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精霊生活に安息を  作者: 鮭ライス
エルフの里
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59.何故にお前が

前回のあらすじ

 アリル、ラリ、そしてもう一人の仲間の泊まる宿の食堂で、呼び出したアリルはランベルトの名前を聞いてフリーズしてしまった。

おわり!


 何がおかしいのか笑い出したランベルトは放置して、メオは青髪の少女アリルの肩を揺する。


「アリルー。起きてー」


「……っ!? あ、あのあのあの! らららっら、ランベルトさん!?」


 アリルは気を取り戻すなり、ランベルトのおっさんを震えながら指差した。

 その不可思議な反応に困惑したランベルトが、引き気味に返事をする。


「おう、そうだが……大丈夫か?」


「あ、ご、ごめんなさい。えーと、あの、ありが、じゃなくて、うれしいです!!」


 ……?


 ちょ、誰か喋れ(丸投げ)。


「そうか、ありがとう」


 恐らく話しかけられているはずのランベルトが答えてくれた。

 一瞬目を丸くしたアリルはすぐさま顔を赤く染めてしゃべりだす。


「あ、あ、違くて。えと、その、ずっとランベルトさんに憧れてて冒険者になったんです!」


 アリルはそれだけ言って困惑している皆を見渡し、慌てたような顔をしてから俯いてしまった。


 ……さっきのはつまり、ランベルトが死んでたと噂を聞いたけど、生きてて嬉しいって意味か。そのコミュ力でよく今まで生きてこれたな(自分のコミュ力を棚上げ)。

 それにしても、二級ともなると割と有名なんですね。


「アリル、よろしくな」


「は、はい」


 ランベルトとアリルはそんな感じで握手した。


「それで、他の二人は?」


 ミリアが尋ねる。そして、メオが答えた。


「ラリはもう一人が朝早く出かけてしまったから、呼びに行きましたよ。行き先が間違っていなければすぐ帰ってくるって言ってましたよね」


「は、はい。多分、橋の方に、行ったのだと」


 それって、犯人だったら勘づいてこっそり逃げられたりするんじゃないのか? まぁアリルみたいな人を仲間にしているのに、放っておいて逃げるとは思えないけども。


 そんなわけで、厨房にいるやっぱり日焼けした兄ちゃんに、暫くの間テーブルを借りる許可を得て待つことになった。

 憧れの人の前で失敗して落ち込んでいたアリルは、テンションが上がってきたのか、ゆっくりだが普通に話すようになり、ランベルトにいろんな話を聞いていた。


「うち、やっとこの前五級に、成れたんです。ラリと、あ、今呼びに行っている仲間なんですけど、そのお陰なんです。それで、四級からは、実績で上がれるんですよね。何かコツは、あるんですか?」


「コツか……。俺が六級になったのは開拓に行ってからだったな。アリルは魔法を主体にしているんだよな?」


「は、はい」


「じゃあ開拓に行くのは難しいな。やっぱり、地道に依頼をこなしていくのが一番じゃないか?」


「そう、ですよね。焦っても仕方が無い、ですよね」


 ……開拓って何さ。新大陸でも発見したの?


「開拓って何ですか?」


 メオも知らなかったようだ。


「ん? まだ教わってねぇのか。開拓ってのは冒険者の一獲千金の場だな。開拓中の安全確保のために北の大森林だとか、中央の大砂漠だとかで護衛するって依頼があんだよ。そこで、たまーにお宝が見つかるときがあるんだよな。分かりやすいのだと魔結石とか鉱脈とかだな。分かりにくいのが、よく分からん自然発生の美術品だ。稀に、世界の神秘だとか言って高い金で買われることもあるんだが、大抵はゴミだ。ま、俺が見つけたのは未発見の魔物から取れた素材だけだったけどな」


 まさに秘境の冒険って感じだな。


「お父さんはその未発見だった巨大な爬虫類の魔物を倒して三級になったんですよね」


「確か、その時護衛に来ていた他の冒険者が全員倒れていたのに、一人で倒してしまったんですよね」


 ランベルトに尊敬のまなざしを向けて、勝手に話を補足するミリアとアリル。


「お、おう。ミリアはともかく、アリルも詳しいんだな」


「も、もちろんです! ランベルトさん本人からも聞けて、う、嬉しいです」


 アリルの声は相変わらずゆっくりで小さいけど、確かに嬉しそうなのが伝わってくる。

 ランベルトもおっさんのくせに照れている。


 未発見の巨大な爬虫類の魔物か、恐竜みたいなやつかな?


 あとは割とどうでもいいランベルトの武勇伝の暴露会になってしまったので、適当に聞き流しておいた。




 二十分くらい経っただろうか。そんな折に、奴の声が宿の入口の方から聞こえてきた。


「食堂で待ってるって言ってたわよ!」


「食堂ね、分かった。だけど、僕も呼ばれるなんて一体何の用なんだろう?」


 どうやら、もう一人の男を連れてやってきたようだ。

 能天気な発言をかましているから、犯人だという可能性はゼロと言っても間違いは無いだろう。早くも、この事情聴取の意義が消えてしまった――ぁあ!?


 めっちゃ驚いた。食堂に姿を現したのは昨日も見た妖精のラリと、黒髪で日本人ぽい顔をした俺の知ってる人間、ハルトだった。


 ハルトやんけ。生きとったんかわれぇ。いやまぁ、死んだと思ってたわけでもないけどさ。まさかこんなところで再び見るとはねぇ。つーか、今あいつ男女比一対二で旅してんのかよ。ボッチ旅行してたくせに。

 ハルトは森であった時と同様に速度重視な金属の胸当てに手甲、ブーツと言った軽い装備で、今回は灰色の外套を着ている。


 ハルト達はこちらのテーブルまで近づくと、


「待たせたわね!」


「お待たせしてしまってすみません。僕はハルトと言います。冒険者です。それで、こちらの妖精がラリです」


 各々、違った感じで声をかけてきた。

 うわー、どっちも知ってるわー。なんでこの二人がつるむことになるのだろうか。不思議でならない。


 そしたら、昨日は自己紹介していなかったのか、唐突な自己紹介タイムになったが、それはどうでもいい。



「それで、話って何ですか?」


 代表して尋ねてくるハルト。

 因みにだが、俺は自己紹介していない。俺の存在に気づかれても話すことなど何もないからな――聞きたいことはあるけど。


「んじゃ、単刀直入に聞くぞ。お前ら、ここから南にある森に入ってたか?」


「ええ」


 じゃあ、俺が見たのはアリルとハルトで間違いないのかな。


「目的はなんだ?」


「ちょっとした調査、ですかね。内容は、まだ話したくないですね」


「誰かに頼まれたのか?」


「いえ、今はまだ僕個人の問題ですよ」


 さっきから何なんだ「まだ」って、無駄に気になる言い方するなよ。


「そうか。ちなみに、あそこの近くにエルフの集落があるんだが、知ってるか?」


「いえ。……あ、もしかして僕たち入っちゃいけない場所に入ったとかですかね?」


「いや、そういうわけじゃないから安心しろ」


 なんか、結局一対一で話してるけど、他のメンツ要るの?


明日――日付またいだので今日だな――から毎日投稿再開しゃす。


……多分(保険)。

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