57.またお前か
前回のあらすじ
漁村に到着して宿に入り、メオに癒しを与えた。
おわり!
遠くから見るときれいだけど、間近で見ると少し粗いなって思うことはよくある。この村もそんな感じで、絵になる風景ではあったが、歩き回るにはそんなに楽しくはない。
「ほとんど白一色だな」
定期的に清掃されているのか、白い壁も道も殆ど真っ白なままだ。誰かの個人的なこだわりを感じる。
正直言って眩しい。
「真っ白で、目が痛くなりますね」
例えるなら晴天のスキー場だろうか。肌が日と照り返しに焼かれる。
「遠くから見ると、絵になる風景でしたけれどね」
ミリアとメオが俺のつぶやきに反応した。
今は幼女形態なせいで、褐色の肌が更に焼かれている。それは、メオと手をつないで散歩になっているからだ。わしはこんなとこ、きとうはなかった。
当然のように、ここの人たちは老若男女皆日に焼けた顔をしている。なかーまだねぇ。
道行く人たちは、ハーフエルフなお陰で肌の真っ白なミリアとメオの二人に、時々珍しそうな視線を送っている。ここからハーフエルフの村まで一日でいけるはずだが、ほとんど交流が無い事が窺える。
確かに、今のところあまり魚は食卓に並んでいないな。……うっ、クリオネもどきを思い出してしまったじゃないか。
そういえば、使い魔以外で魔物を飼育する概念がなさそうだから、あのクリオネもどきはきっとこの世界の原生生物なのだろう。気持ち悪い。
散歩を続けること数分、俺たちは海に辿り着いた。真っ直ぐ向かえば近かったのだが、適当に歩き回っていたので少し時間がかかっただけだ。
ミリアは海に近づくにつれて、少し変な顔をしていたのだが、
「海って臭い」
そう言う事らしい。率直な感想をどうもありがとう。
「私は好きかな」
メオさんは気に行ったようです。
俺も別に嫌いじゃない。海に来る機会がほとんどなかったので、思い入れは全くないけどな。あるのは、ちょうどできていたあせもに、海水が染みて痛かったという苦い思い出くらいだ。
そうやって、過去を振り返っていたのだが、
「げっ! あんたまさか!」
そんな言葉が聞こえて、後ろも振り向くことになった。聞いたことのある声だったからな。
振り返った視線の先にいたのは真っ白の村に溶け込む、真っ白の名少女。しかし、その身体はとても小さく、15センチほどだ。
「うわ、ラリがいる……」
思わず声が出てしまった。
そう、そいつは東の森林で見た妖精のラリそのものだった。よく似た兄貴の方でなければの話だが、恐らくそれは無いだろう。口調的に。
「やっぱり! あん時の精霊がなんでこんなところにいんのよ!」
知らん。てか、こいつの声こんなキーキーしてたのか。めちゃくちゃ五月蠅いじゃん。
「この五月蠅いのはローの知り合いですか?」
ミリアもそんな妖精がむかついたのが口調に表れている。
「こいつは、頭のイかれた妖精だ。ミリアは知らんぷりしといたほうがいい」
「ちょっと! あたしのこと無視して何喋ってんのよ!」
ミリアはその声を無視しながら、メオに目配せして引き続き海を眺めた。
「そーこーのーあんたも! こいつの知り合いなら挨拶くらいしなさいよ!
図々しい奴だな。呆れて言葉も出ない。面倒臭いので再び糸で縛り上げようと一気に糸を伸ばす。
――スカッ。
「あたしがそんな攻撃に二度もかかるわけがないでしょ!」
蝶のような羽をはばたかせて、旋回しながら避けられてしまった。
それでも問題はない。避けられた糸と他数本でラリの周囲を回るようにぐるぐるして、籠を作って閉じ込める。
「あ、ちょっ、こんなの卑怯よ!」
ちょっと工夫しただけで簡単に捕まえられた。こいつは数学の応用問題とか絶対解けないだろうな。
籠の中で逃げられないラリを直接ぐるぐる巻きにして、妖精巻きの完成です。誰か食べる?
「ぐああ! また捕まっ――むぐっ」
今回は別に話を聞くわけでもないので、遠慮なく口にまで糸を噛ませておいた。
それを見計らっていたのか、ミリアがこちらを向いて話しかけてきた。
「ローも変なのと知り合いなんて大変ですね」
好きでこんなのに知り合われてるわけじゃないぞ。
「こいつの兄は割と常識的だったんだけどな」
「へー、兄弟がいるんですか」
いや、そこはどうでもいいだろ。
「ほおい。ほえおほほへ。っへほはえふふふあ! ふふあー!」
うっさいわ! と思って振り返ると、なぜかメオがラリをつんつんしていた。
ちょ、え、何やってんの?
「メオ、何やってるの?」
ミリアが聞いた。
「妖精って初めて見たから、不思議だなーって思って」
羽も体に巻き付けるように縛り付けてあるので、芋虫に戻った蝶って感じだけどな。
メオが突くラリの様子を二人で見守っていると、
「あ、あの! そ、その子は私の友達で…す……」
はっきりと話しかけてきた割には、その声は尻すぼみに最後は消えていった。
声の方を振り向くと、青い髪の少女がそこで頭を下げていた。腰まである長い髪の間から覗く肌は、エルフとは違う常識的な白さで、耳も長くはなく普通の白人女性のようだ。その長い髪はおさげのように二つに結われていて、……うむ、どこかで見たことがある気がする。
「この妖精のこと?」
「フ―! はひう! はうへへ!」
ラリは何事か喚いて興奮しているので、この少女と知り合いなのは確かなのだろう。
「あの……と、友達を、いじめないでください!」
顔を上げて泣きそうな顔でこちらに訴えかけてくる少女。
いじめって……ああ、傍から見たら確かにそうだな。
「メオ、いい?」
「どうぞー」
まだラリをいじっていたメオに糸を軽く手繰りながら返してしまっていいかと尋ねてから、少女の方に妖精巻きを投げて糸をほどいてやる。
「アリルぅ。ありがどー!」
ラリは泣きながら、アリルと呼んだ少女の胸に飛び付く。胸でかい……じゃなく、ラリは知り合いの前だと泣き虫だな。
飛びつかれた少女の方はあっさり解放されたことに対してか、飛びつかれたことの方か、とにかく困惑している。
「え、ラリ? 泣かないで。それと、く、くすぐったいよ」
眼福……でもなく、少女は黒いゆったりとしたローブを着ていて、どことなく魔法使いって感じだ。
それを見て、この前森の怪奇現象の起きた場所にいた人の女の方を思い出した。多分その人出会ってるだろう。
この世界の人でも髪の色は金や黒や茶が多い。赤や白なんかも見かけたけど、青は初めて見たはずだからな。
時間が無いと言うとなんか出てくる不思議。
そして、そう言ったら時間が無くなった件について。
あらすじの「おわり!」を忘れるとか、投稿焦りすぎだーね。誤字も多いし。




