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作者: 藤堂 豪

 止めどない雨が降り頻る六月に私は生まれた。

 だから雨はいつも私の友達だ。


 辛い時、哀しい時はいつも雨が私の涙を流してくれる。曇り空から雨に変わる時、私はいつも考える。今迄の人生とこれからを………


 そして今迄の哀しい出来事が全てこの雨によって洗い流してくれると思い、降り頻る雨に感謝する。雨空には色々な表情があるようだ。普通、曇りになりやがて雨がザーと降るのが一般だがお天気雨なんてモノもあれば雪から雨に変わったりもする。更に日本は広い。私は思いっ切り降り頻るお天気雨、何てモノも見た。流石に驚いた。お天気雪も同じ地方、雪国で見た。それだけで積雪量が何十cmになる、なんて事も雪国では珍しくも何ともないらしい。上空の寒冷前線の影響かな?お天気雨が降ると私の住んでいる地方では必ず季節の変わり目だとそれでよく判る。理由は雷が落ちるから………これを擬人化してみると・・・色々な空想が出来て私は楽しい。例えば晴れた空、これは明るく笑っている、そんな事を思い浮かばせる。曇りは何だか沈んだ、陰鬱な気持ちになったり自分が虚しくなったりもする。だから雨は涙の粒。哀しみの涙、悔し涙などなど。


 じゃあ、お天気雨はどうなんだろう?強がりの涙なのかな?ずっと哀しみを抑えて抑えて抑えきれなくなった時、流す涙みたいだ。でも表面は笑っている。心は泣いている。いや、叫んでいる。そしてその裏には雷、という怒りのエネルギーをいつもじゃないだろうけれども、抱えている。その根本にあるのはやっぱり、哀しみなのだろうか?


 では、これがお天気雪だったら?


 凍り付いた心寒さに震えるような凍て付いた心、それを隠しても隠してもとうとう隠し切れなくて………そして雪を私達の頭に降り注がせる。しかしその凍て付いた心はやがて溶けて行く雪のように水になる。穏やかな心になる。まだ少し温かい地表面に落ちた瞬間だ。しかしそこに偶然でも雷が鳴ったら?怒りのエネルギーが熱となって?台風は感情全てを纏めて表現する凄まじいパワーなのかと思う。喜びも哀しみも怒りも陰鬱も愚痴も性欲も………私はヒネクレモノだからいつも台風直撃、なんてニュースを耳にするといつもウキウキしていた。全ての感情、エネルギー、雑念、ありとあらゆる諸々をこの台風が包み込んでどこか遠くに吹き飛ばしてくれるだろう、そんな期待を胸に込めて。そして頭上を通り過ぎる台風に向かって大きな声で叫ぶ。


「ウォー」


ただ、それだけ………


 本当には叫ばない、心の中で叫ぶだけ。



 台風の目もまたいい。ありとあらゆるエネルギーの中心にあるのは台風の目。そのエネルギーが静かにそして次に頭上に振り下ろす猛威を少し溜めながら、ゆっくりとわずかな静寂を与えてくれる。思えば日本人は何て平和な人種なのでしょう?台風が来ると一気に崩れる事もあるだろうに………そんな土地もあるだろうに、それでもこんな感傷的な事を考える輩が存在するのだから。



 でもやっぱり私が好きなのは雨。



 怒りや哀しみ、人間のある種、醜いとされる部分に込められた強い何かを私は愛している。それは強い怒りであり、憤りなのだ。その憤りを私は愛している。自分に対する戒めなのだ。その戒めの奥には必ず愛情がある。その愛情を私は一身に受け止めて、甘ったれた私自身を刺激する。するとほら、どうでしょう?私はその刺激に後押しされてまた、歩き出す。前を向いて。だから私は落雷と共に、生きて行きたいといつも心の中で叫んでいる。そして私は私に課せられた哀しい罪と怒りを心に抱えて、今日も笑っている。それが私の本当の姿であり私の生きる道であり深い私の………




 私にいつも何かを与えてくれる人からの愛情………


 それは深い、深過ぎる、愛情の戒めなのだ。 

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― 新着の感想 ―
[一言] 怒りや哀しみ、人間のある種、醜いとされる部分に込められた強い何かを私は愛している。それは強い怒りであり、憤りなのだ。 >とっても共感をおぼえました たけさんの小説には深い魂の叫びが聴こえてき…
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