63.ほとんどエピローグ
前回のあらすじ
模擬戦が終わり、ハルトによる稽古をしている間寝ていたら、おんぶされて帰る途中だった。
おわり!
今回、展開がめっさ早いです。あっさり終わります。
そうして暫くの間、ハルトにおんぶされていて今更ながら気が付いた。よく見たらラリとアリルがいない。
ハルトに聞くと、
「ああ、二人なら僕たちが泊まってる宿に帰ったよ。アリルも少し休んだから大丈夫だって言ってたし、それならって、寝てる精霊s……あっ!」
「ん?」
「すみません。いつの間にかため口で……」
何だ、そんな事か。
「まぁいいんじゃない?」
「そうですか。そういえば精霊様も、前と違う話し方ですよね」
うっ。いや、あれは緊張してたからだけど、そのまま言うのもな。
「ほ、ほら、森から出て自由になったし、好きにしようかなって。だから、ハルトも別に好きに話しかけていいんだぞ」
「なるほど」
「え、じゃあ私もいいかしら?」
メオが話に割り込んできた。既にため口な件。
「あぁうん。別に敬語で話せと言った覚えもないけど」
「ありがとー」
そう言ってメオはニコッと笑った。直視できない眩しさ。
逸らした視線の先で、ミリアがこちらを見ていた。
「……ミリアも、好きにしていいぞ」
ミリアは少し考えて言った。
「では、今まで通りでいいです。その方がかえって楽ですから」
まぁどうせミリアの丁寧語は全くもってこちら敬っていないから、話し方が変わろうが変わらなかろうがどっちでも同じことだ。
「あだっ」
そんなことを考えたからか、反転してこちらに近づいてきたミリアにデコピンをもらってしまった。
昨日も見た宿屋に着いた。
「じゃあ下ろしますよ」
ハルトはそう言って、腰をかがめる。俺の足が地面に着いたので、肩に回していた手をほどいてハルトの背中から降りる。
そうだ、一応お礼くらいは言っておこう。
「どーもっした」
「いえいえ」
そう言って頭ポンポンされた。そういうのを自然にやってくるのはムカつくな。
俺はハルトが触った頭頂部を埃を払うようにはたくと、ハルトの乾いた笑い声が耳に入った。
その後、ハルトは「またね」と軽く手を振ってきた道を引き返していくのを見送り、三人で宿に入った。
そして、適当にお昼を食べて、午後は帰ってきたランベルトと稽古をすると言って再び空き地にやってきた。いや、午前中もやったじゃん。
俺も最近は魔法の練習をしていなかったから、別なところに飛んで行って練習しておいた。ついでに言うと、アリルの魔法を見て触発されたり、インスピレーションがいい感じに降りてきたので。
そして、適当に寝て起きて、出発の時。宿を出ると、ハルトたちが見送りに来ていた。
「今度、ハーフエルフの村にも遊びに行きますよ」
と、ハルト。
「また、お会い、しましょう」
と、アリル。そして、その肩から顔だけを出して何も言わないラリ。
こちらも別れの挨拶をして村を出た。入った時と違って、村には木の柵しかないから、大通り(大きいとは言っていない)から一応おいてある簡素な門を出て、西に向かって歩き出した。
もちろん俺は精霊モードなので歩いてなんぞいないがな。
申し訳程度に踏み固められた道中は時折魔物が襲い掛かってきた。聞いていた通り、出てくるのはネズミだとか虫っぽいやつだったり、走り回ってる鳥っぽいやつとか、そこまで大きくない魔物だ。
そのため、今度はランベルトが様子見しつつ、ミリアとメオが交代で魔物を倒していった。
一匹、体高が90センチはある大き目のネズミを倒した時は、数枚の金貨を吐き出してきて驚いた。
これがリアルドロップってやつっすね。きめぇ。
いつもは魔物をそのまま埋めて来てしまうので、解体していればこうやって金貨が手に入ることが稀にあるそうだ。光物を集める魔物や何でもとりあえず食べる魔物限定の話だ。
……だからって金貨食うなよ。
その後についでにと話していたランベルトの実体験によると、大きなカラスの魔物が大量の宝石や貴金属を抱えていることがあって、ぼろ儲け出来たらしい。
「だけど巣なんて、そうそう見つかるもんじゃねぇからな」
そっすか。
ということで、お昼過ぎには村に戻ってきた。
えーと、何日ぶりだっけ? ひい、ふう……六日かな。
意外と短いんだな。長く感じたのは徹夜があったからだろうか。
出た時と違って正面の門に来たので、ランベルトが門番に声をかけて開けてもらい、村の中に入った。
「やっと着いたわね」
メオが呟いた。
「メオは初めて旅だもんな。今日は無理せずやすむといいさ。俺はランポのとこに行って進捗と運良く得られた情報を報告してくる」
ランベルトはそう言って、村の中心近くにあるランポさんの家に向かった。
「メオ、行こ」
「はい」
ミリアはメオを連れて、歩き出した。
「ローは先に帰ってますか?」
どうしようか。
「じゃ、少し散歩に言ってくる」
「そうですか」
ミリアはそれしか言わなかったが。
「いってらっしゃい」
メオはそう言って手を振ってくれた。
散歩すると言ったけど、やっぱり魔法修練場に行くことにした。昨日は一応、切りのいいところで帰ったけど、あんまりできなかったからな。
そして、夕方まで適当に練習をして、俺はミリアの家に帰った。
食堂兼リビングを素通りしていつもの部屋に向かおうとしたら、椅子に座ってキッチンにいる母親のムルアを眺めていたミリアが威圧をかけてきた。
仕方が無いので近付くと、
「居候なんですから、挨拶してください」
なるほど、そういう事ね。
顕現すると、すぐにムルアが気が付いて、
「ローちゃんお帰り」
と、声をかけてきた。
「ただいま」
そういえば、ただいまって言ったことあったっけ?
「お母さん。今日はローの分もお願いします」
「はーい」
まじすか?
「久しぶりですからね。偶には良いんじゃないですか」
やったぜ。
その日は返ってきた他の家族に挨拶をして、シチューを食べた。少しあっさりとしていたが、久しぶりに食べた料理なので、とても美味しかった。
そんなわけでこの章も終わりです。
閑話を挟んで新章突入。




