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序章 ~旅立ち~

「だぁ~かぁ~らぁ~!! 何度言ったらわかるんだよ!」

ちょっと背の高めの少年が声を荒らげる

「わからないものはわからない!! もっと分かりやすく教えてくれ!」

もう1人の、ちょっと背の低めの少年も声を張り上げる

2人の少年は、少し多めの荷物を持ちながら歩いていた

歩きながら、どうやら勉強をしている最中らしい

「違う問題出してくれ! 次は絶対答えてみせる!」

そう意気込む少年の名は、暁 アレス

自らが志す『英雄(ヒーロー)』になるべく、世界を巡る旅をし始めた少年である

「何言ってんだ! これまで出したほとんどの問題間違えやがって! 答えも教えてやってんだ! さっきまでに出した問題もっかい出すから、ちゃんと答えろよ!?」

そう叱りつける少年の名は、白鷺 シード

アレスよりも1つ年上であり、アレスの友人である

彼がアレスと共に旅に出た理由は―――

「第15問! 『魂世紀(そうせいき)』とは!?」

「この星が出来て何年経ったか!」

「違う! この星に、()()()()()()()()()()()()()()何年経ったかだ! この星が出来たのなんざ知らん! 次!!」

問題を出しながらも、2人は歩みを止めない

「第16問! 月日…つまり、今日なら『皐月(さつき)』、『7ノ日(ななのひ)』だ! これ等は一体!?」

「春…の7回目の日!?」

「惜しい! 季節をそれぞれ3周期で区切って、その区切った季節をさらに28分割したものだ! 分かりにくいならカレンダーか()()()でも見てろ! 次行くぞ!!」

声を張り上げ問題を出しながらも、2人は歩き続ける

「第17問! 『魂日(そうび)』とは!?」

「わかりません!!」

「ハッキリ言うな! 昔の人は、月日を定めてなかった! だから毎日、何か1つの物の()()()()()()()()いた! それを7日間で1周期として定めて、繰り返していた! 太陽、月、炎、水、樹木、(かね)、大地の7つだ!」

「そんなこと知らなくても生きていけるよ!」

「身も蓋もない事を言うな! 仕方ない…一回原点に帰るぞ!」

…白熱する会話のせいか、何故か早歩きになる2人

「第1問! 『(ソウル)』とは!?」

「生命に宿る『魂の力』! または魂自体が放つ、『生命エネルギー』のようなもの!」

「なんでそれはわかるんだよ!」

シードは大きく溜め息をついた

「…まあ、今日から果てしない旅が始まるんだ… 焦って勉強しても仕方ないな… 徐々に覚えていきゃぁいい…」

シードは右手で頭を掻く

「勉強はしなくていいと思ってたのに… 父さんめ…」

「…トレスさんの言うことは当然のことだ… 勉強しなくて良いわけないだろ」

(…()()()()()()()()()()、不安しかないな…)


―――旅立ちの前日、夜―――


「えぇ!? シードも一緒に来るのか!?」

アレスは、家族で食卓を囲みながら驚いていた

「あぁ… お前が心配なのもあるけど、もっと別の理由だ」

シードは食事をしながら答える

「シード君、おかわりいるかしら?」

そう優しく声をかけた人物は、アリス・レッドテイル

アレスの母親だ

彼女はいわゆる、獣の力を宿した人間…つまり()()

だが獣の荒々しさは、その優しい声と、頭頂部と腰部に生える耳と尻尾程度の見た目からは、微塵も感じられない

「あ、すいません… いただきます」

「アレスが心配なのは分かるが…シード…君が一緒に行かなくても良いと思うぞ?」

ライスのおかわりをもらうシードにそう語りかけるのは、黒月 トレス

アレスの父親だ

彼は()()である

人間と獣人の間に生まれる子供には、名字を好きに決めて良いという法律があるため、アレスとは名字が違う

そして―――

「なにせアレスは俺の息子だ! 放っといても勝手に()()とやらになって帰ってくるさ!」

「父さん! 英雄じゃない! 『()()()()』だ!」

「どっちも一緒じゃねぇか?」

そう、彼は()()と呼ばれている

「確かに、トレスさんは昔の功績から英雄と呼ばれています… が、アレスは()()ヒーローではありません。 アレスがヒーローになるまで一番近くで守る… そして、ヒーローになったアレスを見てみたいんです」

「シードさん… お兄ちゃんのために…ありがとうございます…!」

そう礼を言う少女の名は、暁 アリア

アレスの妹である

「アリア、全てがアレスのためじゃないさ。 俺のためでもある。 強くなるためさ。 あの時、俺が強ければ、アリアにそんな怪我をさせることもなかったからな」

「ううん…シードさんのせいじゃありません… それに、少しだけなら歩けるようになったから…」

彼女は3年前、()()()()()()で怪我を負い、歩くことが出来なかった

リハビリと、ソウルの()()()()()()()()により、徐々に具合は良くなっていった

「それにお医者さんも、あの時のことがトラウマになっていて、精神的なものも関係してるって言ってたから、もう少しで良くなると思う…」

「…そうか。 それなら安心だな」

「シード、アレスと旅を本当にするんだな?」

トレスが再び確認する

「はい…俺も強くなりたいんです。 今日みたいに、アレスと一緒に修業もさせてもらい、こうして晩御飯もごちそうになったままの、お世話になりっぱなしじゃ申し訳ありません。 …必ずアレスをヒーローにさせてみせます…!」

シードは強い眼差しで、3人を見つめた

「…わかった。 んじゃ、アレスのことは頼んだ。 だが…」

「シード君? アレスのお勉強もお願いね?」

「え゛っ?」

「シードさん、お兄ちゃんすごくワガママだから、頑張って下さい!」

「えぇ゛っ?」

「シード、英雄は力だけじゃない。 『常識』ってやつを身につけさせないと、立派な『英雄』にはなれんぞ? 頼むぜ? シード君?」

「…任せて…下さい… なんとかしてみます…」

明らかにやる気が無くなったシードの肩に手を置き、アレスはにこやかに声をかける

「よろしくな! シード! 明日の朝、家の前に集合な!」

肩をガックリと落とすシード

だが、決意を固める

「いや… やってみせる… 弱さは克服しなきゃいけないんだ… 俺は、『弱さ』を『弱さ』のままにはしない。 それが白鷺シード(おれ)なんだ…!」

そうして食事を終えた後、自宅へと戻り、旅の支度を始めたのであった


―――そして、現在へ戻る―――


「不安だ… ていうか、不安しかねぇなコレ…」

再び大きな溜め息をつく

「あ!!」

突然、アレスが声をあげる

「な…なんだ!?」

アレスを見てみると、前方を指差している

「町が見えた! よーし! あの町にどっちが先に着くか競争だ!」

だが町が見えたと言っても、小高い丘に生えた木々の間からチラッとだけ見えている程度だった

「町って… まだまだ遠いじゃ

「行くぞぉぉぉぉ………!」

アレスはシードの話を聞きもせず、走って行ってしまった

「おぉい! ちょ…待てって!!」

シードも、アレスを追いかけて走り出す

(俺は必ず強くなる…! ()()()、アリアの一番近くに居たのに守れなかった… だからこの旅で強くなってみせる! そして…)

シードはポケットに手を入れ、何かの紙を取り出した

(アリアを診たという俺達の町の医者(オッサン)… このアリアのカルテでは、『トラウマ等による、()()()()()での歩行困難』らしいが… ()()()のアリアを治療した時…トレスさんとアリスさんは()()()知っていた… 恐らく、アリアの足が治らない事とその()()を知っていたはず… 知ってるからこそ…何も出来なかったからこそ…怪我が治ってもアリアは歩けないんだ… なら、俺が探す…! 俺が世界を巡り、アリアを治す方法を探しだしてみせる!)

シードは強く地面を蹴ると、アレスを追いかけてさらに速く走り出した

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