71.70話なんてなかった・・・
前回のあらすじ
手に入れたトランプで大富豪、神経衰弱をした。
おわらない
続きを書いていたけど面倒になったので、全部ごみ箱に突っ込んでダイジェストでどーぞ。
まさか神経衰弱で暗記以外に頭を使うことになるとは思っていなかった。
あれからは何事も無く一勝したが、次からはミリアとトメさんが結託して俺の妨害に入った。結果的には、一号を使役していた時のような幽体離脱でのいろいろによりミリア達はなすすべ無く俺に敗北した。
「精霊の本気とかずるいよー」
俺の運が悪いかのようにすこーしずつ細工していたトメさんが何か言っている。トメさんのあの頭にいつも乗っているゴーグルで見るとカードが何故か透けて見えるのだ。……使っていたのはコンタクトレンズだったが。
俺がそれに気づいた時、トメさんは「不透過処理が甘いからいけないと思うのー」とか言われて、唖然とした。
まぁ不透過処理が甘いのは本当で、太陽に透かすと裏の模様の隙間から表側が見える。日本製が聞いて呆れますよ。あ、でも日本人が作ったかは分からないし、そもそも日本で作ってないから日本製ではないか。
「というか、先にズルした人に言われたくない」
「えー? なんのことだろー?」
白々しい。
「そもそもローが本気出したら勝てないって分かってるから、これくらいは大目に見るものですよ」
ミリアは俺に諭すように言い放った。
俺は反論する。
「いや、ズルしないで遊ぶのが普通だろ」
「ズルしなかったら勝てないじゃないですか。ね、メオ」
「え!? 私ズルしてナイわよ~」
突然話を振られたメオの目は泳ぎ回っている。
メオが何をしていたのかは分かっていないので、本当はやってなかったのかもしれない。反応的に有り得ないけど。
まぁそこはどうでもいい。
「そこまでして勝つことも無いだろって話だよ。遊びなんだからさ」
「確かに何か賭けたわけではないですけど、それでも勝利を目指さずしてどうするのですか。説明書に載っていた遊び方の範囲内で行動したまでです」
ミリアはそう言った。
ミリアの言っていることも分かる。遊びとはいえ、勝者を決めるのであれば勝利を狙うのは当然だ。しかし、ルールに書かれていないからと言ってイカサマをしてまで勝つのは違うだろう。
しかしなぁ、
「初めにズルをしてはいけないって決めなかったのがいけないってことかい」
「もしかしてローは手の動かし方まで決めて遊ぶつもりですか?」
「そこまでは言ってない……けど……」
俺が言っているのはそういうことかもしれないなぁ。
にしても、やっぱり価値観が違うよなぁ。そこまで勝ちに固執しなくてもいいのにな。もしかしたら、この世界じゃ負けたら死ぬ事も多いのかもしれないのが原因かもしれないけどさ。
うーん、負けたら死ぬって考えるとミリアが毎日やってる稽古や勉強も、何となく真面目だよなってバカにしてたけど、バカなのはこっちだったなって少し反省しておこう。
そんなことを考えていると、トメさんが左手でミリアの背中を引き寄せて、次に俺の背中を同じよう押した。
「ほーらー、喧嘩しないのー」
「トメ、喧嘩ってほどじゃない」
あんれま。何故か喧嘩認定されていた。そういえば、互いに少し語気が強かった気がするし傍からだと、そう見えるものかな。
俺個人としては、さっきまでの精霊モードのおかげでいたって冷静だ。ってことは、ミリアの方は案外むっとしていたのかもしれない。忘れてたけど、ミリアもまだ子供なんだよな。
ミリアは、こっちを見て何かを考えるような表情をすると、睨みなおして口を開いた。
「でも、ローに一言だけ言わせてもらいます」
「……何?」
そう言うと、ミリアはこちらを睨みつけたまま、
「次は勝ちます」
言い切ると、ミリアはトメさんの手をどけて座りなおした。
……それはまた負けず嫌いなことで。
俺がつらそうな顔をしてるようにでも見えたのか、トメさんは俺を解放したようですぐに「よーしよーし」と言って頭を撫でた。
「さて、まだ時間はあるからまた別なゲームをしたいわね」
メオは仕切りなおすようにそう言う。
なんだか少し焦っているかのようで、もしかしたら、メオも俺たちが喧嘩していると思ってやきもきしていたのだろうか。
「いいけど、一応ズルは禁止。バレたら問答無用で最下位扱いで」
そう言うと、メオは顔を逸らし他二人はニコニコと笑うだけなのを見て、俺はディーラーに徹することにしようと心に決めた。
茜色が世界を満たす帰り道。途中でメオと別れると、ミリアは不満そうにつぶやいた。
「結局ローは勝ち逃げして終わりでしたね」
ミリアの肩で楽をしている俺は反論する。
「大富豪では負け越して終わってるからそれと相殺で」
「ローをカモっている間は楽しかったですね」
「それ、こっちは全く楽しくないんだが。いじめダメ絶対」
相変わらずSな奴だ。人をいじめて嬉しそうにするのやめれ。
「いじめじゃないですよ。できる方法で、敗北を押し付けているだけです」
「いじめっ子はそうやって、いつもいじめじゃないと言い訳をするんだよ」
宿題忘れた時とかは「言い訳良くない」とか言うのに、いじめっ子の言い訳はすぐ信用するから教師も嫌い。何がいじめられる側にも悪いところがあるだよ。そういうのは関係を対等に戻してから言えってんだ。
「ローは子供のくせに『言い訳』なんて言葉使うんですね。そんなだとダメな大人……大人には成らないから大丈夫ですね」
何がダメで大丈夫なのか分からない。
そういえば、子供の頃はこっちの説明を全て「言い訳」で一蹴されて悲しかったものだ。ミリアにもその経験があるってことか。
「子供じゃない。生まれた時から大人だよ」
そう、大人になってすぐ死んで、そして今の俺が生まれた。
「ふふ、精霊はずるいですね。それじゃあ、既にダメな精霊でしたね」
ダメな精霊……意味合いは違うけど、俺はダメ人間、もといダメ精霊な自覚はある。
「精霊として仕事してないからな」
「そういうことなら、ローはダメダメ精霊です」
「ダメ」が一つ増えた。
「増やすなよ」
「『言い訳』なんて言わなければダメ精霊に戻れますよ」
「うーん、じゃあもう言わないようにするよ」
「おめでとうございまーす。これでローはダメダメダメ精霊です」
「増えるんだ!?」
「出来もしないことを『出来る』って言うのはダメな大人ですからね」
どうやら、ミリアは俺が「言い訳」と言う言葉を使うと予言してしまったようだ。
「……そうかい」
俺はそう呟いて、意識を空に向ける。
空には、黒と赤のコントラストが描かれていた。
待っていた方、遅くなってさーせん。……待ってた……よね?
あのまま書いてたら、飽きてこのシリーズ投げ出していたので、今回のは延命措置です。
それにしても一か月って早いね。次回からは例によって毎日投稿……日付変わってるから今日からか。




