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精霊生活に安息を  作者: 鮭ライス
ハーフエルフ達と日常
73/80

67.大事なのは見た目じゃなくても、見た目は大事

前回のあらすじ

 自分ルールの戦いに敗北した。

おわり!


 更に暫く経ったある日の事。休みで暇しているミリアと一緒に散歩に出ていた。


「で、今日は何するんだ?」


 ミリアに尋ねる。出る前には教えてくれなかったので二回目だ。


「すぐに分かりますよ」


 またか。なんか嫌な予感がする。前に大量のガキッズを連れて来た時もこんな感じじゃなかったっけ? 違うか?


「大丈夫ですよ。今日はメオだけです」


 不安な心中を読み取ったのか、ミリアが俺の疑問に答えた。


「本当だと良いがな」


 それから十分ほどで、ある家の庭の中に入っていく。そこにあるのは、この村では何の変哲もないログハウス風建築の一軒家。


「もしかして、ここ、メオの家か?」


「そうですよ」


 たまに近くを歩いていたけど、全然知らなかった。

 入口の扉の前まで行くと、ミリアはノックをしてメオを呼ぶと、


「ごめんなさい。中に入ってていいから、もう少し待ってて」


 そう返ってきた。

 遠慮なくお邪魔させてもらおう。




 メオがなかなか来ないので、ミリアにハーフエルフ伝統の「いっせーの」みたいな手だけでできるゲームを教えてもらいながら遊んでいると、数分経って漸くメオはやってきた。


「ごめんなさい。準備に手間取ってしまったわ」


 しかし、その見た目はいつもとは違った。メオは時々ロリータ服を着て出歩いているが、それともまた違った服装だったのだ。

 全体のイメージとしては女剣士って感じだ。具体的に言うと、金属の額当てに肘まで覆うグローブ、ノースリーブのぴっちりした服の上に皮のよろい、そして、ミニスカートとロングブーツだ。

 一言で言い直すなら「可愛い」がいいだろう。


「どうかしら? 似合ってる?」


 メオはくるっと一回転して全体を見せてくれた。


「似合ってるよ」

「可愛い」


 俺とミリアは立て続けにそう言った。


「あ、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいわ」


 そのはにかみ顔もナイスだ。普段見ない顔だから尚更ポイント高い。


「二人の分もちゃんと有るわよ」


「ありがとう」


 ……え? どういうこと?


「それじゃあ行きましょうか」


 どこにですか、メオさん?


 両脇をメオとミリアでがっしりと抑えられる。


「ミリアさん、足が浮いてるんですが?」


「そうですね。持ち上げていますから」


 そうですね、じゃないよね?


「大丈夫だよ。逃げなければ、痛くしないから」


 メオさんや、それ大丈夫じゃないやつだよね?


 こうして抵抗の無駄を悟った俺は、どこへともなくさらわれていったのであった。




 鏡に映る緑髪の幼女の姿を見る。


 ……すっごくひらひらしてます。


 露出の少ない子供向けな赤色のドレス。布量が無駄に多いのにそんなに重くはない。しかし、折角の褐色肌がもったいない気もする。

 ゲームのアバターを着飾ってる気分だ。ゲームと違って着るのが面倒だが。


「うーん、やっぱりローは白系の色が似あうと思う」


 ミリアも同意見のようだ。


「えー、これもすっごく可愛いわよ」


 褐色キャラは露出多いほうが映えると思うので、こういった服はギャップ狙いで使う感じで。……ギャップ狙いって誰が得すんだよ。ゲームじゃないから俺は得しねぇよ。fpsでキャラ着飾っても見えないんだよ。


「やっぱ止めない?」


「ダメよ。まだ二着目じゃない」


 メオはそう言っているが、やっぱり自分が可愛くなっても意味が無いんだよな。……まぁちょっと楽しくなってはいたけどさ。


「じゃあ次はこれね」


 そう言って手渡してきたのは、ミリアの意見を尊重したのか白を基調に緑や黄色の糸で飾られた洋服。


「なあ。どこに行っても白っぽい服ばっかなのに、何でここはこんなにカラフルな服があるんだ?」


「からふる……?」


「ああ、色彩豊かってこと」


「ふむふむ、えーとね。ここの服のほとんどがお母さんが作ったのよ。私もちょっとだけ手伝ったのもあるけどね」


 作ったのか、なるほど。


「このデキなら、高く売れたりしないのか?」


「売ることもあるよ。でも普通の人にとっては特別なときに着るための服になるから、高すぎてあまり買われないんだけど」


 ほうほう。冠婚葬祭で使う感じかな。


「あれ? でも何で染めるだけで普段使えなくなるほど高くなるんだ?」


「えっと、安い布は魔製亜麻ませいあまの糸を使ってて、“浄化”を使うと色が落ちるのよ」


 ……つまり、どういうことだってばよ。


「ロー、顔がアホみたいになってますよ」


 アホとは失礼な。ちゃんと考えればいいんでしょ。


「その何とかって糸の布じゃなければ色が落ちないけど、その代わりに値段が高いってことか?」


「そうそう」


 メオは頷いた。すると、ミリアが口を開く。


「補足すると、魔製亜麻は雑草みたいにどこでも生えるんですよ。だから、どこでも簡単にたくさん作れるので、値段が安くなるんです。それに比べて、普通の亜麻や綿は手間暇が掛かるので、値段が高くなってしまうんです」


 ああ。「ませいあま」って「魔製の亜麻」ってことか。分かんねえから魔製亜麻マジックリネンとでも言えよ。この世界の人達はそっちのが分からないのだろうけども。

 一人で納得しつつ、もう一つ疑問になったことを口にする。


「それで、その魔製亜麻と普通の亜麻って何が違うんだ?」


「さっきメオが言ったように、魔製亜麻の布に色が付きにくい、つまり汚れにくい以外がほとんど一緒です。見た目は全然違うそうですけどね。詳しくは図鑑でも見てください」


「へぇ、安価で汚れにくいって凄いな」


「私に言わせれば、色が付かないから意味ないけどね」


 メオは少し怒ったように言った。

 ゆっくり話を聞きながら着替えて、漸く着れた白い洋服を指して言う。


「ちなみにこれは何でできてるんだ?」


「それは綿だよ。亜麻は高いからね」


 そこは、日本と一緒っすね。






 出された例の茶色いお茶を飲み、ふーっと一息つく。

 一通り用意された服を着ると後で完成品をあげると言われ、今はいつものサマードレス風の服だ。


 俺の後にミリアの着せ替えタイムもあって、ミリアの普段見れないスカート系の恰好が見れて俺も満足です。聞くと、以前見たパジャマもメオの母作らしい。

 ――メオ母グッジョブ。


 実は今日は、冒険者として旅をするようになった時に、地味な服で出歩くことに懲りたメオが動きやすくかわいい服を作ろうとしたのが発端らしい。そのついでに俺たちの分も作ったんだと。

 今の女剣士みたいな服はその試作品だそうだ。


「その服、防御面はどうなの?」


「うっ……」


 どうやら、未完成のようだ。

遅れた言い訳とか今更いらんよね。

そういう事で明日から毎日投稿です(察して)

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