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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
序章 始まりのはじまり
12/90

決着、そして―

目の前で大切な家族を刺された―――

その一家の主ならば、当然()()()を殺したいほど憎むに違いない

そして()()()が目の前に居るならば、飛び掛かるのは至極当然―――

だが、そうするよりも前に、それ以上の()()()()()を持ち合わせた()()が居たのなら…

その父はどうするべきか?

その状況が今、正に再現されている―――





(この男…ルベル! 俺に攻撃するフリをして、今までで最速のスピードで後ろのアイツらを攻撃しやがった…! しかも…女のアリアを…! こいつ…絶体許さ

そう思いかけたその時、背後から上空にある巨大な黒い腕よりも大きなソウルを感じ、おもわず振り返る

すると、まともに動けないはずのアレスが、獣耳を生やし、大きな叫び声をあげながらこちらに突っ込んで来る

(アレス!? 獣人化なんてもう出来ないはず… !! あれは…)

よく見てみると、頭頂部に生えた獣耳は、およそ耳と呼べるような代物ではなく、ソウルで形どられた()()()()()()()であった

(まずい…! アレスのソウルが、怒りで不安定になり過ぎている…! 獣人化が中途半端に発動しちまって…! このままだと肉体も魂も壊れる!!)

「来いよぉぉ!! ガキぃぃ!!」

ルベルの声が、小屋の外まで響く

そして上空に浮かぶ巨大な腕が握り拳をつくり、小屋へと向きを変えて止まっている

(あれをアレスに落とすつもりか!?)

アレスは周りなど見えていない

ましてや上など、いくら巨大な物体であっても見るつもりはない

ただ、眼前の()()斬る―――

それしか考えていない

トレスも考えていた

()()()止めるかを―――

(上の黒い腕を止める… そうすれば小屋の破壊も、アレスを傷付けることもない…が、アレスをここで止めなければ、あいつの体がもたない! ソウルをまともに使ったのは恐らく今日が初めて…加えて獣人化も発動している… だからこそ、アレス止める必要がある…だけどヤツが居る限り、何も解決しない! アレスも腕も止めても、必ず腕以外の攻撃をしてくるはず… チクショウ! 八方塞がりだ…)

アレスか…黒い腕か…ルベルか…

そんな考えを巡らすトレスを、時間は待ってはくれない

どれを止める間も無く、黒い腕が振り下ろされた―――

(!! 腕…!?)

トレスはその腕を止めようとしなかった

何故なら、アレスがまだ小屋へと向かって来ている最中に、それも小屋の床を叩きつけるような動きをしたからだ

誰も傷付ける動きをしない腕を止める必要もない

その巨大な腕が小屋の床を強烈な一撃で殴りつけると、その衝撃で床や壁が破壊されていく

バキバキッッ!と大きな音を出し、まるで小屋そのものが潰されていくように感じていた

だが、その腕を操作するルベルは、窓側の壁にもたれ掛かったまま座りこみ、その場から動こうとしなかった

よって、トレスに選択の余地は無かった

小屋へと向かってくるアレスを、必死に止めようとした

「止まれ!アレス! それ以上体を酷使するな! お前が死んじまうぞ!」

既に小屋の入口、ドア付近まで来ていたアレスを力ずくで押さえ込む

「ガァァァッ!! アリアを…! 許さねぇッッ!!」

「…っっ! 落ち着けっ…!」

ビキビギッッ!………何かの『音』が周囲に轟き始めた

「っ…ヤバい! 小屋どころか…この崖ごと崩れるぞっ!」

その『音』は、この小屋が建つ切り立った崖が、崩れ落ちることを意味する音だった

「アレス! この小屋から急いで離れろ! めちゃくちゃ高ぇ訳じゃねぇが、落ちたらケガじゃすまねぇぞ!」

が、アレスはその声を聞かず、ただ暴れてルベルへと向かって行こうとしている

「ハハッ… そうさ… こんな状況だ…俺はどうやっても助からねぇ…」

床に打ち付けられた黒い腕が、徐々に崩れていく

「騎士に追い詰められて…逃げようも後ろには崖… 例え逃げ切れても、俺は一生犯罪者… 何より…『英雄』に対する恨みだとかそういったもんが…()()()()()もう残ってねぇ…」

「…」

トレスはアレスを押さえ込みながら、それが()()()()()()であるか理解してるらしい

「なぁ…トレス…」

不意に自分の名前を呼ばれ、トレスは少し驚いた様子だった

「親の話を聞かねぇなんて… お前…子供の教育がなってねぇんじゃねーのか? だから、俺が()()()()()()よ…」

(教育だと…!)

トレスは身構える…が…

「よく聞けェェェ!! クソガキィィィィ!!!」

突然の叫び声に、トレスはおろか、怒りで我を忘れ暴れていたアレスでさえも、動きを止める

「なん…」

「俺はァ! お前らに負けたわけじゃゃねェェ! 俺は()()()に負けたんだァ! だが! 俺は歳だけは負けちゃぁいねェ! だからお前らに俺がァ…()()()()()()()()()()()()()してやるよォォ!!」

…崩れ行く小屋と崖を、その体で感じながら更に語る

「お前らは『純粋』すぎるッ! 世の中を知れば、この世に蔓延する『不平等』と『不条理』に(けが)されるッ! 一度穢されればッ、()()()()()()()()()()()()()()() その末路が…今! お前らの目の前に居るだろうッ!?」

ルベルの言葉に力が入る…

「そして…! その『穢れ』をはね除ける力がッ、お前らには無いッ! 強ければ守りきれたッ! 強ければ勝つことができたッ! 『強さ』こそが『正義』ッ! 『弱さ』は『罪』にしかならないィ!」

ルベルの力説から、段々と力が失われていく―――

「だが…! お前らは『純粋』だ…! 『弱さ』を知っても…『穢れ』を知っても…お前らはただ真っ直ぐに進んで行けるッ… それが…他の何物にも代えがたい『強さ』になる… それだけは…何があっても失なっちゃぁならねぇ…」

ルベルは小さな笑みを浮かべる…

「お前らは俺みてぇにはなるな… 穢れを払い、弱さを克服し、力強くただ真っ直ぐに歩いていけ… そうすりゃぁ…俺のような『悪』には負けることはねぇさ…」

小屋が大地ごと揺れ、誰が見ても崖と共に崩れ落ちる寸前だった

「もう限界だアレス! これ以上ここに居たら! 俺達も落ちるぞ!」

トレスは、ルベルの言葉を聞き大人しくなったアレスを担ぎ上げ、小屋から離れようとする

「悪かった…」

唐突にルベルから発せられたその言葉で、トレスは足を止める

「お前の…あのアリアってヤツに… 『悪かった』って言っといてくれ…」

それを聞いた瞬間、ルベルの元へと駆け出した

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「アレス!?」

思わず手を伸ばすトレスだったが、届かなかった

走りながら、アレスはルベルへ言葉を叫びだす

「悪いと思ってんなら! あんたが! あんたが直接アリアに謝れ!! あんたはここで死なせない!」

そう言ってルベルの元へ行こうとするアレスを、黒い腕が数本、前と後ろから掴む

そしてグイィィッと引っ張られ、小屋の外へと放り出そうとする

「おいっ…!」

「俺を助ける必要なんかねぇさ… だってそうだろ?」

アレスが引っ張られるのと同時に、小屋と崖が崩れ落ちていく

その刹那―――

「『悪』は、最後には必ず滅びるから『悪』なんだぜ?」

―――そう言うと、ルベルは小屋と共に、崖下へと落ちていった










何も無くなった崖を呆然と眺めるアレスを、トレスが声をかける

「ほら、アリアの所へ行くぞ」

アレスは小さく頷いた

そしてゆっくりと立ち上がり、アリア達の所へと歩き始めた

2人がアリア達の所まで行くと、アリアは刺された左足を押さえながらうずくまっていた

シードは、そんなアリアを必死に手当てしている

「くそ…! 学校で軽くしか習ってねぇから… どうすりゃいいんだ…!?」

短剣を抜いてしまい、血が流れ出るのを止めるために、シードは自分の上着の袖を切り、傷口を縛る布として使っていた

止血はしたものの、当然痛みを抑える方法など現状無い

それは、他の2人も同様だった

「あぅぅ…っ! 痛いっっ…よ…!」

「トレスさん! アレス! なにか…何か方法は…!」

「アリア… 俺は…」

「アリア、シード、すまん… 俺はソウルを使っての治癒方法を知らない… とにかく、アリアをなるべく動かさないように、家まで運ぶぞ。そしたらアリスが

「ごめんなさい… 遅くなったわね…」

ふと森の中から優しい声がした

そこには、医療用具を携えるアリスが、少し息を切らしながら歩いてきた

「アリス…! 良かった… アリアを治してくれ!」

「アリアが…!? わかったわ… キズを見せて…」

傷口を押さえていた布を外し、アリスがそれを確認する

「…! これは…! …とりあえず、傷口を治療するわ」

アリスが目を閉じると、、アリスの周囲からソウルが沸き上がる

両手を前に出してアリアの傷口へ向けると、両手から出たソウルが、なにやら薄い緑色の球体へと集約して形取り、アリアの傷に向かってゆっくりと飛んでいく

それが当たったかと思うと、ポワワァ…っと温かい光を出して、()()()()()()()()ように球体が無くなっていく

すると、傷そのものは治りはしないものの、苦痛の表情を見せていたアリアの顔が少しばかり和らいだ

「…痛みが…」

「痛みが少し引いたでしょ? これは『治癒魂術(そうじゅつ)』っていうものなの。 でも、()()()()()()()()()()わ… あくまで痛みを抑えることと、自然治癒力を高めるだけ… あとは包帯を巻いて、自然に完治するのを待つだけよ。 縫う必要もないわ」

手際よく包帯を巻き終えると、少し重い口調でアリスが語る

「ただ…治ったとしても…もしかしたら、歩けるようになるまで()()()()()()()()しれないわ…」

「そうか…()()()()()()()()な…」

()()()()()()()かのように、軽く頷きながらトレスは答える

「おれが…」

アレスが小さく呟く

「俺が弱かったから… 俺が弱いから、アリアを守きれなくて…アリアがこんな目に…!」

「お…お兄ちゃんのせいじゃないよ!」

「そうだぜアレス! 俺もそうだ… 俺も、なんにも出来なかった…! まともに戦う事さえも出来なかった!」

少し涙ぐむアレスとシードに、トレスとアリスは優しく声をかける

「あなた達は悪く無いわ… 私には何があったのかわからないけど、あなた達みたいな子供に責任なんて存在しないわ」

「あぁ… 悪いのはアイツさ… それにお前らは弱くねぇぞ? 自分の魂を『強く』持てなかった、アイツの魂が一番『弱い』… 例え、どれだけ力が強くてもな」

「でも…勝てなかった…! 守れなかった…! 救うことが出来なかった…!!」

アレスは、トレスの服を掴み、詰め寄った

そして、泣きながらも必死に声を絞りだし、懇願した

「オレ… 俺、強くなりたい… もう…目の前で…()()()()()()()()()()()()なんて…思いたく無い! だから…だから! 頑張るから…! 何でもするから…! 俺を強くしてほしい…! 守りたいものを守れるように…救いたい人を救えるように… どんなに強い『悪』にも勝てる…『英雄(ヒーロー)』になる!!」

突然の訴えに対し、トレスは困惑していたが、アレスをなだめるように声をかける

「…それは…俺が英雄なんて呼ばれてるから、お前もそうなろうとしているのか…?」

「違うよ…父さん!」

アレスは力強く否定する

そして、『決意』をもって誓う

「誰かに言われて英雄(ヒーロー)になりたい訳じゃない! 俺は俺の『意思』で! 『英雄(ヒーロー)』になるって決めたんだ!!」

少年の小さな『誓い』は、大きな青空へと響き渡った―――

















―――――3年後―――――



魂世記(そうせいき)2022年―皐月(さつき)7ノ日(ななのひ)日魂日(にちそうび)…」

1人の少年が、家の前に立っていた

その少年の脇には、どこか()()()()()()()()()()()多くの荷物が、リュックサックに詰め込まれていた

「あれからちょうど3年… 俺も17になったんだ… もう昔のガキじゃない! 今日こそ俺は! 旅に出る!!」

少年は小さくガッツポーズをする

「お、気合い入ってるじゃねぇーか!」

そこへ、1人の背の高めの少年が合流する

その手には、先程の少年と同じように、多くの荷物を入れたであろうと見える、少し膨らんでしまったスーツケースを引いていた

「ん…? お前…それどうやって持って行くんだ…?」

「え…」

「そんなデケェもん、背負って行くつもりか? 引きずれるようにしねぇと、大変だぞ…」

「…大丈夫! …たぶん」

背の高めの少年が、小さく溜め息をつく

「まあ…お前の荷物だし、別にいいか…」

少年2人はそれぞれ荷物を持ち、家を背に歩き出した

「さぁ! 行くぞ! 今日から英雄(ヒーロー)を目指す俺達の! 世界を巡る旅が始まるんだ!!」

―――少年達は『決意』を胸に、朝日が照らす大地を歩いて行った









サークルワールド HERO ~一期一会編~ ―序章 完―

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