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精霊生活に安息を  作者: 鮭ライス
ハーフエルフ達と日常
70/80

64.新しい一日

前回のあらすじ

 エルフの里及び漁村への遠征を終え、無事ハーフエルフの村へと帰還した。

おわり!


「ロー、仕事ですよ」


「え?」


 ある日の夕方。俺は魔法の練習にも飽きてきてしまい、早めに事実上の自室へと帰ってきた。すると、今日も今日とて飽きずに稽古に行っていたミリアが、普段よりも少し早く帰ってきたかと思ったらこれだった。

 し、仕事だと……?


「はい、仕事です」


 精一杯嫌そうな顔を作っておく。


「そんな顔しても無駄です。これは決定事項です」


「マジか」


 そこでミリアは、フッとカッコつけるように笑った。


「もちろんタダで働けってことじゃないですよ。仕事をするなら、この部屋と食事を三食、それと偶に欲しいものを上げるっていう報酬付きです」


 ちなみにだが、エルフの里へ遠征に行った帰りにシチューを食べて以来、俺は食事をとっていない。不要だから問題は無かったが、食べたくないわけではないのだ。

 しかし――


「仕事はしないって言ったら?」


「報酬が全没収です。逆算してみるといいですよ」


 逆算? 逆に考えろってことか。

 報酬は部屋と三食と欲しいものだろ……?


「……部屋が消える?」


 ミリアはにっこりと笑った。


 俺の安眠の地が奪われるだとォ……。


「まあ、寝なければいいだけですよ。精霊なら簡単なことです」


 くっそぅ。ミリアの鬼! 悪魔!


「それで? どうするんですか?」


 あ、やっべ。目が笑ってない。怒った?


「謹んで働かせていただきます」


 腰を九十度近く曲げて、お願い申し上げた。





 次の日から、日の出とともに叩き起こされるようになった。叩かれてはいないけど。

 ついでに、最近の生活スタイルを説明しよう。


 仕事は畑の手伝いだ。

 朝は収穫を手伝ってご近所さんと物々交換を見守る。

 どの作物も育てられる期間は新鮮なものが食べられるように期間をずらして植えているらしい。そんなこと出来るんっすね。


 その後朝食を食べたら、雑草をつぶして地面と混ぜ混ぜ。害虫をつぶして地面と混ぜ混ぜ。選定したまだ小さい実や葉を地面に混ぜ混ぜ。最後に、混ぜた物を腐葉土に変えるために土、というか微生物を活性化させる魔法を使って終わり。

 ……混ぜすぎだろ。農業の知識はないから善し悪しが分からんけど。


 これで俺の仕事は四、五時間くらいである。この後に、収穫され過ぎたものを漬物なんかの保存食として加工するらしいが、俺はそこまでやらなくていいと言われた。

 稀に雨が全然降らないときは水をやるが、基本的にはあげなくていいらしい。初めて知った。ルー○ファクトリーだったら毎日水あげてたのに。


 言うだけなら簡単だが、この動作を一気にやる魔法なんてないから、混ぜて活性化させる以外はすべて手作業である。小さい体のお陰で、腰が痛くならないのが幸いである。




「おわったぁ」


 俺はそう言って、木陰へ大の字に寝転がる。

 一応、髪は邪魔にならないように頭の上で二つ御団子になっている。毎朝ミリアがランダムに決めて縛っている。貴重なミリアの女子力です。


「お疲れさま」


 ムルアは隣に腰かけて俺の頭を撫でた。魔法で綺麗になっているから、髪に土が付いたりはしない。

 浄化魔法は爪の間の土を落としてくれる。痒い所に手が届く親切設計だ。


 ムルアはどう見てもミリアの姉くらいにしか見えないが、これでも母親なのだ。改めてハーフエルフすげーなって思った。


 暫くされるがままになっていると、顔や腕をつんつんし始めたので体を起こして逃げる。

 それを見て、ムルアはフフッと笑った。そして、立ち上がって言った。


「私は行きますね。また明日もよろしくね」


 それに手を振って応えると、俺は心地よい疲労感の中、ゆっくりと意識を落としていった。





 目が覚めると、黒犬のランが俺の顔を舐めていた。

 おかげで、夢の中で触手プレイが味わえました。全く嬉しく御座いません。


「おはよう。お前なんで外にいるんだ?」


 ランは家の中で飼っている。自由に村の中を出歩かせていたら、他の住民が驚いてしまうからである。ミリアと一緒に散歩していることがあるので、そろそろ大丈夫な気もする。

 話しかけたものの、当然返答は返ってこない。


 とりあえず、家にランを連れ帰ることにした。


「おいで」


 首輪やリードはないけど、なぜかランは人の言葉を解しているので、言う事を聞いたり、意図的に聞かなかったりする。

 ついてきたのを確認して家のドアを開ける。


「ただいまー」


 俺が言ったのと同時に、ランは俺の横をすり抜け、キッチンのムルアのもとへ向かった。


「おかえりなさい。ちゃんと起こしてきてくれたわね」


 そういう事だったらしい。


 ムルアは近くの木箱から例の白いアレを皿に乗せ、ランに渡した。上手そうに食っているから好きなのだろう。もちろん、クリオネもどきの事である。

 食事を自由に食べられるようになったので聞いてみたら、名前はトリムシって言うらしい。鶏肉みたいな川の虫でトリムシ。分かりやすくてなかなかいい名前だと思います。


「ローちゃん。お昼の用意するから手伝ってくれる?」


 いや、俺が仕事するわけない。だから当然――


「へい」


 ――手伝った。






 午後はダラダラするか、勉強するか、魔法や武器の練習するか、ランとじゃれるかのどれかだ。

 勉強してるって言っても、ガリルかムルアに文字を教えてもらってるだけだ。まだ、漢字に相当する文字がさっぱりなので、難しい本は雰囲気でしか読めない。

 時々ランポさんの家で簡単な本を教えてもらって読んだりすることもあるけど、絵本なんてないからあんまり読めてない。


 魔法の練習は漁村で見たアリルの魔法を再現しようとしたり、新たな必殺技の再現魔法を作ってみたりとかその程度だ。……オリジナリティのかけらも無いな。

 武器については、たまにランベルトが暇そうにしてる時に教わっている。前とは違い、自分の体を使ってるので大体すぐ面倒になる。県の必殺技を使えるようにするって事くらいしか目標が無いので仕方がない。俺は悪くねぇ。


 今日は午前中寝ていたので、魔法の練習をしよう。折角だし、ランも連れていくか。

 丸くなっているランに話しかける。


「ラン。まt……練習相手になってくれないか?」


 ――ぷいっ。


 無視された。的って言いかけたのが悪かったか。仕方がないから、一人で行った。


 そんなこんなで一日が終わる。

 五日に一回くらいの頻度でミリアの稽古が休みになるから、その時はミリアに引き連れられて遊ばれたりするけどな。


最近、毎日投稿だときつっす。

ってことで二日に一回にします。そんでも今年中に話終わるかな?

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