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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
序章 始まりのはじまり
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『英雄』として 『悪』として

「い…今のって…」

「あぁ…多分間違いねぇ… トレスさんだ…!」

小屋へと入って行く人影を見たアリアとシードは、辛うじてそれがトレスだと判明出来た

トレスは、上下黒の軍服のような服を着ていたが、柄等はなく無地である

まるで()()()()でもするかのような単色でシンプルな服であったが、おそらくこの服をシードやアレスが着ててもそう違和感はなかっただろう

だが、普段の父を知っているアレスにとって、この黒服を着ている父が、他の誰よりも()()()があると思っていたであろう

「アレス~! ずいぶん派手にやられてんな! まあ、初めての対人戦にしちゃぁよくやった方かな? お、獣人の力も目覚めてんじゃねぇか! お前はそっちの方が似合ってるぞ!」

…そう笑いながら普段と同じように喋りかける父が、こんな見慣れない真っ黒い服を着ていることに、違和感が無い方がおかしい

「と……とう…さ…」

腹部を強打されたアレスは、まだ上手く喋れなかった

「まだ無理に喋んなよ。 お前は頑張った。 あとは任せろ」

そう語る父が、その黒服にそぐわぬ雰囲気を出し始める

「さて、まずお前さんは何物だ? 名前と目的、そしてその理由を答えてもらおうか」

手にした剣の切っ先を向け、男に問い掛ける

「…それをわざわざ言う必要が、俺にあるのか?」

手にした短剣を構えて、アレスに問い掛ける

「ぶっちゃけねぇな。 …だが、()()()()()()()()()()()()()からな。 お前もそいつと同じなら、全力で()る必要があるからな」

殺気―――2つのそれが、この空間に漂い始める

やがて、男が口を開く

「…まあいいぜ…答えてやるよ。 俺の名は灰島ルベル。 元騎士だ。 目的はお前を…いや、()()を殺すことだ。 理由は復讐… 俺の人生は、()()()()()()()()()()()()()… だから殺す… お前も…その子供もな…」

ルベルと名乗ったその男の殺気が、より一層強くなった

「騎士―」

トレスが小さく呟く

「世界的驚異の存在である『エニグマ』と、世の中に蔓延る『犯罪者』に対しての抑止力的勢力… それが騎士であることは、元騎士のお前さんなら十分理解してるだろ? お前のやってることは、『犯罪者』となんら変わり無いぜ?」

「それがどうした? その『騎士』が、『英雄』という存在の前では塵に等しくなるほど霞んじまう… 騎士よりも英雄を()()は求める… 分かるか…? 近くにいる騎士よりも、名ばかりの何処にいるかさえもわからない英雄を求める奴等に、俺の存在価値は否定されたんだ… 例えそれが、同じ騎士仲間だろうとな…」

―ルベルの体から、先程アレスを襲った黒いソウルが漂う…

「だから殺す… ()()()()()()()()()()()()()()()()…」

―やがてそれが、先程アレスの腹部を強打した腕へと形を変え、数にしておよそ8個程空中に生成された

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を… 俺が創りあげる…!」

ルベルは、アレスの渾身の一撃を受け止める時と同等のソウルを放出し、戦闘態勢に入る

アレスは未だに動けなかった

体に受けたダメージと消耗しきった体力もそうだが、何よりこの男の放つあらゆる『気』により、圧倒されてしまったからだ

純粋なる殺気…強大な(ソウル)…激しい憎悪…

年端もいかぬ少年が、その大きすぎる感情とソウルを受け、まともにいられるはずが無かった

「…それがお前の『才能』か…?」

トレスは軽く質問する

「あぁ… いい『才能(センス)』だろ?」

ルベルは見せ付けるように答える

「確かに… ()()()便利だな」

トレスは左手を軽く上げると、その瞬間、トレスの周りにもルベルと同じような黒い腕が十数個現れた

「「!!」」

アレスとルベルは驚いていた

それと同時に、アレスの両手首に、空中に生成された十数個とは別の黒い腕が掴みかかった

「なっ………!」

さらに2本の腕がアレスの両脇腹を掴み、合計4つの腕で軽く拘束されたアレスは、空中へと浮かされた

「っ…!」

「まあ任せろって。 お前はアリア達とそこで待ってな」

じたばたと暴れるアレスだったが、4つどころか1つの腕さえも振りほどけずにいた

力が全然入らない様子だった

それを現すかのように、いつの間にか爪も頭の耳も無くなっていた

「獣人化の影響が出てるようだな? しばらくは自由に動けねぇっぽいな。 ほら、離れてろ」

アレスの体がグイィッと黒い腕に引っ張られ、ドアから小屋の外へと放り出される

投げ出されたアレスは、そのまま何も出来ずに地面に打ち付けられる

「痛ッ!」

「アレス!」

「お兄ちゃん!」

小屋の外に居た2人が駆け寄る

「大丈夫か!? アレス!」

「ぐうぅ… 父さん… もう少し…丁寧に…」

「…大丈夫そうだな」

「あぁ… でも…父さんの所に行かないと…! アイツを…」

「お兄ちゃん、あんまり動かないで…! きっとお父さんがあの人を倒してくれるから…」

「アリアの言うとおりだ… 俺も知らなかったが、トレスさんは『殲滅隊』だったんだな… それなら安心だ」

「「殲滅隊?」」

アレスとアリアは、同時に尋ねた

「騎士―正式名称、『王国騎士団』って言うんだが、その中でもエニグマと犯罪者(テロリスト)を専門に戦う特殊部隊がある。 それが『殲滅隊』。 あの黒い服は、その隊服だ。 …ていうか、なんでそれをお前ら知らないんだ?」

2人は英雄と呼ばれる父のことをあまり知らない

それは知らないのもあるが、()()()()()()()()()()()こともある

トレスやアリスに尋ねても軽くあしらわれてしまい、いつかトレスを追いかけてみたこともあったが、途中で撒かれてしまった

何故、教えてくれなかったのか?

『秘密』なのか…

『知られたくなかった』のか…

どちらにせよ、3人の疑問は、小屋の中から溢れ出る強大なソウルにより吹き飛ばされてしまった

「…! 父さん…!」

「お父さん…」

「トレスさん…」

3人はその戦いの行方を見守る

だが、決着がつくのに、そう時間はかからなかった

ルベルが出した腕が8個に対し、トレスが出した腕は数にしておよそ15個…

戦力差は誰が見ても明らかだった

それは、トレスと対峙するルベルが一番理解していた

「…英雄が…何だって言うんだ… お前に…俺のなにが… お前に…俺の()が… 分かるってんだよおおぉぉぉぉ!!!」

そう叫びながら8個の腕と共に、トレス目掛けて突っ込んでいく

トレスは、腕を腕で受け止めながら、ルベルが振り上げた短剣の軌道を見極め、振り下ろされたその瞬間、右手に持った剣が空を斬る―――

ガキイィィッン!!…と大きな金属音を辺りに響かせ、短剣が小屋の天井へと突き刺さる

ルベルが驚く間も無く、周囲に浮いていた黒い腕が散っていく

どうやらトレスの黒い腕が、ルベルの黒い腕を握り潰したらしく、残っている腕が少し大きくなっていた

そしてトレスが口を開く

「別に英雄になりたくてなった訳じゃねぇ… 俺はただ

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()倒して来ただけだ」

ルベルはよろよろと後退りし、窓側の壁まで来るとガクッと膝から崩れ落ちた

「俺にはお前の()はわからん。 だが、お前が『悪』ってことはわかる。 そして、俺の()()()()()()()()()()。 だから、お前はここで『殲滅』させてもらう」

切っ先をルベルへと向けながらそう告げると、トレスの体からソウルが溢れる

止めをさそうとしているのだ

それを感じとったルベルは、()()()()()

「!?」

予想外の反応に対し、咄嗟に剣を構えながら後退する

「ハハッ… ずいぶん甘ぇじゃぁねぇの… 平和ボケしまったのか!? 英雄さんよおぉぉぉ!!」

次の瞬間、小屋の屋根からバキバキバキッッ!!っと騒がしい音がした

トレスが見上げると、屋根自体が中央にむかってひしゃげていくのが見えた

まるで屋根そのものを()()()()()()()()()()()()()()で…

そこで何が起きているのかは、小屋の外にいた3人の目にはハッキリと映っていた

先程大量に生成されていた黒い腕の、何十倍にもした巨大な腕が、小屋の屋根を握り潰していた

「なんて大きさだ… あんなのくらったら、ケガどころの騒ぎじゃねぇぞ…!」

「もしかしてお父さんをあれで…」

「叩き潰すつもりなのか!?」

慌てる3人だったが、トレスは比較的冷静だった

(攻撃するつもりなら、屋根ごとすればいい… だが、ながら、屋根をひっぺがした理由は…?)

「『悪』は…」

ルベルは、小さく笑いながら語り出す

トレスが視線を上から正面に向けた時には、もう遅かった

小さな黒い腕が、天井に突き刺さっていた短剣を持ち、トレスの方に切っ先を向け浮いていた

トレスはすぐさま防御体勢に入ったが遅かった

()()がではない

()()()()()遅かった

()()()()()()を平気でするから『悪』なんだぜ?」

短剣を持った黒い腕が、目で追えないほどの速度でトレスの()()()()飛んでいく

やがてそれは、年端もいかぬ()()の左足の太ももへと突き刺さる―

「―――――ッッッぅああ!!」

声にならない叫びをあげ、少女は地面に倒れる

「「「アリアーーッッ!!!」」」

3人の男の声が響きわたる

―――アレスの中で、何かが弾けた





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