐する町とその周辺を警備する他に、町の人々からの困り事を受け付けるんだ。 それが『依頼』。 だが全部が全部、解決してくれる訳じゃない。 騎士の支部へ依頼書を提出して受理されれば動いてくれるんだが…」

「でもあの人達は知らないって言ってるけど…」

「あぁ… それはたぶん

ガチャッ

シードの言葉を遮って、後ろのドアが開いた

「少年達、失礼」

少し低い声で語り掛けた男は、身長はシードより若干高く、カイゼル髭を生やして紳士風の雰囲気を(かも)し出している

頭に帽子をかぶっており、着ている服と同じく青色である

アレス達がドアから少し横にずれて開けた道を歩き、男は女将の所へ向かった

「あら、支団長(しだんちょう)さんじゃないか!」

「「ニ…ニーズ支団長!!」」

ニーズと呼ばれたその男は、両腕を背に回し、女将に対して深々とお辞儀をした

そしてそのまま謝罪の言葉を述べた

「この2人の部下が女将さんに、大変無礼を働いた事を深く御詫び申し上げます…」

「ニーズ支団長…これは…その…」

「支団長さん、あたしゃその2人に怒ってるんじゃないんだよ。 あたしの出した依頼が全然解決されない事に不満があるだけさ。 それをこの店に寄った2人に言っただけだよ。 だから支団長さん、頭を上げとくれ…」

ニーズは頭を上げると、少しホッとした表情になった

「そうでしたか…それは失礼… では女将さん…貴女の依頼が解決されない理由をご説明しましょう」

ニーズは安堵の表情から、少し真面目な顔になり、言葉を続けた

「これは我々の沽券(こけん)に関わる為、あまり知られたく無かったのですが… 病院が無いこの町で病気や怪我をした人に部屋を用意して頂き、更に我々騎士の傷付いた兵士の療養にも使わせてもらっているこの宿の女将さんになら、その理由をご説明しても良いでしょう」

ニーズは小さく咳払いをした

「実は…女将さん以外にも、その依頼を私は承っているのですが… 恥ずかしながら、その依頼は我々では対処しきれないと判断致しました。 その依頼を解決しようと数人の騎士を派遣させましたが、逆に()()()()に遭いまして… そこで、他支部から応援を呼び、この依頼を解決して頂こうという結論に至りました。 よって現在、その応援を待っている最中でございます。 ですから女将さん、もう暫くお待ち頂けませんでしょうか?」

そう言い終わると、再びお辞儀をした

「なんだい…そうだったのかい… それならしょうがないね… 早めに解決しておくれよ!」

女将は少し笑いながら軽く手を振った

「申し訳ありません女将さん…直ぐに解決致しますので… お前達、支部に戻るぞ」

「「ハッ!!」」

2人の男は敬礼をすると、外に出ていくニーズに続いて宿屋から出て行った

「…」

アレスは少しボー…っとしてそれを眺めていた

するとシードが、先程の話の続きをする

「…依頼ってのは、各支部の支団長に直接届く。 今のニーズって支団長とかにな… んで、支団長がその依頼を支部の騎士に展開する。 優先度や、危険性…難易度などを定めてな。 今言ってた依頼は、この町の騎士の信頼に関わることだから、展開が無かったのかもな」

そうアレスに言ったシードに、女将が初めて気付いた

「あら…お客さんかい? ごめんねぇ…ちょっとゴタゴタしてて」

「いいえ、大丈夫ですよ。 それより、今日の宿泊についてですが

「ねぇ、さっきの依頼って何?」

シードの話を遮り、アレスが聞く

「お…おい!」

シードは、面倒事はこれ以上止めてくれと言わんばかりに、アレスの口を塞ぐ

「あぁ…『山賊』のことだねぇ?」

「『山賊』?」

女将の出した言葉に、2人は疑問を抱く

「最近ここいらで悪さをする奴らさ… 町に来る行商人や隣の港町に商売をしに行く人… 更には町の農作物にも手を出す迷惑な連中さ! 支団長さんはああ言ってるけど…被害も多いし、早く何とかしてくれないもんかねぇ…」

「ねぇねぇ! ソイツ、強いの?」

シードはその話を聞くのに夢中で、アレスの口を塞ぐのを忘れていた

「まぁ…強いんじゃないかい? 騎士の人達も何人かやられちまってるらしいからねぇ」

「どこにいるの?」

アレスは更に質問する

「この町の隣にある山の中に居るらしいけどねぇ… 詳しい事はあたしゃ知らないね… 町の人み~んな依頼を出してるから、詳しく知ってる人がいるかもしれないねぇ」

「シード、俺…この依頼、解決したい! この町を救うために…『ヒーロー』に近づくために! だから…協力してくれ!」

強く、熱く訴えるアレスに対し、シードはハァッ…と弱く、冷たい溜め息を吐く

「アレス…少し冷静になれ。 ヒーローになるためにこれは重要な事かもしれないが、騎士が何人もやられてんだ… 俺達じゃ力不足かもしれねぇ… 今は諦めろ」

そう言うと、自分とアレスの荷物を持って、女将の所へと向かった

「シード…」

ショボくれながらも、シードを何とか説得しようと考える最中、アレスはふと気付いた

(…ん? ()()? いつか解決するってことか? でも他の騎士がもうすぐ来るのに…? それとも、この依頼はほっとけって事…いや、シードはそんなやつじゃ無いけど…?)

そんな事を考えていると、シードと女将の会話が聞こえてきた

「女将さん…2人で、明日の朝まで宿泊お願いします」

「ほいよ! 部屋のカギ、渡しておくよ」

「ありがとうございます… 女将さん、申し訳ないですが、荷物をその部屋までお願い出来ませんか?」

「? どうしたんだい? どこかに出掛けるのかい?」

「えぇ… 料金も後払いで構いませんか? これから少し、『()()()()』に出掛けないといけませんから」

「「!?」」

アレスと宿屋の女将は驚いた様子だった

そしてシードは荷物を女将に預け、アレスの元に戻ると、呆れた顔でアレスに話しかけた

「…お前ならああ言うと思ったからな… そうなったら、何言っても無駄だからな。 だから言っただろ? ()()()()()ってな。 行くなら、準備万端にしてからだ」

アレスの顔に笑顔が戻ると、女将に元気良く手を振った

「おばさん! 俺達がこの『依頼』、必ず解決するからね!」

そう言うと、アレス達は勢い良く宿屋から出ていった

「だれが『おばさん』だぃ!? 『女将さん』と呼びな!」

そんな声をドアが閉まりながら聞き、2人は町に駆け出した

「まずは町の人達に聞き込みだ! 山賊の居場所、町の被害、被害者達の共通点等を聞き、奴らの目的、武装、この町に居る理由を調べるぞ! 情報は少しでも多いに越したことはない! 無策で戦っても、勝ち目は薄いからな!」

「わかった! これが、俺のヒーローへの第一歩だ! ぜったい、解決してみせる!!」

そして、2人は町の人々へ話を聞きに駆けて行った

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