69.運が無いのは運命?
前回のあらすじ
行商人がトランプを売っていた。
おわり!
「何故だぁーー!」
「残念でしたね」
俺はトランプを投げ出してベッドに倒れる。
買ってすぐのミリアの休みにメオの家で現在トランプパーティが行われている。今は大富豪だ。初めてなので、カード渡しも含めて特別ルールは無しである。
正面で相対するミリアは勝ち誇った笑みでこちらを見下ろしている。
「次はきっと勝てるよ」
右側にいるメオが一応フォローしてくれたが、これで十連敗だ。最初三回は二位三位だったけど、もう今日はダメだって。
「ミリアは強いねー。最後に残っても絶対負けないんだからー」
そう言ったのは俺の左にいるハーフエルフ女子のトメさん。村の鍛冶屋の娘なのは分かったが、何故かいつも頭にゴーグルをつけている不思議系女子だ。トメさんはミリア達より二つ年上の17である。年上らしく、おしとやかな人で、かと思えば突然ぶつぶつ独り言を言い出すという不思議ちゃんたる所以をしっかりと持っている。
もはや懐かしいレベルになったミリアによる人見知り荒療治の時にはいなかったらしい。
「ローにヒントを上げますよ」
「何?」
「――記憶力」
あっ、こいつ天才だったわ。勝てるわけねぇや。
「ローが何も考えずにやってるだけでしょう」
あーしかも割と人の心が読めるんだった。俺に対しては精度ほぼ100%で。
……って、大富豪は手札次第だし、読心術関係ねぇじゃん。
「そう思ってるから負けるんですよ」
初めて一時間くらいで、もう熟練者みたいな顔してやがる。
三人以上のパーティゲームは慣れてないとはいえ、ミリアどころか他の初心者二人に負けるなんてな。
ああ、ミリアに勝てるゲームが思いつかない。……寝よ。
「あ、ローがいじけちゃいました」
いじけてないよ。ちょっと休憩するだけだし。
目を閉じようとしたら、左にいたトメさんが「よーしよーし」と言って撫でてきた。
さすがにそこまで子ども扱いされるのは癪だったので、スッと体を起こす。
それを見たメオが「起きた」と呟く。
「神経衰弱なら運ゲーだから勝てるはずだ」
今更ながら気づいたのでそう発言する。
「どんな遊びですかー?」
メオは「かーど」の箱の中の取説を取り出し、眺める。
「ちょっと待ってね。神経衰弱……あ、これか。……つまり、裏返しになった同じ数のカードを当てる遊びね」
メオはその後、そこに書いてある詳しい説明をしていく。
と言っても、二枚裏返して違う数字なら元に戻して次の人に。記号に関係なく同じ数字を引いたらもう一回引けるっていう、いたってシンプルなものだ。
「それならローでも勝てますね」
「出たカードを暗記していけばいいだけなのねー」
ミリアとトメさんはそう言った。
これなら一勝くらいはできるはずだ。
「何故だぁーー!」
「残念でしたね」
「絶望的に運がないわね」
「よーしよーし」
おかしいぞ。万が一の為に後ろを向いてカードをシャッフルしてたから、ポンポン当たりを取られることは無かった。だが、せっかく覚えたカードが俺の番が回ってくる前に取られたり、俺の番で上手く引けなかったりして、毎回0~3セットしか取れない。
俺の運はどこに?
「一応聞くけど、何かズルしてたりしないよね?」
ミリアもトメさんも何故かニコニコしていて、メオは露骨に目を逸らした。
「してるのかよ!」
いくら負け込んでても初心者がいきなりイカサマをするなんて誰が思うか。
しかし、イカサマをしてると言うのなら俺もやるしかない。とは言っても、プロがやるようなイカサマはやり方を知らないし、精霊モードで使えるような透視を使ってしまうのもヌルゲー過ぎて意味がない。
……いや、まずは一勝する為、そんなことは言わずに本気で行かせてもらおうじゃないか。
「せいぜい頑張ってください」
心を読んだであろうミリアが、自信有り気に微笑んでそう言った。
ま、まさかブラフだよね?
しかし、ミリアは微笑を崩さず何も言わずであった。
前回までと同様に、俺がカードを集めて後ろを向いてシャッフルする。それとなくカードの裏に細工が無いか見てみたが、何か有るようには見えない。
シャッフルを終えて、適当にカードを並べていく。
順番は前回の勝者から時計回りにしているのでミリア、メオ、俺、トメさんの順である。
今更だがカードはスペードなどの記号の代わりに、†(剣)、●(金貨)、■(盾)、▲(魔法)で、色は剣と金貨が黒。盾と魔法が赤だ。絵柄は1~10まで普通に記号がいっぱい並んでいるだけだが、J、Q、Kは騎士、姫、王と書かれており、イラストがそれぞれ記号ごとに描き分けられている。
因みに、余談だがそのイラストがよく見る象徴的な絵柄じゃなくて萌え系イラストなのは作者の趣味なのだろう。
さて、勝負である。
ミリアは近くの二枚を適当に裏返す。
「剣の3と4。惜しいような惜しくないような」
「やっぱり、当たらなくては意味が無いわよね」
さっきまでもこんなやり取りがあったけど、今は白々しく見えて来てしまう。
続くメオは●8と■騎士だ。
トメさんには悪いが、とりあえず出たカードはすべて取ってしまおう。適当に透視してって、全部見つけてから、近くの▲4とミリアの見つけた†4を取る。
「良かったねー」
と、トメさんはニコニコとしながら言っているが、ミリアと違って俺がどんなイカサマをしてるか知らないから口に出たのであろう。
次に†8と●8を取り、続けて●騎士、■騎士と裏返した――
「――あれ?」
「ロー、覚え間違えましたか?」
ミリアはそう聞いてくる。
俺は二枚目に■騎士を裏返したはずだったのだが、そこに書いてあったのは■姫だった。
……手元が狂ったのだろうか?
実際、隣のカードは■騎士のようだ。うーん、特に魔法を使われた様子も無いし、やっぱり取り間違えただけだろう。
「でも、いきなり二組ゲットだなんて、幸先良いわね」
とりあえず、メオには頷き返しておいた。イカサマの腕も含めて褒めているのだろう。
「この騎士は有り難くもらっておきますねー。えーと、どれにしようかなー。……うーん、こんなものだよねー」
続くトメさんは●騎士と■騎士を取り、そして新たに●7と†10をめくる。
ミリアの番になると、
「ここが3ですね」
そう言って、当然のように俺の近くにある▲3を取る。……多分さっき俺がマークしてた所為だな。
続けて真ん中あたりのカードを引くと、ちょうど■姫を引いたので、●姫と合わせて取られた。更に、強運なことに†騎士と▲騎士まで引き当ててみんなを驚かせているが、俺としては苦々しい思いだ。
最終的に新たに■6と†1を引いて残念そうな顔になり、メオの番となった。
「このままミリアが全部ひいちゃうかと思ったわよ。……やったわ、▲の7よ」
そんなことを言っていたが、後半の言葉は少し棒読みだった。メオはよく観察するとイカサマをした瞬間が分かるようだ。
まぁどうイカサマをしたのか分からないので意味がないのだが。
そして、メオが新たに▲王と●3をめくって俺の番だ。
久しぶりに続きます。
大分ミスってるので、早速修正入りやした。数学もそうだけど、こういうミスって何でやってるときは気付かないんすかね。




